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ブルンネの街

 冒険者であるグリンと商人のラウル。

 2人を助けた俺達は彼らと同行しブルンネの街へと向かっていた。

 馬車には荷が積まれているので、俺達は徒歩である。


 何故グリンさんだけしか護衛を連れてなかったのか、同行中ラウルさんに聞いた。

 どうも急な商品の運搬が有り、すぐに護衛に出れるという人間がグリンさんしかいなかったようだ。

 馬車も1台だし平気だろうと油断していたところに運悪くあの軍団に襲われたとか。

 普段なら夜に襲ってくる事は無いそうだ。

 ……もしかして俺達がゴブリンを倒したから探しに出てきたとかじゃないよな?

 

「ノール、おんぶしてくれぇ……」


「何情けないこと言ってるでありますか。ほら、きびきび歩かないと出荷するでありますよ」


「そんなー」


「あんたら……随分と仲が良いんだな」


 ノールとじゃれ合っていると、グリンさんが呆れた顔をしていた。

 それにしても仲が良いか、うーむ。まだ召喚して1日しか経っていないが、確かになんとなく馬が合うと俺は思っている。

 彼女がどう考えているかは知らんけど。というかノリが良いからなんでも付き合ってくれる感じだ。


「もうそろそろブルンネに着きますよ。頑張ってください大倉さん」


「はぁい……」


「昨日あんだけゴブリンを一方的に屠った奴とは思えないな」


 馬車を運転しているラウルさんも困った顔で俺に声をかけてきた。

 慣れない靴や鎧を着て二日間の長距離移動は、現代っ子である俺には死ねる程にきつい。

 ゴブリンを狩ったのはほぼ装備の性能なんですよ、グリンさん。

 多分俺のステータス自体は平均的……なはずだ。

 


「今回は本当にありがとうございました」


「いやぁ、こちらこそ街にまでご同行させていただきありがとうございました」


 それから数時間後、俺達はブルンネの街へと到着した。

 街は俺の背丈の倍以上は有る数m程の壁で囲まれていた。

 壁の外には堀があり、橋を渡って中に入るようになっている。

 入り口には門兵がいたが、俺とノールはラウルさんの護衛だということで軽い手続きなどするだけで簡単に中へ入れた。ラウルさんに感謝しなければな。

 お互い礼を述べ終えると、もしなにか用があったら商会へ来ていただければ力になると言い残しラウルさんは商会へと向かって行った。

 

