旅の話
旅の話
abuado;アバウド
「それじゃ、始めるわよ」
「う、うん」
何か呪文を唱え始めた。
なんか緊張するな。
前の姿に戻れたら、何かいいことが待っているはずだと、勝手に思っていたが、今考えれば何も保証はない。
少し不安が募った。
でも、さっきの話は魅力的でないか?
だって...
子供の姿から、大人の姿に戻れるんだぜ?
しかも、大人になったら...自由な物が増えるんだぜ?
この洞窟内なら、子供の方がいいかもしれないけど、いずれ外に出た時は楽になるだろう。
俺はただそこにある好奇心のせいで、簡単に自分に言い訳を言って言い聞かせた。
「UL¥_V,#P#J^,」
何を言っているんだろう...
気になって仕方がない。
「O*UT=#N”~X^」
いや、今のは何処かで聞いたことがある。
最初の部分だけだが、明らかに知っているはずだ。
確か...そうだ、狐鎌鼬までの道中にいた変な奴ら...
名前は確か...ラバークライン、だったか?
気持ちの悪さで、俺のなかだと一位二位を争う。
だが、なんでアイツらが喋ってた言葉を...美乃が話せるんだ?
「&E”:*...Q_,^M!」
美乃はいきなり大声を勢いよく放った。
そうすると、俺は突如の眠気に...倒れてしまった。
「あ...やば」
そのまま死んだように眠り、何かの声が聞こえたが、その後は覚えていない。
何かが迎えに来ている。
なんだか楽になれそうで、急に嬉しくなってしまった...
「ねぇ、神前さんも旅に出ましょうよ」
あれから数日たった。
私は確かに断ったはずだ。
しかし餅付さんは諦めてくれない。
「だから私は行きません!」
そう言うと今日は諦めて帰って行った。
こうして私を引き取ってくれた貴族の家に立っては、私が出て来るのをずっと待っている。
流石に私と同じ年(この世界)の、ここのご令嬢であるシリア・マイストも、私を心配していた。
シリアはこの世界で、私を引き取ってくれた貴族の一人娘だ。
真っ黒でつやつやな長髪が特徴で、それに負けず劣らずのみずみずしい肌。
女なら誰でも欲しがる、魅力のある体型...
いい匂いのしそうな、花のような人だ。
いいとこのご令嬢は皆、根が悪いと思っていたけど、この人は全くとして違かった。
これは私しか知らないのだけども、本当は敵国の聖士であった私達は、奴隷以下の扱いを受けるはずだったのだけれども、当時子供ながら権力を持っていた天才少女のおかげで、今の優遇された扱いがあるのだと聞いた。
本人は語らないのだけど、彼女は私にとって憧れみたいな存在だ。
そんな人を困らせるあいつを、いつの間にか私は敵視している。
「また来てるわよ?」
窓の外には、餅付さんが静かに立っていた。
「...はぁ」
こういう会話が、日常になってしまった。
「いってくる...」
「そうね、あたしも一緒に行こうか?」
笑顔を見せて、私の腕を掴んだ。
私はその手を優しくほどいて、眉を八にして言う。
「ううん、大丈夫...私一人だけで...」
「そう...」
寂しそうに下を見て、もう一度「ダメ?」と可愛く聞いて来た。
でも私は、シリアに迷惑はかけたくない。
もう一度「大丈夫だから」と言った。
またもや寂しそうな顔をする。
その顔を私は不思議に思ったが、その部屋を後にした。
そして私は、広い階段をしたに降りて行き、玄関の大きなドアの前に立った。
そして開くと、もうドアの前で立っていたのだ。
「旅に出ましょう」
「いやだ」
「...へぇ、いつもそんな話をしてたんだ」
「はへっ!?」
急に後ろから声が聞こえたと思ったら、後ろにシリアが立っていたのだ。
するとシリアは、自分に似合った笑顔を作る。
「...旅に出ちゃうの?」
「で、出ないよ」
「えぇ...」
何、シリア?
もしかして私が旅に出ることを願っているの?
「...シリアが言うなら」
「そう? やった! じゃ、三人分の旅支度をしてくるね」
「え、三人分?」
「当たり前じゃん...なんの為に旅に出るのかは知らないけど、私もついて行って問題はないでしょ?」
「そ、そうだけど」
何だか急に嬉しくなった。
「じゃあ、皆で永咲君を探しに行きましょう」
「ちょ...永咲の名前は出さない!」
「永咲? 同級生の子かな?」
永咲の事を思うと、何だか急に恥ずかしくなる。
だから私は、暫く夜以外永咲の事を考えなかった。
だって、皆知ってるなんて思わなかったんだもん...
「ははーん」
なんかシリアが私の事を見て、嬉しそうに笑ってるんだけど...
なんか変な汗が出てきた。
シリアは私の頬をツンツンと指でつつきながらいう。
「顔、赤くなってますよ...」
その言葉で、私は恥ずかしくなった。
「う...うっさい//」
そして何だか笑いが起き、苦痛だった。
これも全部...永咲のせいだ。
永咲の馬鹿!
「会長...学園長...報告があります」
「なんだ?」
恐ろしいほどの邪悪な覇気を持った、女二人が並んでいた。
甘い声の裏側に、恐ろしい念を感じる。
「天途界に動きがあります。 レバート口近隣の村が破壊されました...犠牲者は住人のほとんどです」
「...そうか」
話を聞いた途端、二人から爆発のようなオーラが放たれる。
「じゃあ、こっちも手出しをせんわけにはいかんな」
「そうね、魔王のいない今では、私達最強がそうするしかないものね...」
学園長と呼ばれる者の目が、細く残酷な目に輝いた。
「まずは...あっちの周辺の村一帯を、沼地にしよう」
「だとすると、クレイダ・マイストの領地からそうした方がよろしいかと...」
「しかしこっちの物資や資金不足が目立つ...決行は遅れるかもしれんぞ」
「学園長、私に任せてください」
会長と呼ばれる女が、頭を下げる。
学園長は、静かに頷いた。
「...任せよう」




