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第30話<式守直也>

もうすぐ書き貯めたストックが底を尽きます。

それでも、全体の半分しか言っていないんだよね(冷や汗。

数少ない読者の方々、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

2022/04/08 漢数字→アラビア数字。加筆修正。

 僕は、俺という言葉をほとんど使わない。

 軍隊の中で暮らしていると、それは改めるように命令される。

『僕』という気弱さを感じさせる一人称は、普通に『指導対象』となる。


 僕が自分を『俺』と言っていた頃――僕には『本物の妹』がいた。

 あの頃は凄く――アニキに、式守六三四に憧れていた。

 強くて、まとめ役で、たかだか10歳程度で、自分ことを大人のように『俺』と言っていたアニキが、大人びて見えていた。


 だから、あの頃の『僕』は、アニキの真似をして自分のことを『俺』と言っていた。


 あの頃、アニキと僕と本当の妹と義妹たちはいつも一緒だった。

 そんな僕たちがトラブルに巻き込まれれば、不幸も全員一緒だった。

 僕たちは運がなかった。


 今はただ、そう思うようにしている。


 軌道エレベーターに向かう為に立ち寄ったスリランカの海軍基地。

 そこで敵異星生命体INVELLの襲撃を受けた。

 数万にも及ぶ、無数の小型多脚種と蟹のような中型節足種の群れが海から襲撃してきた。

 その時、僕たちの、何もかもが壊れてしまった。


 引率の大人たちは、子供だった僕たちをINVELLから逃すために殺された。

 人類連邦統合軍の軍人たちは、絶望的な戦いでも怯むことなく立ち向かい、そして死んでいった。

 誰も頼ることが出来ない状況で、子供だった僕たちは最善を尽くした。

 生き残るために敵に立ち向かった。

 銃を手に取り、手榴弾を投げ、無人兵器群まで起動させた。

 物心つく前から訓練されてきた結果だった。

 10歳にも満たない僕たちは、銃を手に島からの脱出を目指した。


 だけど僕たちは判断を誤り、その行動は度々失敗した。

 その度に誰かが死んだ。 

 判断が正しくても殺された。

 敵は多くて強くて、僕たちは小さくて弱かった。


 妹の手を引きながら戦場を走った。

 右手には銃を握り、左手には小さな手を握りしめて。

 あの時、僕は本物の妹に『俺に任せろ』と無理矢理強がって言った。

 怖くて堪らなくて、自らを鼓舞するためだった。

 妹は、そんな僕の言葉を信じた。

『うん』と泣くのを堪えながら頷いた。


 不意にどこかから砲弾が飛んできた。

 爆風に吹き飛ばされ、みんな数メートルも転がった。

 『俺』はそれでも妹の手を離さなかった。

 妹の無事を確かめようと、『俺』は慌てて起き上がった。

 妹の名を叫んでも、返事は無かった。

 ただ、肘から先だけになった妹がいた。

『俺』はそれを抱えて叫んだ。

 何をすればいいか分からなくなった。

 ただ、叫んだ。


 それでもアニキは俺を引き摺って走る。

 二人の義妹を守りながら


 妹は呆気なく死んだ。 


 あの場にいた子供は、『俺たち』以外みんな殺された。

 護衛の大人たちも全滅。

 生き残ったのは僕とアニキ、双子の義妹の四名だけ。


 それだけで奇跡だった。

 アニキが居なければ、『僕』も生きていない。

 アニキは誰が見ても、誰から見ても、強かった。


 施設いえに戻ると、みんな優しく出迎えてくれた。

 実戦では珍しいことではないと義兄姉たちは言った。

 いつかは慣れる、と教官が諭す。

 いつか忘れる事が出来ると、医者は言う。

 最後に来たカウンセラーは、過ちを認めれば楽になると言い残した。

 だけど、過ちを認めた後に残るのが後悔だけだとしたら、認める意味などあるのだろうか。


 『俺』を信じた妹は殺された。

 『俺』はたった一人の、本当の妹を守れなかった。

 約束を守れなかった、『嘘をついた俺』を許してくれるだろうか。

 

 妹は今も生きている『生き汚い僕』を許してくれるだろうか。


 認めたくない。

『僕』は認めたくない


 人類なんて進化しない。

 人間なんて成長しない。

 新しい遺伝子交雑者を作り出そうが――。

 選りすぐりの遺伝子調整者を生み出そうが――。

 昔のままの純粋種を残そうが――。

 進化なんてしていない。

 その証拠に有史以来、人類がやっていることは変わらない。

 戦って、食って、セックスして、死ぬ。

 死ぬ理由は五つしかない。

 自ら死ぬ。殺されて死ぬ。病気で死ぬ。事故で死ぬ。老いて死ぬ。

 選択肢に乏しいこと、この上ない。

 科学技術が夢のように進歩しようが、いつの間にか宇宙に住み着いても、平均寿命が一〇〇年超えても変わらない。

 木星に向かう僕たちも変わらない。

 異星生命体と戦って、殺して殺される。生き残った誰かが子供を作る。

 それらが終わり、運が良い奴らだけが老いて死ねる。

 これが僕たちの運命。


 なぜか、眩しい太陽と綺麗な砂浜が脳裏に浮かんだ。


 ここは太陽系の小惑星群宙域。

 光ですら、地球から13分も掛かる場所。


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