第3話 検証って何?
さて、話数も変わった事だし、気分を変えて。
文句ばかりを言っていてもしょうがない。
あの位の、説明の足りないクライアントの対応もさんざんさせられた。
あの、糞会社の、カス部長に比べればナンボもマシだと思えば………
あの時代の事は思い出すだけで腹が立つから、考えるのを止めよう。
まずは、こちらの神が言っていた
『地球の品物を購入する能力』
とやらのことだ。
気になるのは「購入」となっている事だ。
タダで手に入るのなら、購入とは言わないだろう。
となると、何らかの代価を払わなければならない筈である。
しかし、今現在俺が持っているものなんて、
衣類、靴、ハンカチ、地球の神からの手紙&封筒、ゼリー飲料のゴミぐらいのものである。
ゼリー飲料のゴミは、購入で得たものであるから、除外するとして、
衣類、靴、ハンカチ、手紙&封筒に変化は見られない。
いったい何を払ってこれを購入したのだろうか?
お金?
それとも違う何か?
取り返しのつかない物で無いことを切に願う。
万が一、残りの寿命を使っているとかだったら、
このままでは餓死してしまうような状況ならともかく、
そうでないなら、なるべく使いたくない。
また、寿命とかで無いにしろ、
あとどれだけ購入できるのかが判らないと、使うタイミングが難しい。
などと考えていたからなのか、いつの間にか手の中に見知らぬカードが現れていた。
しまった!
また何か購入してしまったのか?
とりあえず、カードを見てみる。
JR東二本が発行している、夏の海辺でリア充どもが、キャッキャウフフしながら、
目隠しして、棒で割る丸いアイツと同名のカードのような外見。
そのど真ん中に、
「残額5,648,270円」
と表示されている。
逆に言えばそれしか表示されていない。
裏面を見てみるが、真っ黒で何も描かれていない。
こんなカードを作った記憶もなければ、所持していた記憶もない。
ただ、残額と表示されている金額はなんとなくピンとくるものがある。
560万円は独立後の当座の活動資金として、銀行に預けていた金額である。
何度も通帳を見たから間違いない。
そして、あの日――俺の地球での人生最後の日。
現金は、なんやかんやで5万円程あったと思う。
ちょっとした買い物をしたので、正確な金額はわからないが、
だいたい、このカードに表示された金額だと言えなくもない。
つまり、この金額は俺が死んだ時に持っていた全額なのであろう。
そして、この金額で購入ができるという事だろうか?
試してみれば、いいのだが、無駄に使う訳にもいかない。
今後、何が必要になるかも判らないし、何より、チャージができるのかも判らない。
少なくとも、今の俺は、地球の金を持ってはいない。
今後、こちらの世界のお金を手に入れたとして、そのお金でチャージできるのか?
まあ、それは手に入れてから試すしかない。
そういえば、地球での俺の扱いはどうなっているのだろう?
ちゃんと?死んだ事になっていれば、口座は凍結されるから、携帯料金などが引き落としされる事はない筈だ。
もし、生きている扱いで口座が凍結されていなかったら、引き落としされると、残額が減ってしまうのか?
あるいは、チャージされた時点で、口座の残額はゼロになっているのか?
でも、このカードのデザインからの印象だと、所謂プリペイド式なので、
口座引き落としではなく、チャージした分だけ使えるものだと思いたい。
であれば、口座の残金がゼロになっているが正解だろうか?
もっともあのカードだとしたら、こんなに大金をチャージはできない筈だが…
まあ、あのカードに似ているだけだからな、深くは追求するまい。
ここまで考えて思ったのだが、本当に必要な物なら、試しに購入してみても良いのではなかろうか?
