表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本当の主人公  作者: 正さん
二章
13/87

13話「弱いものいじめ(笑)」




4月24日、火曜日。

授業のための準備をしていると、ふと、何かを必死で探している明人くんが視界に入った。

…どうしたんだろ。


「明人君…?」

椅子から立ち上がり、明人君の席へ向かうと、後ろの方からクスクスと女の子達の笑い声が聞こえた。


……?何だろ…。

「どうしたの?何かあった?」

元々曲がっている背を更に曲げ、ずっと一人で何かを探している明人君へそう尋ねると、震えた声でこう呟いた。


「…僕の…筆箱がなくて…。」

「…?筆箱?」

………なるほどね。

明人君の肩を優しく摩ってから、後ろの方で話している女の子の集団の方へ視線を移動させてみると、僕達からサッと視線を逸らし、またクスクスと笑い出した。


…本当に陰湿だな、もう。


すると、僕たちと女の子達を見て何かを察したのか、智明が女の子達の方へ向かい

「なぁ、お前らなんかしたのか?」

と、尋ねた。

しかし女の子達は「何が?」ととぼけている。



「…見つかるまで僕のペンと消しゴム貸してあげるね。」

俯き、手をぎゅっと握りしめている明人君にそう伝えると、震えた声で

「ありがとうございます…。」と呟いた。



……クソ、許さねえぞあの女共。

…あれ、何言ってんだ…僕。







昼休み、明人と龍を学食に連れて行く前、

「おい、お前ら」

と、教室の後ろの方でたむろってる女グループに話しかけてみると、リーダー的なポジションにいる女が目を輝かせ、こちらに近づいて来た。


「智明!どうしたの?」

「いやさ、明人が筆箱なくて困ってるらしいんだわ…お前ら明人の筆箱見てねえか?」

怒りを隠す為に、出来るだけ明るい声でそう尋ねると、わざとらしく「さぁー?」と首を傾げやがった。

そいつに一歩詰め寄り、

「本当に、知らねえんだな?」

と、いつもより低い声でそう言っても

「知らないってば!」と半笑いで否定される。


…そういうのは知ってる奴がする反応なんだよな。


リーダー格の女から目を逸らし、他の女を見てみると、その中の一人の女がゴミ箱を見ながらくすくすと笑っている事に気付いた。

…まさか。


ゴミ箱を覗き込むと、アリスのアクキーがついた筆箱が、埃まみれのゴミ箱の中に捨てられていた。

…これ、多分…明人のだ。

このアクキー…龍馬と交換した明人の宝もんじゃねえか…。


筆箱を拾い上げ、埃を手で払い落とす。

すると、俺の行動で気が付いたのか、明人がこっちに来た。


「明人…これ、お前のか?」

と尋ねると、筆箱を手に取り、唇を強く噛み締めてからゆっくりと頷いた。

「……大丈夫か?」

そう問いかけながら明人の背を優しく撫でると、シャツが濡れていることに気付いた。

……今日は雨降ってねえし…。


………典型的なやつか。

まだ4月だぞ、馬鹿じゃねえの…。

「…そのシャツ濡れてて持ち悪いだろ、俺のジャージ貸してやるからそれに着替えろ、いいな。」

明人の背をポンポンと叩きそう伝えると、首を振り、か細い声で「大丈夫」と呟いた。


「大丈夫じゃねえだろ…。」

…確かに…こういう状況だったら拒否したくなっちまうよな。

「どうせ迷惑になる」とか「巻き込んでしまう」とか考えちまうか…。

んー……どうしたもんか…こういう場合は放って置くのも一つの手だけど、身体が冷えちまうしな…。


と悩んでいると、後ろでたむろっている女達の笑い声が聞こえた。

…クソが。


そいつらの前に立ち、

「お前らは明人が気に食わねから笑えるんだろうけどさ?明人が大好きな俺らからしたらクソほど笑えねえよ。」

と言うと、そいつらの顔が引きつった。


「…生活指導の先生怖えから注意されたくねえだろ?…だからもうこんな事すんのやめろ。」

後頭部を掻きながらそう言うと、リーダー格の女が明人をギロリと睨んでからゆっくりと頷いた。


「……それならいい!おい龍!明人!飯行くぞー!」

女達から顔を逸らし、いつも通り二人に話しかけると、明人が小さい声で

「…ありがとうございます。」と呟いた。


「…気にすんな、早く気付いてやれなくてごめんな。」

「いえ…気にしないでください…。」

「…また何かしてきたらすぐ言えよ、俺らが守ってやるから。」

明人の肩を抱き、そう言うと

「はい……借り、できちゃいましたね。」

と笑いながら言った。

…ちょっと元気出たか、良かった。


「だな!将来万倍にして返せよ?」

と、明人の顔を覗き込み、いつもより高い声で言うと、クスクスと笑った。


…何でこいつが女子に気に入られないのか分かんねえな…。

嫉妬みたいなもんか?








食堂に到着し、隅にある四人がけのテーブル席を取る。

ラーメンを運び、明人の頼んだサンドウィッチの隣に置くと、ふとバイトのことを思い出した。

やっべぇ…今の今まで忘れてた…。


「そういえばよ、俺今日からバイトする事になったんだ」

と言うと、龍馬が少し驚いた顔をしてこう聞いて来た。

「そうなんだ…どこのお店?」

「駅ん中にあるラーメン屋、あそこの店長と俺の親父が仲良くてさ、俺さえ良ければ働かないかって言われたんだ」


と説明すると、龍馬が頷き

「そうなんだ!今度二人でいこっか!」と明人に話しかけた。

明人は龍馬の言葉を聞いて嬉しそうに何回も頷いてる。

…前より仲良くなったんだ、良かった。


「じゃあお前らが来るまでにバイト慣れとかなきゃな!かっこ悪いとこ見せたくねえし!」

「じゃあ今日行こ!」

「おい、話聞いてたか、慣れるまで来んなって言ってんだよ。」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