魔法診断
いつも通り狩りに勤しんで帰宅後、不意にエステルがある提案をしてきた。
「お兄さんも魔法の訓練をしてみない?」
「急にどうしたんだ」
「せっかく時間があるからマルティナが教えて欲しいって言うのよ。ノール達も誘ったのだけれど、お兄さんも一緒にどうかしら?」
「うーん、そういうことなら俺も教えて貰おうかな」
「ふふ、そうこなくっちゃ。私が手取り足取り教えてあげちゃうわよ」
エステルは可愛らしくウィンクをしているが、何となくだが違う意味で言ってるような気もしてくる。
だけど時間がある今、この機会にエステルから魔法を学ぶのも悪くないな。
ガチャで戦力を強化する方針ではあるが、こういう訓練を経て実力を上げていくのも大事だ。
そんな訳でさっそく訓練場に移動すると、既にノール達が集まっていた。
「むふふふ、久しぶりに魔法を試す機会なのでありますよ! 今回こそ使えるようになるのであります!」
「わーい! 私も魔法使いたいんだよ! エステルちゃんみたいになりたい!」
「クックック、僕も魔法を習得して最強死霊術師を超えた超最強死霊術師になってみせるよ!」
『ヤァー!』
「……なぁ、こいつらに魔法教えて大丈夫なのか?」
「う、うーん……大丈夫だと思うわ、多分」
ノールとフリージアとマルティナ、それに加えてミニサレナも笑顔でワイワイとはしゃいでいる。
こいつらが魔法を覚えて平気なのか不安になってくるぞ……。
というかミニサレナまで魔法の訓練するのか?
ちなみにルーナは使えるから別にいいと不参加で、シスハも適性がないのがわかっているから参加しないということだ。
「それにしても魔法の練習をするって言っても何をするんだ?」
「まずはどの属性の魔法と相性がいいのか診断してみましょう。商品を作るついでに検査する魔導具も作っておいたわ。これに魔力を流せばすぐにわかるわよ」
「凄いのでありますよ! さっそく診断してみるのであります!」
エステルが取り出したのは魔法陣の描かれた紙だ。
さすがエステルさん、また商品を作るついでにとんでもない物を作ってやがる。
まずは意気揚々とノールが魔法陣に手をかざして診断を始めた。
俺達も興味深く見守っていたが、しばらくしても特に魔法陣に変化はない。
「エステル、どうでありますか!」
「……おかしいわね。魔力がこれだけ流れているのに反応していないわ」
「えっ、それってどういうことであります?」
「いい、落ち着いて聞いてね。恐らくノールはどの属性の魔法とも相性がよくないわ」
「そ、そんなぁ!? 私は魔法が使えないのでありますか!」
「自力で使うのは難しいかも……。魔導具を使えばいいけど魔力も過剰に流れてるから、ちょっと不安要素もありそうだわ」
エステルの言葉にノールは肩を落としている。
そういえば前に魔導具を使わせた時も暴発していたような……。
まあ、まだ診断の段階だから今後の訓練で改善するはずだ。
次はフリージアが魔法陣に手をかざすと、薄く緑と青色に発光している。
「エステルちゃんどうかな?」
「うーん……フリージアもあまり相性の良い魔法がなさそうね。風と水属性は辛うじて適性があるかも」
「えっ、私も魔法使えないの!?」
「全般的に魔法と相性自体よくないんだと思うわ。この前エルフさんに無意識に精霊術を使ってるって言われてたわよね。その影響で魔法が上手く扱えないのかもしれないわ」
「むぅー、残念なんだよ……」
そういえばグラリエさんがフリージアは矢を放つ時に、無意識で精霊術を使ってるとか言っていた。
普段から精霊術の方を使っているから、普通に魔法とは相性がよくない可能性もあるか。
グラリエさんに詳しく精霊術を習えば同じように使えるようになるかもな。
次はマルティナの番でおどおどとした様子で魔法陣に手を添えると、黒く染まって黙々と紫の煙が出始めた。
「ぼ、僕はどうかな?」
「何とも言えない感じだわ。一応闇魔法の素養がありそうだけれど、特殊な魔力をしているみたいね」
「特殊!? つまり枠組みから外れたイレギュラー! くぅー、熱い展開じゃないか!」
「そう喜べることでもないのだけれど……」
拳を握り締めて喜ぶマルティナと、一方でエステルが頬に手を添えながら困り顔をしている。
念願の魔法の適性はあったけど何やら問題があるみたいだ。
多分漏れ出てる紫の煙的に、死霊術師の負の力が何か関係していそうだな。
次はミニサレナの番だったけど、魔法陣に手を添えても特に何も起きずに首を傾げている。
『ヤァ?』
「あれ、ミニサレナは特に反応ないんだな」
「機械だからこの魔導具じゃ診断できないのかも。正直ミニサレナは今の私じゃ理解の範疇を超えている存在だわ」
「まあ機械神って呼ばれるサレナの分身のようなもんだしなぁ」
「ヤァ! ヤァヤァ!」
今も宙に浮かびながら、目からビームを放ってミニサレナは自慢げに胸を張っている。
もう日常に溶け込んでるから気にしてなかったけど、常に空中に浮いてる時点で異常だよなぁ。
一応魔導機兵扱いだから魔法が機能してる存在のはずだが、エステルでも簡単には理解できないようだ。
そして最後は俺の番になり魔法陣に手を乗せた。
俺にも明確な魔法の素養があればいいんだが。
「どうだ、何か適性はありそうか?」
「こ、これは……全く魔力が流れていないわ」
「えっ、それってどういうことだ?」
「素養が全くないってことね……」
なん……だと……?
