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達成報酬

 大討伐を終え、その日の内にシュティングへ向け移動を始めた。ノールは案の定動けなくなったので俺が背負いながらの移動だ。

 そんな彼女にどうしたんだとディウス達が心配していたが、半日もすれば動けると言い落ち着かせた。

 エステルも帰りは頑張って歩くと言うので歩かせたのだが、途中でやはりバテたのでシスハが俺の代わりに背負った。

 コボルト相手にあれだけ暴れ、さらにエステルを背負いながらも普通に動けるとは……。もう回復魔法が使えるというのがおまけなんじゃないかと思ってきた。

 

 そしてその日は暗くなってから野営をして、次の日の夕方にシュティングへと帰ってきた。

 俺としては本当ならビーコンで即帰りたかったのだが、それをする訳にもいかない。

 大討伐達成記念であるアイテムガチャは今日からスタートなので、なんとか我慢したのだ。ディウス達の前でスマホ出してガチャしていたら怪しいからな。俺頑張った。

 もうそのまま宿へと帰りたいと思っていたけど、報告をしない訳にもいかないので冒険者協会へときている。


「おかえりなさいませ、ディウス様、大倉様。コボルトの討伐はどのようになりましたか?」


「なんとか終わったよ……はぁ、色々と疲れた」


「なんかすまないな」


 協会へ入ると、ウィッジちゃんが出迎えてくれた。行った時と違い、協会内の冒険者達は少なく感じる。

 他の所でも大討伐の兆候があるとか言っていたし、同じように討伐に行った人が多いのかな? 知らない人ばかりだが、同じような目にあっていると思うと無事に帰ってくることを祈りたくなるよ。

 ディウスはとても疲れたようにため息をついている。なんだか悪い気がして謝ってしまったぞ。


「エステルちゃん達……想像以上とかそんなレベルじゃなかったよ……」


「あら、あなただって良い腕していたわよ?」


「ん~! ありがとう!」


「っん……だからいきなり抱き付くのは止めてもらえないかしら……」


 ミグルちゃんが落ち込んだように下を見て呟いていた。だがエステルが褒めた途端、顔を上げて彼女に抱き付いている。

 ぎゅうぎゅうに抱き締められてちょっと苦しそうだ。

 それにしてもミグルちゃんはそんなにエステルが好きなのか。まあ確かに可愛いから抱き締めたくなる気持ちもわからなくはないけど。


「……シスハ、今回は礼を言うぞ。あなたの支援魔法と回復でいつもより多くの痛みを受けることができた」


「お喜びいただけたのなら良かったです。私もたっぷりやれたので楽しかったです。次同じような機会がございましたら呼んで下さいね」


「……もうヤダこの人達」


 シスハとガウスさんが笑顔でお互いに握手をしている。見ているだけなら良い雰囲気だが、言ってることがおかしい。

 こっちはなんかやばい人達の集まりだったようだ。スミカちゃんも近くにいるのだが、何もない壁を見ながら現実逃避をしている。

 そういえばスミカちゃんって、なんだかんだガウスさんの近くにいつもいるよな。案外仲が良いのか……ちょっとどんな関係なのか気になっちゃう。


「大倉殿、またお世話になってしまい申し訳ないのでありますよ」


「いや、俺を助ける為に使ってくれたんだから謝る必要ないぞ。むしろ使わせて悪かったな」


 そんなやり取りを眺めていると、横にいたノールが声をかけてきた。

 俺が背負って移動したことに対してなんだろうけど、助けてもらったのは俺の方だから気にしなくてもいいのだが……。

 

「えっと、お取り込み中のところ申し訳ないのですが、お聞きしたいことがあるのでよろしいでしょうか?」


「あっ、はい」


「今回の集団の核はやっぱりコボルトロードでしたか?」


「はい、そうでしたよ。これがロードを倒した時に落ちたドロップアイテムです」


 ノールと話していると、ウィッジちゃんに声をかけられた。今回の集団の核がコボルトロードだったかの確認のようだ。

 なので拾ったロードの冠と槍と赤いマントを取り出す。彼女はその中から赤いマントを手に取った。ロードの討伐証明はマントのようだ。


「やっぱりそうですか……大倉さん達に行っていただけて本当によかったです。申し訳ありませんが、こちらは証拠として少しだけ預からせていただきます」


「僕も今回は一緒に来てくれて助かったと思っているよ。僕達は足手まといだったかもしれないけどね……」


 ウィッジちゃんとディウスは胸を撫でおろし、本当に良かったと感じているようだ。

 その後ディウスはなんだか落ち込んだように呟いている。彼が足手まといなんて言ったら、後ろに敵討ち漏らしまくり槍で無様に弾き飛ばされた俺はなんなのだろうか……。


「そんなことないぞ。ディウス達が守ってくれなきゃ、エステルが満足に魔法を使えなかっただろうしな。シスハが戦えるといっても、あの数はさすがに抑えきれなかっただろう」


