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臨時マスター

 迷宮を攻略したと思いきや、プソイドの大群に囲まれ魔人の出現などもあり俺達は窮地に陥った。

 その絶体絶命の状況を打破するべく、ディメンションルーム内で待機していたモフットとカルカ達を呼んだ。

 外に出てきたカルカ達は女神の聖域が展開された内部で、外側で大量に蠢くプソイド達を見て顔を青ざめさせている。


「あんたらさ、この短時間で何が起きたんだ! 何だよこの状況は!」


「気持ちはわかるが落ち着けカルカ。これから一仕事するぞ」


「ですがお嬢が混乱するのも無理ないですよ。私も正直何が何やら……」


 混乱しているカルカとアガリアをガルレガが落ち着かせている間に、俺達は助っ人を呼ぶべく緊急召喚石を準備していた。

 神魔硬貨を2枚消費して緊急召喚石と交換したのだが、貴重なアイテムを使ったことで何とも言えない複雑な心境だ。


「ぐぅ、せっかく手に入れた神魔硬貨を緊急召喚石にしないといけないなんてなぁ」


「仕方ないじゃない。むしろいつでも交換できて助かるわ」


「緊急時にすぐ援軍を呼べるのは強みですよね。一気に複数個使えたらどんな敵でも倒せてしまいそうですよ」


「あまり頼り過ぎるのもよくないでありますよ。ここぞって時に使わないといけないのであります」


 1度に緊急召喚石を何個も使えたらまさに敵なしの状態になるけど、1個に付き神魔硬貨を2枚使うのはきつ過ぎる。

 本当なら俺達の強化アイテムとして使うべき物だから、ノールの言う様に緊急召喚石に頼るのは本当にどうにもならない時だけにしておこう。

 そんな訳で準備も完了して、さっそくスマホをモフットの前に置いた。

 

「ではモフット先生、お願いします!」


 モフットに一礼してお願いをすると、それに応えるようにモフットは体の黄色いハートマークを輝かせた。

 キリっと目つきを鋭くしてスマホの画面をタップして緊急召喚石のYesボタンをタップする。

 スマホから光の粒子が溢れ出して人の形に形成されていく。

 そして完全に実体化した姿を見て、俺は目をひん剥いて驚愕した。

 

 セミロングの紫がかった黒い髪、右目が赤く左目が青い光り輝くオッドアイ。

 レオタードのようなぴっちりとしたスーツを着用し、メカメカしい腕カバーにハイブーツをはいたサイバーチックな戦闘服。

 こいつは……機械神サレナだ。


「魔導機兵サレナ、応召しました」


 そう言って驚く俺達を他所に、サレナはこっちを見る素振りすらなくモフットに近づいていき目の前で跪いた。


「臨時マスターと承認いたします。オーダーをどうぞ」


 えっ、モフットのことを臨時マスターって言ってやがるぞ!?

 急にサレナに跪いて命令を乞われたモフットは、困惑したようにプーと鳴いて俺達の方を見ている。


「あのー、呼び出したのはモフットなんだけど、俺達の指示に従ってもらえないか?」


「権限がないので承認できません」


「あら……困っちゃうわね。どうしたらいいのかしら?」


「むむむ……モフット、何とかならないでありますか?」


 緊急召喚石のボタンを押したのはモフットだから、ある意味召喚者はモフットと認識しても仕方ないのか?

 そこは臨機応変に対応してもらいたいのだが、サレナは無表情のまま答えてきて取り付く島もない。

 機械だけあって融通が利かないというか、頑固というか……機械らしくはあるか。

 ノールがモフットに何とかならないか問うと、少し考えてから何か閃いたのかピコーンとうさ耳を立てた。

 何をするのかと思いきや、トコトコと歩いてきて俺の体に触れながらプーと鳴く。

 すると、サレナはこくりと頷いて俺に目を向けてきた。


「権限を譲渡されましたので、あなたを臨時マスターとして承認いたします」


「モフットの言ってることわかるのかよ!?」


「一定の知能のある対象なら意思の疎通が可能です」


「わー、いいないいな! 私もモフットと話してみたいんだよ!」


「うむ、モフットは頭がいい。平八より賢いまである」


「モフットならそう言われると納得できるね。僕も一緒に本を読んだことあるし」


 モフットと一緒に本を読むって……というか俺より賢いはいくらなんでも酷くないか!

