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失い失う
暗闇の中で、風が凄まじい勢いで彼女のすぐ横を通って行く。
いつの間にか伸びきった、切りそろえられていない髪が後ろになびく。
目を開ければそこには色のあせた世界が広がっている。
少し前まで心地良く感じていた青空が今では涙のような色に見える。
"あぁ、今か"
風向きが変わった。なびいていた髪が決心したように不安げに流れる向きを変える。足元ではそんなささやかな力に見向きもせず車が走り去っていく。
もう一度だけ彼女は灰色の世界を…いやそのさらに遠くを見つめる。
そして彼女のすべてがなびいた時、
その姿は暗闇へと溶けていった。