置き土産
7月28日にコミック版9巻が発売となります。
是非お読みいただけると嬉しいです!
サレナと話しながらエステル達を見守っていると、次第に装置から鳴る音が小さくなり始めた。
そして装置のあちこちから光が漏れ出すと、ついに音がしなくなりエステルは腕を下ろして息を荒くしている。
「ふぅ、やっと停止できたわね」
「や、やっと終わったのか……? もうあたい倒れそうだ……」
「カルカ、よく耐えきったな。アガリアも助かったぞ」
「この歳でここまで精霊術を使う日がくるとは思いませんでしたよ」
カルカは青い顔でぐったりとし、アガリアも腰を叩いて辛そうにしている。
ガルレガだけは腕を組んで平然としているが、足が震えていて我慢してるようだ。
3人がかりでも地脈と装置の接続を精霊術で切るのはかなり負担があったんだな。
エステルは疲れた様子だけどまだ余裕があるみたいで、近づいて声をかけた。
「こんな早く停止できるなんてさすがだな」
「うふふ、機械神様の協力もあったからね。私だけだったらここまで早く停止できなかったわ。でも、もっと褒めてくれてもいいのよ?」
「お、おう」
エステルが笑顔でグイグイと近づいてきたので、頭を撫でてやると満足そうに体を密着させてきた。
あの装置を停止させたのにまだまだ余裕があるみたいだな……さすがエステルさんだ。
そんなやり取りをしている俺達を他所に、サレナが装置に近づいて手をかざした。
すると装置の一部が光り出して中から硬貨がどんどん出てくる。
ま、まさかあの硬貨は……神魔硬貨か!?
「神魔硬貨の抽出が完了しました。どうぞ」
「おお!? こんなに入ってやがったのか! ガルレガさん、これ私達が貰ってもいいですか?」
「好きにしろ。俺達がどうこう言える立場でもないし、こんな装置に使われていたような物を持ち帰りたくもない」
ガルレガは手を払っていらないという仕草を取っている。
俺としてはありがたい話だけど、言われてみれば魔物が湧き出す装置に使われてた硬貨なんて不気味だな。
装置から出てきた硬貨は25枚もあり、影の魔人から手に入れたのと合わせたらこれで30枚手に入った。
緊急召喚石との交換で2枚消費したが、28枚も増えたと思えば爆アドだ!
大量に神魔硬貨を入手できてルンルン気分でいると、シスハがある不安を口にし出した。
「装置を停止できたのはいいですけど、再び魔人が来て利用されたりしませんかね? 魔人なら神魔硬貨を新たに用意できそうですし」
「安心して頂戴。内部の魔法は跡形もなく消しておいたもの。それに回路もめちゃくちゃにしておいたから、二度と復元もできないわ」
「さすがエステルであります。魔人の作った魔法もそんな風にできちゃうのでありますね」
「再現は難しいけれど、似たような装置があったら次からはすぐに解体できるわ。ミニサレナの補助で解析もスムーズだったし、魔人の魔法への理解も深まったもの。ありがとうね」
『ヤァー!』
ミニサレナは相変わらず元気よく腕を振り上げて喜んでいる。
今後同じような魔人の装置が出てきても、エステルがすぐに解除できるようになったのはありがたいな。
再利用される心配もないようだから安心できるぞ。
それにしても解析か……サレナは魔物の解析だけじゃなくて装置の解析まで可能。
俺のスマホに関しても解析で何かわかるんじゃなかろうか。
「サレナ、このスマホも解析できないか?」
「可能です、お任せください」
そう言ってサレナは俺のスマホを凝視して固まった。
かと思えば、今度は手に取って画面や背面などじっくりと確認している。
そしてしばらくしてから俺にスマホを返してきた。
「解析が完了しました。これは通信端末です」
「う、うん? そうだけど……それ以外に何かわからないのか?」
「……503エラーが発生しました。時間を置いてから再度実行してください」
「どうやらサレナさんでも何なのかわからないようですね……」
サレナは無表情のまま俺達から目線を逸らして、それ以上は何も言うことはないという態度だ。
503エラーって絶対適当に言って誤魔化してるだろ!
