第22話<人類史補足Ⅶ 小惑星群掃討作戦>
2022/04/06 漢数字→アラビア数字に修正。一部修正。
「奴らは小生意気にも悪知恵も働かせ、野山の動物よりもこちらの意表を突く。
戦場では戦術を駆使し、ほぼ間違いなく戦略の概念も持っているだろう。
認めたくはないが、これは歴然とした事実なのだ。
奴らの異形めいた姿形と、研究者の上辺だけの観察で、敵の本質を見誤ってはならない。
だからこそ、いま行なうしかない。
我々が苦しい時は敵も苦しいのだ。
敵は狡猾だ。
終わりの見えない氷河期が続き、社会の復興自体ままならないことは私とて充分承知している。
しかし、今この時を逃せば、再び戦力を立て直したエイリアンどもに全てが壊されてしまうのだ。
次こそ、次こそ、本当に人類が滅亡してしまう。
諸官らの生活が苦しいことは知っている。
武器弾薬も十分ではない。
出撃すれば、数年は家族とも会えない。
それでも、私は諸官らに命令するしかない。
この機会を逃せば、地球での迎撃戦となるだろう。
その場合、大量の核兵器を使わざるを得なくなる。
そうしたら、どうなるか。
大量の粉塵が、我々の家族からまた太陽を奪うのだ。
敵を滅ぼすにしても、我々は氷河期が長引くことだけは避けねばならない。
皆の家族が穏やかに暮らす未来を作るために、諸君らの献身を期待する」
第1聯合艦隊総司令官 ドナルド・クロスマイヤー大将
復興歴38年から開始された、人類統合軍にとって初となる軍事作戦『小惑星群掃討作戦』編成完結式での士官を対象とした訓示より抜粋。
第1次生存戦争後の復興中に強行された、人類初の宇宙空間における大規模軍事作戦は、作戦完了までに約17年もの歳月を必要とした。
立案者の一人でもあるクロスマイヤー大将はその結末を見届けることなく、失意の内に88歳でこの世を去った。
発足間もない人類連邦政府の強権により発動された大規模宇宙軍事作戦は、復興が未だままならない人類社会に凄まじい疲労感と徒労感をもたらした。
数年後、人類連邦打倒を掲げるテロ組織『我らに主権を』が世界的大内乱を引き起こした際、犯行の直接理由としたため、クロスマイヤー大将は愚将と呼ばれ続けた。
彼の歴史的評価が変わり、その名誉が回復されるのは、100年以上後に起こった第2次生存戦争後のことである。




