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食卓

前の世界では猪は灰汁(あく)が強く、獣臭さが強い動物だったがこっちではどうなんだろう。

むこうでもそうそう猪の料理なんて作らなかったからな。

まーまずはした処理からか。

結構大変だからなるべく簡略化していこう。


翔太は倒れている猪のところまでいった。


「インベントリ」


ステータスをスクロールして目的のものを探す。


「えーと ここが短剣だからこれか?」


空間に手を突っ込みながら包丁に似ているが見た目が刃の部分が透明になっているものや鍋っぽいものを取り出していく。


「何をしている?」


いぶかしげな声を出しているエルザにむかって


「ここで調理してしまおうかと思って。」


と悪戦苦闘しながら答える。


大型猪(ジャイアントボア)の肉は臭みが強くてあまり喰えたものではないぞ。」


「あーそれは下処理が充分じゃないからだと思いますよ。」


「下処理?」


そう言われてまずこの世界に下処理の概念があるのかどうかわからないのを思い出した。


「まーいいから見ていてください。フレイム」


道中アズリエルに教わった炎をつける魔法を唱える。

包丁(に見た目は似てる短剣)で猪を手早く解体して血抜きしていく。

そのあと肉を投入して水で煮込んでからさらに酒を加えた水で沸騰させる。

しゃべりながらも作業は丁寧に進めていき、様々な工夫を施していく。


「ちゃんとした材料と道具がないからやりずらいな。」


「そんな道具は見たことがないのだが東のものなのか?」


「えーとですね。これは旅の途中の国で見つけた道具なんです。」


このくらいで誤魔化せるか?

結構素早く考えたつもりだったが少し冷や汗をかいてしまう。


「そうなのか。ショウタ殿は珍しい道具をたくさん持っているな。」


冷まして脂を取り除いてから旅の途中に使う予定だったという香辛料などを加えていく。


やはり癖が強いのでなるべく味が強いものを加えていく。

「この世界にもハーブとか塩胡椒はあるんだな。」


最後に特大の串に刺してからもう一度焼いていく。


次第にいい臭いが立ち込めてきたので人が集まり始めた。


「このくらいでいいかな。」


いい具合の色に焼き上がった猪肉を見てみるとやはりかなりの量が作れそうだ。


まぁもとの猪の大きさが大きさだ。


「頂きます。」


手を合わせて言うと不思議なものを見るような目で見られたが気にせずに頬張る。


一気に口のなかに香辛料の香ばしい香りと特有の人の味が大量の肉汁とともにあふれくる。


「おー結構いけるな!やっぱり臭みが残ってて癖があるけど向こうの猪よりもかなり美味しい。鮮度もいいからかな。次やるとしたらこれはシチューかなー。」

まー材料が少ないわりには上出来だろう。


「ひとつもらっていいか?」


騎士団の一人がその食いっぷりをみて意を決したように話かけてきた。


「いいですよ。元々そのために作ったんですから。」


そこで騎士団その2が


「おい、大型猪(ジャイアントボア)なんてくったことないけど猪と味はあまり変わんないだろ?お前猪すきじゃないじゃないか。」


「いや、この臭いはかなり美味しそうだ。試してみたっていいじゃないか。」


そんな二人を間を抜けるようにしてエルザが


「私ももらおう、どんな料理にしろ暑い方がうまいに決まっている。まー早く食べようじゃないか。」


と串を受け取った。

そのままゆっくりと上品に少し口に含む。


こう言うところはお姫様なんだな、などとどうでもいいところに感心していると急にエルザの顔がほころんだ。


「おいしい・・・素晴らしいなこれは!宮廷の料理に負けないぞ。あれだけの材料でよくこれだけのものが作れるな。」


そんなオーバーな感想に後押しされたのか皆が口に串を運んでいく。


「・・・!!」


騎士団全員の後ろに雷が落ちたようだった。


そのまま夢中で食いつくとたちまち食べ終えてしまい、その味の余韻にしばらく浸ったあと口々に感想をいい始める。

「こんな旨いのははじめて食った。」


「これが猪か!信じられん。」


「美味しー」


「もう一本くれないか?」


「ずるいぞ私にも。」


「はいはい、大丈夫ですよ。焦らなくてもまだまだたくさんありますよ。」


そんな風にいって料理の準備をしながら翔太はやっぱり料理っていいなーと痛感する。


人と人を繋いでくれる物、皆が食卓を囲むだけで笑顔になれる。

多分言葉に現せない感情でも料理なら表せるんだと思う。



暖かい風がそんな幸せな光景を眺めるように静かに揺れた。

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