魔導具の売上
休日も終わりまた狩りを再開しつつも、アーデルベルさんから要請を受けて魔導具の追加納品にやってきていた。
休みだったとはいえ迷宮から帰宅した日から魔導具作りは再開しており、十分な数は用意できている。
今回は俺も称号変更で魔導師になって魔導具作りを手伝ったからな。
そして今納品を既に終え、俺はアーデルベルさんと応接室で話をしていた。
エステルも来ているけどアンネリーちゃんと別室で遊んでいる。
「冒険者活動をしながらあれだけの数を納品してもらえるとは……大倉さん達にはいつも驚かされますね」
「専念できなくて申し訳ないです。次はもう少し早く多めに持ってきますね」
「いえいえ! 今でも他じゃ真似できない量ですよ!」
エステル達の魔導具は更に話題が広がっているようで、連日人が殺到して凄いことになっているようだ。
王都外の町からも魔導具を求めてくる人が増えている模様。
消耗品でお手頃価格な支援魔法や回復魔法の魔導具が売れるのはわかるけど、高額品の通話魔導具も販売開始直後に消えるぐらいの熱狂具合だとか。
買占め対策の個数制限はしているが、もっと買わせろって問い合わせも日に日に増えているらしい。
アーデルベルさんに委託販売を頼んでマジでよかったな……。
こんなになるなんて俺達じゃ対処できなかったぞ。
そう内心思っていると、アーデルベルさんは数枚の紙を机の上に広げた。
更にエゴンさんに声をかけると、彼は別室から複数の大きく膨らんだ袋を持ってくる。
ジャラジャラと音がするし多分中身はお金かな。
「それと締め日になりましたのでこちらが今回の売り上げとなります。手数料や税金などは一部引いてあるのでご確認ください。販売数などをまとめた資料はこちらです」
「あっ、どうも……えっ!? こ、こんなにですか!?」
資料を見ると金額や各魔導具の販売数などがまとめられていて、俺達の手取りは総額1億Gを軽く超えている。
つまりあの大きな袋の中は大量の金貨ということだ。
委託手数料が引かれても1億G以上の売り上げがあるって……こわっ。
この勢いだと冒険者として稼いだ金額をすぐに上回りそうだぞ。
あまりの額に俺が戦慄していると、アーデルベルさんが続けて別の話をしてくる。
「それと探知機も新たに4パーティーの冒険者にお渡ししました。どうやらその前に渡した冒険者の方々から好評で興味を持ったようですよ。今ではすっかりお得意様です」
「おお! それなら更に会員ランクを上げてくれる人も増えますね! 魔物探知機も使えているようで良かったですよ。今回は60個持ってきたのでどんどん配ってください!」
「ろ、60……あんな凄い物をもうそこまで量産できるんですね。冒険者の方以外からも購入要望が多いので、半数は販売用で構わないでしょうか?」
「それは大丈夫ですけど……もしかして配布用以外の探知機はもう全部売れたんですか?」
「はい、即日完売になりました。主に商人達が買っていきましたが、今では貴族まで欲しいと要望がありまして……」
800万Gもする魔導具が完売だと!?
前回冒険者配布用に10個、販売用に10個納品したのだがもう殆ど残っていないのか。
配布には会員証をシルバーランクにするのが条件だが、かなりの金額商品を購入しないといけないのにな。
一般販売分も即完売なんて、アーデルベルさんが1000万G以上にしたいと言ってたのも頷ける。
材料に魔元石を使うから原石魔導具ほど量産はできないけど、これも更に増産を目指した方がよさそうだな。
原石魔導具はエステル以外でも作れるから、皆で協力すればなんとかなるだろう。
それから資料を見ながらアーデルベルさんとあれこれ話し、今後の生産方針を決めることにした。
「強化魔法の原石は時間の短い方が売れやすいみたいですね」
「はい、一般市民には短時間の方がいいようです。力を使う作業の時だけ使えば効率的なようでして。逆に冒険者の方は長い方を好まれるようですよ。出来るだけ戦闘中に効果が切れるのを避けたいようでして」
「なるほど、なら効果が長いのと短いの2種類に絞るのもありですね。そうすれば生産効率も上がりますし管理も楽そうです」
支援魔法の原石は低、中、高の3種類揃えてあるのだが、資料を見ると低と高2種類の販売数が多い。
なら中をなくして低と高の2種類にすれば需要に合うはず。
だけど中もそれなりに売れているからなくすっていうのも不満が出てきそうだ。
