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迷宮の終わり 

 ずっと追ってくるベヒモスから俺とシスハは逃げ続け、何か切り抜ける方法がないか考える。逃げるだけならば、脱出装置があるので可能だ。

 しかしノール達を置いていくという選択はできない。1回外に出て、もう一度転移場所まで行って転移して合流するという手もある。

 だがそれで同じ場所に行ける保証もない。外でノール達がここを攻略して、戻ってくるまで待つという手もあるが……それは最終手段だ。


「どうするんですか! あれ倒さないと、前に進むことも、後ろに戻ることもできませんよ!」


「俺だって考えてるんだよ! くっそ、何か、何かないのか……あっ、待て、使えるのあるかも!」


 あれこれ色んな案が浮かんだが、結局ベヒモスをどうにかしないと駄目だと考えた。

 そして……あった。あの魔物をどうにかする方法が、俺の持っているアイテムの中にあったんだ。


「なんですかそれ!」


「マジックダイナマイトにマジックブレードだ! 防御無視付加だから、あの膜も切れるはずだ!」


「でも、攻撃するには近づかないと! あれどうやって止めるんですか!?」


「俺が受け止める! そしてこれを、あのゴブリンが入った膜の中にぶち込むんだ! HP8000程度なら、全部爆破すれば倒せるはずだ!」


「えっ、でも……」


「平気だ! あいつの攻撃力なら、受けても即死はない! 心配するな!」


 白い筒のような持ち手のマジックブレードと、緑色の長細い棒状の物を3つバッグから取り出す。

 ずっと使い道がなくて仕舞っていたけど、今回はこれが使えるはずだ。


――――――

●マジックダイナマイト

MPを消費することで着火される。

着火後数秒で爆発し、約3000相当のダメージが発生する。

取り扱い要注意。実体化後はお早めにお使いください。

――――――


 あの膜を防御無視のブレードで切り裂いて、このダイナマイトを中に入れれば即死するはずだ。普通に攻撃したら、8000でも削り切るのに数発は必要になる。

 ベヒモスの上に乗って、そんなに攻撃をする余裕もないと思う。だがこの方法なら、一瞬動きを止めた間にやればいける。

 突貫ってスキルも持っているみたいだし、それをやられる前にやらないとまずい。ミノタウロスみたいに加速してきたら、追いつかれる。やるなら早い方がいい。

 それにこういうのは勢いでやらないと、決断が鈍りそうだ。


「よし、やるぞ! 回復とダイナマイトぶち込むの、任せたからな!」


「わっ、わっ!? ちょっと!? 大倉さん待って――」


 なので俺は、取り出したアイテムをシスハに渡した。逃げていた体を反転し足を止め、ベヒモスを受け止める為に身を構える。

 攻撃力4500を受けるなんて、正直足が震えそうだ。痛いよあれ、絶対痛いから。

 だけど俺の防御は4000は超えており、さらにシスハの防御付加もあるので死ぬことはないだろう。


 身構えてすぐに、地響きを鳴らしながら向かってくるベヒモスの巨体が視界に入る。めちゃくちゃでかい。

 まるでダンプカーが向かってくる目の前で、立ち止まっているようなものだ。

 ベヒモスが腹の底に響くような咆哮をし、俺を跳ね飛ばそうと突っ込んできた。


「――ぶふっー!? あっ、ちょ、シスハ、早く――シスハ、やってくれ!」


「もうっ! あなた馬鹿なんですか!」


 頭から突っ込んできたベヒモスに、鍋の蓋を最初に叩きつけて、その後両手で止めるように押さえつける。

 接触の瞬間、全身がバラバラになるんじゃないかって思うほどの衝撃が、俺の全身を駆け巡った。そしてこんな巨体の一撃を抱え切れるはずもなく、突っ張った足がずるずると後ろに下がっていく。

 だけどこれで、少しだけだが動きを止めることができた。

 

 シスハの罵倒するような声が聞こえ、俺の体を光の粒子が包み込む。全身の痛みが和らいでいく。

 受け止めている俺には見えないが、彼女が動いてくれているみたいだ。

 早く終わってくれと願いながら、必死に俺はベヒモスを鍋の蓋で受け止めた。ここで吹き飛ばされる訳にはいかないので、足を踏ん張って今までにないぐらい必死にだ。

 