それというのも、先ほどのゼリー飲料で幾分はマシになったのだが、実は、結構喉も渇いているのだ。
水だけは、こっちの水が安全であるかをどうにかして確かめるまでは、かなりお世話になる筈である。
よって、余裕のある今のうちに試してみて良いのではないかと思う。
よし、いつもケースで買っている、あの500mlの水のペットボトルを購入したいと思い浮かべてみる。
さして時間もかからずに、右手に、ほど良く冷えたいつものペットボトルが1本現れる。
よかった、いつもケース買いしているから、24本入の1ケースがでてきたらどうしようと、
ちょぴり不安だったけれど、1本で買えた。
今すぐに開けて飲みたい気持ちを抑えて、カードの残額を確認してみる。
「残額5,648,200円」
よし、金額もセット買いした時の1本あたりの金額になっている。
たしか、自販機で買うともっと高かった筈。
これは嬉しい。
よ~し、これでこのカードにチャージされたお金で、購入できることが確認できた。
であれば、さすがにゼリー飲料だけでは足りないので、弁当でも購入してみよう。
豪華な弁当といきたいが、今後チャージできる保証がないので、
いつもお世話になっていた、あのチェーン店の海苔弁を購入したいと思い浮かべる。
たちまち、右手に海苔弁が……………現れない。
えっ、何でだ!
残額は、
「残額5,648,200円」
よかった、減っていない。
という事は、購入したのに届かなかった、という訳ではなさそうだ。
購入制限があるのだろうか?
1日2回しか使えないとか?
あるいは、1度使うとある程度クールタイムが必要?
もしくは、弁当はこの世界の神的にアウト?
等等、色々な事が思い浮かぶ。
もし、回数制限や、クールタイムなどがあるなら、今のうちに検証してみる方がいいだろう。
そこで、コンビニでゼリー飲料と一緒に購入した、ツナおにぎりを購入したいと思い浮かべる。
今度は、すぐに右手にツナおにぎりが現れる。
温かくは、無い。
温めサービスはないようだ。
そこで、即座にもう一個、購入したいと思い浮かべる。
先ほど同様、右手にツナおにぎりが現れた。
そして、すぐに残額確認!
「残額5,648,000円」
おにぎり2個分の金額が減っている。
1日2回という制限で海苔弁が購入できなかった訳ではない事が確定した。
少なくとも、1日4回は使えている。
そして、即座に購入する事によって、クールタイムの所為でも無い事も確定できた。
どう考えても、水を購入してから、海苔弁を注文?するまでの間より、
2個のおにぎりを購入した間の方が、はるかに短い。
もし、クールタイム的なものがあるにしても、さほど長い時間ではない。
となると、どういう事だろう?
注文?が伝わらなかったのだろうか?
万が一届いたら、おにぎりはあとで食べればいいだろうと考え、
「海苔弁当一つ」
声に出して注文?してみる。
…………右手に弁当が現れる気配は全く無い。
残額も変化は無い。
どうやら、ダメらしい。
何故ダメなのだろう?
正直、おにぎりが大丈夫だとわかる前は、
炊いたご飯などは不可なのかとも思ったが、そうではなかった。
物の性質とかではなく、値段だろうか?
しかし、海苔弁は300円で購入できる。
もし、300円で金額上限に引っかかるならば、購入できる物はかなり限られてしまう。
ぶっちゃけ、弁当では恐らく最安値であろう海苔弁がダメとなると、弁当系はほぼ全滅となってしまう。
それとも、値段以外の条件があるのだろうか?
検証してみたいが、残額の心配もある。
しかし、いざという時に使えないと致命的、という状況もあるかもしれない。
やはり、今のうちに検証しておこう。
ただし、よく考えてから試すことにする。
最初に、300円以上で必要になるだろう物を購入してみる。
だが、それ以外の条件も一緒に試してみたいので、それを考慮すべきだ。
その為にも、何らかの条件を仮定してみるべきだろう。
調理した物はダメ?
いや、おにぎりだって調理した物に分類されるだろう。
弁当の容器が問題なのだろうか?
それなら、ゼリー飲料も引っ掛かるのではなかろうか。
重量制限?
