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第2話

早速、ブクマありがとうございます!

更新頑張ります!




「さて、これからどうしようか……」




 ネクストによりパーティから追放される事となった俺だったが、まずはこの先の行動について考えを巡らせる。




 通常のシナリオにおいてスクナはこの時点ではパーティに留まる事になっている。つまり既にゲームシナリオという縛りからは離れている。ゲームの進行に沿っていれば、まず


間違いなく俺は今頃スクロールによる強制効果でネクストには抗えない身の上になっていた筈だ。




 それは先程のネクストから聞いたセリフからも分かる事だ。先程のネクストのセリフは『シャイニングナイト・ラストフロンティア』の序盤のイベントシーンと瓜二つ。




 つまり東郷誠志郎の記憶を持ったスクナが存在しているこの世界においても、ゲームのシナリオは滞りなく進行しているという事だ。




 ゲームのシナリオ通りの行動を俺が取っていけば、ゲームのシナリオ通りのラストを迎える事だろう。だが一方で俺の選択次第で、シナリオとは違う結末を目指す事も可能である筈。それはパーティから追放されたスクナという事実こそが証明している。




 つまりスクナの関わるイベント以外にも俺は積極的に関わる事が出来るし、何よりそのシナリオの結末を全て変える事も意のままと言う事だ。




 であれば俄然、シナリオの一部を知っている俺はこの世界において有利だ。何せ未来の一部を知っているという事に他ならないからだ。




 ……まあ、そうは言っても俺は『シャイニングナイト』シリーズならいざ知らず、肝心の『シャイニングナイト・ラストフロンティア』については細部の設定までは知らないのだが。




 何せマジで悪意のあるシナリオばっかだったからな、このゲーム。中盤からはゲームのファンであるが故の嫌悪感と嗚咽でコントローラーを握る手が震えてたし……。




 ま、そうは言っても既にシナリオに変化が生じている以上、何が起こるかは分からない。未来の一部を知っているとは言え、慎重に行くに越したことはないだろう。




 何せ元ゲームの世界とは言え、この世界で死ねば間違いなく死ぬ事は事実であろう。それは俺の持っているスクナの記憶が証明している。




 この世界は元ゲームではあるが、既にゲームではなくなっている。今の俺にはゲームとは違い五感で持ってこの世界を認識している。




 こんな状態で「死んだらどうなるのだろうか」なんてゲーム脳なプレイは出来ない。なるたけ持っている知識を総動員しつつ、どう主人公として生きるかが重要だ。




 ここで得た結論はつまるところ「なるたけ慎重なプレイを心掛けつつ、どうにかネクストの上を行く行動を取る」という事だった。




 何せあのファンから総スカンにされているネクストだが、ゲームの世界の神であったプロデューサーだけにはとことん愛されていたからな……。ステータスもアホみたいに強かったし、傲岸不遜であるだけの実力は兼ね備えている。




 となれば、まずは近隣の街に行って、装備その他諸々を揃えないとな……。現時点での俺の装備は最低レベルだ。『奴隷の服』と『短剣』だけを装備している状態で、とてもじゃないがネクストの足元にも及ばない。




 となれば善は急げ。なるたけ安全なルートを取りつつ、街へと急ごう。




 そう思い、街へと歩を進める。街道沿いでネクストと別れたから、そのまま街道を進んでいけば街へと着く筈だ。ここらはまだ序盤、ゲームの設定通りであれば危険なモンスターにも出くわさない筈だ。




 そう思い街道沿いを進んでいたところ、とある一団が視界の端に映り込む。




 数頭の馬に乗った如何にも荒くれた格好をした男達と、その内の一頭にロープで両手を繋がれた子供が人気の少ない場所に向かって歩いているところだった。子供は布切れのような服に身を包み、伸び放題になったボサボサの銀髪で目元が覆い隠されていた。年頃は十二歳くらいだろうか、華奢な体付きをしている。顔が確認出来ない事から少年か少女かも定かではなかった。




 そんな光景を見ていたところで、一団の一人がこちらの視線に気付いた様子で声を張り上げる。




「んだ、テメェ! 俺達、『グリッド盗賊団』に何か言いたい事でもあるのか、ああ!?」




 そんな荒くれ男による甲高い叫び声を聞いてようやく思い出す。これは最序盤のイベントの一つ、『盗賊と子供の行く先』だ。




 このイベントではネクスト達一行が街道沿いを歩いていたところ、盗賊団と捕らえられた子供に遭遇する。そして、盗賊団にイチャモンをつけられる訳だが、ネクストはスキルの一種である『解析』を使用して盗賊団にめぼしい金銭がない事を確認するや否や興味を失ってその場から去ると言うものだ。ここでの選択肢の一つに『戯れに盗賊団を一網打尽にする』と言うものがあるが、これを選択すると勢い余って子供まで巻き込んでしまう。だが、それに対してネクストは一言、『弱い奴はこうなるしかねぇんだよ』と言ってその場を去るというものだ。無視すれば盗賊団と子供は去っていくが、後のイベントで盗賊団の住処に向かうイベントがあり、そこで白骨化した子供の死骸を見つけると言うものだ。どちらの選択を取っても胸糞悪いものであり、当時のプロデューサーによる悪意がふんだんに盛り込まれたクソイベントである。ちなみに元々の『シャイニングナイト』シリーズのファンは3割がプレイを辞めるそうだ。『シャイニングナイト』シリーズはもっと人間味のあるストーリーが多い為にそれも仕方のない事だろう。




