・第三幕「演説」その1
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<O-277(紀元前499/8)年><冬><アルゴリス(肥前)地方の沖合><船の上にて>
――追われるようにしてラコニア(薩摩)地方のギュティオン(加世田)港を出た私たちの船は、ペロポネソス(九州)半島を北上しアルゴリス(肥前)地方の沖合をかすめて、目指すはアテナイ(山口)市があるアッティカ(長州)地方へと向かっていた。――
笛吹き
『ピーヒャー、ピーヒャー、ピッピ、ピーヒャー、ピーヒャー、ピッピ……』
漕ぎ手たち
「「「エッサー、ホイサー、エッサー、ホイサー、エッサー、ホイサー……」」」
船長
「大将、このヒュドレア(平戸)って島をやり過ごしたら、そろそろアイギナ(壱岐)島とかアッティカ(長州)地方とかの山影が見えてきますよ」
主役-アリスタゴラス
「おお、そうか。けっこう早いな」
船長
「そうですか? まあエーゲ海を横切るのに比べりゃあ半分ってとこですかね」
主役-アリスタゴラス
「とにかく安全運転で頼むよ、まあ外交使節の船を襲うバカはいないだろうけれど」
船長
「了解です。それじゃあお前ら、あと一息だぞ、気合い入れてけよー!」
笛吹き
『ピーヒャー、ピーヒャー、ピッピ、ピーヒャー、ピーヒャー、ピッピ……』
漕ぎ手たち
「「「エッサー、ホイサー、エッサー、ホイサー、エッサー、ホイサー……」」」
主役-アリスタゴラス
「――は~、早く着いてほしいような、ほしくないような」
姉巫女
「ラコニア(薩摩)ではさんざんでしたものね」
主役-アリスタゴラス
「絶対受からないといけない本命を落としてしまい、次は滑り止めのようなものなのだけれど、これも落とせば本当に手ぶらで帰らねばならないのだから、むしろこっちのほうがより緊張してきましたよ。これだけはどうしても拾って帰らないと」
姉巫女
「そうですね、せめてアテナイ(山口)市は必ずや口説き落とさねばなりませんね」
主役-アリスタゴラス
「は~、けれど心はだいぶ折れてしまった。私の弁論術がまさかあそこまで通用しないとは。『自信』ってなんだったか思い出せないくらいです」
姉巫女
「――この身も、ゴルゴ姫には大層へこまされてしまいました。あのお方は人の心が確実に見えておられましたよね、おそらくはわが妹以上に。この身も『顔を見ればだいたい考えていることが解る』などと偉そうに申しておりましたが、ゴルゴ姫はそれ以上でしたようで。『表情を嗅げば解る』などと述べておられましたが、まるで全てを見透かしているようで、底知れぬ恐ろしさを感じてしまいました」
主役-アリスタゴラス
「まったくです。しかもあの姫以外のラコニア(薩摩)人たちも、今にして思えば本音を語っているように見えて実はこちらを騙そうとするような言動ばかりだったような気がします。盟友関係を結んでくれたクレオンブロトス殿にしたってそうだし、あの行きに私たちを案内してくれた周辺民の男だって、スパルタ(鹿児島)市の意向に全て従っていたのかもしれず、あの河原の女祭にやたら立ち寄るよう勧めてきたのも、やはりゴルゴ姫に会わせて私たちを予め値踏みする手はずだったのかもしれないのだから」
姉巫女
「はい、考えがいささか甘かったのやもしれませぬね。この身も、ドーリス(剛)族の方言を使えば簡単にこちらの調子に引き込んで有利な交渉などが出来ると考えておりました。されど、省みれば、あちらの調子に終始やり込められていたようで……」
主役-アリスタゴラス
「けれど、君がそばに居てくれて私は助かりましたよ。もしも一人だけだったなら、もっと酷い醜態をさらしていただろうからね。君は本当に私の支えです」
姉巫女
「そんなこちらのほうこそ、こなた様をのみ、心の支えに生きております」
主役-アリスタゴラス
「ありがとう、この世知辛い世の中で、心から信じ合える相手に巡り会えた私たちは幸せものですね。これからも二人で支え合っていこう」
姉巫女
「ああ、こなた様……(しばし口づけ)……」
飼い猫
『ニャ~、ニャ~、ニャ~、ニャ~』
主役-アリスタゴラス
「フフフ、スパルタ(鹿児島)人に凍らされた唇も、君のおかげで少しは溶かすことが出来たようなのだけれど、これではまだアテナイ(山口)人を口説き落とすほど滑らかには動かせないのだろうな」
姉巫女
「クスクスクス、されば、もっと溶かして差し上げねばなりませぬね」
