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開店日

 宣言通りに魔石狩りを続ける日々の中、ついにアーデルベルさんの経営する店舗の開店日がやってきた。

 俺達は魔導具の調整などでやり取りをするだけだったから、それ以外は関わることなく直接店に行ったこともない。

 なので今日はノールと2人で様子を見に行くことにした。

 

「ついに今日が開店する日か。どんな反響があるか楽しみだな」


「そうでありますね! むふふ、食べ物とかも売ってるのでありましょうか」


「食品は取り扱わないって話だぞ」


「えっ、そうなのでありますか。楽しみにしていたのでありますが……」


 ノールの奴、目的を忘れているんじゃなかろうか。

 アーデルベルさんのお店は日用品をメインで販売する店のようだ。

 さっそく教えてもらった場所に向かうと、徐々に人の数が増えてきた。

 皆同じ方向に向かっているからどうやら目的は同じらしい。


 そうして見えてきたのは3階建ての巨大な店舗だった。

 既に入り口には沢山の人が群がっていて大盛況している。


「沢山人が来ているでありますね! 人気なのでありますよ!」


「そりゃオープン初日だからな。しかもこんだけデカい店なら興味本位で人も来るだろうさ」


「それにしても思っていたより早くお店が開いたでありますね。もっとかかると思っていたのでありますよ」


「元々相当準備が進んでいたみたいだからな。3階の小売店が集まってるエリアに魔導具店を置く気だったから、それ以外は殆ど開店間近だったそうだ」


「むむっ、難しい話はよくわからないでありますが、運がよかったってことでありますな!」


 ノールは首を傾げながらも勝手に何か納得して頷いている。

 フリージアとかのせいで埋もれていたけど、こいつもポンコツなのをすっかり忘れていた。

 魔導具のある3階部分は百貨店のような感じで、色々なジャンルの店が集まっている階だそうだ。

 なので店自体は1階と2階の売り場がメインだから、そこは俺達と契約する前にもう開店に向けて準備されていた。

 魔導具店も本来は色々と準備期間が必要だったが、俺達が商品を委託したから殆どないに等しかったようだ。

 そんな訳で俺達が取引を持ち掛けてからそんな日数も経たずに、今日の開店日を迎えられた。

 こんなデカい店で委託店舗をお願いできたし、ある意味ノールが言う運が良かったって言うのも正しいのかもな。


 俺達も人混みに紛れて店に入ると、中も人が沢山いて混雑していた。

 3階へ行くのに階段を探しつつ、どんな物が売っているか見て回る。

 1階は食器やら木製品、それに様々な工具など普段生活で使うような日用品が大量に置かれていた。

 大量生産品なのか値段はどれもお手頃で、俺の感覚としてホームセンターに近い。

 ノールも気になるのか、キョロキョロと棚に置かれている商品を見てはしゃいでいる。


「むふふ、色々な物があって見るだけで楽しいでありますね! 魔導具店を見たら他も見て回っていいでありますか!」


「ああ、俺も気になってたから軽く見て回るか。今は人が多過ぎるしちょっと落ち着いたら皆で来ようぜ」


「そうでありますね。今日も皆で来れたらよかったのでありますが……」


「まあ開店初日の様子見だからな。あんまり大人数でうろついてたら目立ちそうだろ」


 エステルも行きたそうにしていたけど、製作者だし何があるかわからないから今回は諦めてくれた。

 フリージア達も行きたいとブーブーと騒いで不満そうにしていたが、説得して渋々ではあったが次回に持ち越しだ。

 こんだけ人が多いと大人数での移動も一苦労しただろうから、皆で来るのはもう少し落ち着いてからがいいだろう。

 人混みをかき分けて何とか3階まで登り、魔導具店の場所までやってきた。

 入り口の外まで冒険者風の人達が大人数いて、入場規制されているのか中へ入るのに順番待ちをしている。


「おー、魔導具店にも人が多いでありますね。見たところ冒険者っぽい人ばかりでありますよ」


