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本当の主人公  作者: 正さん
六章
46/87

46話 旅行





「詩寂ちゃん最近隣のクラスのイケメンと良い感じになってるらしいよ。」

「マジ?うちは詩寂の正体がきんぴらごぼうってことしか知らんわ…。」

「お前マジで何言ってんの?」

「な…うちマジで何言ってんのやろ…楽しみすぎて寝れへんかってん…。」


意味分からん事言ってる晶と…何故かゴシップに超詳しい彩ちゃん…。


「あと狭山先生がこの前喫煙所でコーラ1リットル一気飲みしてたって朱里ちゃんのお友達が言ってた。」

「なんで喫煙所で…?普通に職員室で飲めばいいのに…。」

「邪魔されたくなかったんだって。」


分かるよ。

『ねえ智明?他の子達はどこへ?』

『他の人は?何で晶、彩、智明の三人だけがいるの?』

そんなこと俺が聞きたい。

旅行する!ってなって嬉しくてウッキウキで行ったはいい。

おめかししてる明人見てみんなほくそ笑んでたのもいい。

みんな幸せそうで「これから一週間楽しみだ!」なんて思ってた。

思ってた。

思ってたんだよこっちは。

これから6人でさ?向かう道までも楽しくて…ほら?景色と横顔見比べて「綺麗」って言って?「どっちに言ったのかな?」みたいなくだらねえラブコメごっこしたいかもな~?みたいなのを考えてた。

考えてたのに。


突然晶が「せや!くじ引きしよ!」と言い出してチーム分けされて?

この三人になって?なんかゲームもして?ボロ負けして?あの温厚な三人が?晶の知り合いの車で移動して?

俺らは?電車を乗り継いで?いかなきゃいけなくなって?


なんで?

なんで言い出しっぺの晶が負けてんだよ。


「みてみて、あの山なんか形卑猥じゃない?」

「わーほんとだ!写真撮ろ!写真!」


なんでこんな状況で盛り上がれんの?

さっきから何時間も同じような景色見てんのになんで?

一週間分のクッソ重い荷物引きずって電車乗り継いでんのになんで?


「あ、次降りなあかんのや。」

「晶ちゃん見てあの雲マッシュルームみたい!」

「ほんまや!!」


……シンプルにすごいな、こいつら。


「でさ智明?朱里と何があったん?」

「は!?は!?何?何か?何か仰いました!?」

「智明君ここで降りるよ。」

「いや朱里って何?誰?」

「降りるってば智明君!聞いて!聞いて!」

「分かってる!分かってんだよこっちは!!」

「早よ降りるって!降りんねんあ"ーーーー!!」

「智明君の馬鹿!!!!間抜け!!!!色ボケ星人!!!!」

「俺悪くねえし!!!!言っとくけど俺がこうなったのは彩ちゃんが原因でもあるからな!!!!????」










「告白された後逃げた!!??」

「た、多分ね多分…智明に「付き合お」って言われて…それで…気付いたら自分の部屋に居たの。」

「…帰ってから智明に連絡した?」

「してない。」

「…い、一応聞くけど…万引きはしてない?ちゃんと商品のお金払った…?」

「してないっぽい…レシートあったし。」


こんにちは。

今、僕は明人君と朱里さんと僕の三人で待ち合わせ場所付近の綺麗なカフェに居ます。

じゃんけんの結果のせいで智明達が苦しんでる今、僕は綺麗なカップでコーヒーを嗜んでいます。


「で、でもね?次の日智明と会ったら普通だったの!だから気にしてないんじゃないかって!」

「んなわけないだろ、気にしてないフリしてんだよ馬鹿女。」


りんごジュースを飲みながら恋愛マスターみたいな雰囲気で朱里さんにアドバイスする明人君に、眉を下げて見たこと無いくらい猫背でしょんぼりしてる朱里さん…。


……朱里さんには申し訳ないけど…こればっかりは智明の肩を持つよ。


「あのね朱里さん?幼馴染的にはね?智明は朱里さんの事大好きなんだと思うよ?」

紅茶を一口飲み、下唇を噛み締めている朱里さんにそう言うと、一度大きく頷き

「分かってる…私だって大好きだし…。」

と言い、また紅茶を一口飲んだ。


…好きなら…なんで…。


「…じゃあ、どうして智明から逃げたか分かる?」

甘味が足りなかったのかガムシロップを追加し、ストローでかき混ぜている朱里さんにそう尋ねると、少しだけ考えてから、首を横に振った。


「……分からない…。」

……そっか…なんか、複雑な話になりそうだな…。


僕の隣に座っている明人君をそっと見てみると、何かを察したのか一度だけ頷いてから朱里さんにこう質問した。


「…じゃあ、確認の為に最初から聞くぞ、智明の事は好きなんだよな?」

「…うん。」

「一緒に居たい?」

「……うん。」

「じゃあ智明の事エロい目で見れる?」

「あ、明人君…!?それはちょっと立ち入りすぎじゃ…!」


それに今の時代セクハラとか厳しいんだし気を遣わなきゃ!!と怒ろうとした時、朱里さんが見たこと無いくらい純真な目でとんでもないことを口にした。


「実は出会った瞬間からそういう目で見てる。」

「えっ。」

「ずっと「可愛いお尻だな~」って思ってた。」

「キモ。」

「……聞かなきゃよかった…次智明見る時お尻見ちゃいそう……。」

「……ちょっと分かります。」


……まぁ、そういう事に対しての嫌悪感があって、男の子が怖いってわけでも…智明に不満があるわけでもないのかな?

