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魔石の入手方法

「整理も終わったことだし、後はルーナの冒険者協会への登録と、実力確認かな」


「むぅ……私も登録しないと駄目なのか」


「ん? そりゃこれからパーティ組むんだからな。……何か問題あったか?」


 ガチャの排出アイテムの確認も終わったので、椅子に座り直して全員でまた机を囲む。

 そして今日の残りの予定の2つを口に出すと、聞いたルーナが露骨に嫌そうな表情をしていた。

 なんだ? 何か嫌がる要素あったか?


「大倉殿、ルーナを冒険者協会に登録させるのは、一度待ってからの方がいいと思うのでありますよ」


「えっ、なんで?」


「ルーナは見た目が私よりも幼く見えるのに、冒険者に登録なんてできるの?」


 エステルの言うとおり、ルーナの見た目はかなり幼い。人間で考えると10歳前後ぐらいだ。

 そんな娘をパーティーに加えて一緒に魔物を狩る、か。


「うん、無理だね」


 そんなことしたら、俺が街の警備兵さんに捕まって、牢屋へぶち込まれてしまいそうだよ。事案発生だよ。

 俺の世界だったら問答無用で、ちょっと署まで来いって連れて行かれてしまうだろう。紳士力の高い俺ですら、言い訳をすることは困難だ。


「なんだかその反応は腹立たしいな。まあ、登録しなくて済むのならいいが」


 俺がルーナを凝視しながら無理だと言うと、彼女は机に頬杖をつきながら不満そうにしていた。

 だが、冒険者協会への登録をしないことは都合がよかったみたいで、そのことについては何も言ってこない。

 なにかに所属とかするのが嫌いなのかな? うーむ、よくわからん。


「吸血鬼ってことを言えば大丈夫ではないのでしょうか?」


「……どうだろう。というか吸血鬼なんて言って大丈夫なのか?」


 吸血鬼だと教えて、実際に力を見てもらえばいくら見た目が幼くても登録はさせてもらえそうだ。

 だけど、それを言っていいのだろうか? この世界にきてから、亜人――獣の耳や尻尾が生えてたり、耳が長いエルフといったファンタジー的にいそうな種族を見ていない。

 GCには両方いたけれど……この世界にはいるのかな?


「まあどっちみち、一旦情報集めてからじゃないと駄目でありますね」


「うーん……仕方ないか。今日は冒険者協会に登録するのは諦めよう」


 この世界に亜人がいたとしても、どのような立ち位置かわからない。

 迂闊にルーナのことは言わない方がいいかもな。

 見た目は普通の幼女だから、言わなきゃバレることもなさそうだし、余計なことは言わないでおこう。

 それに冒険者になったのは魔石集めのついでに金を稼ぐのと、情報を得るためだった。既に俺達が登録しているし、彼女を無理に登録させる必要はないか。

 予定の1つが潰れてしまったし、今日はルーナの実力を見るだけになってしまうな。


「それじゃあ――」


「待つでありまーす!」


 よっこらっせ、と立ち上がろうとしたのだが、その前にノールが片手を上げて待てと言う。

 なんか久々にこの言い方聞いた気がする。

 

「どうした?」


「ルーナの実力を見るのは、今度にするのでありますよ。本人も日の光はあまり得意じゃないと言っているのでありますし、今日は大倉殿とルーナの部屋の準備もしないと駄目でありましょ?」


