プレミアムなチケット
イラストを戴いたので、活動報告の方に掲載いたしました。
アステリオスを狩ってからさらに十数日が経過した。
結局あれからも変化なく、北の洞窟でさらに狩りをしたまに他の狩場に行く感じだ。
北の洞窟の魔石狩りの効率が良過ぎるせいで、なかなか離れることができないな。
「大倉さん、どうぞ。エステルさんはこちらですよね?」
「おう、ありがとう」
「ええ、ありがとう」
シスハが机に飲み物を置く。俺とエステルが頼んだ物だ。
こうやって宿でゆっくりとしている時、何かと俺達の世話を彼女はしてくれる。
普段はこんなに気を使ってくれて優しいのに、なんで戦闘になるとああなるんだろうか……。
戦闘以外にも稀に変な時があるけどさ。
「むふふ~」
「ノール、食後に寝転んでいたら牛になるぞ」
「むぅ、大丈夫でありますよ。私は食べても太らない体質なのであります」
「あら、それは羨ましいわね」
食事を終えた後だったのだが、俺達は椅子に座ったままでノールはモフットを撫でながらベッドに寝転んでいる。
エステルが羨ましいとか言っているが……今でも軽過ぎるぐらいなのに気にしたりするのか?
下手に聞くとやばそうなので、この辺りの話題を話すのは止めておこう。
「それで今日も北の洞窟に行くの?」
「んー、そうだな……」
またガチャが来た時の為に魔石を貯め、今は420個ある。まだ少ないが一応ある程度は引ける数だ。
突然イベントが来た時に引くことはできるが……さて、どうしたものか。
それにしてもホントこのGCガチャ酷いよな。運営している奴がいるのなら、文句言ってやりたくなるぞ。
しかし前の33連を6回でUR2個出てるのならまだ良い方か?
そんなことを考えていると、突然ポッケの中のスマホがバイブレーションした。
これはまさか……。
「ん? ……こ、これは――痛っ!」
画面を見た俺は驚きのあまり、足を跳ね上げ机に足をぶつけた。
ちょっと興奮し過ぎたか。
「ど、どうしたんですか大倉さん!?」
「あら、ガチャかしら」
「ガチャでありますか」
突然騒ぎ始めた俺に驚くシスハ。
そんな彼女とは違い、ノールとエステルは呆れた感じで俺を見ている。
スマホを見て俺が騒ぎ始めた時点で勘付いたみたいだな。
「あ、あぁ……ガチャにはガチャなんだが、どうやら今回はちょっと違うみたいだ」
またフェスティバルなのかと思ったが、予想を裏切り違うものだった。
【ご利用大感謝記念! 11連ガチャ初回のみSSR以上確定プレミアムチケット付き!】
なんて表示が画面にデカデカと表示されている。
「プレミアムチケット……でありますか?」
「へぇ~、おまけなんて付けるのね。案外親切なガチャみたい」
彼女達が画面に近寄り覗き込む。そして聞き覚えのないチケットというものを見て首を傾げている。
GCにはこんな物なかったはずだ。まさかこんなおまけを付けてくれるなんて……神運営ですわ。
文句言ってやるとか思ってすいませんでした。
「これは良いな! 11連引けば無料でSSR以上が確定で出るチケットだぞ! こりゃ回すしかないわ!」
「無料……?」
「ノール、もう手遅れだから突っ込みは止めた方がいいわよ」
ん? なんか俺変なこと言っただろうか?
まあいい、今はチケットの方が重要だ。
これは前回のピックアップと違い、SSR以上が確定。つまりURが出る可能性は十分ある。
11連1回でこれなら引かなきゃ損だな。
「これがガチャなんですか?」
「あら、そういえばシスハはまだ経験なかったわね」
「はい。それと……なんだか大倉さんの目が血走っていて怖いです」
「いつものことなので心配しないでいいのでありますよ」
遅れてシスハが恐る恐るスマホを覗き込んできた。
確かに彼女を出してからまだガチャを回していなかったな。次の時はシスハにも回させてあげないと。
俺の目が血走っているとか言っているが、そんな訳ないじゃないか。
思考はいつにも増してクールだ。目が冴えて心臓の鼓動がいつもより大きく聞えるぞ。
「まあいいや。とりあえず回してからガチャをどうするか考えよう」
「回した後に考えるってそれもう事後でありますよ!?」
何か言っているが、もはや回す覚悟が完了している俺は止まらない。
こんな射幸心を煽るような物出されたら、回すしかないじゃないか!
画面に宝箱が映し出される。宝箱は、銀。銀で止まった。
【Rぬいぐるみ、R食料、R布の服、R銅の鎧、R鉄の剣、Rブーツ、R丸太、Rポーション×10、Rバール、Rキャンドル、R薄い本】
うっわ!? これグロだ。完全にグロ画面だよ。
見ているだけで精神力が減っていく爆死だこれ!
で、でも、俺にはプレチケがあるんだ。この程度の爆死で気絶するような俺ではない。
「うっ、ま、まあ、プレチケがあるしな」
「見事な爆死でありますね」
「いつものことね」
「これが爆死というのですか。こうやって私も出していただいたのですね」
11連を終え、トップページに戻りガチャ画面にまた入ると11連の横にプレミアムチケットを引く項目が追加されている。
「よし、じゃあプレチケいくぞ」
チケットの方をタップすると、いつもの宝箱の画面が表示された。
宝箱が輝き、銀、金、白、虹。虹色で止まる。
よっしゃ! やはり俺は運に恵まれているようだ。
ふふ、まさかここでURを手に入れてしまうなんて。これでユニットだったら一気に迷宮攻略にまで進めるかもしれない。
期待を高め、俺は画面進め中身を表示させた。
【URノール・ファニャ】
「ちっ、またノールか……え?」
……ん!? ちょっと待て、ノールだと!?
えっ、同じユニットって出るのこれ? 一瞬そのまま済ませようとしたけど、これどうなるんだ。
「大倉殿……いくら私でもその言い方は傷つくのでありますよぉ……」
「ちょっとお兄さん。その言い方はあんまりじゃないの? ノールに謝りなさい」
「そうですよ大倉さん! さすがの私でもちょっとドン引きです!」
俺がまたノールか、と残念そうに呟いたせいで彼女はそれを聞きしょんぼりとしていた。
エステルとシスハがそのせいで怒っている。
やばい、この2人を同時に怒らせるのは俺の命がやばい。
「えっ、あっ、ごめんなさい」
俺は彼女の前に行き土下座をした。
いつものようにダブったせいで言ってしまったが、ノールの気持ちを考えたらとても失礼な言い方だ。
さすがに今のは酷すぎたか。
「というかちょっと待て、本当に今のはすまないと思っているけど、それより突っ込むべきことがあるだろ!?」
失礼なことをしたことは後でさらに謝罪するつもりだ。
しかし、今の状況をおかしいとは思わないのか?
彼女達に聞いてみても、お互いの顔を見てなんのことかわからないと言いたそうな顔をしている。
「いや、ノールがまた出るってどういうことだ?」
「……あっ、わ、私がまた出たのでありますか!?」
言われてようやく気が付いたのか、3人がハッとしなんとも言えない表情をしている。
ノール自身までまた出たとか言ってるぞ……。
「言われてみたら確かに……これってどうなるのかしらね?」
「ノールさんがお2人になるのですか?」
ダブるのは装備やアイテムだけなのかと思っていたのだが、どうやらユニットまでダブるようだ。
一体これはどうなるんだ。まさかこのままガチャしていくと、増えたりするんじゃないよな?