 夢中でベヒモスを受け止めていると、やっと俺が願った爆発音が部屋に響いた。シスハがこいつの背中に登って、上手くゴブリンにダイナマイトをぶち込んだようだ。

 受け止めていたベヒモスは、爆発音と同時にその動きを止めた。


「アイタタ……なんとか終わったか」


 完全にベヒモスの動きが止まったことを確認して、俺は地面に尻餅をついて座った。ベヒモスとの衝突で、俺の心臓はバクバクと激しく鼓動している。そのせいか体が熱く感じ、自然とヘルムを脱ぎ捨てた。

 改めて目の前のベヒモスを見ると、こんな化け物相手に正面から迎え撃つなんてよくできたなと、自分で感心する。

 ノール達がいたなら多分、こんなことしていなかったと思う。俺とシスハだけしかいない状況で、どうにかしなきゃという気持ちが、俺をこんな強行に走らせたんだな。


 動きが止まったベヒモスは、少しして巨体全てが光の粒子となり、牙と角と皮のような物を残して俺の目の前から姿を消した。

 予想した通り、あのゴブリンと連動していたみたいだ。エステルがいたら、あのゴブリンを狙い撃ちして瞬殺できたんだろうな……。もしベヒモス単体で出てきていたら、もうどうしようもなかったなこれ。

 

 輝いていた壁の光が収まって、入り口と出口を塞いでいた壁が下に下がっていく。あれがボスだったみたいだ。

 ようやく終わりか……長かった。これで安心できるな。


「大倉さん」


「おっ、シスハお疲れ。いやぁ、ホントよくやって――ふごっ!?」


 座り込んでいたら、シスハが俺の名前を呟いて歩いてきた。

 彼女はホント良い仕事をしてくれたよ。いつもは神官じゃないとか言っていたけど、今回はそんな動けるシスハに助けられたようなものだ。

 2人で掴んだ勝利を喜び合おうと、彼女に声をかける。だが彼女からの返事はなく、俺の前に微笑みながらしゃがむと、片手で両頬をわし掴みにされた。


「なんで私の言うことを聞かずに、あんな無茶をなさったのですか? どうぞ、私が納得できる言い訳をお聞かせください」


 微笑んでいるけど、目が笑っていない。お、怒っているのかこれ?

 罵倒されるのならまだいいが、妙に丁寧な口調なのが逆に怖い。

 

「だ、だっちぇ、他に方法なかっちゃ、だろ? あにょままじゃ、どうなりゃか、わかりゃなかったし……」


「だからってあんな無茶を……いきなり向かっていくんですもん。驚いて心臓止まるかと思いましたよ!」


 確かにあの時は怖気づく前に、勢いでやったことは否定しない。

 だけど、あのまま逃げていてスキルを使われてもやばかったし仕方なかったと思う。

 微笑んでいた彼女は、眉をひそめて怒鳴りながら俺の頬から手を離した。


「ぷはっ、わ、悪かった。でも、シスハが回復してくれるって思っていたからさ。一緒にいてくれなかったら、こんな大胆なことできなかったよ」


「あー、もう! そういうこと言うのは、ズルイですよ! 勇気があることと、無謀なことをするのは違うんですからね! 次こんなことやったら、あれ握り潰しますよ!」


 実際シスハがいなかったら、あんなことしないで脱出装置で逃げていたかもしれない。回復魔法で支援してもらえるってだけでも、俺としては精神的に安心できた。

 そのことを言うと、彼女は頬を赤くしてさらに怒鳴る。

 あ、あれってナニを潰すって言ってるんだ……次やることになったら、ちゃんと許可貰わないと駄目かな……。



「で、これはどうなんだ?」


「うーん……怪しいですよね」


 開いた通路の先に進むと、前に迷宮で見た鉄っぽい大きな扉があった。

 考えたくもないが、この先にも罠があってまた戦いになるかもしれない。そう思うと、ちょっと先に進む気がなくなるよ……。

 

「でも中に入らないと始まりませんよ」


「だよな……入るしかないか」


 せっかくあれを倒してここまできたんだ。このまま引き下がるのはな……。

 前にスライム見た時みたいに、チラッと覗いて進むか決めよう。

 鉄の扉を押して、ギギっと音を立てる扉を開いて中を覗いた。


「あー! 大倉殿!」


 扉の先は、全ての壁が真っ黒で照明のような物で照らされた狭い場所だった。そしてそこには、ノールとエステルがいた。

 彼女達は扉を開く音を聞いて警戒していたのか、こっちを見て武器を構えている。

 俺の姿を確認すると、ノールが嬉しそうな声を出してこっちへ走ってきた。


「おお! 無事だっ――ぶげっ!? ちょ、ノ、ノール……」


「もうっ! 本当に心配したのでありますからね! ぎゅってしたいのでありますよ、ぎゅーって!」


 安全が確認できたので、俺達は中へと入った。ようやく彼女達と合流できたので、俺は胸を撫で下ろす。

 走ってきたノールが俺の所へ到達した瞬間、俺に抱き付いてきた。少しドキッとしたが、抱き締められた鎧がミシミシと軋む音がして俺は戦慄する。

 こ、こいつどんだけ力込めて抱き締めてやがるんだ!? 鎧がなかったら、体が砕かれていそうなぐらい強いぞ!?