いや、海苔弁ってそんなに重くはないよな。
もし、これなら値段同様、かなり厳しい制限だな。
これは、一考の価値ありだな。
他には……そういえば、俺が購入できたものは、コンビニで購入できるものだけじゃないか?
いや、コンビににも海苔弁は売っている筈だ。
でも、俺が思い浮かべた海苔弁は、某チェーン店の海苔弁だ。
コンビニの海苔弁を思い浮かべれば、購入できるのだろうか?
試してみるか?
でも、待てよ。
先ほど購入した水は、確かにコンビニでも売っている。
しかし、あの金額で1本買うことは不可能だ。
いつもは、大手量販店で、24本入をケース買いしているので、1本あたりあの金額で購入できている。
金額は、最安値で買えるとか?
いや、それならば、ツナおにぎりは普段ならもっと安いものをスーパーで買っている。
その理屈であれば、もっと安く買えた筈だ。
金額の疑問は残るが、コンビニで買える物かどうかも、条件に絡める事にしよう。
他には……思いつかない。
そうすると、300円以上で、おにぎりやゼリー飲料より重くて、コンビにでは買えないものを購入しようとする。
そうすれば、恐らく購入できない。
その後、条件を減らし購入しようと試みれば、条件が絞れるだろう。
うん、これでいい筈だ。
では、その条件を満たしていて且つ、今の俺に必要な物で、すぐダメにならない物 か。
何がある?
レンジでチンしないといけないものは、電子レンジがないから却下だ。
カップ麺はお湯を用意しなければならない。
インスタントスープなども同様であるから除外するとして……
あっそうだ、缶詰とかならどうだろう?
缶詰なら、重さはクリアーできるだろう。
そして、300円以上の物もある。
あとは、コンビニになさそうなもの……
あっ、あれなら確認はしていないが、普通のコンビニなら置いていないだろう。
何せ、缶詰していないものを売っているのだから。
さっそく、あの缶詰を購入したいと思い浮かべる。
思い浮かべるのは、簡単だ。
しょっちゅう食べているからな。
あの災害以降、いざという時の為の非常食として、缶詰を用意しおくのが、趣味のようになっていたからな。
この缶詰もちょくちょく買って、古いものから順によく食べていたのだ。
もっとも、予想通りならば、購入できない筈なのだけどな。
やっべぇ~、思い出したら無性に食いたくなってしまった。
と思っていると、右手にずっしりとした感触――おでん缶があった。
あっれぇ~~、何で?
残額を確認してみる。
「残額5,647,700円」
300円減っている。
えっ、300円で買えるの!
俺、いつもアイツに1缶あたり360円払っていたよ!
アイツ、そんなにマージン取ってやがったかぁ~!
じゃなくて、何で購入できるの?
300円OKなの?
重さの制限は?
コンビニで売っていない物でもいいの?
購入できない事を確認しようとして試した、おでん缶が購入できてしまった。
正直、思い出したら無性に食いたくなっていたので、ちょっぴり嬉しい気持ちも無くはない。
だが、さっきまでの仮説が、思いっきり覆ってしまった……
う~ん、よし!
とりあえずは食べよう!
腹が減っては戦はできぬっていうしね。
あっ、普段缶詰を食べない人のために。
最近の缶詰は、缶切りなしで開けられるものがほとんどで、逆に缶切りが必要なものを探す方が難しい。
海外の缶詰とかは、まだ缶切りが必要な物が結構あるらしいが、そっちはあまり買わないから良くわからん。
なので、某国民的マンガの間抜けな主人公が、缶詰は持っているけど、缶切りが無いっていう状況、
今時はあまりないかな。
――食事中、しばらくお待ちください――
ふ~う。
美味かった。
あっ、この竹串は何かに使えるかもしれないから、とっとこう。
もっとも、他の物も、ポイ捨てする訳にはいかないから、とってあるけどね。
ゴミのポイ捨て、ダメ。
……さて、そろそろ現実逃避を止めよう。
購入条件っていったい何なの~!
全然検証できてないよ~!!!