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マンホールに落ちて異世界へ行ったら異世界からマンホール上空に出た話

作者: SEASIDE海
掲載日:2018/06/17

2019/03/02 後書き追加。

俺の名前は、鈴森すずもり まどか15歳の男子高校生だ。

自分で言うのもなんだが、ごく普通のどこにでもいる高校生だ。

15年間、普通に平和に暮らしてきた。これからもそうだと思っていたんだ。

あんなことに、なるまでは・・・。


事件は、登校途中の通学路で起きた。

俺は、友達から借りた小説を読みながら、歩いていた。

「はぁ~小説の中は良いよな~。俺もモテたいよ。」

物語に夢中で気が付かなかった。

今、足の下には蓋のしていないマンホールが、あることに。

ふわっとした浮遊感にやっと本から顔を上げると、コンクリートの道路が目の前で上空に飛んで行った。

いや違う、俺が地面に落ちたのだ。


「ふngyaaaaぁぁァ!!!」

上を見上げると、暗闇に浮かぶ一つの丸く青い空が見えた。・・・とても、綺麗だった。

俺はガクッと、意識を手放した。



しかし、突然のまばゆい光に目を覚ました。


「ん?なんだここは!?」


俺はどこかの上空を勢いよく落ちていた。

ヒュー―――

ずぅど~~~~ん。


両足で着地してしまった俺は、両足を木っ端みじんに骨折してしまった。医者じゃないが、絶対骨折している。

あまりの痛さに、言葉も出ない。そのまま、地面に倒れた。

だが、足はつながっている。五体満足だ。

あの高さから、骨折だけで済んだのは奇跡だ。


しばらく俺は横になりながら、痛みに耐えていた。目の前に生えていた草を、むしりながら。


「はぁはぁ。なんか、少し落ち着いてきたぞ。しかし、ここはどこだ?」


俺の周りには草、草、草、草草草草草草草しか生えていない、だだっ広い野原だった。

ここは天国なのだろうか?そんなことを考えていたら、どこからともなく声が聞こえてきた。


「大丈夫ですかー?」

「あっあなたは?」

「私はこの世界の研修中の女神リラです!よろしくおねがいします!」


金髪碧眼に白い天使の羽をもった美しい女の子が空から舞い降りた。俺の足の上に。


「うgyぁぁああぐp!!」

「あっ、ごめんなさい。まさか、こんなところに足があるなんて!今治してあげますねぇ~。」


そう言って、俺の足に治癒魔法をかけてくれた。この世界では、魔法が当たり前なのだとか。

俺は異世界に来てしまった。内心、ガッツポーズをキメていた。こういう世界に憧れは少しはあったから。


「すっげ~!全然痛くない。あの、本当にありがとうございます!」

「いえいえ、気にしないでください。元々、私が開けた異次元の穴が原因なんで~。」

「へ?」

「マンホールありましたよね?道の真ん中に、蓋のしていないマンホール。あれ、勇者様を呼ぶ練習でして!この世界へとつなげてみたんです!そしたら、あなた様が落ちてこられて・・・まさか人がいたなんて気づかずに。大変失礼しました~!ですが、もしよかったら、こちらで暮らしませんか?あなた様に勇者適正も魔法適正もユニークスキル適正もまったく感じられませんが、これも何かの縁だと思って!どうですかー?」

「女神様も、・・・一緒に暮らしてくれるんですか?」

「うふふ~まさか~。私は天空に住まいがありますから!彼氏も待っているので~♪」


俺の中に、怒りなどはなく、ただ、ただ早く帰りたいっ!それだけだった。


「俺、帰ります。元の世界に戻してください。」

「わかりましたー!では、元の世界に通じる穴を開けますね。」


草しか生えていないところに、1メートルほどの光る魔法陣が出現した。


「では、魔法陣の中へお入りくださいー!」

「女神様、短い間でしたが、貴重な体験をありがとうございました。」


全ての元凶はこの研修中の女神様なんだけど、夢でもゲームでもなく、リアルで異世界に来れるなんて、もう二度と味わえない経験だろうから。礼だけは言っとく。・・・けれど骨折の痛みは、決して忘れないだろう。