 さすがに俺の方が賢い……賢いはずだ! ウサギには負けたくねぇ!

 そう俺達がやり取りをしている最中、カルカの叫び声が聞こえてきた。


「な、なんだそいつ!? いつの間に出てきたんだ!」


「あー、緊急時だったので呼び出したんですよ」


「人まで呼び出してくるとは……本当にお前らは何でもありなんだな」


 ガルレガは驚いた素振りはなかったけど、またかよと呆れ返った様子をしている。

 あれだけ驚かされていたから、もう突然助っ人が現れても動揺しなくなったのか。慣れって怖いな。

 どうやら説得も無事に済んだようでカルカ達が落ち着いた後、改めてサレナと会話を始めた。


「オーダーをどうぞ。1から66までは直ちに実行可能です」


「あっ、ああ……オーダーはよくわからないけど、魔物に囲まれてるから一緒に倒してほしいんだ。あと暴走しているあの装置に関して何かできることはあるか? あれのせいで魔物が発生しているから停止させたい」


 うーむ、やっぱり機械なだけあって感情を全然感じない。

 さっきから1ミリも表情が変わらないし、態度も素っ気ないというか人間味がないぞ。

 機械だから当たり前と言えば当たり前なのだろうか。

 まあ今は緊急時だから、世間的な会話はなしですぐ実務的な話に入った方がいいよな。

 召喚した理由を説明すると、サレナは聖域の外にいるプソイドと背後にある鉱物発生装置を少し凝視した。


「解析完了、魔物の処理は問題ありません。私単騎でも戦闘は可能です。装置の停止は私だけでは不可能です」


「一瞬でそんなことまでわかるのね。魔導機兵って聞いたことがないけれど、どんな能力なのかしら?」


「大倉さんから以前に機械って聞きましたけど、人にしか見えませんね。体に機械を埋め込んだりしているのですか?」


「構成は100%機械部品、外装は生体偽装設計、思考能力はAI制御。高性能ゴーレムと解釈してください」


「ゴーレムなの!? ……わー、お肌ぷにぷにするんだよー。ゴーレムに全然見えないよ!」


「うむ、ごつくない。私の知るゴーレムは大体硬い」


「僕は機械に関してまだ疎いけど、見ても触っても人にしか思えないね。言われなきゃ人にしか見えないよ」


「触れないでください。おさわり厳禁です」


 フリージアとルーナとマルティナの3人に、サレナは無抵抗で全身ペタペタと触られている。

 頬っぺたをツンツンされても無表情なのに変わりなく、フリージアがおーと声を上げて面白がって更に触っていた。

 機械神と呼ばれるユニットだし全身カチカチに硬いと思ってたけど、頬がぷにぷに変形してるし柔らかそうだ。

 ちょっと俺も確かめたくなるが気安く触るのはちょっと……というか、機械だけど性別とかあるのか?

 見た目はまごうことなき美少女の姿をしているが、全身100%機械ということは……今は触れないでおこう。


「サレナ、作戦を立てるのにステータスを見ていいか? 皆にも共有するぞ」


「承認しました。情報の開示可能です」


 まずはどれぐらいの強さなのか確認をしておかないとな。

 という訳で本人の許可も出たので、ノール達にも見せながらステータス画面を開いた。


 ――――――

●【セミデウス・マキナ】サレナ 種族:魔導機神

 レベル:100

 HP:3万

 MP:2万

 攻撃力:1万

 防御力:5000

 敏捷:700

 魔法耐性:50

 コスト:60

 

