表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/408

物件選び

 アイテムガチャを回した翌日、朝食も終えて今日の予定を話し合うべく机を囲んでいる。


「とりあえず今日は家の購入を検討しようと思うのだが……各自どんなのが良いか希望を言ってくれ」


 昨日最後に出た家を買うという話。確かに自分達の持ち家があれば色々と便利だとは思う。

 家さえあればビーコンを街の外に隠す手間と移動がなくなるし、ガチャ産の物を出すのも気を使わなくて済む。

 今後さらに仲間は増えるだろうし、今から準備しておいてもいいか。それにハウス・エクステンションを試してみたいし。

 今は一応全員仲が良いし嫌がっていないからいいが、1人部屋がいいと言う奴が出てくるかもしれない。

 ノール達だって本当は個人的な部屋が欲しいだろう……俺も自家発電を安心できる場所でやりたいし。

 俺だけの考えで決めるのも駄目だと思うので、まずは全員の意見を聞くことにしよう。


「私はなんでもいいのでありますよ」


 ノールは即答で平然と答えた。これは何も考えていないというか、丸投げだろう。

 なんでもいいとは一番困る回答をしやがって……。まあ俺も正直あんまり考えがないんだけどな。元の世界じゃ家を買うなんて夢の話だったし、まさかこっちで先に買うことになるとは思っていなかった。

 

「そうねぇ……ハウス・エクステンションがどんなのかわからないし、広い家ならいいんじゃない?」


「それとできれば冒険者協会が近い場所がいいのではないでしょうか?」


 エステルは頬に手を当てて、考える仕草をし少しして答える。シスハはその考えに付け足す形で口を出す。

 彼女の言うようにできるだけ広い家の方がいいのだろうか。まあ普通に考えたら人数がこれから増えるとわかっているんだから、広い家の方がいい。

 だがハウス・エクステンションで拡張できることを考えると、狭くてもいい気はする。どんな風に拡張されるのかわからないのでなんとも言えないけど。

 それと冒険者協会に近い方がいいか。冒険者協会は王都の南側にあり、王都の奥へと続く表通りに面した場所にある。

 その近くとなると相応に値段も高くなるだろう。


「うーん……広い家に冒険者協会が近い場所か。結構難しいかもしれない」


 そもそもここは王都と呼ばれる街だし、家を買うにしても相当高いと思う。

 あの周辺は店も多くて商業地区、繁華街と言ったところだ。この世界が何を基準に値段を決めているのかは知らないが、多分あの辺は高いだろう。

 広いという条件も入れるとなると、結構覚悟しないと駄目かもしれない。


「とりあえず不動産屋にでも行って相談してみようか」


 考えていても始まらないし、まずは不動産屋に行って聞いてみることにしよう。聞くだけならタダだし。

 ……不動産屋なんてあるのかな。



 宿屋の店主に不動産屋があるのか尋ねると、あるというので早速場所を聞いて行ってみることにした。


「お兄さんと2人でお出かけなんて、これが初めてよね?」


「えっ、そうだっけ?」


「えぇ、そうよ。買い物に行く時だって、ノールかシスハが一緒にいるでしょ? 2人きりだなんて初めてよ」


 全員で行くわけにもいかないので、付き添いにエステルを連れてきている。

 3人の中で1番意見を聞くには良さそうだからだ……むしろ俺含めて1番まともなんじゃないかと思う。

 2人だけで行くことが嬉しいのか、笑顔で横を歩いている。俺の服の裾を掴んでトコトコとだ。

 最初は気が付かなかったが若干俺の歩く速度が速く、無理して付いてきていたようなので今は合わせて遅くしている。

 そういえば大討伐の時も歩く速度が遅くて1人遅れていたな。もっと早く気が付くべきだったか。

 普段は思うことを遠慮なく言うのに、こういう時は全く言ってこないんだよなぁ。


「いらっしゃいませ」


 不動産屋に到着し、早速中へ入ると男性が出迎えてくれた。感じの良さそうな雰囲気。短い金髪のイケメン。

 この世界は基本的に美形が多く、改めてそれを認識するとなんだかため息が出そうだ。


「あの、家の購入をしたいのですが」


「はい、どのような建物をお求めでしょうか?」


 机に案内されて、エステルと俺が並んで椅子に座り男性が向かい側に座って対面する形で話を始める。

 どのようなか。さっき彼女達と話し合ったこと言えばいいのかな?


