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制限区域

いつもお読みくださりありがとうございます。

今回またネタSSを活動報告の方に掲載いたしましたので、是非お読みいただけると嬉しいです。

ページの下の方に掲示板回と同じようにリンクを貼りましたので、そちらからお読みくださると幸いです。

ずっと書いてみたかったのですが、本編だといつになるかわからずお試しも兼ねて書いてみました。

 メンバーカードも作成できたことで、アーデルベルさんにそれを託してついに会員制を導入してもらうことになった。

 魔導具店の経営に関して俺達が口出しできることも少ないから、案を伝えて上手く形にしてもらう運びだ。

 随分と楽をさせてもらっている気がするけど、好意に甘えてここはお任せしよう。

 その分は魔導具の販売でお礼をしたいところだ。

 

 そんな訳で俺達ができることも一段落し、今日は王国立図書館にやって来ている。

 魔導具工房の工房長であるファルティさんから貰った認定証を使い、さっそく制限区域に入るためだ。

 念のためにファルティさんに確認をすると、これを見せれば許可が出ると言われた。

 メンバーは前回と同じく俺とエステル、それにスキップして浮かれてますと言わんばかりのマルティナだ。


「クックック、ついに王国立図書館の奥地に足を踏み入れられるんだね! こんなに嬉しいことはないよ!」


「本を見に行くだけなのに大袈裟だなぁ。あんまりはしゃぐんじゃないぞ?」


「ふふ、それだけマルティナは本を読むのが好きなのよ。私も色々とお世話になっているわ」


「こ、こちらこそ本のことで話してもらえて嬉しいです! 僕、誰かと本の内容を語り合うのがずっと夢だったから……」


 照れ臭そうにしているマルティナを見て、エステルが微笑ましそうな目をしている。

 本の質問をされたら喜んで説明するマルティナの姿が思い浮かんでくるな。

 そんなやりとりを見つつ、王国立図書館の入り口近くにある小屋に行き受付の人に声をかけた。


「あの、制限区域に入りたいんですけど許可を貰いたいのですが……」


「どなたからか紹介状などは受け取っていますか?」


「紹介状ではないんですがこれで大丈夫ですか?」


 俺は工房長の認定証を提示すると、確認していいか聞かれたので手渡した。

 そして何やら装置に通した後に返却され、3枚の手の平サイズをしたプレートを手渡される。


「ご提示ありがとうございます。問題ありませんのでこちらをお持ちください。お帰りの際はご返却をお願いいたします」


「わかりました。ありがとうございます」


 それから入館料も合わせて支払い、あっさりと制限区域に入る許可を得たのだった。


「おー、マジで制限区域入れる許可が出たな」


「ふふ、良い物を貸してくれたわね。取引とはいえ今度何かお礼をしておきましょう。仲良くしておいて損はなさそうだもの」


「……やった、やった! 一体どんな本があるんだろう! 閲覧制限のある本なんて……ウェヒヒヒヒヒ!」


 マルティナは不気味な笑い声を上げながら体をクネクネと奇妙な動きをしている。

 制限区域に入れるだけでどんだけテンション上がってやがるんだ……。

 エステルと呆れながらも図書館の中に入り、2階へ続く階段の前にいる警備員にプレートを見せて上がっていく。

 制限区域になっている図書館の2階は……特に変わったところもない本棚が沢山置かれた普通の図書館だ。


「うーん、制限区域の割には普通の図書館と大差ないな」


「場所自体は特別な物でもないもの。大事なのはここにある本の内容だわ」


「それじゃあ僕は見て回ってくるね! ウッヒョー!」


「あっ、おい! 変なことやらかすんじゃないぞ!」


 小さい声ではしゃぎながらも、マルティナは図書館の奥へと消えて行った。

 ちゃんと俺の声が届いていたか心配になるな……。


「あいつ、なんかキャラが崩壊してないか?」


「テンションが上がり過ぎておかしくなっちゃったのね。でも図書館や本は大切に扱うだろうから心配しなくていいと思うわ」


「まあその点に関しては信用が高いな。この前みたいに上手くやるだろうから任せておこう」


 この前も自由にやらせておいて色々資料を見つけていたもんな。

 本に関してだけは信用できるし、本好きのあいつなら問題も起こさないだろう。

 ということで、俺とエステルで一緒に本探しをすることにした。


「それにしても制限されるような本ってどんなのなんだ?」


「うーん、どんなのって言われると難しいわね。国を運営していく上で、あまり知られて欲しくないこととかかしら? 魔導師の私としては禁じられた魔法が書かれた物が馴染み深いけれど、ここにはそんな物なさそうだもの」


「禁じられた魔法って……そんな凶悪な物があるのか」


「単純に魔法自体が危険な物もあるけれど、扱うのが難しくて使用者に危害を及ぼす物が多いわね。コントロールを失った魔法程怖い物もないわ。私が使う魔法もそれに近くはあるから、本とかに書いて残したら禁書にされちゃうかも」


 エステルはウィンクしながら可愛らしく言っている。

 そんな可愛らしく物騒なこと言われても困るんですが……まあ、いつも使ってる光線なんて誰でも使えるもんじゃなさそうだしな。

 再現しようとしてあれが暴発なんてしたら、辺り一帯全部消し飛ぶんじゃないか?

