これは、八つ当たりだ
これは、八つ当たりだ
abaudo;アバウド
「それは................」
「それは?」
セラの目が曇った。
何か唱えてたかのように、唇を震えさせた。
「ここは、セラの神殿...この神殿...もうじき崩れる...だから速く行ってほしい」
明らかに何か隠した。
「何か隠してるだろ? 俺はそんな嘘で...って、なんだこの揺れは?」
「わ、私じゃないわよ!?」
「本当に?」
さっきの前科があるからな、美乃の言葉は簡単に信じてはいけない気がするし...
「早くここを出て...出来るならダンジョンを出て」
「セ、セラはどうするんだよ!?」
「私はここに残る...」
ここに残るって...
さっきから振動が強くなっている。
なんなら揺れる度に、揺れが強くなっている気がする。
俺はセラの腕を掴もうとしたが、何かの壁に行く手を阻まれている。
なんだこの壁は!?
「ラズ...これ以上は危ないわ! 早く出ましょう」
美乃は俺の腕を引っ張って、出口に向かおうとしている。
「でも、このままじゃ、セラが...」
「ラズ、セラの事はいい...だから早くここを出て」
「お、俺は...またセラが死ぬのは見たくない」
「大丈夫。 セラはもう死なない...それに、またラズを危ない目に合わせるのは...嫌!」
そんなこと言われたって...
そんな微かに目に涙を浮かべながら言われたって...
俺を説得できるわけ、ないだろ?
「もう、ダメっ! これ以上は本当にダメだから!」
「美乃っ! 少し待ってくれ!」
俺は強引に腕を放した。
「ラズ...セラはここにいる。 だから、またここに来て...」
「...セラ、、、、、嫌だよ。 連れて行かせてくれよ...?」
「後、一分。」
「ごめんラズ...恨まないでね...」
その時、目の前にいるセラや後ろにいた美乃の声が遠くなった。
「また会う...いつかきっと...レ…ス学……書の…の図書を...で」
聞こえない。
ただ一つ、この言葉だけは耳にこびりつき聞こえた。
「...助けて」
わかった、直ぐに助けに来る。
もう意識も、何もない。
「クソッ!」
「ごめんなさい」
美乃は申し訳なさそうに、暗い表情をして言った。
「...いや、別に美乃に対して怒っているわけじゃないんだ...なんなら命の恩人だしな...ただ」
強く握った手の平が、ジーンと痺れるのがわかった。
「...」
そらに飛んでいるカラスが、羽ばたく。
その音さえも、俺には爆発の音に聞こえた。
空は清々しいほどの青で、最後に見た紅い空とはかけ離れている。
「...ラズ? やっぱり、戻る?」
「美乃を危険にさらすのはダメだ。 俺一人で行く」
「でも...あなた一人じゃ!?」
「うるさい、これは、俺の問題だ」
俺は今とても怖い顔をしているだろう。
目の間から、自分のしわが浮き上がってるのがわかるくらいだ。
美乃は眉を八にして、声を震わせる。
「ご...ごめんなさい...でも、私はラズを一人にはさせられない」
それでもまだ、俺の身の危険の事を考えてくれるのか。
「うるさい...いらないと言っただろう!?」
俺も本当は美乃にこんなこと言いたくない。
でも、俺のわがままで美乃に危険な真似をさせるわけにいかない。
「嫌だ! ...私はラズに何かある事が怖いの!」
「これが最後の警告だ」
俺の怒りの矛先が、美乃に向かっていることを、俺は怒り狂いながらに悟った。
「二度と俺の前に現れるな」
「...それでも私は、あなたについて行く...たとえあなたに嫌われようとも、私はあなたに付いて行く...だって、あなたがいなくなってしまったら、私は何を求めて生きればいいの? 私の寂しさを一度埋めたあなたが、また私をあの寂しいだけの洞窟で生涯を送れって言うの? やだよ! 一度あなたが、私の寂しさを埋めたんだから、責任もって私と一緒にいてよ!」
その必死な美乃の表情は、優しさに満ち溢れていた。
「くっ」
なんでここまで優しいんだ?
二度目に会った時は、迷いなく首を切りつけたくせに...
失望すると同時に、膝から崩れ落ちる。
なんで...なんで...
「泣いてもいいんだよ、私がずっとそばにいるから」
美乃は俺の頭を包むように抱えて、撫でていた。
俺の涙が止まるまでずっと...
本当に、永遠の様に...
結局、俺は戻る事はしなかった。
というか、戻れなかった。
「セラ...今度は絶対に助けてやる」
「......」
少し歩いていると、物陰から何かが顔を出した。
ミノタウロス。
まただ。
また出てきた。
「すまないが、八つ当たりさせてもらう」
「いいわ、その調子よ...ラズ!」
まだ落ち着いていないから、ここでストレス...発散だ!
「ファイアアロー!」
何か今までとは違う力がみなぎっている。
最近、数発同時に打てるようになったファイアアローも、今は数十発まで増えている。
「す、凄いじゃない! 一体いつこんなに打てるようになったのよ?」
「わからないけど、なんか強くなってる?」
俺は何か変化を感じ、直ぐにスキルを見た。
すると、ゼイラグトオーバーが発動していたことに気が付いた。
消費魔力を見れば、もう半分まで下がっている。
どうりで...だ。
「覚悟しろ...これは史上最悪の、八つ当たりだ」
自分でも何故かわからないけど、力がみなぎって笑ってしまうのだ。
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