数百万の戦士
数百万の戦士
abaudo;アバウド
城下町まで着いたが、人の気配が全くない。
避難したのか?
それとも皆殺されて...
光景を見ていると、次第にあの時の記憶がフィードバックする。
...思い出してしまった。
不意に心臓が締め付けられた様な気分になる。
城下町の奥に、一つ飛びぬけて大きな建物が見えた。
城は近い、さっさと行こう。
「ラズ...大丈夫かな?」
「ラズ殿を心配する必要ないだろう。 それよりも先に、将軍たちの方を...」
「わかってる...でも、ラズは先走っちゃう節があるから」
美乃は元気のない声で、耳を垂れさせた。
「そ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。 ラズさんは強いですから!」
「そうね。 ありがとう神袴ちゃん」
美乃は神袴の頭を撫でた。
「皆、城に着く! 直ぐに戦闘態勢に...」
城の周りに何百体の魔物がいるのが見えた。
馬車に乗っている皆は、馬車から飛び降りて武器を取り出す。
「みんなぁ...今からはもう休めないわよ!」
美乃の一言で、戦える者は一斉に魔物たちにとびかかった。
リザードマン、骨だけの戦士、一つ目のコウモリ...
いずれの魔物もこの日欄虞では全く見られない。
「ミシャードプレス!」
美乃が魔物の動きを押さえつける。
「仙岩」
周囲の全ての岩を浮かして、魔物たちに次々に当てていく。
「レギャァァァァ!」
何体かの魔物が神袴を襲いにかかる。
神袴は戦闘が出来ない。
「無動斬撃刃」
魔物の攻撃が当たりそうになったその時、神袴の前に現れたのは九条だった。
相変わらず見えないほどの速さで刀を振って、一瞬の間に敵を一掃してしまう。
「あ、ありがとうございます」
「大したことはない。 危ない時は助けるのが...仲間だ」
「わぁ! はいっっ!」
「独慶報尽」
ハルカは八方から襲い掛かって来た敵を、一回転して斬り伏せた。
皆は次々と魔物を倒していく。
「おぉっと、減りが早いと思ったら君たちが殺してたのかい」
「誰!?」
屋根の上に誰かいる。
黒く肌が焼けていて、背も胸も大きく、まるでモデルの様な悪魔。
「私はレミシュアよ! 黒蓮堂の幹部の一人!」
よし、城の頂上までこれた。
将軍たちは何処にいるんだろう。
俺は壁の隙間から城のなかに入った。
城の中は、まだ安全の様だ。
「将軍! 将軍!」
すると障子の向こうから声がして来た。
「...ラズか?」
この声は、盛天道子。
俺は急いで障子の中に入った。
「盛天道子いるのか?」
「あぁ、ここにいるぞ」
ど、何処だ?
「ここだ、ここ」
声のする方を見てみると、掛け軸があった。
まさか、この掛け軸の裏に...
掛け軸をめくってみると、そこには盛天道子が穴から顔を出していた。
「盛天道...」
「おおっと、俺様をその名前で呼ぶのはもう遅いぜ」
「...は?」
盛天道子はにぃっと笑みを浮かべて、自慢げに言う。
「俺様の今の名前は、天だ」
「なにそれ! 将軍が盛天道子から天だけを取ったって事!? それ○と○○の神隠しじゃん!」
「冗談だ。 峰華って名前を付けてもらったよ」
「そ、そうか...それより、将軍は?」
「あぁ、将軍なら...」
盛天道子...峰華の後ろから将軍が身を出した。
「お久しぶりですね」
「将軍...」
将軍は少し元気がないのか、暗めの雰囲気を醸し出している。
「将軍、今の状況を話してほしい」
「そう、ですね。 しかし、話したいのはやまやまなのですが...」
将軍は目を泳がせて、言葉を詰まらせる。
「あの、この...状況が、把握できてなくて...」
「なるほど、じゃあ将軍の考えを聞かせてくれ...もしこれが黒蓮堂の仕業だとしたらどうする?」
すると将軍は迷いのない瞳を、俺に向けながら言った。
「もう二度と復帰が出来ないまでにひねりつぶします」
なるほど...そうか。
「わかった、それじゃあ...行こうか」
「待ってください。 あの、あなたに...」
将軍は俺を暫く見つめ続けた。
それから確信したように、俺の心臓を指さす。
「そこに、何かが憑りついています!」
美乃達を見下ろしている女は、空に片手を上げる。
「降れ、魔物たちよ」
また数百の魔物が落ちて来る。
「何を!」
「私は帰るよ...そうだ、いい事教えたげる。 魏樂の黒蓮堂から、数百万の戦士が送られるそうだから...頑張りな」
「数百万!?」
「じゃね」




