少女の追憶
どうしてこうなったのだろう。
私はある有名な貿易商人の娘だった。
あの日までは・・・・
いつものように遊びから帰ってきた私を迎えたのは絶望だった。
「・・・お母さん、お父さん?」
家の家具は散乱して散らばっており、それとは別の倉庫から持ってきたらしい高級品まで散在していた。
柔らかいビロードの絨毯の上には赤黒い染みが広がっており、そこに横たわっていた両親の眼はガラス玉のように感情が抜け落ちていた。
そこには生気は感じられなかった。
「おい、ガキだぜ。」
「ほおっといていいんじゃねえか?」
野蛮な臭気を漂わせた大人数の男たちが調度品を漁っていた。
口元には下卑た笑みが浮かんでおり手にもつ大振りで鈍い輝きを放つナイフが血で濡れている。
「いや、騒がれると面倒だ。手早く殺しておけ。」
リーダーらしく見える男がそう指示を出すと
「はいはい」
とやる気無さげな声が上がる。
そこの辺りでようやく思考能力を取り戻したキリカが最初に感じたのは怒りだった。
「動くなよ~。追いかけるの面倒だからな。」
そんな言葉も聞かずに近くに落ちていた武器になりそうなものを拾う。
「おいおい、そんなもん拾ってどうするつもりだよ。」
男は少し目を丸くしたが苦笑する。
確かにそれがただの武器であったら男の言う通りまともに扱うことすら出来なかっただろう。
それが妖刀でなければ。
後で解ったことだが私にはたまたま『適性』があったらしい。そもそも普通の人には使いこなせない物であったが。
それは巷では「自分だけの可能性」と呼ばれることも。
最後に見えたのは男の目に映る激情に顔を歪ませる私と自ら発光するように光る紅い眼だった。
気づくと血溜まりのなかにたっていた。
小太刀に付着していた血はそのまま刃に染み込まれ鞘をしていた時にはわからなかった魔力の輝きが覆う。
周りにある人だった何かから目をそらそうとするが体が言うことを聞かない。
「・・・どう・して?」
突如頭の中に声が響いた。
『君の体はいただいたよ。』
「!?」
『しばらく僕を保有できないやつらばかりだったからな。退屈でしかたなかった。』
「誰?」
『今の僕は君さ。』
わからないことが多すぎて混乱してしまった私を嘲笑うように笑った『僕』によって地獄のような日々が始まってしまった。
日々が暗殺とその鍛練のみに費やされる毎日
「なんで・・なんでこんなことするの?」
「なんでって?愉しいからに決まっているじゃないか。」
誰かに止めてほしかった。けれどこの妖刀は強すぎた。
そのまま王国一の暗殺者とまで言われるようになった。
ただ毎日人を殺す瞬間をみせつられる毎日。
ゆっくり諦めが体を蝕んでいき絶望が顔を出した。
そんなある日に出された依頼
「王女の暗殺か~護衛もたくさんいそうだな隙をみてやるか。」
力を持っているにも関わらず妖刀は慎重で狡猾だった。
『昔失敗したことがあったからね。二の舞にはなりたくない。』
王女は無防備にも人気のない路地裏を歩いていく。
いつものように殺してしまうんだ。
そう思って心の中で慟哭しようと体は一行に自由にならない。
とびかかった瞬間、一瞬の奇跡が起きた。
ほんの些細なことだが、支配を打ちきり、涙を流すことができた。
たったそれだけのことだったがそれにより更なる奇跡が連鎖した。
突然現れた男がその刀で妖刀を打ち砕いたのだ。
今まで見たなかでも最速の一閃をもって
私は人を殺しすぎた。
例え、操られていようともこれは事実だ。
不意に意識が覚醒しそうになっているのを感じた。
「!?」
殺してくれていなかったのか。
私はどうなったのか。
たくさんの疑問を胸に彼女は彼女として目を覚ます。