俺には魔法の才能が全くないってこと!?
「魔力もあるしガチャの魔導具は普通に扱えているのに不思議ね」
「でも大倉殿が魔法を使えないのはイメージ通りでありますなぁ」
「魔法を使う平八なんて想像できないんだよー」
「確かに魔法を扱えるほど知的にも見えないかな」
『ヤァー!』
こ、こいつら好き放題いいやがって……ミニサレナまでくすくすと笑ってやがる。
よかろう、ならば俺の真の力を見せてやろう。
俺はスマホを弄ってステータス画面からスキルを使い称号を魔導師の団長に変更した。
これで固有能力が魔法攻撃が20%増加するから魔法を使えるはずだ。
変更してからまた魔法陣に手を載せてみると、薄くではあるが虹色に光始めた。
「ふん、どうだ。俺だって魔法ぐらい使えるんだぞ」
「あら、本当ね。さっきと違って少し反応が出ているわね。全属性の適性があるみたい」
「スマホで何か弄っていたでありますけど、称号を変更したのでありますよね?」
「あー! 平八ずるしたんだよ!」
「君にそんな特殊な能力があったんだね。魔法が使えるようになるなんて凄いじゃないか」
ふっ、ズルいとは妬みは止めてもらおうか。
これは正当な俺の能力で魔法を使えるようになっているんだからな!
……まあ、総長のパーティの全ステータス15%アップを捨ててまで使うような能力じゃないけどさ。
適正診断をした後、各々エステルの助言を受けながら魔法の訓練に励んでいた。
ノールは魔力を制御する練習、フリージアは精霊術と魔法の区別をする練習、マルティナは魔法を使っても負の力が漏れない練習をしている。
なかなか上手くいかないのか、あのノール達でもこれにはかなり苦戦しているご様子。
「うーむ、こうやって改めて確認すると、ノール達が新しく魔法を使えるようになるのは難しそうだな」
「そうね。魔力があれば誰でも魔法を使えるって訳じゃないもの。フリージアは精霊術の方が合っていそうだし、マルティナも死霊術の力の影響が強くてどうしてもそっち側に引き寄せられちゃうみたい」
「まあ何事も新しく始めてすぐできるようにはならないか。シスハも私は魔法なんて使えませんよとか言ってたけど、マルティナとかと同じ理由だったのかもな」
「シスハは神官だから回復魔法以外は使えないんじゃない。私も魔法は色々使えるけど回復魔法はできないもの。同じ魔法でも大きく分野が変わってくると扱うのは難しいわ。異常なぐらい大量の魔力を使えば多少の無理はできるけどね」
「へぇー、魔法の世界も色々と奥深そうだな。ノール達が魔法を上手く使えないのはその辺りも影響してくるのか」
「ええ、そもそも私達は何かしらの能力に特化しているから、新しく何かを習得するのは難しいと思うの。それが出来たらノールは魔法を習得して簡単に魔法騎士になっちゃうわよ」
言われてみればノール達が簡単に魔法を習得できたら、設定された職業自体が変わってきちまうぞ。
元々多才なキャラが多いGCだけど、それでも限度はあるってことか。
シスハが攻撃魔法を使ったり、エステルが回復魔法を使うような大幅な強化は相当無理があるんだな。
それでも不可能ではなさそうだから、ノール達が自分の技術を教え合っていけば恐ろしいことになりそうだ。
「そういえばノールってスキルを使えば斬撃を飛ばせたよな。あれって魔法とかじゃないのか?」
「えっ、飛ぶ斬撃でありますか? あれは力いっぱい剣を振ったら飛んだだけでありますよ!」
「力技で物理的に斬撃を飛ばすなんてノールらしいわね……」
力いっぱい振ったら斬撃が飛ぶってあまりにも脳筋過ぎるだろ。
ノールはやはり魔法よりも物理の方が似合いそうだな。