「宣伝もされてたし冒険者協会で噂が広まっていたからな。冒険者向けの専門店だから皆の興味を惹けたんだろ」


「こんなに集まっているなら注目度は高いでありますね」


「ああ、問題はこれが続くかどうかだろうな。俺達も近くに行って反応を見てみるか」


 溢れんばかりの人が来ているから、開店初日としては大成功と言ってもいいだろう。

 これもこの前協会長に宣伝を頼んだ結果かな。

 それとなくだけど冒険者向けの魔導具店ができると協会内でも噂が流れていたそうだ。

 アーデルベルさんも宣伝をしてくれていたから、思っていた以上に興味を惹けている。

 これで一安心とホッとしていると、魔導具店で買い物を終えたのか見知った顔が出てきた。

 Bランク冒険者であるディウスとミグルちゃんだ。


「やあ、大倉じゃないか。君達も噂の魔導具店を見に来たのか」


「おっ、ディウスか。ここで会うとは思わなかったぞ」


「ちょうど暇があったから見に来たんですよ。ノールさんもお久しぶりです」


「ミグルさんでありましたか。お元気そうで何よりでありますよ」


 おー、まさかここでディウス達と遭遇するとはな。

 Bランクの冒険者が来てくれたなら今後の評判にも期待できるはず。

 ウィヒヒ、良い機会だから大切なお客様のお話を聞いておこうじゃあないか。


「それで噂って言うのはやっぱ冒険者協会で聞いたのか?」


「そうさ。魔導師の支援魔法の込められた魔導具があるって聞いてね。魔導師の居ないパーティからしたら誰だって欲しくなるだろう?」


「そりゃあそうだろうな。で、もう買ったのか?」


「当然さ。試しに最上級の支援魔法が込められた物を買ってみた。3万Gもしたけど丸1日効果が続くらしいよ」


「これで使い捨てなのはちょっと高いけど、本当に1日も効果が続くなら凄いよね。今は30分だけ効果の特売品も安く売られていますよ」


「あなた達はそれを買わずに最上級のを買ったのでありますか?」


「僕達は一応Bランクなので、他の冒険者の目もあったから少し見栄を張ってしまいました。懐にも余裕がありますからね。それに国の認可もされているようですし、性能も店で表記された通りの物だと思っています」


 俺とアーデルベルさんで話をして、開店からしばらくは性能を抑えたお得品を売り出すことにしていた。

 支援魔法の魔導具は低、中、高の3つの段階で効果の持続時間を変えた物にしておいたが、それとは別に時間の短いお試し品も作ってある。

 値段は3000Gとお手頃価格で手も出しやすいはずだ。

 他の魔導具も同様に性能を抑えたお手頃品を揃えてある。

 希少性を考えて一部の商品は割と高いのもあるからなぁ。

 使ってもらわないと良さがわからないから必要なことだ。


「支援魔法の魔導具以外は何か買ったのか?」


「通話魔導具ってやつを買ってみた。ある程度離れた相手とも会話できるらしい。1組10万Gもしたけど緊急時のために用意しておいたよ。あとは癒しの石と弱体ボールって物を買っておいた」


「スミカがいるから回復役は大丈夫だけど、持ってるだけで傷が治る石なんて凄いよね」


 もう通話魔導具を買うとは流石Bランク冒険者か。

 これの便利さをわかっているのも目の付け所がいい。

 これならディウス達は今後お得意さんになってくれそうだぞ!

 ガチャ装備の販売は店が安定してからやると話し合ったから、まだまだ先の話とはいえ希望が見えてきたな!

 会話をしながらそんな思案をしていると、突然魔導具店の方から怒鳴り声が聞こえてきた。


「責任者はどこにいる! この魔導具を作ったのは誰だ!」


 な、何だいきなりこの声は? 大声で男が騒いでいるみたいだぞ。

 ざわつく店内を見てみると、声の主は白い髭を生やしたおじさんのようだ。

 格好はローブを羽織っていてどこか魔導師のように見える。


「どうしたんだ突然?」


「あの騒いでる人は誰でありますかね?」


「あれは……魔導具工房の人かな。他の魔導具店で見た覚えがあるよ」


「前見た時も騒いでなかったっけ? 血の気が多い人なのかな」


 げっ、あれ魔導具工房の人なのかよ……普通こんな大勢の前であんな怒鳴るか?