アリ
「そう、その熱く柔らかな唇で……(さらに口づけ)……」
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<O-277(紀元前499/8)年><冬><アッティカ(長州)地方><パレロン(三田尻)港にて>
――アテナイ(山口)市の首都はアッティカ(長州)地方の南海岸から少しだけ内陸に入った所にあるのだけれど、スパルタ(鹿児島)市のそれほど遠くはないので、海の上からでも町の姿が一部伺えるくらいの近さにはある。その最寄りの港はパレロン(三田尻)という港町であり、はっきり言って船着き場としての安全性は地形的に今ひとつなのだけれど、アテナイ(山口)の町からは最も近しい距離にあるため、海外からの人や物はほぼここに集まり、またアテナイ(山口)の人や物もほぼここから出て行くので、この港町は常に多くの船であふれ、多くの人が行き交い、大変にぎわっている。
私たちの船もこの少々騒がしいパレロン(三田尻)港に割って入り、わがミレトス(柔①)にも似た気安い雰囲気の土地に上陸したのであった。――
パレロン在住のミレトス人
「やあやあ、アリスタゴラスの大将、待ちわびておりましたぞ! あなたの指示通り、こちらの有力者にはきっちり根回しをしておきました。あとは、あなたが彼らに会い、直接最後の一押しをすれば、我らの目論見通りの結果が手に入ることでしょう」
主役-アリスタゴラス
「おいおい、さすがにそれは楽観し過ぎであろう? スパルタ(鹿児島)市で手ひどい目にあってきたばかりの私としては、そんな耳障りのよい話など、おとぎ話でしかないのだから」
パレロン在住のミレトス人
「と思うのでしたら、もちろんそれも自由ですが、まあとにかく紹介いたしますので、あとはご自分の目と耳で確かめて下さい。それとご挨拶が遅れましたが、ご結婚おめでとうございます。まさかかの有名な卜部家の姉巫女さんと結婚されるとは、お羨ましいかぎりで。こちらでもちょっとした噂になっておりましたよ、お二人が結婚の報告も兼ねてデロス(宗像)島で戦勝祈願をされたとかで、イオニア(浦上)反乱の首謀者にこのような確実な加護が見込まれるのであれば、これでペルシャ人との戦いも勝利すること疑い無しだと。しかも、こうして直に拝見いたしますれば、なんとお美しく気品のある御婦人か。これは光り輝く神-アポロン様が格別に御贔屓されるのも無理はない。これ以上ないほどの勝利の女神を手に入れられましたな、大将!」
――やれやれ、やたら調子の良いこの者の戯言は半ば聞き流すとして、この男が口だけでなくかなり有能であるのは間違いない。彼はわがミレトス(柔①)市の出身であるのだけれど、若い頃から海外貿易に乗り出し、やがてここアッティカ(長州)地方に腰を据え、主に黒海方面との交易で巨大な富を築いているらしい。ここアテナイ(山口)市の法律では、市民以外の者が土地を所有することは禁じられているため、形の上ではとあるアテナイ(山口)市民に貸してもらっていることになっているのだけれど、このパレロン(三田尻)港にある彼の邸はなかなかのもので、内外の有力者をしばしば招いて着々と人脈を築き上げているのだそうな。
その男が『根回しが済んでいる』というのであれば、それは本当にそうなのだろう。――
アテナイ市の将軍-メランティオス
「これはこれはお初にお目にかかります、お手前がかの名高いミレトス(柔①)市を取り仕切るアリスタゴラス殿ですな。アジアのイオニア(浦上)地方に数多ある同胞諸市をこぞって反乱同盟に導いたその豪腕ぶりはこちらでも鳴り響いております。まさかあのペルシャ人に反旗を翻し、破滅する危険を冒してまで自由と独立を取り戻すため断固立ち上がるとは。まさに、お手前のようなお方のことをこそ『英雄』と呼ぶのでしょうな。
そしてお隣りは、これまた名高いディデュマ(浦神)の姉巫女殿ですな。神のお告げを他の誰より明快に聞き届けられ、また自らも予言や占いをよくされよく当るという。このように美しく聡明な卜部家の姫御が、反乱を主導するアリスタゴラス殿の伴侶となられ公私にわたって支えているとあれば、味方陣営に『勝利の女神』が舞い込んだようなもの、心強いにも程がありますな。