 そりゃそんな魔法の使用書を書いたら禁書は不可避だろうな。

 そんな魔法の禁書の類はないと思うけど、ここにどんな本があるのか見ていこう。

 しばらくエステルと色々な本を手に取っては仕舞うのを繰り返し、どんな物があるのか確認していく。

 大体はよくわからない文化の本や、国の歴史やら詳細な地方の地図やらと俺達のお目当ての内容は見当たらない。


「どうだ、亜人についての本はあるか?」


「うーん、やっぱりここの本も魔人で統一されているわね。200年前の戦争についてもぼかすような内容ばかりで、詳しくは載ってないみたい。せいぜい戦いの経過が大雑把に書かれている程度ね」


「そういえば前にこの図書館で会ったレビィーリアさんも、制限区域でも大した情報がないとは言っていたか」


「あのお姉さんは図書館に詳しそうだったものね。あの戦争は訳ありだったとか言っていたけれど、どんな事情があったのかしら。制限区域にすら情報がないんじゃ、本当に禁書の類の扱いを受けていそうだわ。それこそ王城にでも行かなきゃ見つからなさそうね」


「えっ、そういう本って王城にあるのか?」


「本当に隠したい物はそういう所にあると思うわ。いくら秘密だとしても、王族や近い血筋の人達まで真実を知れないのは問題だもの。後考えられるとしたら、貴族が個人的に保有している本ぐらいじゃない?」


 確かにいくら隠したいこととはいえ、王様とかがそれを知らないのはまずいもんなぁ。

 でもそうなると、亜人の話はそのぐらいの機密事項ってことになるが……本当に昔この国で何があったのだろうか。

 本当に制限区域にすらロクな情報がないとは思わなかったぞ。

 こうなってくると、色々と詳しそうだったレビィーリアさんにまた話を聞きたくなってくるが……。

 そう考えた途端、突然背後から声をかけられた。


「お呼びかな、ご両人。こんなところでまた出会うなんて奇遇だね」


 振り返るとそこには、眼鏡をかけた見覚えのある女性がいた。

 そう、今さっき会えないか考えていたレビィーリアさんだ。

 おいおい、こんな絶好のタイミングで遭遇するとかマジかよ!


「またお会いできて光栄です。えっと……レビィーリア様?」


「なんだいそう改まっちゃって。もしかして私のこと知っちゃった感じかな?」


「ええ、王国騎士団の隊長だって聞いたわ。お姉さん凄い人だったのね」


「わはははは、知られちゃったら仕方ない。けど図書館にいる時はオフだから、気軽にレビィーリアさんと呼んでくれていいよ。堅苦しいのは騎士団内だけで十分さ。あそこにいると息が詰まっちゃってうんざりするんだ」


 レビィーリアさんは両手を肩の横で広げて、やれやれと言いたそうな素振りをしている。

 隊長クラスの人がうんざりするって……本当に王国騎士団の人なのか疑わしくなるぞ。


「それにしても制限区域で君達と会うなんてビックリだぁ。この短い期間で紹介状でも貰ってきたのかな? 流石最近話題の冒険者なだけあるね」


「あはは……ちょっとした知り合いから許可を貰えたんですよ」


「ここに入る許可を出せる人はそう多くはないはずだけど……君達はBランク冒険者だったよね? それでそこまでの伝手があるなんて驚いちゃったよ」


「そう詮索されても困っちゃうわ。たまたま運良く紹介してもらえただけだもの」


「いやぁ、それは失敬なことをしちゃったかな。気になったことはつい追究しちゃう質だからさ。お詫びと言っちゃなんだけど、探し物のお手伝いや質問に答えるよ。今日は多少時間に余裕もあるからね」


 そう言ってレビィーリアさんは付いて来てと制限区域を案内してくれるご様子だ。

 なんか怪しまれたような気もしなくはないけど……せっかくのチャンスだしここは話を聞いておこう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マルティナか好奇心の塊の美幼女という感じだ。子供子供してて可愛い 図書館に来ると精神年齢が幼くなるのかね。まるで、ちっちゃな妹だ。 ちっちゃな妹を見守りながら、お兄ちゃんが彼女とデートして…
2024/03/21 10:14 第六天魔王
[気になる点] ミニサレナ除くと マルティナから2年半新ユニットが 出てないこと キャラの掘り下げが必要とは言え
[気になる点] さて、この再開が凶と出ますか?吉と出ますか?
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