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本当の主人公  作者: 正さん
三章
19/87

19話「今頃」




廊下がざわざわと賑わっている。

いつもの比じゃないくらい。

「…?」

なんか…嫌な予感がするな…。

関わらない方がいいと思ったけれど、恐怖心よりも好奇心の方が勝ってしまい、廊下に出てみる事にした。


そして、目の前にいた、ひそひそと話している同じクラスの男の子二人に話しかけてみる。


「ねえ…何があったの?」

「あー、なんか女の事で揉めてるみたい。」

…女の事…?浮気とかそんな感じの話かな?

僕には関係ない話だろうな。

でも…こういうゴシップとか三角関係は智明の大好物だから…教えたら喜んでくれるかな…。

なんて呑気な事を思いつき、

「誰と誰が揉めてるとか…分かる?」

と尋ねてみると、隣の子と目を合わせ少し複雑な表情をした。




「…智明さん、確か…幼馴染だったよね…?」

「……えっ…?」


すると、この子の隣にいた子が、僕の肩を叩き耳にそっと囁いた。


「なんか…いきなり殴りかかったらしいんすよ…親の仇か!ってくらいボッコボコにしてて…」



…あいつ何してんの。

智明の女の話…多分朱里さんの事で何か揉めてるんでしょ?

賢い智明なら…もっとうまいこと出来たはずじゃないの…?



「…教えてくれてありがとう、君、名前は?」

と尋ねると、僕を真っ直ぐ見つめて、自己紹介してくれた。



「澁澤環、こいつは丸岳徹。」


…しぶさわたまきとまるおかてつ…

アニメに出てきそうなくらいかっこいい名前だな…。

…僕も人のこと言えないくらい名前かっこいいけど。


……なんて、言ってる場合じゃない。

ふざけるな、松田龍馬。


すると、徹くんが人混みの方を指差して

「俺ちょっと保健室行って色々貰ってきますね!」

と言いながら、環くんと僕にお辞儀をして保健室に走っていった。



「…環くんは智明と仲良いの?」

と尋ねると、首を振りこう答えた。

「…いや?名前しか知らないよ。」

「…そっか…」

…名前しか…か。

じゃあ…智明に対して悪い印象持っちゃうよね…。

……ちょっと、悲しいな。

根はいい奴なのに。


環くんの隣に立ち、環君の顔を横目で見てみると……顔つきというか…雰囲気が、どことなく智明に似てるような……。




その時、ざわざわ声がいきなり静かになった。


…何だろ。


行こうとすると、環くんが僕の肩を掴みこう言った。


「…今の智明さんを見たらきっと後悔する。」


…後悔……?

……智明が今、どんだけ血を浴びてようが、傷だらけになってようが


「…そんなんで後悔するくらいなら、今頃友達じゃなくなってるよ。」




と言ってから、環くんの手をぽんぽんと叩くと、

「……なら、良いんです」

ふんわりと笑って、人混みの方を指差した。


…環君…やっぱり智明に似てる。

似てるのを理由に何か余計な事を言われたりしないかな…。

余計なお世話だろうけど…損はしないよね…。

「環君も…色々気をつけてね。」

と言いながら環君に向けて手を振ると、手を振り返しながら優しく微笑んでくれた。

「うん、ありがとね……松田君。」


松田君…?

松田じゃなくて龍馬でいいのに…って、僕若干智明化してない…?

…智明…、待ってて。



ぐっと体の中心のあたりに力を入れ、人混みをかき分けながら中心にいる智明を見つけに行く。



…不思議だな、クラス表を見に行くときはこんな勇気なんて出なかったのに。


よし、もうすぐ中心だ…智明の金髪が見







「…………!」



名前を呼ぼうとしても、声が出なかった。




智明は、黒髪の男の子の胸ぐらを掴み、

幼馴染の僕でさえも見たことないくらい怖い顔をしていた。



「と……むぐっ…!」

また名前を呼ぼうとすると、口を塞がれ、無理やり智明から遠ざけられてしまった。



「…今あいつの名前呼んだらお前がターゲットになんぞ。」

…晶さん。


「すまん、苦しかったよな。」

「…晶さん……智明…何があったの?」

僕の口を塞いだ事を謝りながら、僕腕を掴み、どこかへ連れて行く晶さんを見ると、腕や脚、よく見たら首のあたりにも包帯が巻かれていた。


「……怪我してるの…?」

「せやで……智明はな、うちのせいであんな荒れてるんや。」

……晶さんのせいって…?


「晶さん…それどういう意味…?」

と、早歩きで歩いている晶さんに尋ねたその時、廊下にいる環くんと目が合った。



環くんは、晶さんを見た瞬間目を見開き、

「…晶……?」と小さな声で呟いていた。


……知り合い…?




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