「さて、俺も行くとするかな」


「グリンさんはどちらへ?」


「ここの冒険者協会だよ。ラウルさんの護衛も終わったし報酬の受け取りだ」


 そういえばラウルさんと別れる時に、彼は何か紙を受け取っていた。多分依頼終了の証明書だろう。

 じゃあな、昨日はありがとよ、そう言い残してグリンさんも歩いていってしまった。

 なんだろう、街に着いてすぐに解散はなんだか物悲しい気持ちになるな。


「ふぅ、ようやく人の居る場所へ着いたな」


「そうでありますなぁ」


 街に建つ家は赤いレンガ造りで、道も同じレンガが敷き詰められなんだか街全体が赤く見える。

 今はもう夕暮れ時で、なおさら赤い街だ。

 人が絶えず右から左、左から右へと流れああ街だなーっと感極まる。

 2日ぶりの人並みは思った以上に恋しかったようだ。

 街行く人は大体白人系。近くを通る人が俺を見てくるのは気のせいだろうか。

 見た感じ皆金髪とかで黒髪は全然いない。

 俺が珍しいのか、隣にいる白銀の女騎士様が珍しいのかどっちなんだ。


「まずはドロップアイテムの換金をして資金作りでもするか」


「お金ならアイテム欄に入ってるでありますよ?」


「まあそうだけど一応換金してどれぐらいになるか確かめたいしな」


 この世界のお金の単位はGだ。ラウルさんに聞いたところ、銅貨10、大銅貨100、銀貨1000、大銀貨1万、金貨10万、という感じで分類されている。

 1Gはないのかと気になったが、存在しないのでそんな細かい値段自体設定しないそうだ。

 ラウルさん達を助けた時のものと、その前から拾っていたドロップアイテムで既にノールの袋はパンパン。

 もう少し大きい袋が欲しいところではあるな。


「いらっしゃい」


「すいません。ドロップアイテムを売りたいんですがいいですか?」


 無精髭を生やしたおやっさんが俺達を出迎える。

 ドロップアイテムは雑貨屋で売れるらしいのでそこに来たのだ。

 うむ、確かに服やら小物やら色んな物がごった返している店内だな。

 今回持ち込んだアイテムは、オークの牙2個、ゴブリンの牙15個、棍棒2本、オーク肉が1つだ。

 オークを倒した後、大物でありますよー! とか言ってノールがブロック肉を抱えてきたのにはびっくりしたぞ。

 こんなものまで落ちるのかよ。


「おう、見せてみろ。どれ……オークの牙が2000にゴブリンの牙は7500。それに棍棒2000にオーク肉が2000だ。全部で1万3500Gってところだな」


「それじゃあそれで買取お願いします。あっ、あと大きめの袋と適当な服貰えますか?」


 買取を終えた後、俺とノールの服を1着ずつ購入しておいた。

 寝る時までそのまんまの服なんて嫌じゃん?

 彼女は特に服など気にしないようで俺と同じ無地の物を購入していた。

 袋もついでに買い、全部で3000G程の消費だ。


「さて、換金も済んだし今日は宿でも探すか」


「それはいいでありますな! できれば食事の美味い所がいいのでありますよ!」


 そろそろ日が沈む時間だ。それにまだ今後の予定も決まっていない。

 まずは落ち着ける場所を見つけないとな。

 通行人に良い宿はないか聞き、道行く先で場所を教えてもらいながら宿へと向かった。


「いらっしゃいませ。お2人様でしょうか?」


「あっ、はい。そうです」


 宿に着くと若い女性が出迎えてくれた。

 一階は食事処なのかテーブルが並んでいる。

 女性に促され、カウンターに置いてある紙に名前を書き込む。

 言語の書のおかげで読み書きの方は問題ないみたいだ。


「えっーと、じゃあ2部屋借りたいのですが空いてますか?」


「はい、それなら……」


「待つでありまーす!」


 一泊2000Gなので、2人分借りようとした。

 しかし、その前にストップがかかる。

 突然だから受付の女性も驚いているじゃないか。

 一体なんなんだ?


「お、おう。どうしたノール?」


「2部屋も借りたら無駄なお金が掛かるので、2人部屋を借りるのがいいと思うのでありますよ」


 ……こいつ正気か? 男女一緒の部屋がいいなど普通言うだろうか。


「いや、それはちょっと……」


「大倉殿は嫌でありますか? 私はおはようからおやすみまで一緒にいるつもりであります」


 それはそれで怖いのだが……。

 しかし、確かに今の手持ちは心許ないし無駄遣いは避けたいな。

 2人1部屋にすると3000Gで済むのだ。

 俺は美少女と一緒の部屋なら大歓迎だし、本人がいいと言うならいいか。

 うん、意思を尊重してあげるのは大切。下心ない。


「うーん、じゃあ2人部屋でお願いします」



「うーむ」


「どうしたでありますか?」


「あぁ、ステータスとか確認していたんだよ」


 食事を終えた後自分の部屋に戻りスマホを見ていた。

 ノールは俺の近くまで来て、一緒に画面を覗き込んでいる。

 顔が物凄く近い。一瞬どきりとしたが、ノールだしなぁ……と思うとすぐにその気も失せた。

 少し一緒に行動しただけで、なんか男女の意識が無くなっている気がする。

 こいつも多分そういうことはなにも考えてないだろうし、俺も毒され始めているのかもしれない。

 最初のワクワク感を返して欲しい。


 まあそのことは置いといて、ようやく落ち着いたのでスマホを確認していたが、ユニットの確認ができるということはステータスが見れるということに気がついた。

 能力が数値化されるのは変な感じがするなぁ……自分のHPこれしかないのかと思うとちょっと怖いぞ。

 

 ――――――       

●ノール・ファニャ    

レベル 4        

HP 1500

MP 110

攻撃力 330

防御力 255

敏捷 61

魔法耐性 30

コスト 15

固有能力

【戦姫の加護】

 出撃時、全ユニットの攻撃力、防御力が30%加算される。

スキル 

【鼓舞】

 1分間全ステータスが2倍に上昇する。再使用時間:1日


●【団長】大倉平八

レベル 3

HP 690

MP 55

攻撃力 215

防御力 155

敏捷 26

魔法耐性 10

固有能力

【団長】

 出撃時、全ユニットのステータスが10%加算される

スキル

 【称号変更】

 称号を変更する事で、固有能力が変化する。

 ――――――

 

