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本当の主人公  作者: 正さん
九章
77/87

77話「計画の全貌」



 マンションの駐輪場の奥。龍と俺が殴り合いの喧嘩をした場所。

 晶いわく、龍だけが自分の話をした事をズルいと思ったらしく、自分も自分についての話を俺らに聞いてもらいたいと思ったらしい。


「まず…質問コーナーからやな?」

「出た弱小配信者」

「ファンチはどこだ…」

「智明ファンチを目の敵にしてるよ…」

「いいから話せよ」


 こういう不毛な会話…いいよな。

 でもさっさと本題に入らなきゃな…じゃあ、聞くか。


「俺から質問!お前が考えてた計画教えてくれ!」


 と言うと、晶が一度大きく頷き、ゆっくりと話し始めた。


 晶曰く、入学式で明人を見つけたのが全部の始まりだったらしい。

 龍をじっと見てストーキングのようなことをしていた明人。

 完全な不審者。そんな明人と接触し、友達になった晶は、明人の思い人の特定を始めた。


 その結果松田龍馬という存在と家族構成を知った晶。

 そして、明人の為、知り合い全員に当たり、龍馬の事を調べていると「松田弓月」という女性の名前を知ったらしい。

 松田弓月は自分の母親の親友の一人、彼女に当たると「息子を誘拐された」と悲しみ、心を病んでしまっていたらしい。


 自分の家が関係している。直感でそう思った晶。

 それは当たっていたらしく、龍馬は誘拐された子供だったらしい。

 それが引き金となり、抗争が起き…晶の母親は晶を庇い殺された。


 「息子が誘拐された」と警察に通報しても「ヤクザの揉め事の延長だ」と言い、本腰を入れて捜査してくれなかった、と弓月さんは悲しんでいたらしい。

 そんな中現れた晶という存在、龍の父親、明人の恩人は感謝し、すべてに協力してくれたらしい。


 晶は確信した。明人と龍馬が結ばれてくれたらすべてが解決すると。


 そして、龍馬の親友である俺に目を付けた。

 龍は俺に対して何かコンプレックスを持っているのではないか、と。


「…自分より弱い存在をあてがえば、依存してくれると思った」

「実際…そうなったな…僕単純すぎ…」


 晶は続ける。


「まず親元へ帰す準備をして、それが整った時と同じタイミングで、龍馬に明人を恋愛として意識させることにした」

「…どうやって?」

「龍馬に意識させることと、明人の克服を兼ねて…龍馬を襲わせた」



…。



「じゃあ、あの時明人が俺を殴ったのは?あれも計画のうちか?」

「うん、龍馬に「明人は智明よりお前を優先する」って教えるため」

 …。

「こっわ…」

「マジでそれ、ほぼ成功してたってのがなおさら怖い」

「漫画本は計算外やったけど、結果的にそれを利用することも出来たから…一応、一段階は成功してたな」


 こいつこんなこと考えていつも動いてたのかよ…。


 待て、じゃあ…あれは?


「明人がこの前俺に「ゴミ」って言ってきたんだけど、あれもか…?」

「うん、あれは智明に「龍馬から離れろ」って伝えるため」

「こっわ…」


 …ん?


「何回も質問してごめんな…もし明人が襲った時龍が拒否してドン引きしたらどうするつもりだったんだ?突き飛ばしたり…通報する可能性は考えなかったのか?」

 そう質問すると、晶がぐっと黙り込み龍を見つめた。


「僕バイセクシャルなんだ、気付いたのは最近」

「それを…晶は、分かったのか?」

「…心読める時、龍馬が男性と女性両方に魅力感じてたから、一種の賭けみたいなもん」

「そう…なのか…」

「計画の目的は、龍馬と明人が付き合う事、それに色々、誘拐とか漫画本とかが絡んで、ついでに朱里と智明も付き合わせれば良いかなって思ったんよ」

「こっわ」

「そやないと朱里が澁澤環とかいうあのアホとくっ付けられるんちゃうかって思ったんよ」


 長い沈黙。

 それを破ったのは明人だった。


「次僕の話する」

「…うん」

「去年の冬にコンクールに絵出して、学長賞と推薦貰った」

「マジで!?」

「うん、来年その大学行って美術学ぶことにした」


 明人…。


「あとついでにもう一個」

「何?」

「僕性自認変わった」

「え!?つ、ついででそんな大切な事言う…?」

「見た目変わるわけでも死ぬわけでもないんだしいいじゃん」

「それもそうか…」



 そんな、自分についての考えや秘密をみんなが話し始めた。

 朱里と俺が付き合ったこと、龍と彩ちゃんが付き合ったこと、そして、明人が変化したきっかけや過去。彩ちゃんの信じられないような話と、そのおまけに大バッシングを食らった彩ちゃんの実は好きなカップリング(クロエ×カルマ)


 それを聞いて決意したのか、晶が

「あのさ、うち実は自分の家継ごうかなって思ってるんよ、普通に生きんと…うちなりに行けるとこまで行ってみるよ」

と言いながら俺らに背を向け、着ているセーターを脱いだ。


「…!!」


 晶の背中には、血のように赤い彼岸花と蜘蛛が描かれている。

 それを見て察した龍馬が頷き、優しい声色で「応援してる」と言った。

 晶はそれを聞き、一瞬泣きそうな顔をしたがすぐに真顔に戻り、龍馬のようにゆっくりと頷いた。


 晶…。


 …晶が、話したのなら、俺も。



「俺も、自分の話していいか」

「いいよ」

「…俺の、本当の名前…言いたい」

「?」

「俺、本当の名前は…沢田智明じゃないんだ」

「え?」


 息を吸う。




「俺の、本当の名前は…澁澤智(しぶさわさとし)だ」




 沈黙。




 後悔した。

 セーターを着た晶は、俺の背を撫で頷いた。


「話してくれてありがとう…じゃあ、うちももう一個秘密言うわ!」

「うん」

「うち彼女出来た」


 …


「「「「「は!!!???」」」」」





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