過去
過去
abaudo;アバウド
その瞬間...地面に鈍い音が響いた。
一瞬の出来事だ。
認識できなるわけもない速さだ。
体力ゲージも無くなっている。
クソ...死んじまったのか?
その時、俺そのものが光り始めた。
(サバイバー発動)
表示画面を見続けていた、俺の視界に突如文字が現れる。
その文字が見えたころには、俺の身体が元通りになっている。
「こ、これって!?」
視線を白虎の方に向けると、白虎はひるんで倒れている。
しかし直ぐに態勢を持ち直し、起き上がった。
この虎...俺の鑑定眼に引っかからないだと?
俺がいくら鑑定眼を使おうと、マップ内からは見えないし...それにステータスも見えない。
なんだこいつ...
白虎から、覇気が放たれている。
俺を近づけさせないためか...その覇気には嫌悪感を抱いてしまう。
その時、この魔物が何か使ったのか、俺は身体から力が抜けていく。
な...なんだこれは...自分の身体が、重い。
表示を見れば何かわかるかも...
表示には、呪いと書かれていた。
呪い?
どうやら、この魔物は呪いを使えるらしい。
その時だろうか。
脳内で、誰かに話しかけられた。
なんだ? AIさんか?
(違う...我はこのダンジョンの前主...白虎だ)
男か女かもわからない、高く図太い声。
もしかして、この魔物が語り掛けているのか?
なんだ、なんのようだ。
(我の縄張りで暴れるとは...いい度胸だな)
縄張り?
(縄張りと知らずにしたことか...なら、その身を持って償うがいい)
待って...待ってくれ。
この魔物...人の意思があるのか?
何と言うか、賢い。
(よく気が付いたな...そう、我は元賢者である)
賢者!?
賢者とは、物語でよく出て来る、最強の魔法の使い手...
勇者パーティーに一人はいる...あれか?
(無論、我が昔勇者と共にいた事は認めよう...では、人魔の子よ...何故我がここで一人でいるかわかるか?)
勇者に裏切られたとか?
(ふ...勘が鋭いの。 そうだ、我は勇者に裏切られた................その怒りで我は白虎に転生し、勇者を呪った。)
暫く沈黙が続き、次第に白虎が悲しそうな顔に変わっていく様に見えた。
(結果的に、勇者パーティーはこのダンジョンで壊滅した)
俺が何でも良いから、声を掛けようとしたその時...急に後ろに振り返り帰っていく。
(戦う気も失せたわ...もう、縄張りに現れるでないぞ)
「待って! 俺は、違う世界から来た者なんだ。賢者のあんたに教えてほしい。 俺は何でここにいるんだ?」
その言葉を聞いて、一度は立ち止まったが、また再び歩き始めた。
そして俺は、彼に何も言えず...そこに立ち止まって、彼が消えるのを待っていた。




