全てを奪われて...
悪魔になった
abaudo;アバウド
――この世界は、人間が支配していた...
知能が高くて、愚かな人間は、他の生物を物として考えていた。
そして、その人間は我々の手によって破滅させられるのだ。
それが、今から二百年後の事だと、我らが帝王のラドスク様は唱えたのだった。
「この伝説の年数まで、後四年よ」
綺麗な女の人が俺を脇に抱えて、優しい微笑みを浮かべる。
その人は、俺の母親だ。
ただ、人間ではない。
特徴を言えば、大きな角がある。
彼女は小さい俺の頭を撫でながら、静かにベッドにおろした。
俺は父親の顔を知らない。
“この世界”の父親の顔を...だが。
俺は前世の記憶を持っている。
なぜなら死なずにこの世界に来たからだ。
多分あのクラスにいた全員だ。
あらゆる異世界アニメ・マンガを読みこんだ俺は、とある仮説を立てている。
多分、俺の悪魔としての立場は、並みより大分低い物だろう。
何故なら、俺の体には人間の血が入っているから。
ただの推測でしかないが、この世界の俺の父親は人間である。
俺の角は窓の外で見る同い年の子供たちの比べて、角が圧倒的に小さい。
その上、近所に住んでいる魔族の人たちから、俺は紛い物と言われているから。
この世界に生まれて五年しかたってないが、俺の精神年齢(17+5歳)がだいたい察している。
でも、俺は何も不自由はしていない。
この優しい母が、どんな時も見守ってくれている。
それに、俺と同じ境遇にいる幼馴染もいる。
だから、ゆっくりまったりと生活できるこの環境に、全くとして嫌な事はないのだ。
と、思っていた。
空がの雲が黒く染まって、村に燃え上がった赤い炎が目に焼き付く。
「母さん! 母さん!」
何故だ!?
どうして!?
遠目から見て、俺の村が赤くなっていることに気が付いた。
その時に不穏な予感はしたんだ。
なんで俺の村が燃えているんだ!
それに、どうして母さんは家にいない?
俺が山菜採りをしている間に何が起こったんだ?
村中の人たちのほとんどが横たわって死んでいる。
何処に行っても、生きている人の気配がない。
しかも何処を探しても、母さんがいない。
「ラズ?」
「セラ!?」
黒髪の俺の幼馴染が、血まみれの姿で立っている。
「どうした! セラ!?」
「ごめん...ラズ........ラズのお母さんが...ごめん」
そう言って、倒れてしまった。
か弱い身体が、今はやけに小さく感じる。
「セラ!? セラ!?」
反応がない。
でも、まだ生きている。
小さな息が、遅くも繰り返されている。
「セラ...死なせない」
そういったのもつかの間、突然セラの足元が光りだして...爆発した。
「セラ!」
セラの下半身は吹き飛び、息の音も遠くなって聞こえなくなっていく。
「死ぬな!死なないでくれ!」
セラが大事そうに握っていたペンダントが、手元から落ちた。
それと同時に、セラの息は........
「セラ...セラーー!!!」
この世界に来て、初めて泣いた。
そして俺は、村を襲ったであろう者達から逃げてきていたのだ。
ただ逃げることしか出来なかった...
あいつらは姿形から見るに、多分悪魔ではない。
人間の軍だ。
今は村のダンジョンの中に入ってきている。
ここじゃ、まずい。
いずれ俺も村の人達みたいになるだろう。
俺の怒りは今、計り知れないものとなっている。
俺の中に、明確な野望が出来た。
生きているうちに、絶対にこいつら人間の住処を奪い、壊してやると...
それが、死んだセラの望みじゃなくても、絶対に俺は........
...あいつらを人間を、破滅させてやる...




