神詠の図書
神詠の図書
abaudo;アバウド
「お母様、お父様...私達三人で旅に出たいと思っております」
「...はい?」
シリアの母の、イレーダ・マイストも、黙ってはいられない。
凄い形相。
「シリア...何故旅に出たいのです?」
最初の印象こそ嫌な人だった。
けど私がここに来てから暫くした後、この人は本当に娘思いな人なんだと知った。
なによりその厳しさは、何にも負けない優しさで満ち溢れている。
その厳しい顔つきは、きっとシリアや今ここにいる私...それに多分、餅付さんの事も思っている。
「言っておきますけど、私は引き留めるだけではありません...そこに根拠があり、何か自分にとってメリットのある事なら、私も賛成しましょう...しかし、ただ遊びに行きたいとか、楽しい事をしたいだけなら、行く事は許せません」
さすがイレーダさん、ただ反対するだけではない。
でも、クレイダ・マイスト...シリアの父は何も言わない。
ただ黙って、私達とイレーダさんを眺めているだけだ。
「お母様...私は世界を知りません。まだ世間に無知な私が、本当にこの地を継いでいけるのでしょうか。後継者として、必要な知識を学んで、それを取り入れる必要があると思います...」
「学びたいのであれば、キメイル学園に入ればよろしいのでは?そっちの方が私たちの目が届きますし、万が一があっても対応出来ると思いますよ?」
イレーダさんは正しいと思う。
だって、シリアは貴族の娘。
今の王国の現状として、今シリアを国外の旅に出すという事は、自殺行為をさせる様なもの。
シリアだってわかってるだろうけど、彼女には何か外に出なくてはならないという信念が見える。
「そういえば、皆様は全員同い年なのですよね?それなら、全員で一緒に入ればよろしいのではないでしょうか?特にメグさんやそこにいるお友達...聖徒であるなら、無料で受けられるかも知れないですよ?」
イレーダさんの眼光が強く定まったように見えた。
その時。
「...私が手配しよう」
いきなりクレイダさんが喋った。
「私が...国外へ旅に出られる手配をしよう」
シリアの表情が一変して明るくなった。
「ただしだ!」
「...ただし?」
少し長い間が開く。
「王国の中心地、王都のレイジス学園に...三年、いや、一年でもいいから通いなさい」
「で、でも...」
「お前は戦術に関して自信があるのか?」
シリアは黙り込む。
「私が王国には伝えておく。私の娘と聖徒全員を...レイジス学園に入学させると」
「しかし、お父様!」
「出来ないのか?」
凄い圧だ。
クレイダさんの冷たい視線が、この場の重力を三倍ほど重くしたように感じる。
これが...人間界最強の男の...威厳か。
「は、はい...わかりました」
そうして私たちは、レイジス学園に一年間。
通う事になった。
そして私達が、クレイダさんがレイジス学園に強引に入れた理由は...図書館と騎士団の司書が持つ、神が詠んだ...“もの”が鍵となっていたから...




