神官……?
配分も終わり、一旦落ち着いた。
今回手に入れたアダマントシリーズ。そしてディフェンスブレスレット。
ここまで防御を重視する装備が集まると……。
「んー、これ俺が盾役やれということなのかね?」
「そうでありますな。でも盾役となると、痛みに耐えられるまさに鋼の精神が必要なのでありますよ」
確かに積極的に敵からの攻撃を受け、味方を守らなくてはいけない立場だ。
痛みを恐れていたら、初動が遅れてしまうかもしれないしな。
痛いのは怖いけど、鋼の精神と言うなら俺が適任かもしれない。忍耐力に関しては、そこそこ自信があるぞ。
「ふむ、つまり俺にぴったりという訳か」
「えっ」
「ん?」
こいつ何言ってるんだ、そう言いたそうにノールとエステルが見てきた。シスハは困った顔をして苦笑を浮かべている。
あれ? 俺変なこと言ったのか?
「ま、まあそれはいいとして。これで一応パーティとして揃った感じかしら?」
「でもそうなると今度は近接の火力が不足気味だよなぁ」
「迷宮攻略を目指すとなると、まだ不十分と言ったところでしょうか?」
「そうなるかな」
今の状態だとノールはエステル達の守りに回さないといけない。そうすると近接による火力が落ちる。
魔法耐性が高い敵との戦いには少々不安が残るな。
俺が盾役をしながら、火力も確保できればいいのだが……せめて迷宮に行くならあと火力1かちゃんとした盾役が欲しいところだな。
「あとずっと忘れていたが、ようやく称号の変更をすることにしたぞ」
「あっ、そういえばそんなのもあったでありますな」
最初の頃からすっかり忘れ去られていた称号。
まあ団長の全ステータス10%が強くて変える必要がなかったんだけどな。
――――――
・10 剣士な団長 剣による攻撃+20%
・20 弓使いな団長 弓による攻撃+20%
・30 盾の団長 防御+20%
・40 魔導師な団長 魔法による攻撃+20%
・50 総長 全ステータス+15%
――――――
「んー? これどれにすればいいんだろうか」
「基本は全体バフ系にして、それ以外の時はお兄さんのしたい物にすればいいんじゃないかしら」
むぅ、やっぱりこれは微妙な感じだな。総長の15%に比べちゃうと20%付いてもなぁ……。
とりあえず総長でいいかもしれない。というか称号がGCの頃と比べてなんだか名称が違うぞ。
「そういえばシスハ、レベルの確認をしてもいいか?」
「はい、大倉さんでしたら確認などせず、いつでも好きな時にご覧ください」
――――――
●シスハ・アルヴィ
レベル 40
HP 1550
MP 1800
攻撃力 550
防御力 350
敏捷 45
魔法耐性 20
コスト 20
固有能力
【聖女の祈り】
回復範囲を広げ、複数同時に回復が可能。
スキル
【回復上昇】
回復魔法を40%上昇させる。 再使用時間:1時間
B:94 W:60 H88 推定:Gカップ
――――――
ステータスはエステル寄りだけど若干硬めかな? スキルの再使用が1時間なのはかなり助かる。
それと……目に見えてあれだったけどやっぱり大きいなおい。目のやり場に少し困るぞ。
――――――
●ヴィーティング
MP+800
攻撃力+800
回復魔法+30%
●アルマテール
HP+300
MP+200
防御力+400
回復魔法+20%
硬直時間-20%
――――――
装備のURは杖と首飾りの十字架かな? やはり回復重視な感じだな。
「ありゃ? エステルの時も思ったけど、これ召喚時のレベルって俺基準なのか?」
「そうみたいでありますな。召喚してすぐに戦力になれるようにでありますかね」
この中じゃ一番低いのには変わりないが、それでも最初から40レベルか。
これなら今後新しい仲間が来たとしても、レベル上げをする手間はそれほどないということだな。
神官の回復の値は、攻撃力に依存している。これって……実際に攻撃したらどうなるんだろうか。
「とりあえずシスハのFランク用の依頼と併せて、俺も盾役の練習をしてみようか」
プレートを受け取った時に、ついでにFランク用の依頼も受けることにしていた。
まだ日も落ちるまでに時間もあるし、討伐対象も王都の付近なので今からでも問題ないだろう。
●
王都でのFランク昇格の為に近場の狩場へとやってきた。街から少し離れた、洞窟だ。
洞窟の前には、十数匹の魔物がうろちょろしていた。
対象はコボルト。ゴブリンよりちょっと大きいサイズで頭部が犬に似ている。手には石のような剣も持っていた。
Fランクが対象の魔物なのでステータスは見なくてもいいだろう。
「と、いう訳で狩場に到着したのだが。この格好大丈夫?」
「なんだかお兄さん……」
「わ、私は格好良いと思いますよ、はい」