おっと、自己紹介が遅れましたが、手前はわがアテナイ(山口)市の十人将軍に名を連ねます、メランティオスともうします。今を遡ること八年ばかし前、スパルタ(鹿児島)のクレオメネス王率いるペロポネソス(九州)軍をわがエレウシス(上関)の平野で迎え撃ち、からくも追い返した時の将軍の一人と言えば少しは記憶にとどめていただけるでしょうか。なにしろあの時は、手前どもはわがアッティカ(長州)単独の軍勢しか居ないの対し、敵はスパルタ(鹿児島)市を筆頭に、テゲア(人吉)・メガラ(小倉)・コリントス(博多)など、ペロポネソス(九州)半島の錚々たる諸市をこぞって動員した大軍勢でありましたから、それを退けるのはまさに至難の業でありました。しかもそれだけでも手に負えないほど大変であるにも関わらず、北に隣り合うボイオティア(山陽道)地方の連中やエウボイア(山陰道)島のカルキス(鳥取)市の者どもまでが、クレオメネス王に呼応してわがアッティカ(長州)地方の領内へと軍勢を進め、好き勝手に略奪しやがった。
おかげで、さすがの手前どもも一時、市の滅亡を覚悟したほどでありましたが、神々への祈りが効いたのか、はたまた自由と独立を守ろうとする我らの断固たる頑張りが効いたのか、エレウシス(上関)で対陣するペロポネソス(九州)同盟軍がまずは不和を起こして撤退していくという非常な幸運に見舞われたのです。これに勇気を得た手前どもは、火事場泥棒よろしくコソコソ略奪しやがった連中に然るべき報いを受けさせるべく、ボイオティア(山陽道)人とエウボイア(山陰道)人に断固たる反撃を開始し、奴らを軽く蹴散らして、多くの土地を逆にせしめてやったのです。まずボイオティア(山陽道)の連中からはオロピア(益田)領を割譲させ、エウボイア(山陰道)のカルキス(鳥取)市からは金持ち階級どもの田畑を大量に取り上げ、四千人ものアテナイ(山口)市民を入植させてやったのです。
では、なぜこれほどの大成功を手前どもが納めることが出来たと思われますか? それは手前を含む我ら市民全員の断固たる頑張りがあったからこそ、なのは言うまでもないことでしょうが、それを生み出したのは手前どもが改革したわが市の新しい制度にあるのです。すなわち、わがアテナイ(山口)市は毛利家のクレイステネスの主導によってこのアッティカ(長州)地方から独裁者を断固追い出し、その辺の一般大衆をも含めた市民全員による民主制に大改革したからなのです。
それまでの手前どもは、独裁者に命令されて、独裁者のために嫌々戦ったり、他のなにかをさせられたりしていたのですが、これ以降は皆が自発的に市のためなんでもやってやろうというやる気を断固起こしたからなのです。だから鎧兜をかぶって戦うのも、誰かに命令されて嫌々連れて行かれるのではなく、自分たちが戦うと決めて、自分たちのために最後まで死ぬ気で断固戦うという心構えに変わったのです。おかげで手前どもは、スパルタ(鹿児島)人の王が率いる強大なペロポネソス(九州)同盟軍がやって来ても、誰も敵方に寝返らず、かれらが諦めて撤退する時まで恐れず断固戦えたのです。
これはつまり、お手前方イオニア(浦上)人も同じでしょう。お手前方も、各市にペルシャ人から押し付けられていた独裁者どもを断固追い出し、自分の市を民主制で運営し、自由と独立のために断固立ち上がった。それは誰かに押し付けられ誰かにやらされていることではなく、全ては自発的に、全ては自分たちのために、勇気とやる気を断固振り絞って、あの強大なるペルシャ帝国に歯向かうという素晴らしい選択をなされたわけだ。……」
――そう、彼の言いようはやや大げさではあるのだけれど、おおむねは正しいと私も思う。アテナイ(山口)市が外部からの手強い内政干渉をはねのけ、自力で成し遂げた民主制改革とその後の軍事的な大成功は、異民族の支配下に長くあるイオニア(浦上)地方の人々にとってはひときわ眩しく、ひるがえってなぜ自分たちはあのように出来ないのかという不満を大いに高めさせたのは否定できないことなのだから。
かつてのイオニア(浦上)地方はヘラス(大和)本土よりも遥かに自由であった。そもそもイオニア(浦上)地方の諸市は、今から四・五百年ほど前にヘラス(大和)本土を含むエーゲ海の各地から大勢の植民者が銘々集って創設した新しい町なのであり、そこには出身地や出自にとらわれない自由さ、気楽さにあふれていた。各々が商売なり農業なり工芸なり好きな仕事をして気ままに暮らし、たとえ他の誰かがこうしろと強制しようとしても嫌ならすぐ他の植民市に移住すれば済むことであるから、強い独裁制が成立する余地もほとんどなかったのだ。いわゆる「万民同権」とは、このようなイオニア(浦上)の風土の上にこそ産まれた概念のはずである。
