昔
昔
abaudo;アバウド
「まさか、俺らが誰も欠ける事無く、16歳になるとはな」
「そうだよな...5歳の時は、よく20歳までに殆ど死ぬって言われてたもんな」
「結局は、あの預言者も...嘘ばっかりだったんだよ」
「やめろって、フラグになるだろ」
広い家の中庭が広がっていた。
綺麗に整われた花に、窓を透き通った光がガラス玉のように見える。
「それにしても...永咲はどこに行ったんだろうな」
「永咲君は、絶対に私が見つける」
とある一人の女子生徒が話しに割り込んだ。
とても真剣な目をしていた。
「神前?」
その女子生徒は成績優秀で、人柄もよく、クラス委員長と言う役職もあった。
そんな完璧少女は可愛らしい見た目で、スタイルもモデル並みだ。
特にサラサラとして真っ直ぐ伸びた髪の毛や、ぱっちりした目など...
人を寄り付ける才能があるのか、容姿に至っても完璧だった。
まさに、憧れの正統派ヒロインと言って間違いなしの人間だ。
しかし、神前恵には、とある欠点がある。
それは...
神前は人気のない暗い路地に入った。
「あいつがどんな所に居ようが、見つけるしかないでしょうが!」
表では絶対見せない、裏の顔があったのだ。
「そうしないと、私の本性がばらされるかも知れないじゃない」
そして肝心の永咲という同級生は、たった一人の、神前の本性を知る人間だった。
多分、学校の中で一人だけだ。
「絶対に見つけ出してやるんだから...」
待ってなさいと言わんばかりの形相で、壁を殴る。
神前は怒っているのだ。
「それに...あんたがいなかったら...私、どうすればいいのよ」
ただ、怒っているわけでもないが...
「はぁ...」
やっと作業が終わったのは、午後6時半を過ぎた後だった。
クラス委員の仕事だけでなく、他に色々な用事を持ち過ぎたせいで、遅くなってしまっていた。
「そんな神前は、誰に文句をいう訳でもなく、ただ自分の愚かさに打ちひしがれていたのだ」
「そこで何してるの?」
「おぉ、ばれちゃったか...」
暗い教室の中に、小さくも大きくもない声が響き渡る。
「ばれちゃったか...じゃないわよ、あんたが変な事言うから」
「名前では呼ばないんだ」
神前は、「あっ」と口をふさぐ。
「別に隠さなくていいよ...」
「ど、どうしたのかしら? え、永咲くぅん?」
震え声になっている。
実にわかりやすい。
「ばればれだよ...それ」
永咲は大きな声で笑った。
「な、何がおかしいのよ」
「いやさ、いつもの神前とは全然印象が違ったからさ...くくっ」
「わ、笑わないで!」
神前は、気を持ち直すためか、一回咳ばらいをして目を瞑った。
「それより、とっくに下校時間が過ぎているのに...何しているの?」
「ここで、一人で作業している神前がいたから...暇だし待ってみようかなって思って」
「そ、そんなこと!?」
「そんな事って...いいんだよ、俺が勝手にやっていることだから」
神前は酷く軽蔑した目で、永咲を見た。
「あなた...ここで私を待って、何がしたいの?」
「別に何も? 言っただろ? 暇だって...」
「暇だからって...」
すると永咲は、その言葉を聞かずに一方的に話を続ける。
「それに、許せなくてさ...神前の事も考えないで、自分の仕事を任せた奴らが...」
「はっ? あ、あんた...何処から見てたの?」
恥ずかしそうな目をした神前を、笑いながら受け答える。
「は・じ・め・か・ら...」
「初めから!? じゃあ、私が...」
神前は急に顔を真っ赤に染めた。
「あ、あんたねぇぇ!?」
「泣いている所も、ちゃんと見たから...何なら写真に...」
するといきなり神前が、永咲に向かって言い放った。
「馬鹿っ! なんで見るのよ!?」
神前は泣き始める。
「どいつもこいつも...ほんっとに使えない! 何? 私が悪いの? あんた達の為に働いてる私が?」
神前は落ち着きを無くして、永咲の胸倉をつかんだ。
「ねぇ!? 聞いてるの? 聞いてたら返事してよ!」
「神前は悪くないよ...俺は神前が頑張っているのをよく見るし、俺も神前の為に何かしたいと思っているんだ...」
神前は永咲の顔を見つめる。
そして胸倉を離して、永咲の前に静かに立ったままでいる。
涙を浮かべる神前に、永咲はハンカチを渡して言った。
「神前...俺は神前が凄いって思う...だから、そう泣かないでくれ」
「でも...でも」
「神前、もし...」
「ねぇ、永咲君...私と、付き合ってよ...私に寂しい思いをさせたくないなら...私と付き合ってよ!」
「神前さん?」
「はっ!...ああ、ごめんね」
私は立ち尽くしてしまっていたようだ。
昔を思い出して...
次の日に、答えを聞くはずだったけど...次の日、学校に行ってから、私は異世界にいた。
それから、私は彼の答えを聞いていない。
だから、私は彼を見つけなきゃいけない。
「絶対に見つけ出してやるんだから!」




