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ランダムの洗礼

 スチールスライムがいた5層を突破し、その後も無事進むことができ現在10層目。

 6から9層目も相変わらずスライムだったが、スチールスライム程苦戦するのはいなかった。

 9層目にいたボンバースライムとかいう攻撃したら爆発する奴はやばかったけど……。


「なんだこりゃ……」


「矢印が書いてあるのでありますな」


 そうして到達した10層目。今度は何が来るのかと待ち構えていたが、現れたのは部屋の中央に石の台座。上にはルーレットのような物が置かれている。

 真ん中には針が有り回転するようになっているようだ。その針がある台には上下右左に向いている矢印が書かれている。


「これ押せってことなのか?」


「それしかないみたいね。他に行ける所もないみたいだし」


 台座には、あからさまに押して! って主張しているかのような赤いボタンがそえられている。

 そして俺達が来た道以外には行く場所が無い。周りを見てみるとどこにも行けそうになく、行き止まりだ。

 部屋は四角く、入り口以外の3方向の壁を見てみると真ん中辺りに薄らと線がある。

 つまりこれを回して止まった矢印の方向が開く仕組みになっているのか? なんてめんどくさいんだ。


「それじゃあ押すぞ。何か有ったら怖いからお前達は警戒しておいてくれ」


「了解でありますよ」


「えぇ、任せて」


 正直あまり押したくはないが、先に進むには仕方ない。

 何かあった時の為に、彼女達に警戒してもらいながらボタンを押した。

 ルーレットが回りだし、そして右の矢印へと止まる。

 矢印が止まった瞬間右側の壁からゴゴゴと音がし始め、真ん中の部分の壁が下へと動いて道が出てきた。


「凄い技術だな……」


「さすがは迷宮であります」


 さすがは迷宮! で片付く話なのだろうか……一体どうなっているんだここ。

 とりあえず先へ進めるようになったので出てきた道を進むことにした。

 もちろん道に入る前に十分警戒をする。この迷宮に来てから、予想外のことばかり起きているからだ。

 上からスライムが落ちてきたり、爆発したスライムが連鎖爆発をしたりなどなど。

 酷い目に遭った。


「またあるのか!?」


「ここでも運が試されるのね。お兄さんで大丈夫なのかしら」


「大倉殿……頑張ってほしいのであります」


 敵がいないかよく確認し道を進んでいくと、また同じような台座がありルーレットまであった。

 おいおい、こんな所でまで運ゲーをやらされるのか……。

 周りにいる彼女達はとても不安そうに俺の方を見ている。

 くっ、何故か俺が回していくことが確定しているが、俺が回すことに不安そうな顔をされるのは悔しいぞ。


 また俺がルーレットを回して今度は上。

 さっきと同じように前方にある壁の真ん中が動きだし道が出来る。


「むっ、敵か」


「上の階層にいたスライムなのでありますね」


 警戒しながら部屋に入ってみると、3階層目にいたスタンスライムが3匹いた。他の部屋と同じように台座とルーレットもある。

 敵がいる部屋も存在するようだ。やはり警戒しておいて正解だったようだな。

 

 スライムを処理し、ルーレットを再び回す。

 今度は左に止まってそっち側の道が出来る。


「おっ、宝箱じゃん! ……なんで宝箱なんて有るんだ」


「ふふ、気にしたら負けだと思うわ」


 今度は宝箱が有り、中には宝石のような光る石が付いた首飾りが入っていた。

 おぉ、こういうお宝的な物があるのは冒険心がくすぐられるな。でもなんでこんな物があるんだ……。

 わざわざこんな場所に宝箱置く人間なんているとは思えないし、どうなっているんだろうか。

 エステルが言うように、もうこの迷宮の中でのことは考えても仕方ない気はしてきているけど。


「あれ、行き止まりか?」


「そうみたいでありますな」


「何か書いてあるわね?」


 ルーレットを回してさらに先へと進むと、今度はルーレットすら無い部屋へと到着した。

 壁には剣が2つ、盾が1つ、そして杖が2つ描かれている。なんだろこれ?


「うお!? な、なんだ!」


「大倉殿、エステル! 集まるのでありますよ!」


 特に何も無い場所だったので引き返そうとしたのだが、その前に入り口が閉まり戻れなくなる。

 さらに地面は輝きが増し始めて何かが起こる雰囲気がしてきた。

 しまった……これは罠だったか!? 