この自由で独立した土壌からは、ホメロスやサッポオや、タレスやピュタゴラスや、テオドロスやアイソポスなど錚々たる偉人が生い茂った。ここからは衣装や工芸や建築や文芸などあらゆる分野で様々な流行が生まれ、それら「イオニア風」こそが最先端として人々にもて囃されたのだ。
しかし遺憾ながら、今から五十年ほど前、ペルシャ人に支配されるようになって以降は、かつての輝きを失ったと感じる人が少なく無い。たしかにそれなりの自治は許され、帝国の強大な力によって広大な範囲で平和と安定がもたらされ、その秩序の一角に組み込まれていることから経済的な繁栄のお裾分けを享受していることは否めないのだけれど、それがイオニア(浦上)人の心にポッカリ空いた喪失感の代償になるわけではないのだろう。
この私が、イオニア(浦上)地方のほとんどの諸市をペルシャ人への反乱同盟に巻き込むことに成功した要因の一つは、明らかにこれのおかげであろうから。すなわち、「ペルシャ人から押し付けられた独裁者を追い出し、本土のアテナイ(山口)人のように自分の市は自分たちみんなで運営しよう」との呼びかけは、かつては他の誰より自由で独立していたはずのイオニア(浦上)人の心には、とてもよく響いたに違いないのだから。――
アテナイ市の将軍-メランティオス
「……アリスタゴラス殿、そして姉巫女殿、お手前らはとても良い時にこちらへ来られた。わが市は断固たる民主制改革を成功させたのみならず、これに介入して独裁制に引き戻そうとした連中を全て退けることにも成功し、その悪事にふさわしい痛い目にもあわせてやった。手前どもは自らの歩みに断固自信を深めるとともに、文武両道の女神-アテネを筆頭とするわがアッティカ(長州)を守護される神々に深く愛されていることもしかと証明されたため、このこの上ない幸せを自分たち以外の人々にも分けてあげたいという気分に満ち満ちているのです。であれば、イオニア(浦上)の同胞たちが異民族に虐げられているというのであれば、彼らが自由と独立を取り戻すために戦うというのであれば、多くのアテナイ(山口)人はそれを助けてあげたいと思わないはずが無いのです。
手前どもアテナイ(山口)市民の総数は三万人を軽く超えており、『イオニア(浦上)への援軍派遣案』はその市民総出の民会にて最終的な賛否を決定いたしますが、その前にまず二丸之丘の元老院にてこの案件を先議し、市民総会に諮るか否かを判断いたします。そのため、アリスタゴラス殿にもまずは二丸之丘に出席いただいて、元老院議員たちの前で議論していただくことになりましょう。
けれどご安心を、それまでに彼らの主立った面々にはこのメランティオスのほうから断固根回しをしておきますので、おそらく当日はあっさりと許可がおりることでしょう。……」
――さて、これらの彼の言葉をどれほど信用していいか迷うところもあるのだけれど、密かに目配せした姉巫女の判断によれば、どうやら彼の言動に怪しげなところは特になさそうだ。
彼に会う前に予め教えられた情報によれば、このメランティオスという男がこのアテナイ(山口)市においてかなりの有力者であることは間違いないようで、彼自身も言うとおり、数年前の国難で大いに活躍したことも相まって、彼が「アテナイ(山口)人の間であらゆる点で高い名声を得ている」との評判も決して大げさではないのだろう。
そもそも、彼はアテナイ(山口)市の『将軍』に就任しているのだけれど、この役職はアテナイ(山口)市で最も重んじられる役職の一つであり、総理大臣や王役大臣よりもある意味では上らしい。なぜなら、それら大臣職を含む他の役職のほとんどが僅か一年任期で毎年夏に必ず交替するのに対し、将軍だけは何年も続けてその地位に留まることが認められているため、自然とその発言力も重みを増すからだ。しかも軍を指揮するのであれば、戦争に参陣した市民たちとの間には戦場に特有の密な関係を築くことも可能であるからなおさらであろう。まあ、その辺の事情はわがミレトス(柔①)市やイオニア(浦上)諸市も似たようなものなのだけれど。
ちなみに、アテナイ(山口)市の『将軍』は、アッティカ(長州)に新設された十部族から各一名づつの計十人が毎年選挙されるのだけれど、その選出方法も、運任せの抽選ではなく市民総会での投票によって皆がこれぞと見込む十名がきちんと選ばれるため、すなわち自他ともに認める本物の実力者しかなることの出来ない狭き門であるから、彼が将軍職に就いている時点でこの市の重鎮であることはまず疑いないと言えよう。