俺が動くたびに、ガシャンガシャンと金属の擦れる音が聞える。
さっそく着心地を試す為にアダマントシリーズを装備したんだ。最高にクールな感じがするぞ。
でも盾は鍋の蓋のままで、武器もバール。靴はニケの靴と若干合わない気がするが仕方ない。
アダマントの盾は持ってみたけど大きすぎて俺にはまだ扱いづらかった……。
それにヘルムがフルフェイス型のせいで、声がこもってちょっと聞き取りづらいかも。
「ちょっと動きづらいな」
「まず動くことから慣れないと駄目でありますな」
鎧に覆われた体は、若干だがいつもより動かしづらい。
これで防御力は高くなったが、攻撃面はちょっと不安だな。
「ま、今回はコボルト相手だから慣らすのには丁度いいか」
「お兄さん、万が一はないと思うけど油断しないでね」
むぅ、エステルは心配性だな。さすがにこれでコボルトに負けるなんて……ないと思う。
でも不安だからちゃんと注意しておくか。
エステルから支援魔法を貰い、俺はコボルトへ向かい駆けだす。
さっきよりも激しい金属が擦れるような音を出しながら、バールを振り上げてコボルトへと向かう。
コボルト達もそれに気が付いて俺の方を向き、剣を構え始めた。
攻撃の届く所まで到着したと同時に、バールを振るう。
俺の攻撃は石の剣ごと砕いて、コボルトの体を抉り飛ばす。
その後何匹か倒したのだが、不意に横からカツンと音がした。
見てみるとそこには折れた剣を持つコボルトが。俺を攻撃して逆に剣が折れたみたいだ。
「うーん? 思った以上に視界が悪いな。ノール、よくスムーズに動けるな」
「慣れもあるでありますからね。視界はそのヘルムも見えやすい方だと思うのでありますよ」
さらに何匹か倒し、ドロップアイテムである牙を拾い俺は彼女達の許へと戻った。
コボルトは弱い部類の魔物なのだが、それ相手にも不意打ちで攻撃を受けるか……こりゃ早く慣れないと駄目だな。
もしこれで強い魔物だった場合、致命的な隙になってしまう。
ヘルムは目の辺りが横に空いているのだが、それでも普通の視界より若干見づらい。
ノールはよくこの視界で戦闘できるな。
「シスハ、悪いな。しばらく出番無いかもしれない」
「いえいえ、構いませんよ。でも、得意ではありませんが少しぐらいなら近接戦闘ができますよ?」
「おっ、それは試しに見てみたいな」
「そうでありますな」
「支援魔法するわね」
ほぉ、近接戦闘が少しできるとな。見た目からはちょっと想像できないな。
GCでは神官が攻撃参加するなんてなかったはずだけど……。
でも切れ目のあるスカートだし、そういう動きをするのを考慮してあるのかも。
俺以外の2人も興味があるのか食い付いてきている。
もしこれで近接戦闘が多少できるのなら、もしかしたらちょっとぐらいは自衛とかも期待できそうだ。
やっぱり俺とノールが守るにしても、守りきれない事があるかもしれないからな。
「そう期待されるとお恥ずかしいです……。それではいきますね!」
俺達に注目されて恥ずかしいのか、顔を逸らしてモジモジとしている。
そしてエステルの支援を貰ったシスハは、張り切ったように拳を握り両手をあげてガッツポーズをした。
おぉ、なんだか可愛らしいな。神官だし、そんな戦闘力はないだろうけどコボルトなら大丈夫だろう。
準備の整ったシスハが、駆けだし歩いていた数匹のコボルトへと向かった。
コボルト達は彼女の接近に気が付いて剣を向け迎撃の体勢を取る。
そうしてついに一番近くにいたコボルトとシスハが接触し、迎撃する為にコボルトが剣を突き出す。
その剣を彼女は体を捻りギリギリで避け、戻す勢いで杖を顔面に叩き込みコボルトの頭を吹き飛ばした。
「……えっ……えっ!?」
「神官……なのでありますよね?」
「……神官って凄いのね」
あれ……凄くキレッキレで俺よりも良い動きしている気がするのだが。
俺と一緒にそれを眺めていた2人も、彼女を見て驚愕している。
その後もシスハは殴りや蹴り、杖による突き、打撃などで次々とコボルトを粉砕していった。
おかしいな……心なしか彼女の顔が恍惚としている気がするよ。
●ノール・ファニャ
レベル 44→51
HP 2780→3060
MP 640→780
攻撃力 860→1000
防御力 525→595
敏捷 105→119
魔法耐性 30
コスト 15
●エステル
レベル 36→46
HP 870→1230
MP 1980→2240
攻撃力 575→735
防御力 225→295
敏捷 18→20
魔法耐性 40
コスト 22
●【総長】大倉平八
レベル 43→50
HP 1220→1360
MP 320→390
攻撃力 480→585
防御力 420→525
敏捷 80→94
魔法耐性 10