主従契約
主従契約
abaudo;アバウド
「よし、身体も大きくなったことだし...早速特訓を始めるわよ!」
鬼だ。
まさにそこには、鬼が立っていた。
ここいる訓練生(一人)が、この鬼によって...殺される。
心も体も...
「あの、質問いいですか?」
「黙れっ!?」
「ひぃぃ!」
険しい顔を全く崩さず、長い鞭を地面にたたきつけた。
この人、鬼教官の定義を間違えてないか?
ただのめんどくさい人じゃ...
「お前...変なこと考えただろ?」
鞭を持った手をこちらに向けた。警戒度、マックスだ。
「罰として、腕立て伏せ百回だ!」
「えぇ、や...」
「...異論を唱えた奴は...解ってるよな?」
鞭を持ち手を自分の手にぺちぺちさせながら、俺の身体に自分の体を接触させる。
「は、はい//」
胸が当たってる!?
...これはこれでいいかも...
「はい、いーち...はい、にーぃ!...はい、さーん」
「あ...あの...はぁ、はぁ、どうして上に乗る必要が?」
「うるさい!」
膝を地面につけて腕を止めた瞬間、持っていた鞭を俺の尻に向けて叩きつけた。
バチィンと大きな音がなった。
「ひぃぃいっ!」
「異論は認めんぞ?」
何この人...性格変わってんですけど?
「ほらはやく腕立て伏せせんか!」
またもや、俺の尻に鞭を数回打ち付けた。
「痛い痛い痛い」
だめ...それ以上は、変な性癖がついちゃう。
「はぁ...ったく、お前はどうしようもねーな」
「ず、ずみまぜん」
やっと解放された。
「それじゃ、痛みに耐える訓練行くぞ」
「え? それってなんの意味が?」
「うるさい!」
「ひぃぃぃ!」
この人危険だ。
何か喋るだけで、鞭を地面に打ち付ける。
「あの...一つだけ、何をするのか聞いていいですか?」
「決まってんだろ」
美乃は何故か可愛らしい笑顔を浮かべる。
「ご・う・も・ん」
拷問...
「いやだ! ここから出して...殺されるぅぅぅ!」
「えぇい、うるさい! 早く大人しくせんか」
そう言い、俺の股と股の間を、思いっきり蹴り上げてきた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
尋常じゃない痛さが、腹の内側と睾丸に走る。
涙が止まらない。
「もう、やだ」
「...」
俺はロープに繋がれて、逃げられないようにされていた。
どうにかして、逃げないと...
いずれ、取り返しのつかないことになりそうだ。
少し体を傾けた。
「はっ...あぁ」
一瞬にして、身体が硬直する。
痛い...さっきのあれがまだ続いてる。
俺のムスコ...お前は良い奴だった。
「さぁて、拷問の開始だ...」
「何があるんですか?」
何となく苛立ちで、ふてくされながら聞く。
「よく聞いた」
今度は殴らないのかよ...
「今から...」
思わず息を呑む。
「この契約書に、サインをしてもらう」
「...は?」
契約書の大事なところは隠されて全く見えない。
「何これ...」
「書くわよね?」
さっきとはまるで違う怖さを、うちに秘めた笑顔だ。
あまりの圧迫感に、とうとう契約書に手を伸ばしてしまう。
「さぁ、そのまま書くのよ」
クソッ!
もう、どうにでもなれ!?
俺は勢いで、具現化されたペンを滑らせる。
自分の名前...そして自分の血。
なんで?
「あっ、あなたが血を入れたら...」
すると、急に契約書が燃え始めた。
「な、なんてことを...」
美乃の絶望した顔だ。
何となく、見てて面白い。
でも、やらかしたって事は、自分でわかった。
「まぁ、仕方ないよ」
少しの背徳感が、気持ちよさに変わっていた。
楽しい。
そして、嬉しい。
「いいか、これは、美乃に対する罰だぁ!」
「バカァァァ!」
「で、これは一体なんの契約書だったの?」
美乃は恥ずかしそうに顔を隠した。
「...契約」
「え?」
「主従契約!?」
主従契約...それは、主に対して従者は絶対にさからえない契約だ。
「...で? どっちが主?」
「...あなたよ」
絶望の顔をした美乃が涙する。
「...ふぅん」
「馬鹿...」
「でも一つ聞いていい?」
「何よ」
完全に不貞腐れてるな。
「お前は一体、俺を従者にして...何するつもりだったんだよ」
俺がそういった途端、美乃が固まった。
「なぁ? どう使うつもりだったんだろうなぁ?」
「えっと...」
目を泳がしている。
それも凄い勢いで...
怪しすぎる。
俺があそこで血を入れてなかったらどうなってたことか...
うん、どうなってたか...
今の俺って、美乃より立場が上なんだよな?
だとすれば...
「ふふ、はっはは」
「な、何よ」
「いいのかなぁ? そんな口聞いちゃって?」
「は?」
「あれれ...俺ってばさ? 君より立場が...うぅぅえっ! なんだよ?」
「は?」
あれ?
こいつ全く従う気ないんじゃね?
「どんなことしちゃっても、いいのかな?」
「は?」
なんか腹立ってきたな。
「お前!? 俺のことあんまりなめるなよ!? いいぜ、やってやるよ...そうだな、まずはそこに... ね・こ・ろ・べ!」
...あれ。
全く、微動だにしないんですけど...
「は?」
あれぇ?
どうしたんだろう...美乃さん。
「死にたいの?」
「なんで? 俺の言う事、聞いてくれないのかな?」
俺は幼稚園児に話しかけるように、美乃に聞いた。
「決まってるじゃない...あんた、弱いんだもの」
はぁ...?
「今なんて言った!?」
「弱いもの」
「あぁん? 俺はボスを倒したんだぞ?」
「普通よりかは強いの“かも”知れないけど、私に比べれば蚊よ」
確かに、白虎の美乃にはかなわないけど...
「“かも”を強調して言うな!」
「あーあ、本当もう最悪...なんで私があなたの従者なのよ。全く従えられないあなたの下で...文字だけの契約とは言え、一生の恥よ...なんなら、死んでもいいわ」
途中、俺の方をちらちらと見ながら、言ってくる。
煽られてるな...
「そこまで言う?」
「ほんと...今のあなたなら、別に主従契約が無くても、お願いしてくれれば聞くのに」
いや、挑発じゃない?
これは...誘ってる?
「誘ってないわよ...気持ち悪い」
「あぁん! ふざけんな」
「もう、いいわ...明日あんたには、ボスの所へ行ってもらうから」
「話を変えるな!」
美乃は具現化させた布団を、“自分のだけ”だし、その中に入る。
「さっさと寝なさい...変な事しようとしたら、マジで殺すから」
何この人...
性格ドン替わりしてんだけど?
「...ったく、あなたの大人の姿を見ていると、変な感じになるのよ」
「ん? なんか言ったか?」
「なんでもない! 寝ろっ!」
こうして俺と美乃の主従契約が成立した。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
これからも皆さんの応援に応えられるよう、頑張ります。
最近の暑さで死にそうになりますが、皆さんは熱中症には気をつけてください。
私の家のクーラーは死んでいるので、私も死にそうになります。
どうにか扇風機で持ちこたえていますが...
(扇風機が死ねば、終わり)
それでは、皆さん...
これからも応援のほどを、宜しくお願い致します!