「ノール、お兄さん困っているから止めなさい」


「あっ、も、申し訳ありませんなのであります……」


「あ、ああ、いいんだ」


「お兄さん大丈夫だった? 怪我はしなかったの? 寂しくて泣いたりしなかった? シスハに変なことしなかった?」


「俺をなんだと思ってるんだ!」


 エステルに制止されたノールは俺を解放した。思わずだったのか、ちょっと声に恥じらいがあるように感じる。

 入れ替わるようにエステルが来て、頬に手を当て首を傾げて俺に声をかけてきた。

 最初は心配しているような言葉だったが、だんだんおかしなことを言っている気が……。


「お2人とも無事のようで、なによりでありますよ!」


「ノールさん達もご無事でよかったです」


 シスハも彼女達の姿を確認できて、安心しているみたいだ。

 だけどさっきまでの様子とは違い、また猫被りモードに入っている。


「ノール達はだいぶ前からここにいたのか?」


「そうなのでありますよ」


「なんでこの扉入る前に連絡してくれなかったんだ」


「色々あったのでありますよ……」


 それから彼女達の方で起こったことを聞くと、俺達とは違った感じだったようだ。

 あっちはオークも混じっていたみたいで、通路が迫ってきたり、石が落ちてきて追いかけ回されるよう罠が数多くあったらしい。

 そして逃げる勢いのまま広場に到達して、ボスを倒した後ここにきたとか。

 言われてから彼女達がいた奥の方を見てみると、確かにもう1つ扉があった。


「でも、一応入る前にトランシーバーで連絡を取ろうとしたのであります。だけどいくらかけても、大倉殿が出なかったのでありますよ」


「俺の方に通知来てないな……その時点で通話が遮断されていたのか」


 ある程度の時点で、連絡が取れないように電波を妨害されたのか? この迷宮、俺達みたいなのがくるのを想定して作られているよな?

 入り口とか急にできたような不自然さを感じるし……なんだか怖い。


「まあ今回は全員無事に済んでよかった。これからの迷宮攻略の練習にはなったな」


「敵が弱くて助かったけど、本当だったら危なかったのよ? そこはちゃんと反省してね、お兄さん」


 分断系の罠があることもわかったし、もっと注意して迷宮の攻略をしていこう。

 これが王都にある迷宮だったら、無事に合流なんてできなかったかもしれないし。

 次は脱出装置を全員に持たせて、いつでも逃げられる準備だけはしよう。

 そうなるともっとガチャを回さないとな……。


「それで……この先は何があるんだ?」


「この部屋には何もないみたいでありますが、奥の方に何かあるのでありますよ」


 俺達が来た方の扉と、ノール達が来た方の扉から進んで中央辺りにさらに奥へ続く道がある。

 この場所では魔物が湧く様子もないみたいだし、どうやらここがこの迷宮の最深部。

 むふふ、こういう所にはお宝があるのが相場だよな。こんなに苦労したんだ、それなりに良い物があるだろう。


「へへっ、やっぱりダンジョンときたら、最後はお宝がなくっちゃな」


「なんだか、悪巧みしているような声をしているのでありますよ」


「欲丸出しね」


「はぁ、さっきは少しカッコいいと思ったのですが……やっぱりいつもの大倉さんですね」


 手を揉みながら俺が笑っていると、それを聞いたノール達に白い目で見られた。

 えー、こういう時ぐらいは喜んでもいいと思うんだけどな……。


「なんだこの台座?」


「手を乗せたりは……違うみたいでありますね?」


 奥へと進んで行くと、そこに宝箱などはなく細い支柱に乗った台だけがあった。

 透明の長方形の板がその上に固定されている。その部分にノールが手を乗せてみたが、何の反応もない。

 お宝でもあるのかと思ったのに、あるのは台座と意味不明の板だけ。せめて攻略報酬があればいいのだが、スマホにはなんの通知もきていない。


「ねえお兄さん。これって、スマホをここにかざせってことじゃないのかしら?」


「んー? 確かに大きさ的にはそれっぽいけど……」


 エステルに言われて、俺は板にスマホをかざした。すると板が輝いて光が溢れ出し、スマホの中にへと吸収されていく。

 しばらくして光が収まると、スマホが振動して画面に何か表示される。


黒化 (ニグルド)を解除いたしました】


 ん? 黒化? なんだこれは? それに解除って……どういうことなんだ?