 何が起きても対応できるよう、俺達は武器を構えて全員背中合わせになり全体を見渡せるようにする。

 そして輝きが最高潮に達した瞬間、目の前の景色が変わった。


「あれ……ここ、この階層の入り口か?」


「どうやら戻されたみたいなのでありますね」


「間違った場所に行くと強制的に戻されるのね」


 警戒していたのに、入り口に戻されるだけだったのでなんだか拍子抜けしてしまった。

 10層と切りの良い階層なので強い敵がわんさかといるかと思っていたのだが、これなら突破するのも楽勝そうだな。

 とりあえずルーレットを回して次の階層の入り口まで行ってみることにしよう。

 



「もうやだぁ……何、なんなのこの迷宮!?」


「うぅ……これで何回目なのでありますか」


「40回目になるわね」


 あれからルーレットを回して進むこと39回。俺達は入り口の前へとまた戻された。

 明確な敵がいる訳でもなく、ただひたすらルーレットを回すことを強いられる。最初は楽観的に思っていたが、回数が増すにつれだんだん辛くなる。

 これほどの苦痛が今まであっただろうか? 誰だ楽勝そうだとか思った奴、ふざけるな!

 試しに1度回した物を再度回そうとしてみたが、押し込まれたままの状態で固定されて押すことはできなかった。


「エステル、あの壁壊せないか?」


「あら、物騒な発想をするのねお兄さん。せっかくの迷路なのに無粋だわ」


 もうまともに進むのも疲れたので、エステルに壁を破壊してもらうことを提案する。

 彼女の言うように迷路を破壊して進むなんて確かに卑劣な手段かもしれない。

 でもこんなのを造る奴が悪いんだ。俺は悪くない。


「だってこのままじゃな……頼む!」


「もう、しょうがないんだから」


 手を頬に当て困った様な表情をしていたが、彼女は了承してくれた。

 そして鞄からグリモワールを取り出すと、火の玉を作り出し壁に撃ち出す。

 爆発した際に飛んでくるで破片を警戒して俺とノールで盾を構えた。

 壁に着弾すると凄まじい轟音と共に爆炎が広がる。これ程の爆発だ、間違いなく壁も破壊されただろう。

 

 煙が晴れて爆発により破壊された穴が――無かった。

 現れたのはさっきと変わらずに光り輝く壁。まるでダメージがない。


「かすり傷1つないだなんて……なんだか悔しいわ」


「あの強度、壊そうとするのは想定済みなのでありますね」


 壊して進もうとする奴がいるのは想定済みか……。


「むぅ、正攻法でしか駄目なのか」


 こうなるともうかなり厳しくなってくるな。

 自分で進むのならまだしも、ランダムにしか進めない。


「よし、次戻されたら帰ろう」


「帰るのでありますか?」


「あぁ、もうだいぶ時間も経っているしな」


「それもそうね」


 迷宮に入って既に数時間ほどは経過しただろう。一応何日いても平気なようには準備してきたが、このままこの階層を進むのも馬鹿らしい。

 既に目的の10階層には到達したのだし、迷宮探索は一旦終りでもいいかな。


 最後の10階層のルーレットを回し始めた。

 最初は左、次は右と進んでいき、途中にスライムなどと遭遇しながら進んでいく。

 諦め気味に進んでいたのだが、数回ルーレットをやり辿り着いた部屋は今までと違った。


「おっ、今回は奥まで行けたみたいだな」


「なんだか物々しい扉でありますな」


「こういうのってボスみたいなのがいるのよね」


 辿り着いた先は、鉄で出来ているであろう大きな扉。

 見ているだけでもなんとなく威圧されるかのようだ。

 確かにこういう扉はボスへの前触れ、そしてここは10層目。中間的なボスが存在してもおかしくない。

 

 入ろうかどうか迷ったが、俺はとりあえず扉を少し開けてチラ見することにした。

 ゲームとかなら入った瞬間もう後戻りできずに強制的に戦闘だが、こういうことができるのは実に助かる。

 

 俺は扉を開け隙間から中を覗くと、中には金色のスライムがいた。大きさはサイクロプス程だろうか。

 幅がある分こっちの方が迫力がある。と、とりあえずステータスを見てみよう。

 

  ――――――

●アウルムスライム 種族:スライム

 レベル:60

 HP:20万

 MP:0

 攻撃力:4500

 防御力:3000

 敏捷:20

 魔法耐性:30

 固有能力 黄金の輝き

 スキル 威張り散らす

―――――― 


 あっ……これ無理だ。


「ノール、エステル……帰ろうか」


「どうかしたのでありますか?」


「ここまで来て帰るだなんて、お兄さんどうしたの?」


 扉を閉めて、俺が振り返り彼女たちへ帰ろうと言う。

 それを聞いて不思議そうにしている。


「これ、見てみろ」


「あっ……帰りましょうなのであります」


「私達にはちょっと早かったかもしれないわね」


 スマホで表示させたステータスを彼女達に見せると、俺と同じ反応をする。

 能力とスキルも得体が知れない物だし、今は無理に戦うこともないだろう。

 やはりもっとレベルを上げてステータスの向上。そしてガチャを回さなければ駄目なのかもしれない。



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― 新着の感想 ―
[一言] 宝箱が本当はミミックで、主人公ががぶられてたら、より面白いと思った。
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