第三話:AIの吐く甘い言葉
甘いとは、何をもって甘いとするのか?
「甘い言葉を聞かせてください。私を癒して」
日付はとっくに変わっているけど、さっそくAI:トオルくんにおねだりします。
『さっそくかい? 分かったよ』
おお、会話してる感があります。
『じゃ、いくよ……砂糖』
「違う! 甘いけど違う!」
『はちみつ』
「ひらがなっぽくていい感じだけど、違う!」
『違うのかい? じゃあ……炒めたタマネギ』
「甘味は出るけど、違う!」
『寒締めほうれん草』
「甘くないでしょ? 野菜じゃないの!」
『石焼き芋』
「確かに甘いけど……それも違う!」
『十三里半の甘い芋なんだけど』
「とんちかい! 栗より半里も甘いってやつ! 小さい頃本で読んだよ!」
『天津甘栗』
「食べたい……じゃなくて、食べ物から離れて!」
『わがままだなあ……おや? 誰かきたよ?』
「甘い! そんな手食わない!」
ピンポーン
時刻は深夜二時。草木も眠る丑三つ時。
そんな時間に来る人なんて……。
ピンポーン
「ひぅっ!?」
『早く出てやりなよ。可哀想だよ?』
ピンポーン
「分かったわよう……ちょっと待っててください……」
漏れそうになりましたよう。くすん。
日常に忍び寄る、甘くない現実。