もっと統計やお客さんからの意見を聞いて決めるとしよう。
それからも世間話を混ぜつつ会話していると、前に冒険者協会で相談した件の話題が出てきた。
「そういえば以前提案されたポイント制の件ですが、先日冒険者協会の会長と話し合って大方決まりましたよ」
「本当ですか!」
「はい、近い内に冒険者協会と連携してサービスを開始できそうです。ですが本当にあの条件でよろしいのですか?」
「私達から提案したことなので大丈夫ですよ。より多くの冒険者の手助けになってほしいんです」
「おお……本当に大倉さん達は高尚な考えをお持ちなんですね……」
冒険者協会で希少種を討伐した証明をし、そのデータを魔導具店で使えないかって案をアーデルベルさんにも話していた。
俺達が迷宮探索などをしている間に、協会長であるクリストフさんと話し合っていたのか。
この思惑が達成されたら冒険者は割引や特別な魔導具が手に入り、俺達は希少種を倒してもらい魔石が手に入る。
そしてサービスをする条件として、割り引いた商品代は俺達の取り分から引いてもらう。
こうすれば魔導具店も負担なく売り上げが増えるだろうから、まさに全員相互利益がある状態だ。
魔石が手に入ることを知らない人からしたら、俺達だけ損しているように見えそうだが……まあいいか。
納品と話し合いも終わり帰宅し、ノール達が集まってから今日受け取った報酬を居間の机に置いた。
「てな訳でこれが魔導具で稼いだ売り上げだ」
「す、凄い大金なのでありますよ!?」
「凄いんだよ! ピカピカが沢山ある!」
「金貨がこんなにあるなんて……本格的に商売をしたら冒険者よりも稼げそうだね」
「うふふ、私達がその気になればこんなものですよ。まあ、大部分はエステルさんのお力の部分が大きいと思いますけど」
「久しぶりに魔導具作りをしたら楽しくなっちゃっただけよ。意外に支援魔法の需要が多かったのね」
ノールとフリージアは袋に入った大量の金貨を見て大騒ぎしている。
これだけの金貨を見ると俺もちょっとワクワクしちまうぞ。
「とりあえず配分しようと思うんだが、エステル4割、シスハ2割、マルティナ1割、残り3割はパーティーの貯蓄でいいか? 割合は売れた魔導具の分で考えたから確認してくれ。貯蓄の3割は材料集め分や雑用分ってことで頼む」
「そんなに貰わなくてもいいのだけれど……。やっぱりこういうのは受け取った方がいいかしら?」
「ああ、狩りと違ってこの稼ぎは個別でちゃんと分けた方がいいって決めただろ」
「そうですねぇ。別にお金に困ってはいませんが、その方が変に揉めたりもしませんね」
「ぼ、僕も貰っていいのかい? そんなに売れてない気がするんだけど……」
「いや、追加発注があるぐらいにはお前の商品も売れてるようだぞ」
「そ、そうなんだ……。僕が作った物が求められるのは嬉しいな……」
冒険者としての稼ぎは共通の貯蓄にしていて、基本小遣い制に近い感じでノール達にお金を渡していた。
言われたら追加で渡すと言ってあるけど頼まれたことがないな。
今回の稼ぎも全て共通貯蓄にする案もあったが、流石に魔導具を作るエステル達の働きが大きいから不公平感が出る。
だからしっかりと分けようと事前に話し合いをしておいた。
マルティナは売れるか不安そうにしていたが、口コミで広まったのか弱体化ボールや魔物避けもジワジワと売り上げが増えているようだ。
なので取り分の比率は売上資料を見て売れた魔導具の数で決めてある。
それから報酬の取り分を分けてエステル達に渡すとそれぞれ嬉しそうにしていた。
特にマルティナは目を輝かせて受け取った金貨を見て感激している。
金に執着はないだろうけど、自分が作った物が売れた実感が湧いたのかな。
その様子を見ていたノールとフリージアが羨ましそうにしていた。
「むむむ、物作りできるのって楽しそうなのでありますよ」
「楽しそうなんだよ! 私も何か売り物作りたい!」
「その気持ちはわかるが誰だって得意不得意があるからな。金を稼ぎたいのなら素晴らしい提案をしよう」
「お金が欲しい訳ではないのでありますが……一応聞くでありますがその案とは?」
「魔石狩りだ。定時間外狩りなら素材の売り上げ全額やるぞ!」
「やっぱりそれでありますか! 絶対にお断りなのであります!」
ちっ、やはりダメか。
金稼ぎをしたいなら上手く丸め込んで、魔石狩りをさせようと思ったんだけどなぁ。