「おお、ノールは良いことを言うじゃないか。私、お前のこと気に入ったぞ」


 なんだか今日のノールはやけに待てとか止めろと言ってくる……どれも正論に感じるけど、なんか違和感があるな。

 ルーナは日に弱そうだし、実力を見るだけなら曇りの日とかでもいい。それに部屋の準備をしないといけないのも事実だ。

 これから狩りに行ってから準備をするとなると、ちょっとめんどくさいかも。

 それにしても、ノールが延期しようと言ったらルーナが異様に喜んでいるのだが。

 日の光を避けられる以外にも、何か理由がありそうだな。


「そうだな……今日は部屋の準備だけにしておこうか。ルーナもそれでいいのか?」


「構わない。日の下に出るのは別に苦手って訳ではないが、そこまで言うのなら今日はしなくてもいいぞ。私としても、部屋を整えてもらった方がありがたい」


 両手を組んで、あくまで言われたから仕方なくそうしてやろうという感じで返事をした。

 ルーナも部屋の準備してほしいと言うし、今日の予定はそれで決まりだな。


「正直ここ最近の流れは、私、疲れちゃったのでありますよぉ。狩りの最中何度おうちに帰りたくなったことか……しばらくはゆっくりしていたいのでありますぅ」


「そうよね。お兄さん、しばらくはお休みをもらえないかしら? シスハだって疲れたでしょう?」


「えっ……あっ、はい。私も疲れてしまいましたね、はい」


「なんだ、お前達そんな疲れることをしていたのか」


 話がまとまったところで、ノールが思っていたことを話し始めた。エステルもその話に同意して、休みが欲しいと言い出す。

 シスハは疲れたでしょと聞かれて、別に疲れてないけど……という雰囲気を少し出したが、無言でエステルに見つめられ続け言い直した。

 ルーナは召喚されたばかりなので、首を傾げて不思議そうにしている。

 

 ここ最近の流れか……大討伐、ハウス・エクステンション、ゴブリン迷宮、コンプガチャの強行軍……思い返すとやばいなこれ。

 

「言われてみると、かなりぎゅうぎゅうだったな。気がつかなくてごめんな」


「いえ、そんな謝らないでくださいでありますよ。それにしても、大倉殿はよく平気でありますね」


「あー、まあ、一応男だからね」


 ここまで忙しい状態が続いていたのに、コンプガチャの為に魔石集めをやらせていたのか。……ちょっと考え不足だったな、反省しよう。

 ノールが俺に感心しているけど、そんな感心されるようなことでもないのだが。

 俺が先に音を上げる訳にもいかないから、頑張っているだけだ。精神が肉体を凌駕しているとか、そんな感じに近いと思っていただきたい。


「という訳でルーナ、召喚したばかりですまないがしばらく休みになりそうだ」


「構わないぞ。別に私は戦うのが好きと言う訳ではない。むしろ部屋にこもって暗闇でひっそりしていたいのだが」


「そんな、駄目ですよ! それなら私と一緒に……うぅ、そんな警戒しないでください……」


 これでまた何かやって、休む暇がなくなるのも困る。なので、しばらくはノール達に休んでもらうつもりだ。

 召喚したばかりなのに、何の見せ場もなくて申し訳ないと思ったのだが、当の本人は腕を組んでむふふんと微笑んで嬉しそうにしている。

 部屋にこもって暗闇にいたいって……まさか、働きたくないでござるって考えじゃないよね? いやー、それはちょっと困るぞ。

 そんなルーナにまたシスハが近づこうと立ち上がる素振りをすると、微笑んでいた表情が一変して牙を見せて唸りだした。完全に警戒されている。


「とりあえず、今日はお休みということでいいでありますよね?」


「ああ、今日どころかしばらく休んでくれ」


「ありがとうございます、なのでありますよ。それでありますね……実はここまでは前振りでありまして、今日は大倉殿にお話があるのであります」


「ん? 話?」


 ノールが俺に改めて確認すると、お礼をしながら実は話があると言い出した。

 ここまでが前振りだと……随分と長い前振りだな。それよりノールが話があるなんて言い出すとは珍しい。一体なんだ?