機械神であるサレナでさえ、このスマホがどうなっているのかわからないのか……。
そんなやり取りもあったが無事に装置も停止できたということで、俺達は宮殿の外に出た。
これで迷宮も攻略して地下都市も正常化して万事解決、後は町中を徘徊する魔物を倒すだけかと思いきや……。
宮殿の庭を徘徊していた魔物達が見当たらず、地図アプリを見ても赤い点の表示がない。
「あれ、外にいた魔物の反応もいなくなってるな。迷宮化を解除して装置も停止させたからか?」
「これで完全に地下都市を取り戻せたのでありますね。ドワーフ達も気軽に探索しに来れるのでありますよ」
「魔物の駆除をせずに済んでよかったわね。早く帰ってゆっくり休みたいわ」
市街地の方まで地図アプリを表示させても反応がないから、地下都市周辺の魔物はほぼいなくなったのかもしれない。
プソイド系がいなくなったのはいいけど、プラチナガーゴイルとかもいなくなってそうなのは残念だな。
けど、これで今後ドワーフ達が安心して地下都市を訪れられるからいいか。
不安要素も全てなくなりさっそく移動しようとしたが、突然サレナの体が光始めた。
「活動限界時間に達したようです」
「あっ……もうそんなに時間が経っちまったのか。悪いな、戦闘してもらうためだけに呼び出しちまって」
「それがオーダーですから問題ありません。それよりもあなたはあのクソ……厄災龍に所縁ある物をお持ちでしょうか?」
「ん? 厄災龍……カロンの物か? それなら牙を貰ったぞ」
リュックからカロンから貰った牙を取り出して見せると、サレナは目を細めて険しい顔をしていた。
厄災龍とか言ってるし、間違いなく良い印象は抱いてなさそうだが……何か気になることでもあるのだろうか。
牙を見たサレナは何かを納得したかのように頷いている。
「今回の私と同様に厄災龍も呼び出したのですか。ならば私も何か贈呈いたします」
「えっ? 別にその必要はないんだけど……」
「厄災龍もあなた方と縁を深めるために牙を渡したと推測します。なので私もするべきと判断いたしました」
「いいんじゃない? 貰える物は貰っておきましょうよ。それがあればサレナも呼び出しやすくなりそうじゃない」
「うーん、そこまで言うなら貰っておくか」
確かにサレナ所縁の物を持っていれば、緊急召喚石で呼び出せる確率が高くなりそうだ。
カロンの2回目の召喚の時に爪のおかげで呼び出せたしな。
サレナは一体何をくれるのだろうか……機械だしネジとか部品系か?
なんて思っていたのだが、サレナはとんでもないことを言い出した。
「ミニサレナを1体お渡しします」
『ヤァー!』
「……は? いやいやいや! ミニサレナはさすがに無理だろ! そんな気軽に渡せるもんじゃないだろ!」
「問題ありません。本体である私が帰還しても、ミニサレナは単独で行動可能です。1体ならばあなたに負担もなく存在も維持できるでしょう」
「ん? 俺に負担って……」
「私がいないことでミニサレナは性能が低下し、専用の複製武装も使用できません。無強化状態の性能と思ってください。破壊されたら消滅しますので、戦闘以外の用途での使用を推奨いたします」
俺の言葉を遮るようにサレナは話を続け、その間もどんどんと体が透けていた。
説明を終えるとミニサレナを手に持って差し出してきて、困惑しつつ受け取ると満足そうに微笑んでいる。
「次は真のマスターとして認証するのを待望いたします」
そう言ってお辞儀をするとサレナの姿は完全に消えた。
4体のミニサレナは同時に消えたが、彼女の言った通り1体はそのまま俺の腕の中で存在し続けている。
マジでミニサレナを1体貰っちまったぞ……。
唐突な出来事にシスハ達も唖然としている。
「帰ってしまいましたね……。何というか、カロンさんとはまた違った強引さがありましたよ」
「うむ、だが頼りになった」
『ヤァ!』
「ミニサレナちゃんが挨拶してるんだよー! やったね、仲間が増えたよ!」
むっふんと鼻息を鳴らして胸を張るミニサレナに、フリージアが大はしゃぎしている。
ま、まさかこんな形で仲間が増えるとは思わなかったぞ……これからどうしようか。
前書きでも書きましたが7月28日にコミック版9巻が発売となります。
ノールのキャラクターシナリオが漫画化していて、是非お読みいただけると嬉しいです。
表紙は希少な素顔ノールとなっております!




