其の肆
日欄虞煉将
abaudo;アバウド
特攻したは良いけど、流石に敵の数が多すぎる。
一応貢献はしているはずだけど、これじゃキリがない。
何か決定的に倒せるような魔法があればいいんだけど...
「やあ、ぇ...ラズアスタ・ジーニアス」
「ん?」
辺りを見回したが、何処を見渡しても誰もいなかった。
どこから声をかけられた?
「上だよ、うーえ!」
言われた通り上を向くと、何処かで見たことある女の人がゆっくり舞い降りてきている。
応援派遣されてきた人かな?
まぁいずれにしろ、戦力が増えるのは良い事だ。
「えーっと、あなたは...?」
「あぁ、私の事はいいの。 そんな事より...」
謙虚な素振りをした彼女は、地面に降りたつと綺麗で慈愛に満ちた瞳を俺に向けた。
「ん?」
そして優しい微笑みのまま...
「戦いましょ」
背に背負っていた太刀を、振り上げた。
「...へ?」
俺の反応速度を超えた速度で、腹と腕を斬られた。
速すぎて感覚もない。
しかしそんな瞬間が、直ぐに後の俺を苦しめる痛みに変わった。
「くっ、あぁぁぁぁ!」
「ふふっ、へへっ...あははははは!」
苦しみを覚えた俺を見て、彼女は幸せを実感している。
落とされた俺の腕を彼女は持って、見惚れるように自然な笑みと目つきが零れ出ていた。
く、狂ってる...
そして腕を捨てて、跪いて悶えている俺の前に立ち、太刀を空にかざした。
太刀には俺の血が付いていない。
太陽の光が反射している。
「さぁ? 足搔かないと...死んじゃうよぉ?」
「死んで...死んでなんかやるかよ...」
女は太刀を素早く下ろした...
「はいはーい! 何処に隠れたのかなぁ?」
「あれが神獣なんて嘘ね...きっとあいつの質の悪い冗談だったのよ...」
ハルカは美乃の圧倒的な強さに現実を見失っていた。
もうこっち側の敵はほとんど壊滅。
山ほどいた敵の兵力は、美乃によってほとんど壊された。
しかも美乃はラズに会いたいがために、見つけた敵が降伏しようとも容赦なく殺している。
「もう! 早く出て来てよ! そうじゃないと私ラズの所に行けないじゃない!」
「美乃は絶対に敵にしちゃダメね...あれ? でも私、最初美乃にあった時...結構いい勝負してたじゃない? もしかして私って、美乃と同じぐらい強い?」
「ハルカ、余計な事を言うけど、多分美乃様はあなたに手加減をしていたのだと思うわ」
「しょ、将軍! だ、だめですよこんなところまで出て来ちゃ!」
将軍は渋い顔をしてハルカにいう。
「ハルカ...失礼な事を言ってしまってごめんなさい」
「いえ、そんな事は...」
「ハルカ、この戦いが終わったらあの者達と旅を続けなさい...それが国外であっても私は許しをだすわ」
ハルカの声を遮り、将軍は表情一つ変えないで言った。
ハルカは将軍のその表情で、将軍の心を感じ取った。
「もしかして将軍様は、美乃をわざとラズから離したのですか!?」
「そうよ」
恥ずかしくなってしまったハルカは、将軍に耳打ちでしか言えない。
「そして私にも同じように...と?」
「......」
しかし将軍はその問いには答えなかった。
「ですが、将軍様!」
「ハルカ!? 後ろ!?」
突然大声を出した美乃。
ハルカの後ろから迫ってきていたのは...
「槍? 将軍様!」
ハルカは将軍を一直線に飛んでくる、槍の道から突き飛ばした。
しかし、代わりにハルカがその槍の道の先に入ってしまって、しかも足が地面が離れてそこから動くことは出来なくなってしまった。
「ハルカ!」
ハルカは悟った。
もうダメだ...と。
「「ハルカー!」」
美乃と将軍の声が、戦場に響いた。