「不思議な方ですね。では、あちらの世界でも、あなたに神のご加護がありますように。」



足元の魔法陣が消え、俺はまた落ちて行った。今度は元の世界へと。


そう、異世界に落ちる前のマンホールの上に飛ばされたのだった。


「えええぇぇぇぇぇ!?」


二度目の青い空もキレイでした。

そして、また異世界の上空へ。先ほどの魔法陣のすぐそばで、「あれ?」と頭を傾げている女神様と目が合ったが、俺はそのまま魔法陣へ。


マンホールの上に出て瞬間、俺は両足を左右に大きく開き、落ちるのを防ごうとしたが・・・。


「いってぇえー!!!」


マンホール以上に開こうとしたら、透明な何かにぶつけてしまい、またマンホールの中へ。


9回目の異世界上空にて、俺はあきらめた。このなぞのループもとい、無限滑り台からの脱出を。


突然ポケットに入れていたスマホが鳴った。


「はい、もしもし。」

「あ、良かった~繋がった~。私リアです。ごめんなさい!なんだか手違いで無限ホースを作ってしまったみたいで、見えない壁でつながっているから脱出は無理です!」

「でしょうね!何やってもムリでしたから!」

「ホントごめんなさい~!代わりに、『浮遊感に耐える魔法』と『しばらくトイレに行かなくても良い魔法』をかけておきました!これでしばらく耐えてくださいね?」

「これわざとですか?女神様は天然?それともどSなんですか?」

「いえいえ、真剣です!!でも、どちらかといえばSですかねー。あなた様が最初にこの世界に落ちて来たときに『足の骨折だけで着地できる魔法』をかけたのに、一通り痛みに悶えてから現れたのは、悪魔と天使のハーフの性なのかもしれません・・・。ううっ。」


電話越しに聞こえる泣く声。

しかし、魔法陣に落ちる直前に見た女神様の顔は世にいう『てへぺろ』顔だったので、どっかの神様がこの研修女神を落としてくれないだろうかと真剣に祈った。研修に落ちてしまえ!と祈った。



俺が無事脱出して元の世界に戻れたのは、これから一時間後の事だった。






                                           (完)

♦後日談


 俺の名は鈴森 円。つい先日まで普通の男子高校生だった。マンホールに落ちるまでは。

 通学途中に蓋のしていないマンホールにうっかり落ちてしまった俺は異世界へ飛ばされてしまった。そして、自称通りすがりの自称研修中の女神に出会った。これが地獄の始まりであった。

 研修女神の手違いでこの世界に落ちた俺は、元の世界へ帰してもらえる事になった。だが、研修女神はあろうことか、蓋をしていないマンホールの穴の上に戻しやがった。

 そう、俺はそのままマンホールに落ち異世界へ戻り、魔法陣に吸い込まれるようにして、またマンホールへ戻るを一時間以上くりかえしたのだった。即刻帰りたい俺を無限ワープゲートで弄んだ。俺は確信した。この研修中の女神(仮)は、ドSだということに。無限ループをしているのに全く直す気もなく、女神(仮)はどうでもいい魔法ばかりかけてくる。さらには我慢していたのだろう笑いを隠すことなく腹を抱えながらゲラゲラと笑われた。後半ずっとだ。その時の俺の姿は、腹立たしいので思い出したくもない。

 研修女神クソに弄ばれながらも、昼休みが終わりそうなので帰ります~とかほざきやがった研修女神(鬼畜)からやっとのことで解放されて蓋がされてあるマンホールの上に戻ってきたのは、俺の心身が崩壊寸前の時だった。


「だからよ旦那、オイラに力を貸してくれよ。あのクソ女神をぎゃふんと言わせてぇだろ? 痛い目みせてやりてぇだろ? 」


 だから俺は悟った。普通の生活が一番だと。所詮なんの力もない普通の自分には、普通の暮らしが一番安心するということに。そして、研修女神はさっさと落ちろっ!


「聞いてるかい旦那? あぁ、あのクソ女神のこと考えてるだろ? 心が黒く渦巻いてて気持ちが良いや」


 だから、この様に自称悪魔が天界への復讐の手助けを求めてきても、絶対に耳を貸さず惑わされたりしない。無視だ無視。すべては平穏な日々を守るために。


「やっぱり旦那は、闇の資質が十分にある! 旦那はこっち側のお人だ。だから一緒に天界を乗っ取ってやろう! 旦那のお力なら、天界やら勇者やらはケチョンケチョンでさぁ! 」


 ずっと俺の目の前をウロチョロしながら喋るコウモリは、自称悪魔。ここ数日、取り憑かれている。女神ビッチよりマシだが、正直ウザい。

 俺が異世界に落ちた時、痛みを紛らわすのに無意識にむしった草の真下から抜け出てきたらしい。なんでも、俺がむしった草は聖なる力があり、根や葉に悪魔が触れると気絶してしまうほど効果抜群らしい。さらに大地には結界が張られ、悪魔が地下から地上に出ることも、魔法で草を除草することも出来ずに、長い間封じ込められていたそうだ。

 しかし、俺が草をむしる時に結界ごと取っていて、隙間が生まれたそうだ。この自称悪魔は、結界が自己修復する前に抜け出し、目の前にいた俺の心に逃げ込んだ。悪魔は人の黒い心に潜伏することが可能らしい。大変迷惑きわまりない。悪魔の気配のせいで俺はあんなひどい目に合ったのではないかと思ったが、悪魔曰く、女神は弱った悪魔の気配には鈍感で、気分屋や我ままな奴が多く悪魔より悪魔らしいとか。納得だ。