 そんなクソイベントの概要を思い出している中、「なんだぁ!? お前もこのガキみてぇに狩りの標的になりてぇか!?」などと盗賊団は更にこちらに荒げた声をぶつけてくる。




 ここで本来のゲームであれば選択肢が登場し、「無視して先を急ぐ」か「戯れに盗賊団を一網打尽にする」というのを選べる訳だが……。




 俺には選べる選択肢など決まっていない。盗賊団に向かって一歩だけ進みつつ、口を開く。






「狩りだと? お前ら、幼い子どもにそんな事をして恥ずかしくないのか?」




 そんな俺の問いかけが予想外だったのか少しだけ意外そうな表情を浮かべた後、次の瞬間にはぎゃははと下卑た笑い声で次々と盗賊たちが笑い出す。




「恥ずかしい!? 馬鹿か、この子どもはなぁ! 元々孤児院に済んでいた身寄りのないクソガキで、しかもその孤児院の院長が『好きにして良い』って二束三文で売り飛ばした奴隷なんだよ!」




「だからどうしようが俺達の自由なのさ。ま、こんな汚らしいクソガキ一人生かしておいても価値なんかねぇからな。魔法の練習がてら的にして遊ぶんだよ」




「まあたまにはそれくらいの楽しみがないと、このくそったれな世の中、やってらんねぇからなぁ」




 等と聞くに耐えない事ばかりが口々に飛び出してくる。




 要するに放っておけばこの子どもも、俺のように死ぬ事が確定したキャラクターである訳だ。プロデューサーの趣味の悪さが存分に伝わってくるようで吐き気がする。




 なら……やる事は決まっている。プロデューサーの悪意あるシナリオは徹底的に潰してやりたいし、何よりここで子どもを見逃す展開なんて本来の『シャイニングナイト』シリーズには有り得ない事だ。




 そう思い、俺が持っていた短剣を構えると、盗賊達は吹き出す。




「は? なんだぁ、お前俺達に歯向かう気か?」




「馬鹿な奴だぜ。このガキと一緒に的にして遊んでやるよ。なんなら手繋ぎ合わせて運命共同体にして遊んでやるぜ」




「大体、オメェも見すぼらしい服着てるし、どこぞの奴隷が逃げ出してきたんだろ? 奴隷は奴隷らしく虫のように逃げ回ってりゃ良いのに馬鹿な奴だぜ」




 そんな事を言いながら盗賊たちは武器を構える。




 すると、ロープで繋がれていた少女がこちらを見たかと思えばこう叫ぶ。




「駄目、逃げて!!」




 ……こんな状況にも関わらずこちらの心配をするなんて、あのプロデューサーが考えたような悪辣なキャラとは違うな。




 俄然、救ってやらなければならない。そう決意を新たにするには十分だった。






 俺は少女の忠告を聞かなかった事にして盗賊達を見据える。




 そんな中、ふと俺、スクナの強さについて疑問を覚える。




 ゲームキャラとしてのスクナは最序盤では自らの実力に疑問を覚えているという設定だ。補助魔法については我流での習得であったし、何より攻撃魔法などについては適正がなかった。これらの補助魔法は後に非常に優秀であったと明かされるものの、その時にはレベルもそこそこに上がっていた筈だ。




 今は最序盤であるし、何よりこのスクナというキャラはゲーム本編に置いてはプレイアブルキャラクターでは無かったのだ。後ろで補助魔法で支援を行うという事からプレイアブルにする必要すら無いとプロデューサーが判断したらしい。




 だから東郷誠志郎としての記憶ではそこまでスクナの強さを知らない。どのような補助魔法が使えるからはスクナの記憶が知っているが、それがこの現実となったゲーム世界においてどれ程有効なのだろうか。




 そのような疑問から俺はひとまず何重にも補助魔法を唱えていく。補助魔法の発動が遅ければネクストからの折檻を受けていたというスクナの経験上、発動をいつでも行えるように高速詠唱は身につけていたし、何重にも補助魔法を同時発動する事はお手の物だった。




 そんなスクナにとっては当たり前の補助魔法の発動が、盗賊たちの表情に徐々に恐怖を生んでいく。


「お、おい……こ、こいつ、何かとんでもない魔力出してないか……」




「そ、それより何てスピードで魔法発動してんだ……? 補助魔法なんてかなりの時間練り込まないと発動すらしない筈だぞ……」




「そ、それより魔法陣が幾つも重なって……。こんな魔法の発動、見たことねぇ……」




 どうやらさすがは元主人公だけあってこの世界においてもそれなりの強者の立ち位置であるらしい。まぁ序盤だしな……この辺じゃまだ余裕か。




 そして、俺はそんな補助魔法の効力を試そうと速度上昇の補助魔法の掛けられた速力で持って近づき、筋力増強の火力で持って試しに右ストレートを撃ってみる。




 本当にジャブのつもりで撃った攻撃で且つすんどめしてみたのだが、威力は抜群であった。盗賊の一人が十数メートル吹き飛んだかと思えば、そのまま地面を滑る。そして、ビクンビクンと跳ねたかと思えば、そのまま気を失った。




「は……親分が……一撃……?」




「親分は王宮騎士とも互角にやりあえるくらいの実力者だぞ…………それが一撃、一撃……?」




「ば、化物だ……逃げろ!!」




 盗賊達がそう口にしたかと思えば次の瞬間には蜘蛛の子を散らすかのようにワラワラと逃げ出し始める。馬や気を失った親分らしき盗賊すらも気に掛ける事なく、その場からいなくなっていった。




 …………うん、最序盤の練習相手とは言え、どうやらスクナの補助魔法の強さは並ではないらしい。




 そんな強さを思い知りつつ、盗賊から助かったという状況にまだ頭が追いついていない子どものポカンとした視線を俺は見据えるのであった。

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