試験
まずいぞ、どうする。
翔太は焦りのなかで思考スピードをマックスにした。
ここまでいって断れるわけないし・・・
別に試験が嫌なわけではない。
しかし、最初に月詠をふったときのことを思い返すとかなり不味いことに思えた。
今まで見てきた様子でLv99というこのスキルは身体能力などのあらゆるステータスとそれに相応しいアイテムを所持できるものだと思う。
しかし恐らくこの力は強すぎる。
エルザがこの世界の基準で弱いということでなければ、力加減を間違えると力量を試す試験のはずが即牢屋行きになる。
筆記や住んでいた土地を聞かれてもうまく答えられる訳はない。
どうする。どうすると考えている内に案内されてしまい。訓練施設のようなところに連れていかれる。
あー力量を試す方の『試験』か。
「それでは此方のアーノルド・ステノ試験管の対決していただきます。」
そこでは初老に見える老人が待っていた。
スーツに似た礼装を着ており、風格というか威厳を感じさせた。
「名前をうかがってもいいかね。」
見た目にそった低く優しい声だった。
「工藤翔太です。」
「珍しいなじゃな。工藤君、君は武器は何を使うかな?ここから選んでもよいし、自分のものを使ってもよいぞ。もちろん魔法もな。」
良かった!月詠は危険過ぎる。あれをここで振ったら血の海になってしまう。
「あ、ではこの長剣にします。」
選んだ理由は月詠と長さや形状が似ていたからだ。戦斧や長槍などまともにふれそうもない。
剣を取り出して貰っていると後ろからエルザが近寄ってきて囁いた。
「ただの老人だと侮らない方がいいぞ、引退こそしているが彼は元A3(エーサード)ランクの冒険者だ。」
「A3?」
肉のランクにとてもよく似ているがこの際は気にしないでおこう。
エルザは頷いた。
「各5までの4つランクの中でもA3はかなり上位だ。」
その時、落ち着きを払った声が聞こえた。
「これでよろしかったかな?」
「ありがとうございます。」
長剣を受け取って手に馴染ませる。
そうしている内にこちらを見据える老人の視線の質が大きく変わる。
「これは・・凄いな。」
老人は剣を中段に構え、問う。
「先手を取らせていただきます。」
そのまま痩せた長身をしなやかに屈めると一気に距離を詰めてくる。
老人の武器は長めな細剣でその鋭い切っ先が加速した意識の中、ゆっくりと迫って来ているのが見える。
翔太はその攻撃を軽く飛んで避けると直ぐ様距離をとられる。
「やはり、まだ直感は鈍っていなかったようですね。これほどまでに早いとは。」
少し目を閉じた後、叫ぶ。
「二重強化魔法 速度強化」
老人の回りに沸き立つように魔力のオーラが溢れ、魔法陣を描く。
先程よりさらに早く間合いを詰めると手が先程とは違う光を帯びる。
「これは・・武技!」
「閃光の刺突!」
エルザの声が発動音と重なり、先程の倍ほどの早さで剣が振るわれる。
金色の目映いライトエフェクトが剣を覆っていた。
翔太は更に踏み込みを早くすると軽くその細剣に剣を添えて少し力を込めて跳ね上げさせる。
細剣はそのまま天井すれすれに弧を描き床に突き刺さる。
その輝きが消えるのと老人が我にかえるのはほぼ同時だった。
「な・・なんと言う剣技。」
そのまま姿勢を正す。
「強いとは解っていたがこれ程とは、文句なしの合格だ。」
「ありがとうございます。」
唖然としていたエルザはようやく我にかえる。
「今、魔法強化と武技の相乗効果で剣はとてつもない早さになっていたはず、どうやって。」
翔太としては本来自分の力ではないと言う意識が強いので驚かれても・・・と言うところなのだが。
「試験の結果は私から言っておくよ。後は簡単な手続きだけですむはずだ。」
そしてもう一度こちらを強く見据える。
「君は恐らく。B5ランクから始まるだろう。私二もっと権限があればAにしてあげたいのだがね。
」
そこで、少しを遠くを見るような目になった。
「私が若いときでもそこまでの頂に登ることは出来なかった・・・・君の未来に期待しているよ。」
もう一度礼をすると老人は穏やかに微笑んでいた。
二人が退室して静かになった部屋のなかで老人はそれでもまだ扉の方を見据えていた。
「やれやれ、年はとりたくないものだ。挑戦する気概を失わせてしまう。」
そのまま久しくしていなかった最初に剣技を習ったときにしたような技を一つ一つ使用していく。
確かめていくように
思い出すように
丁寧に