「私とエステルで、今回の狩りの最中に話し合いをしたのでありますよ。ね、エステル」


「ええ、そうね。それでね、お兄さんに考えてほしいことがあるの」


 どうやらノールだけではなく、エステルもその話とやらに一枚噛んでいるみたいだ。

 コンプガチャの強行軍の最中に2人で話し合っていたのか。


「別にいいけど……何の話なんだ?」


「魔石についてなのでありますよ」


「魔石についてだと! ノール、お前もついにガチャについて真剣に考えてくれるようになったのか!」


「ぴゃ!?」


 魔石……つまりガチャについての話だとノールは言う。

 そうかそうか、ついに俺の熱意が伝ってくれたのか。エステルまで同じように考えてくれるだなんて……喜ばしいことだ。

 あまりの嬉しさに、俺は立ち上がってノールの片手を手に取って握り締めた。


「あー、もう! 違うのでありますよぉぉ! ていっ!」


「あんっ!? ……じゃ、じゃあなんだって言うんだよ」


 ノールは叫び声を上げると、パシン、と音を立てて空いた方の手で俺の手を叩き落した。

 なんだよぉ……やっと同調してくれたのかと思ったのに……。


「全く……それででありますね、今回の件で、大倉殿がガチャで追い詰められたらどうなるか、エステルもシスハもよ~くわかったと思うのでありますよ。なので、今後こうならない為の方法を考えるのでありますぅ!」


「ノールがあれほど必死に止める理由がやっとわかったわ……大袈裟だと思っていてごめんなさいね」


「えっ、私は別に平気……あっ、いえ、辛かったです、はい」


 拳を握り絞め、自分の想いを乗せるように熱く語るノール。

 彼女の魔石を集めようという考えは、できるだけやりたくないというのが原動力らしい。楽をする為に頑張る、という感じかな?

 エステルも今回の実体験を通して、ノールがあそこまで取り乱す理由を痛感したみたいだ。

 シスハはよくわからなそうにきょとんとした表情をしながら、平気だと言いかけたが、言葉に出そうとした瞬間ノールとエステルが首をグルりと動かして彼女を凝視した。

 脅かされたようにシスハは縮こまってしまい、うつむいて自分も辛かったと肯定している。

 怖いよ! 怖いよこの空間!


「……なんだか私には関係なさそうな話だな」


「そんなことないのでありますよ。このままだとルーナもいつか大倉殿の沼を体験することになるので、それを事前に食い止める為の話なのであります。実際体験していないから実感が湧かないと思うのでありますが、話だけでも聞いてほしいのでありますよ」


「別にそれは構わないが……それより、ノールの膝にいるのはなんだ?」


「あっ、紹介していなかったでありますね。フォルトゥーナラビットのモフットなのでありますよ」


 この話を始めてから、ずっとつまらなそうにしていたルーナが話に参加してきた。

 彼女は召喚されたばかりだし、記憶があったとしても実際によくわからないのだろう。

 それでも一応話を聞いてくれとノールは言うが、それよりもルーナの興味はモフットの方にあったみたいだ。


「ノール、話を聞いている間抱いてもいいか?」


「いいのでありますよ。優しくしてあげてほしいのであります」


「ありがとう。……おお、名前どおりに毛が柔らかいんだな……可愛い」


 モフットをノールが手渡すと、ルーナは頬を赤らめて嬉しそう抱き抱えた。

 召喚してすぐは冷たい雰囲気をしていたけど、結構可愛らしいところもあるみたいだな。


「ハァァ……ルーナさぁん……」


「シスハ、そろそろ自重しないとやるわよ?」


「ひっ――ご、ごめんなさい……」


 穏やかな気持ちでルーナを見ていたのだが、隣から変な声が聞こえてきたので見てみると、シスハが息を荒くして彼女の方を見つめていた。

 完全に変態だ。お巡りさんこいつです、って言われてもおかしくない。

 しかしそんな変態も、エステルが無表情で人差し指から電気みたいなのを飛び散らせ脅すと、悲鳴を上げて大人しくなった。

 これが超えちゃいけないラインという奴だ。これ以上やったら、エステルのマジ切れが飛んでくるのでもうやらないだろう。


「あー、んんっ……で、魔石の話ってなんだ?」


「あっ、ごめんなさいであります。それでありますね、話というのは魔石の集め方についてでありますよ」


「集め方?」


 なんだか話が逸れてしまったので、魔石について何の話があるのか聞き直した。

 魔石の集め方……? 今更集め方なんて何か話す余地があったかな?