 なんのことかよくわからないので、確認しようとスマホをいじろうとした。

 だがその直後、部屋全体が揺れ始め足元に魔法陣が出現する。


「うおっ!? ま、まさかまた罠か!?」


「今度はちゃんと皆集まるのでありますよ!」


 また別々に飛ばされたら嫌なので、今度は全員身を寄せて腕など掴み固まった。

 そして最初に転移されたように視界が光で染まっていく。


「ん……ん? あれ?」


「どうやら、今度は外に飛ばされたみたいですね」


 凄まじい光に目を瞑っていたが、すぐに光も収まり目を開く。視界に入るのは、俺達が迷宮に入る前にいた森の木々。

 今の転位は罠ではなくて、迷宮から帰してくれる為のものだったみたいだ。何気に親切なんだなこの迷宮。


「これは攻略完了ってことなのか?」


「そう思っていいと思うわ。ほら、あれ崩れているもの」


 エステルが指差す先を見ると、そこには土が崩れて小さな山ができていた。あそこは迷宮の入り口があった場所だ。

 崩れてるってことは……もうこの迷宮入れないのか!? えっ、ちょっと!


「あっ、あー!? お、俺の魔石回収計画がぁー!?」


「あの状況で、そんなこと考えていたのでありますか……」


「まあいいじゃないですか。今回だけでも、かなり回収できましたよね?」


 シスハに諦めろと言われたからキャンプは諦めたが、それでも効率はかなりよかったはず。なので転移する部分までいかずに、また狩りにこようと思っていたのに。

 まあ今回の狩りで魔石の総量は764個まで増えた。今日1日で手に入った分と考えれば、十分過ぎる程の量だ。


「むぅー……そうだけどさ……ん?」


「あら、もしかしてまた何か通知がきたの?」


「おお! やっぱり大討伐と同じで、攻略すると報酬があるみたいだ! えーと、魔石に、SSRコストダウン。それと……は?」


 この迷宮がなくなったのはちょっと惜しいが、全員無事に終わったんだし今回はこれで満足しておこう。

 もう日が落ちて辺りも暗くなっていたので、帰ろうとスマホを操作しようとした。その時、スマホがバイブレーションして通知がくる。

 このタイミングということは……攻略報酬か! ずっと来なかったからないのかと思ったが、どうやら外に出た時点で判断されたらしい。

 ウキウキ気分で通知を見ると、【迷宮達成報酬:魔石150個、SSRコストダウン】と表示された。

 そしてさらに、大討伐の時と同じくガチャの開催告知もあった。

 だが、【迷宮達成記念、――ガチャ開催!】の表示を見て、俺は言葉を失い手からスマホを落とす。


「わわ、大倉殿! 落としちゃってどうしたのでありますか? えーっと、コンプリートガチャ開催、でありますか?」


 スマホが地面に落ちる前にノールがキャッチして、俺の代わりにそれを口にした。

 コンプリートガチャ……GCに存在していなかった禁断のガチャの名を。

●【戦乙女】ノール・ファニャ    

レベル 51→63      

HP 6120→6670

MP 1560→1800

攻撃力 1500→1740

防御力 795→915

敏捷 169→193

魔法耐性 40

コスト 13

●エステル

レベル 46→59

HP 1230→1490

MP 2240→2630

攻撃力 735→995

防御力 295→360

敏捷 18→20

魔法耐性 40

コスト 22

●シスハ・アルヴィ

レベル 40→54

HP 1550→1900

MP 1800→2150

攻撃力 550→760

防御力 350→560

敏捷 45→59

魔法耐性 20

コスト 20

●【総長】大倉平八

レベル  50→62

HP 1360→1600

MP 390→510

攻撃力 585→765

防御力 525→705

敏捷 94→114

魔法耐性 10

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[良い点] コミック版と違っています。 コンプが成功する。 [気になる点] コミック版では、謎の敵が出現。トンビに油揚げになる。ルーナ召喚が失敗するかもと心配だった? [一言] 平八カーニバルが早い…
2021/12/19 14:29 第六天魔王
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