「そう言ってもらえると少し気持ちが楽になったよ……ありがとう」


 俺がディウスにそう返事をすると、少し笑いながら彼も返事をした。

 初めてあんな数を相手に戦ったが、彼らがいたおかげで後衛がやられるという不安がなくなり精神的にだいぶ楽だった。やっぱりパーティが多いのは良いな。

 ロードは迷宮にもいるらしいし、もっと安定した戦いができるように仲間を増やしたいな。

 次はどうか盾役がきてくれると嬉しい。空を飛んだり地面を転がるのはもう体験したくないよ。

 


 冒険者協会で報告を終え、宿へと帰ってきた。

 今回の依頼の達成報酬は俺とディウスが1250万Gをそれぞれ貰えたよ。

 コボルト達のドロップアイテムはそれなりに証拠として拾ってきたのだが、全部は持ってこれなかった。

 バッグに入れればなんとかなったかもしれないが、それをやったらバレるので持てる数だけ持って帰ることしたのだ。

 ディウス達が報酬金を半分なんて受け取れないと言っていたが、一緒に戦ったんだからとなんとか受け取らせた。代わりにロードのドロップアイテムは貰ったけどな。

 黄金の槍がロマン溢れていて地味に欲しかったから、これだけでも満足だわ。

 

「あー、やっと討伐が終わったな!」


「そうでありますね。それよりも、なんだか大倉殿テンション高くないでありますか?」


「……これはガチャね」


「ガチャ? どういうことですか?」


 そう、ようやく宿に戻ってこれたのでガチャが引けるのだ。

 今回は0時にガチャをできなかったのは残念だが仕方ない。今は夕方なのでまだまだ余裕があるが、ここまで待ち遠しかったぞ。

 俺のそんな様子を見て、エステルがガチャだと気が付いた。なかなか勘が鋭いな。

 彼女達にはまだガチャのフェスティバルが来たことを教えていない。どうせ後で言うからいいやと流していた。


「そこに気が付くとは……エステル、やるじゃないか」


「ふふ、私の趣味はお兄さんウォッチングだもの。お兄さんのことは大体わかるのよ? あれをした後なのかも、顔を見るだけでわかるんだから」


「あれってなんなのでありますか?」


「聞くな! あとそんな趣味は今すぐ止めなさい! いや、止めてくださいお願いします」


 えっ、何、お兄さんウォッチングって? 狩りに行かない日もエステルは俺の近くにいることが多かったけど、もしかしてずっと見る為だったのか?

 しかもあれをした後ってナニをした後の話だよ!? そんなこと把握されるのは困る、止めてほしい。

 知らない人から見たらとても可愛らしい笑顔で俺を見ているが、俺からしたらその笑顔がとても不安に感じる。

 俺が土下座をして止めてくれと言ったが、彼女はニコニコしたまま特に何も言わない。無言の拒否って奴か……。


「ま、まあそんな訳で、ガチャのフェスティバルが始まったので引くぞ」


「どんな訳でありますか……それよりいつの間に始まっていたのであります?」


 このままだと変なことを言われそうなので、強引に話を逸らした。

 ノールが若干怪しんでいるが、とりあえず話に乗ってきたからいいだろう。


「大討伐達成記念とか書いてあったな。そういやなんか変なアイテムも一緒に貰ったわ」


 結局あれって大討伐まで発展していたのか? 達成とあったから大討伐だったと思うんだがわからん。

 それとアイテムガチャ以外にも、魔石50個とSSRのアイテムを貰っていたはずだ。

 さっそくアイテム欄を開いて、貰ったアイテムを確認してみる。


――――――

●SSRコストダウン

対象のコストを1下げる。

使い切りなので選択は慎重に。

――――――


 これは……どうなんだ? 1下がっただけじゃあんまり使えないのだが……。

 複数手に入るのなら長期的に見たら良い物だと思うけど。


「うーん? 魔石と同じようにこの世界で大討伐みたいな、一種のイベントをやればこういうのが貰えるってことなのか?」


「また大討伐やるんですね!」


 大討伐と聞いてシスハは喜んだ声をあげる。いや、そこは喜ぶところではないと思うの。

 それにしても魔物を倒したら魔石がスマホに入るように、この世界で何か条件を満たせば魔石以外にも手に入ったりするのか?

 例えば迷宮なんかはあからさま過ぎるぐらい何かありそうだし、あそこも制覇したら何か貰えるかもしれない。迷宮以外にもそういう場所がないか探してみるのもありだな。

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