「今までは私達だけで集めていたでしょ? でもそれだと限界があるし、私達も辛いじゃない? だから、他の冒険者達からも魔石を集められないかって思ったの」


 代わってエステルが話し始めたが、どうやら俺達以外の冒険者達が狩った魔物からも魔石を集めることができないかということだった。

 でも考えるほどなのか? 単純にパーティ組んで一緒に戦えばいいだけじゃないの?


「そんなのパーティ組めばいいだけじゃないか?」


「そうじゃなくて、一緒に戦っていない時にも魔石が手に入らないかって話よ」


 ……ん? 意味がわからないぞ? 一緒に狩りをしていない時にも魔石を手に入れる?


「どうやってやるんだよ? 魔石の現物が出てくる訳じゃないんだぞ」


「だから、それを私達で考えようって話なのでありますよ。そもそも、今まで私達は試そうとしたりしなかったのでありますよ」


「魔石がどうやって手に入るのか。それを詳しく考えたことなかったじゃない? 条件さえわかれば、さっき言ったことも可能だと思うの。だから、今日はそれについて話し合いましょう」


 魔石は魔物を倒した時、俺のスマホに自動的に入ってくる。

 今まではそれが当然だと思っていたので、勝手にそういうものだと思っていた。

 だが、ノール達の言うように他の冒険者が狩った魔物からも魔石が手に入るようになれば、もうあんな強行軍をしなくて済む可能性がある。

 しかしどうやってやるって言うんだ?


「条件って……希少種を倒せば手に入る、ってだけではないのでしょうか?」


「それは手に入る条件の1つね。確実にわかっているのはそれぐらいかしら」


「それ以外にも何か条件があるっていうのか?」


「他にもわかっていることは、離れた場所で希少種を倒しても、魔石がお兄さんのところに入ることぐらいね。でもおかしいと思わない? なんで私達が倒してるのに、離れたお兄さんのところに入るのか不思議よね?」


 ゴブリン迷宮までは、離れて狩りをするということはなかった。

 だが、迷宮のおかげで離れても魔石が手に入る事実に気がついた。

 その経験があったからこそ、今回離れて狩りをしようという発想に繋がったんだ。

 単純に希少種さえ倒せば手に入ると思っていたが、魔石獲得に関しては他にも何かあるかもしれない。


「それは俺達がパーティを組んでいるからってだけじゃないのか?」


「私達に関しては、大倉殿が召喚したからって可能性も考えられるのでありますよ。だからパーティだからそうなっているのか、わからないのであります」


「もしパーティだからって話なら、それを上手く利用して、私達と一緒にいない冒険者が魔物を倒しても魔石が手に入るかもしれないのよ? 条件を探るのは十分やる価値があるはずよ」


 言われてみれば、俺が召喚したからノール達が倒した魔物の魔石が手に入るって可能性もあるのか。

 それとパーティと言ってはいるけど、そもそもスマホにパーティ編成をする項目などない。勝手に自分達でパーティだと思っているだけだ。

 それでもノールや俺のバフの効果は適用されているので、間違いなくパーティとして認識はされている。

 もし魔石がパーティだから手に入るっていうのなら、上手く使えば一緒に狩りをしていなくても魔石が手に入るってことも可能なのか。

 なるほど、それはたしかに考えてみてもいいかもしれない。

 まだまだ確認しないといけなかったことが色々とあるんだな……。


「大討伐の時に確認しておけばよかったのだけど、お兄さん確認していないでしょう?」


「……ああ、していない」


 ディウス達と一緒に戦った時に確認しておけばわかったのだが、もちろんそんなことしていなかった。

 あの時はそんなこと考えもしていなかったからな……くそ、早く気がつくべきだったな。

 でもあの時、ディウス達にもバフはかかっていたのでパーティ扱いにはなっていたはずだ。

 もし今後他の冒険者に頼ることがあるかもと考えると、そのことについてちゃんと検証しておく必要がありそうだ。


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