女の子の魅力
女の子の魅力
abaudo;アバウド
俺達は将軍と共に、城下町の復興の前に凪波の国と讃玖の国の狭間に、簡易的な防御網を作った。
これまでの黒蓮堂の動きを見て、将軍はアジトの位置を東の島だと定めた。
そして攻め込んでくる最初の場所はここの、凪波と讃玖の国の間だという。
だから将軍はいち早く対処を始めたのだ。
...とは言っても、俺たちが監視を始めて一週間が経っている。
前線配置の武士達も最初程の緊張感が無くなってしまっている。
このままじゃ危ない。
もしかしたら回り道をして裏から攻撃されるんじゃないかと、思う事もある。
するとその時、俺のいる監視塔のはしごを昇って来る音がした。
「ラズ殿、後は私に任せて、そろそろ休憩をとってくれ」
「あ、もうそんな時間か。」
考え事というか、暇だったからぼーっとしてしまっていた。
「悪い、でももう少しここにいるよ」
「ダメだ。 昨日は一日中ここを任せていたからな...そろそろ限界が来てしまうのではないか?」
「俺は...大丈夫だ」
「大丈夫とかそんな問題じゃない、もしもの時に動けなかったらの事を心配しているんだ」
九条は俺の目を凝視したあと、ため息をついた。
「目の下に隈があるではないか。 ここで良いから少し休憩をとれ」
そう言って持ってきていた毛布を俺に渡してくれた。
「確かにここに居たいけど、毛布を貰ってまでここに居るなんて悪い...」
九条は寒がりなのだろう。 毛布を持ってきている上に厚着をしている。
俺は九条に毛布を返したが、九条は毛布を受け取らなかった。
「やめてくれ...それに私はここに居ていいと言っているのだ。 素直になってここに居ればいいだろ?」
「でもそれだと九条の邪魔になるだろう?」
九条はムッと顔つきを強張らせた。
「こ...ここに居て欲しいと言っているのが何故わからない!」
九条は顔を赤く染めながら、強引に俺に毛布を掛ける。
「さ、寂しいのだ// 一人は...」
すると九条はぎこちなく言葉を発しながら、静かに対面の壁にもたれた。
「なあラズ殿。 お主は男として育てられたか?」
九条は突然変な事を訊いてくるな。
「ん? まぁ、男だしな...」
「私は...男として育てられた」
男として育てられた? いや、九条は女なはずだ。 現にこうして可愛い女性じゃないか?
「男として育てられたって...」
「ははっ、可笑しいよな...」
「可笑しくなんてないだろ」
そう言い返すと、九条は俺の目を優しく見つめて、寂しそうに下を見た。
「お主はそう言ってくれるか...」
なんだその悲しい目は...
ここまで一緒に旅をしてきて、一番苦しい瞳を見せて...
「九条は可愛いし、落ち着きもあってなんでも出来る」
「!?」
九条は下を向いたままだが、視線だけこちらに向けていることがわかる。
「もし九条が女の子と育てられていたとすれば、その九条を見てみたい気持ちもある。 でも俺はその九条が見られないからといって惜しいとは思わない」
「な、何故だ?」
「だって、あの時...魏樂で俺たちを助けてくれた九条でないと、今俺たちは全く関係のない存在になってしまうだろ?」
俺らが出会えた理由、それには幾つもの複雑な糸が絡み合ったから。
もし九条がか弱い女の子だったとすれば、きっと九条は俺たちを助けられなかっただろうし、そうなると平行の糸のまま、永遠に絡み合う事が無いかも知れない。
「へ、変な事を言うな...ラズ殿は...はは」
ぎこちない笑顔が...今の無理矢理作っているであろう笑顔が、きっと九条の魅力なんだと、俺は知っている。
「だから九条、そんな悲しい顔をしないでくれ」
「...」
「これからも共に冒険をして、俺達と戦ってくれ...」
九条は俺を見つめた。
そしてぎこちない笑顔のまま、彼女は自分自身の百パーセントを出したのだろう。
「やっぱりラズ殿には敵わないな...」
子供の時から出せなかった女の子っぽさ。
その九条の笑顔には、その女の子っぽさと言ってもいい可愛らしさが詰まっていた。
「コン! コンコンコン!」
鐘?
南の方角か!?
「敵襲!」
俺と九条は顔を見合わせた。
そして、下にいた一般兵の武士に監視を任せて南に向かった。
次回、黒蓮堂との抗争 其の壱.
ここまでお読み頂きありがとうございます!
皆様の応援のおかげでこの作品はここまで続いています。
これからも気合を入れて面白く続けていきますので、どうか応援をお願いします!
それから、この作品のスピンオフの様な物を今計画しています。
スピンオフ作品は恐らくこの作品が終わってからになると思いますが(まだまだ終わらない)、今後少しずつ情報の様な物を伝えていきますので、是非お楽しみに下さい!
それではこれからも“あらゆるスキルの保持者、創造と破壊の魔術 ~俺だけ悪魔~”をよろしくお願いします。