「あっ、えっと……とりあえず冒険者協会が近い場所ので……」


「それと一戸建てがいいのだけど、いい場所はあるかしら?」


 俺が自信なく口を開いたが、途中でエステルが付け足して答えてくれた。

 あー、一戸建てとかそういうのがあったか。ハウス・エクステンションを使うなら集合住宅は駄目だな。


「あの辺りで一戸建てとなりますと……最低でも大体7000万Gからとなりますね」


「な、7000万G!?」


「ちょっと予想以上ね……」


 7000万Gだと……しかも最低で。今俺達が持っている手持ちは金貨390枚に大銀貨が50枚。それに銀貨や銅貨がボチボチとある程度で、大体4000万G。

 この世界に来てからそれほど大きな金額の買い物もせずに、消耗品や宿代程度しか使わないので貯まりやすかった。

 元の世界じゃ課金しまくっていて貯まらなかったが、この世界はガチャが魔石で済むので金は生活する為にしか使っていない。

 それでもまだ半分超えた程度……これはローン返済するしかないか? それとも金を稼いで一括払いできるまで貯めた方がいいのか?

 数ヶ月程度でここまで貯まっているのはかなり早い方だと思う。スティンガーの甲殻を大量に買い取ってもらえたのが大きいな。

 今は俺が市場に流し過ぎて買い取り額ちょっと下がっちゃったけど。

 俺達なら普通の冒険者と違って、ドロップ品の持てる数に制限がないので相当早く金を稼げる。多分集中してやれば1ヵ月ぐらいで1000万はいけるだろう。


「それとどのぐらいの広さをご希望でしょうか?」


「えっと、4人以上で住もうかと思っています」


「となりますと……9000万G以上はかかるとお考えください」


 ぶっ、軽く2000万上乗せされた……。こりゃちょっと甘く見過ぎていたか。

 俺とエステルは顔を見合わせる。そして机の下でエステルが両手の人差指を交差させて、バツ印を作っていた。

 うん、これは駄目だな。今回は話だけ聞いて帰ろう。

 


「という訳で帰ってきました」


「はぁ、まさかあんなに高いとは思わなかったわ……」


 あの後他の物件などの話も聞いたのだが、門から近い立地にある場所でも最低1500万G以上と言われた。

 冒険者協会の近くでその値段なら良いかなとも思うが、わざわざ遠い場所を買うのも後悔しそうだ。

 事故物件的なのないかなと思ったが、そんな物もなかった。

 エステルもあそこまで高いとは思っていなかったのか、ため息をついてちょっと疲れた雰囲気をしている。


「それでどうするのでありますか? 今後はお金を貯めるのを目標に狩りをするのでありますか?」


「いや、エステルと話し合って考えたんだが、ブルンネに行こうと思うんだ」


 エステルを一緒に連れて行ってよかったよ。 俺1人だったらとりあえずそこで……とか1500万Gとかの所を買っていたかもしれない。

 買うのを断念し、彼女と話し合って考えを変えることにした。まずは安い家がある街で購入し、そこでハウス・エクステンションを使うということだ。

 消費系なので使ってしまったらもう使えない。だから本当なら本命の家を買ってから使ってみたい。

 しかしいきなり高い家で使うよりは、安い家で試してどうなるか見た方がいいだろう。ガチャで次いつ出るのかわからないけど……7000万Gの家とか買って失敗したらショックが大き過ぎる。

 まあ家の中に設置して狩場へ即行くっていう理想が遠のくが仕方ない。レムリ山に行った時ビーコンを試したが、思ったとおり距離の制限があった。

 なのでブルンネから王都までに中継を置いておかないといかんな……ビーコンもっと欲しい。


「ブルンネ? 私が呼び出される前に行った場所でしょうか?」


「あぁ、そうだ。シスハだけブルンネに行ったことないし、丁度良い機会だろうから行ってみようか」


 シスハを呼び出したのは王都に来た後なので、ブルンネと聞いて首を傾げている。

 俺も今じゃ王都にいる期間の方が長いのだが、最初に行った街なのでちょっと懐かしい気分だ。

 

「まずハウス・エクステンションがどんなのかわからないし、安そうな家がある所で試してみてからでもいいだろう?」


「そうでありますな。大倉殿1人でいかせないでよかったであります。ヘタレて適当なの買ってき――ふっ!」


「あっ、この野郎!」


 ヘタレと言われまた頬を抓ってやろうと思い手が出たのだが、その前に腕を掴まれ止められた。

 クッ、やり過ぎたせいで対応されるようになったか。ノールもなんだかんだ俺のこと理解してやがる……。


「むふふ、いつまでもやられてばかりの私ではないのでありますよ! 大倉殿が頬を抓ろうとするのは想定の範囲内!」


 ノールが勝ち誇ったようにニヤニヤとしている。ムカつくので手を引っ込めようとしたのだが、思いっきり握られている手はビクともしない。

 というかなんだか握る力が強くなってきてい――アタタ!? ちょ、ちょっと待て、お、折れる~!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