 そんな人が騒いでいるとか厄介ごとの予感しかないぞ。

 いきなりこんなトラブルに遭遇するとか、エステルを連れてこなかったのは正解だったな。

 まあ、俺達は無関係の体でここにいるから、今起きている騒ぎに巻き込まれることはないんだけどさ。

 不安を抱えながら成り行きを見守っていると、店員が相手をしている間に騒ぎを聞きつけたのかアーデルベルさんがやってきて対応を始めた。


「どうかいたしましたか?」


「貴様が責任者か! この魔導具は一体誰が作った!」


「それはお答えできません。私達にも守秘義務があります。ですが魔導具の性能はどれもそちらに記載された通りの物ですよ」


 おー、アーデルベルさんはしっかりと約束を守ってくれているようだ。

 これでエステルがあの魔導具を作ったと思われることはないだろう。

 一体何に怒っているのかわからないけど、何で製作者を知りたいんだ?

 そんな俺の疑問を解決するように、魔導具工房の人はまた怒鳴る。


「性能を疑っている訳ではない! こんな物を作ったなどという報告は聞いていない! 魔導具工房の関係者が秘密裏に貴様らと取引をした! そうだろう!」


「いえ、そのような事実はございません。我々が独自に魔導師の方と契約をしただけですよ」


「嘘を吐くな! 個人の魔導師でさえ魔導具を販売する際は我らに話を通す! だが今回はそのような話さえ聞いていない! それにこのような魔導具、一介の魔導師に作れる代物じゃない! 魔導具工房の者が我らを出し抜こうとしたに違いない!」


 うーん? 魔導具自体にいちゃもん付けている訳じゃなさそうだな。

 要するに魔導具工房の誰かが秘密裏に、この店に協力したと思っているってことか?

 だからその裏切り者が誰かさっさと教えろと怒っている訳だ。

 本当に関係がないんだからアーデルベルさんが言ってることは事実で、このままじゃ話し合いは平行線だ。

 だが、相手も埒が明かないと思ったのか荒らげていた鼻息を抑えて落ち着いた様子で話し始めた。


「黙っていてもすぐにお前らの正体を暴いてやろう。我々を甘く見たことを後悔させてやるぞ。だが、謝罪をするならば許すのも考えてやろう。製作者と共に工房に足を運ぶがいい、フハハハハハ!」


 そう言っておじさんは高笑いをしながら去って行った。

 アーデルベルさんも唖然とした様子で、それを見ていた周りの冒険者達もポカンとした顔を浮かべている。

 だが、魔導具工房の人が性能を認めたからか、騒ぎが落ち着くとさっきよりも魔導具を買う人の勢いが増えているように見えた。


「な、なんだったんだあれは……」


「嵐のようにやってきて笑いながら帰って行ったでありますね……」


「詳しくは僕達もわからないけど、魔導師達も権威やら何やらでよく揉めているからね。これもその一環じゃないかな」


「でも魔導具工房が関わってないのは本当なのかな? 確か魔導師って殆どリスタリア学院の卒業生で、魔導具工房はその人達が運営してるから自動的に関係者になるって聞いたよ。こんな凄い魔導具を作れる人が、突然学院外から出てくると思えないけど……」


 なるほどなぁ、たとえ個人の魔導師だったとしても、魔導具販売をするならほぼ魔導具工房の関係者に話が行くのか。

 俺が思っていた以上に魔導師界隈の縦社会は複雑で厳しいのかもしれない。

 だからあのおじさんはあれ程自信を持ってここに怒鳴り込んで来たのか。

 それでもあんなに怒鳴らなくてもいいだろうにさ。

 何だかまた厄介ごとが増えそうな予感がしつつも、とりあえず魔導具販売が概ね成功していることに安堵した。

 ここから俺の魔石自動狩りの野望が実現していくのだ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「この魔道具を作ったのは誰だ!」 海原雄山みたいな事を言う人が来た!(笑) [気になる点] なるほどね〜。魔道具工房にリスタリア学院卒業生があまりに優秀な為に、凄い魔道具は彼らにしか作れ…
2023/11/21 20:35 にゃんこ聖拳
[気になる点] >ブーブー〈幸い〉で >性能を疑っ〈た〉いる訳ではない! 癒しの石の影響で、回復職は金欠の低ランクパーティー以外入れない、ということが起きるのではないかと心配です。
2023/11/20 20:32 アダンソン
[気になる点] 魔導具工房側が調べようとしてもまさか冒険者をしてる魔導師があれほどの魔導具作ってるとは思いもしないだろうから平八たちにはたどり着きそうもないな 逆に審査通らなかったものも含めて国側が放…
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