…だとしたら、なんで…?

確認しなきゃ分からないな……よし、一番気になってた事聞いてみよ。


「じゃあ…根本的なこと聞くよ?智明と付き合いたい?」

「…………。」

「……あ、朱里さん?」

「…………付き合いたくないのかも。」

「あ…そういう、あー!そっちか!!そういう話になるのか!!」









「智明君は朱里ちゃんの事大好きなんだよね?」

「あぁ。」

「付き合いたい?」

「そりゃあ勿論…付き合いたかったから告白したし…朱里も俺と同じ気持ちなのかと思って…。」


駅のホームの椅子で真剣に話し合う智明と彩ちゃん…。


…朱里から事情は聞いてるし…一応幼馴染やからアドバイスは出来るけど…した方がいいんかな。

……するか。

朱里には幸せになって欲しいし。


「…あー、あのさ?なんとなく思ったんやけどさ、朱里は智明との関係が変わるのが怖かったんじゃない?」


自販機で買ったジュースを二人に渡しながら、なんとなーく思い付きでそう言った風を装ってアドバイスしてみると、納得したのか智明が小さい声で「あー」と呟き、腕を組んで唸った。


「…だとしたら悪い事したな。」

…よし、あともう一歩や。


「悪い事したって思えてるだけマシよマシ!これから末長く深~~い付き合いをしたいんやったら!そうやって少しずつでも相手の意味不明な考えやったり趣味やったり性癖やったりも受け入れていかな。」

「……確かに、そうだよな。」

「そうそう。」

「俺もう一回朱里に話してみる。」

「なんでやねん!!!!!!!!」

「!?」


しまった。思ったよりでかい声でた。

めっちゃ回りの人に見られてる。

なんか修羅場やと思われてんのか関西弁が珍しいのかめっちゃ見られてる、怖い。


……覚悟決めろ晶。

このままこのテンションで貫き通せ!!!


「さっきからわしが言うてんのはな?朱里には朱里の事情があるんやしお前にはお前の事情があるんやろ!?やからと言って話し合いでなんでも解決しようとせんと!朱里ん中で考えがまとまって朱里が「よし!話そ!」ってなるまで待て言うてんねん!!」


『それまでにお前も考えをまとめておけ』と最後に付け足し、智明の隣に座りながらさっき自分で買った小さいペットボトルの甘いミルクコーヒーを一口飲む。


「そうか……。」

「そうや!彩ちゃんもなんか言うたり!!」

話したいことがあるのか、さっきからそわそわとコーヒーのペットボトルの蓋を開けたり閉めたりしている彩ちゃんにそう言うと、一度大きく頷いてから蓋を強く閉め、

「話し合いで解決するのは朱里ちゃんが話したくなってから!それから話し合うの!」

と言いながら智明の左肩を右手で優しく掴んだ。


せや、せや彩ちゃん!

「そうや!分かったか!?」

「朱里ちゃんはみんなの想像の300倍は繊細なの!ガラス細工なの!」

「乱暴に持ち上げてどっかにぶつけたらどうすんねん!高いんやぞ!学生で弁償できんのか!?無理やろ!!??」

「持ち上げる時は爪で傷付けないように手袋をつけて回りに物がないか確認!!」

「あったら持つな!持つなら誰もおらんしなんもないとこ!それまでは大切にガラスケースに入れて保管!」

「二人の為に私達がガラスケースになるから!いい!?」

「わ、分かりました…。」

「「よし!!!!!!」」







「怖いからって言って告白現場から逃げるのは違うだろ。」

「……うん、分かってる。」


確かに、関係が変わるのが怖いからと言って…あのとき私が智明から逃げたのはダメだった。

味のしない紅茶を一口飲みながら、ストローで氷を突いている明人君に

「…これから、どうすればいいかな。」

と相談してみると、「あ……」とか細い声を漏らしてからこう答えてくれた。


「…次会った時にお前から「話がある」って言って智明に謝って、それから自分の考えを言えば良い。」

……そう、か。そうすればいいんだね。


「分かった…ありがとうね、二人とも…。」

二人に向かってお礼を言うと、龍馬君が頷いてから私に向かって

「いいんだよ朱里さん…あのね、智明は明るくて強い人に見えるかもしれないけど、意外と繊細なとこがあって傷付きやすくて…一人で悩んじゃう事が多いから、それだけは気を付けてあげてね。」

と言ってくれた。


「…分かった。」

「……それに、朱里さんの好きな人以前に僕の大切な幼馴染でもある。」

「……うん。」

「智明は僕にとって大切な存在なの、朱里さんにとっての晶さんくらい。」

「……。」

「だから…また少しでも智明の事傷付けたら承知しないから。」


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