「やっぱりノールは凄いな。俺のより遥かに強いじゃないか……」


「むふふ、もっと頼ってくれてもいいのでありますよん。私のいる間は、大倉殿の安全を保障するのであります!」


 うーん、とんでもない能力値だ。やはりURユニットなだけはあるな。

 凄いと言うと、ノールは胸を張って腰に手を当てむっふんとしていた。あのヘルムの下絶対ドヤ顔している。見ていると、なんだか無性にヘルムをぶん取りたくなってくるな。

 

 次にステータス欄をスクロールしていくと、現在使っている装備が表示される。 


 ――――――

 ●レギ・エリトラ  

攻撃力+2000     

魔特効+100%

敵行動速度-50%

 ●アル・ラキエ

防御+2000

魔耐性+100%

状態異常無効

 ―――――― 

 

 レギ・エリトラは剣、アル・ラキエは盾だ。

 これ考えた運営の奴は頭がおかしいと思う。

 本当はこの2つ、ガチャで当てる専用UR装備なのだ。

 それが今回は最初からノールに付属している。

 こんな装備があるせいで、GC内で廃人同士の殴り合いはマジでやばい。

 俺が参加したら即軍団が蒸発するぐらいには差があったからなぁ。

 魔特効付いてるし、魔物相手ならこれ実質攻撃力4000オーバーだぞ。

 残りの防御1500は鎧の分だろうな。これは特に効果付加はない鎧みたいだ。


 そして次に俺の武器を見てみると……。


 ――――――

●エクスカリバール

攻撃+490

行動速度+50%

●鍋の蓋

防御+250

 ―――――― 


 うん……これ強いのか? バールと鍋の蓋とか見た目最悪なんですけど。

 俺とノールの差が実力だけじゃなく装備にまで……悔しいです!

 

「はぁ、2日続けて歩きっぱなしで疲れたわ。今日はもう休むとするか」


 なんだかドッと疲れが出てきた。

 はぁ、もっと良い装備が欲しいな。

 それにしても、ガチャを引く為の魔石はどうやって回収するんだろうか。

 これに関してはノールも知らないと言っていた。

 予想するとこの世界の金と交換辺りが妥当か?

 しかし交換所みたいな項目はない。


「明日からはどうするかなー」


「それなら、冒険者協会に行くのはどうでありますか?」


「なんでそんな所……まさか俺達も冒険者になるってことか?」


「そうなのでありますよ。大倉殿はこれから私以外にも従える者を増やすのでありましょう? 安定した収入源の確保は必須なのでありますよ」


 確かにこのままじゃいつかは金が無くなる。

 また魔物を倒してドロップアイテムを集めることになるならいっその事冒険者になるのもありか。依頼に魔物退治やらあるだろう。

 またガチャを引いて他のキャラも出て来たら、さらに金が必要になるから稼ぐ方法は確保しておかないと。

 それに俺のレベルを上げて、コストを上げないと1人しか出すこともできない。

 一応元の世界へ戻る手段を見つけるつもりではあるが、そうなると色々な所行ったりして調べたりしなきゃいけないこともあるだろう。

 そのためには戦力を確保しなくてはならないな。死んだら話にもならんし。


「あーそうだな。そうしようか」


 ノールの言葉に同意しておくことにした。

 彼女は満足そうに頷くと、お風呂に行ってくるでありますよ! っと行ってしまった。

 ああ、そういえば風呂あったんだっけここ。


「まさかとは思ったが……そこまでして素顔を隠すのか」


 しばらくしてノールが帰ってくると、白銀の鎧を脱いで今日買ってきた無地の服を着ていた。

 ほぉ、鎧を脱ぐとなかなかどうして……出る所はしっかり出て締まる所は絞まっている良い体してるなぁ。

 素顔を隠す為なのか着けているアイマスクのような物で全てが台無しだけど。

 どうやら彼女愛用の顔を隠す物らしい。ちゃんと前は見えるそうだ。

 そこまでして隠すなんて、よっぽど見られたくない理由があるのだろう。

 ここは男として、追及しないでおいてあげよう。


「当然でありますよ。乙女の素顔は簡単には晒さないもの。見せろと言われても断固拒否するぅ! でありますよ」


「乙……女? ふっ」


「なっ、鼻で笑われた!?」


 そりゃねぇ。ノールが乙女なんて、某掲示板だったら大草原が構築されている事案だ。

 アイマスクで怒る姿はとても間抜けで、それを見て俺は腹を抱えて笑った。

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[気になる点] 命助けたのにお礼に金も何も無しか?さすがに頭おかしいだろ。初っ端これとか読む気失せるわ
[良い点] ゲームの世界にきている感がいいです
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