天狗の病
天狗の病
abaudo;アバウド
「一度、将軍様の元へ戻る事にするわ」
あと一体の妖怪を倒すと意気込んでいた俺らは、ハルカのその言葉に落胆してしまった。
ここまで城からそこまで離れていないから、明日中には着くだろうとの事だ。
「それに、あの恵まれない妖と鉢合わせるのは...」
「ん?」
「何でもないわ」
ハルカがそう言いながら馬車と馬彦を繋げる。
ぅ...なんか急に眠気が...
「ラズさーん。 美乃さんに作ってもらったこの服どうですか?」
なんだ? あれ、目の前が霞んで...
「ラズさん? ラズさん!」
恵まれやしない。
そうだ、我がどんな言葉を説こうとも、信頼するものはいない。
生まれて直ぐに頂点の存在になり、なったとしてもあいつのせいで民は我を信用しなくなった――
まだ身も心も幼い、そんな僕にどうして父上は?
あれ? 僕がするわけではない?
何故父上が僕の代わりに?
だって父上はもう下りて、僕に譲ったはずじゃ...
そう...か、父上にはきっと考えがあるんだ。
それを僕が知る必要はないよね...
暫くして、僕が国の頂点に立ったことが、お爺様の意向であることを知った。
その事を、父上が良く思ってない事も知った。
宮中の者達はその事について心配をしているらしい。
これは僕がなんとかしなくてはならないのか。
迷ったが、僕に力なんてものはない。
それから月日は流れ、宮中にも民にも良くない噂が流れ始めた。
僕が父上の子共ではなく、本当はお爺様の子共だと...
その噂が流れはじめたころから、父上の怒りは僕に向けられるようになってきた。
全て僕が悪いんだと、そう言われ始めた。
ある日、お爺様が亡くなった。
お爺様は陰ながらも僕を甘やかしてくれてた部分がある。
だからお爺様が亡くなった時、僕は悲しかった。
しかし、父上は喜んでいた。
狂ったように喜んだ。
そして父上は母上の事を殺した。 別の女性を愛するようになった。
もう僕も半分は大人だ。
それなのに、僕は父上に関係を断ち切られた。
父上は僕の事なんか見ていなかったって事なのか...
すると別の女性との新しい子供が出来た。
僕を押し退けて、その子供をこの国の統治者にするつもりだ。
ふざけないでほしい!
僕が今の統治者なのだから、僕がこの国を作り上げていく。
それなのに、いきなり出てきたあの子供はなんだ?
僕だって受けた事のない父上の愛情を、あの子供はなぜ注がれる?
僕が...僕がこの国を統治するんだ!
その事で父上と話し合いをした。
すると父上は、あの子供を僕の養子にするという案を出してきた。
確かにそれだと、僕がこの国を統治できる。
それなら...
と、思っていた。
しかし、それは違うものだった。
僕があの子供の兄になる事になってしまった。
それだと、僕の望んだ統治は出来なくなってしまう。
それで僕はこの国を動かす力も、夢に見た父上の愛情も失った。
時は経ち、今度は父上が亡くなった。
僕は神に見放されていなかった。
もしかしたらもう一度僕が、この国を...
と思ったが、今以上に追い込まれてしまう。
弟の側近の策略により、僕は争いを起こして負けてしまった。
そして僕は流された。
もう僕には何もない。
そうだ、もう終わったんだ。
それから我は弟に踏みにじられ、遂には民は我の事を妖怪だと言って恐れた。
妖怪か、なれる者ならなってやる。
そして、なった時は...破壊してやる。
我の思う国を、呪いと血にまみれた思いで作ってやる。
せいぜい今、立場を堪能しておけ...いずれ落ちるからな。
それから、関という武人が力を上げ、それから間もなくして菊峯という新たな武将がこの国を治めた。
「ラズさん!」
「んあ!?」
神袴が紅白の巫女服を着ていた。
「...に、似合ってるな?」
「そうですか。 やったぁ! 美乃さんありがとうございます」
そういって神袴は美乃の元へ行ってしまった。
...なんだ、さっきのは...
まだ気持ちがわるい。
...ただの夢か。
忘れよう。
思い出すと頭が痛い...
そして、その時将軍の城は、パニックに陥っていた――
あれから何年経っただろう。 もう我の願いは叶った。
幕府の連中たちも、なんだか見ていて飽きてきた。
恐怖に陥れてやるか?
「なんでだ!?」
どこからかおっさんの叫び声が聞こえた。
お?
あそこの若造...
そうだ、あいつの中に入ってみるか。
あいつらについていけば幕府の所までついていけるからな。
破壊、あいつの持っている能力は面白そうだ。