 だが、あの女神は悪魔とのハーフだと言っていた。その点について聞くと、100年前に悪魔の国まるごと騙して天界と手を組み、悪魔を封印した悪魔がいるそうだ。あの研修女神は、そいつの娘ではないかと。しかし、研修女神は俺に憑いた自称悪魔の存在には気づいていなかったらしい。

 …本当だろうか?あれは悪魔の所業だったぞ。


「…オイラだけが脱出できたくせに、オイラは魔力も旦那の心の闇に頼らなきゃ消えてしまう。自分じゃ、なんも出来ないことが悔しい。女神がいたのに1発かます事もできなかった自分が憎い。このまま他の奴らの思いに報いらねば、悪魔の名が廃るってもんだ。そうだろ旦那? 」


 俺に聞くな。情に訴えようとするな。


「だ~~~ん~~~な~~~~あ~~~~!! 」

「あーうるさい!黙れ! 」


 やかましい自称悪魔に向かって、俺は怒鳴った。今が登校途中で、大通りのど真ん中だということを忘れて。当然、行き交う人々の視線は俺に集中する。自称悪魔は、俺以外の人には見えないのだった。くすくすと笑う声に冷や汗をかきながら、速足で何件か先の路地裏に逃げ込む。周りに誰もいないことを確認し、自称悪魔を両手で思いっきり握る。


「おい、ホント黙れ。そして今すぐ出ていけ。俺は平和に暮らしたいんだ」

「それは無理って話でさ。オイラは残してきた奴らを助けてぇから出ていきたくねぇ。んで、旦那の平和も天界の奴らがこの世界を征服しにくるから無理だな」

「‥‥‥‥は?なんだそれ。お前、いいかげんに」

「嘘じゃねぇでさぁ。魂に誓ってもいい。天界の異世界統一計画は嘘じゃねぇ。オイラたち悪魔が封印される前から天界は動いていた。悪魔はそれを阻止しようとして戦いに負けて裏切られて……封印されたんで。」


 悪魔のくせに真っすぐな瞳で話すので、俺は思わず両手の力を緩めた。


「…もし、その話が本当でも、こっちには魔力はないってお前言ってたよな? ならこっちに来ても意味ないだろ。」

「旦那の言う通り、この世界に魔力はねぇでさぁ。それに、ココとアッチの境界線で魔力が全部吸い取られちまう。天界の奴らも同じだろさ。だけど、オイラみたいに人の中に入り、人を経由して魔力を補うことができたら?人を洗脳して育て上げ、膨大な魔力量を貯めたままこっちの世界に戻されたら?」


 まるで穴だらけだったパズルのピースが埋まりだして、まだ足りないピースもあるがパズルに描かれたモノが何か見えてきた。そんな感じがした。嫌なかみ合せだ。

 悪魔は続けて言う。


「今、旦那の中でのうのうと生きているオイラが、その証拠でさぁ。」



 この悪魔の話は疑問だらけだし、めちゃくちゃな話だ。まだ俺に隠している事もあるだろう。


「人を騙し、地獄に落とすのが悪魔だろ? 」

「旦那…」

「悪魔は信じないし、異世界に俺はいかないし、仲間を助けるのも自分でやれ。けど、お前に仲間を助けるくらいの力がつくまでの期間と、この世界内限定で良いなら手伝う」

「旦那ぁぁぁああ!! 」


 悪魔が勢いよく顔面に飛びついてきて、前が見えないし、翼の角がこめかみに当たって地味に痛い。


「おい、痛い!離れろ!」

「旦那ぁああ!この御恩一生、いや、6代先まで語り継がせて悪魔界の救世主にさせていただきやすううう!! 」

「いらない!いらないから離れろ!あと、口調統一しろっ!」


 号泣するコウモリを引きはがし、大きく振りかぶって大空へ投げた。これから学校なのに、こんな調子だとウザいし、うるさくて授業に集中できない。

 こんなウザい奴を、あのクソ女神は本当に気が付かなかったのか?もしかしたら、天界を裏切ったというのはコイツなのではないか?タイミングが良すぎるしグル説も捨てきれない。手を組んでいなかったとしても、本当に悪魔に手を貸してもいいのか?あとで裏切られたり、クソみたいに弄ばれやしないか?


 俺はため息を吐き、考えるのを諦めて学校へ向かう。もう、俺の想像を超えている。女性に優しく、困っている人を助け、我慢強くどんな困難にも立ち向かっていたあの本の主人公(ヒーロー)は、こんな時どうするんだろ。


 とりあえず、マンホールだけでなく、地獄まで落ちてしまわないように気を付けようと思った。


♦♦


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