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本当の主人公  作者: 正さん
蛇足
79/87

自分らしさ0





「龍?頼むから、乱暴にすんなよ?俺ら親友だろ…?」

「して欲しくないなら言う事聞いて、僕ら親友でしょ?」

「あぁやっぱ無理今日はやめる、また明日に…。」

「3…2…」

「だからやめろって!!!!」




30分。

ぴったり30分だ。


智明が僕を自分の家に呼んで、ピアスを開けてくれと頭を下げてから30分経った。

保冷剤も溶けて温くなったし、智明が号泣したせいで用意しておいたティッシュ箱も空っぽだ。

挙げ句の果てには僕の袖までビチョビチョに濡らして…。


『ねえ…もうすぐ暗くなるよ?早く開けないと始業式までに間に合わなくなるよ?』


なんて言ってみても智明が逆ギレし出すし…。

…仕方ない…最後の手だ。

門限まであともう少ししかないし…よし、やるしかない。


「…もし今日のうちに開けられなかったら…」

「あ…開けられなかったら何だよ…」

「…中二の時の智明の黒歴史新しいクラスメイト全員に教える」

「分かった!思い切ってやってくれ!!」


本当に単純だなぁ…まぁ、こういうところも好きなんだけど。

まぁ…勿論、友達としてね。


智明の右耳を、もしもの時の為に用意しておいた保冷剤でしっかり冷やし、しっかりと消毒してから、ピアッサーをそっと充てがう。

「…いくよ、覚悟出来た?」

「…あぁ、一思いにやってくれ。」


…よし、親友が覚悟してるんだ、僕も智明が付けた印に合わせて開けてあげなきゃ…。


「カウントダウンするよ…3…2…1…。」

0になるタイミングでピアッサーのボタンをぐっと押し込むと、「ガシャン!!」と大きな音がし、智明の首にグッと力が入った。


「智明…!すごいね!よく頑張ったね…!」

智明の頭をワシワシと撫でてからファーストピアスを入れると、とある事に気付いた。


……あぁ…。


「……智明、あのさ」

「な…何だ…?」

「…めっちゃズレちゃった…これ2個開けないと変に目立つ…」

「マジか…でも良いぞ今は一個だけで…」

「いっきまーす」

「ゔあ″あ″あ″あ″!!!」








「…鬼、人でなし。」

「…ごめんね、本当にごめん…何でも言うこと聞くから…。」

「許さない、今日限り俺らは親友じゃない、ただの知り合いだ。」

「智明…ごめんね、本当に…。」


最終的に、僕が何回もミスをしたおかげで、本当は右耳に一つ、左耳には軟骨と耳たぶの二つで…合計3つの予定だったのに…右耳には二つ、左耳には3つという、初めてのピアスにしては多すぎる数の穴を開けてしまった。


そのせいで智明が「セカンドピアスはこれをつけるんだ!」と意気込んでいたピアスを使わなきゃいけなくなって…。


「…智明、ごめんね。」


ごめん、流石に許せないよね。


「いや、いいよ。」

「いいよ!!??」

「むしろ勇気出たわ、これで俺マジ本気で高校デビューできる!」


なんか、えぇ……?


「そこは怒ってくんなきゃ…。」

「怒らねえよ、親友だし!むしろありがとな!龍!」

「えぇ…智明……。」


眉間に皺を寄せながら首を傾げてみると、智明はうざったいくらいの笑顔で笑いながら僕の肩を叩いた。


「わがまま言ったのは俺なんだし…それに」

「それに?」

「……この耳のおかげで、俺らしく、生きてける気がするよ。」

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