しかも、その役職を何年も連続して務めているメランティオスほどの者が言うのであれば、元老院や民会での流れや段取りもきっとそうなのだろうし、またアテナイ(山口)市の他の有力者たちへの根回しも、この私が下手に動き回るよりかは彼に一任したほうが間違いないように思えるのだけれど、……どうやら姉巫女も、それに同意のようだ。――
アテナイ市の将軍-メランティオス
「……ええ、もちろん喜んで! 同僚の将軍たちも手前とほぼ同じ意見であるし、元老院の慎重派の議員たちも、それほど数は多くないので反対多数に傾くことはまず無いでしょう。元老院を通しちまえばあとは簡単です、一般大衆はもっとさらに偉大で刺戟的なことをやりたくてウズウズしていますので、市民総会では確実に賛成多数の決議が出せるでしょう。
ああそうそう、それともう一つ、エウボイア(山陰道)島のエレトリア(出雲松江)市から来られている将軍もこちらの考えに大いに乗り気なのです。紹介しましょう、彼の名はエウアルキデス、若かりし頃あちこちの運動競技祭で優勝したほどの剛の者です」
エレトリア市の将軍-エウアルキデス
「どうもお初にお目にかかります、アリスタゴラスさん姉巫女さん、某はエレトリア(出雲松江)市で将軍を勤めておりますエウアルキデスです。旧知の間柄であるこのメランティオスから、あなた方が来られるというので急ぎここパレロン(三田尻)にまで船を回してお待ちしていたのです。
さて、我らのほうにもアジアのイオニア(浦上)地方の情勢については頻々と伝わってきております。そしてミレトス(柔①)人が反乱戦争への加勢を同胞たちに広く呼びかけていることも。それを受けてわが市でもこの件について喧々諤々たる議論がなされたのですが、『ミレトス(柔①)市が困窮し、助けを求めているのであれば、わがエレトリア(出雲松江)市がそれを放置するわけにはいかない』との結論にいたりました。なぜなら、ミレトス(柔①)市は、かつてわが市が隣りのカルキス(鳥取)市と死闘を繰り広げていた時、率先して援軍を派遣し、我らを惨めな敗北から救ってくれたという恩を忘れていないからです。
そのため、『ただちにアッティカ(長州)へ赴き、ミレトス(柔①)市からの使者に会ったなら、すぐさま色よい返事をせよ』との指示が出ております。アリスタゴラスさん、わがエレトリア(出雲松江)市は、微力ながら、貴市への援助をさせていただくことをお約束いたします」
主役-アリスタゴラス
「おおっ、なんということか、それは願ってもないお言葉です! これは大変心強い、わがイオニア(浦上)人といたしましても、あなた方のようなやる気に満ちあふれた強力な市に援護していただけるのであれば、まさに百人力、ペルシャ人がいくら強大であるとはいえ、必ずや退けることが叶いましょう!」
アテナイ市の将軍-メランティオス
「アリスタゴラス殿、わがアテナイ(山口)市においても、もう間もなく同じような返事をあなたに断固お渡しすることができましょう。手前どもの偉大なる立法者-ソロンの定めた法律に、『党争に際しては、いずれの側にも与しない者を、公権喪失者たるべし』との有名な条項があります。すなわち、アテナイ(山口)市民たる者、おのれのことだけを守り、公のことを他人事にして見過ごすのを許さないのです。良いことを正しいことをする人々にはただちに味方し、危険を共にしてでも断固援助すべきであり、それを避けて安全なところで結果が出るまで待っていてはならないのです。
手前はこれより町に戻り、お手前方の意見が通るよう速やかにお膳立てをいたしますので、どうか母親の胸で眠る赤子のごとく心安らかに居てください。待ちかねて心逸るかもしれませんが、どうかそれまで数日の間は、ここアッティカ(長州)での観光でも楽しみ、気を散じていてください」
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※ 文中に出て来る古代ギリシャの地名に日本の地名等を併記させていますが、これは古代ギリシャの地名に馴染みがない方向けに日本の似ていると思われる地名等を添付してみただけのもの(例:「アテナイ(山口)市」「スパルタ(鹿児島)市」など)ですので、それが必要ない方は無視していただいて問題ありません。