 固有能力

 『端末生成』

 5機の支援ユニットを展開する。破壊後1分に1機再生する。

 『自己修復』

 50秒に1回総HPの20%を回復する。

 スキル

 『リミットブレイク☆5』

 一定時間攻撃力を5倍、固有能力と装備のクールタイムを0にする。再使用時間【10分】

 『エナジーフィールド☆5』

 物理魔法攻撃のダメージを50万分まで吸収し能力値に変換する。再使用時間【5分】

 ――――――


 カロンと同等のコスト帯だけあって、やはり能力がどれも凄まじいな。

 続けて専用装備も見ておこう。


――――――

武装ユニット☆5

●ショートレンジ

魔法耐性無効

攻撃力+5000

行動速度+40%

回避補正【大】

●ミドルレンジ

攻撃力+5000

防御力+4000

移動速度+30%

ダメージ30%カット

●ロングレンジ

防御力無効

攻撃力+9000

攻撃力+40%

命中補正【大】

・共通能力

1撃のみ3倍の攻撃力に上昇する。クールタイム【1分】

――――――


「やっぱりとんでもない能力値だな……」


「あら、でもUR装備は1つだけなのね。表記が3つもあるのはどういう意味なのかしら」


「交戦距離に応じて武装を変更できます」


「距離で武装が変わるなんてカッコいいじゃないか! ロマンを感じるよ!」


「確かに強力そうですけど、それでUR装備1つだけなのは物足りない気もしますね」


 URユニットの専用装備は基本的に1人に付き2つ存在しているけど、その中にも例外がある。

 あまりにも強かったり特殊性がある装備に関しては、武器か防具のどちらかのみの場合だ。

 サレナの場合は1つの専用装備で切り替えが可能で、近距離、中距離、遠距離で装備を変更できる。

 だが、これだけだとシスハの言う通り物足りなくも感じるだろう。

 しかしそれにはちゃんとした理由があり、その疑問に対してサレナが答えた。


「私だけでなく端末ユニットも装備可能です」


「えっ、どういうことでありますか?」


「端末生成を開始します」


 サレナがそう言うと彼女の周辺に5つの光が出現して、一瞬で実体化して姿を現す。

 それは1頭身サイズに小さくなったサレナの見た目をした端末ユニットだ。


『ヤー!』


 無表情の本体とは打って変わり、端末ユニットのサレナはプカプカと宙に浮かびながら、片手を上げ満面の笑みを浮かべて叫んでいる。


「な、なんでありますか!?」


「小さなサレナちゃんなんだよ! 可愛い!」


「ミニサレナとお呼びください」


『ヤー!』


「ぬいぐるみのようだ。これで戦えるのか?」


「機能性は本体の私に劣りますが、武装はそのまま扱えます。武装ユニットは複製できるので、5機共私と同様の装備になります」


「つまり攻撃力は同等の分身が5体いるってことかい?」


「そ、そう聞くと恐ろしく感じてきますね……」


 可愛らしい見た目をしているミニサレナだが、サレナ本体のUR装備を複製して運用可能なのだ。

 本体と5体の端末ユニットがこのUR装備を着用して一斉に襲ってきたらどうなるか、考えるだけでも恐ろしい。

 本来のGCだと端末ユニットは2体だったけど、強化されている影響で数も増えているんだろうな。

 サレナの実力もわかったところで、さっそくこれからどうするか作戦を立てることにした。


「魔物の戦闘は私と4機のミニサレナが参加し、1機は装置解析の補助に回ります。解析は魔導師とドワーフで対応してください」


「ええ、そのつもりだったから助かるわ」


「カルカ、アガリア、お前らも俺と一緒に手伝え。あの装置には精霊術も使われているんだ」


「わかりました。精霊術は得意ではありませんがお任せください」


「い、いきなり部屋から出されてこの状況で手伝えってさ……ああもうわかったよ! やればいいんだろやれば!」


 おぉ……モフットの幸運スキルを使っただけあって、戦闘に装置の停止まで同時に補助できるのか。

 それでも魔法を直接操れる訳じゃなさそうだから、装置の停止はエステルとドワーフ達がメインでやるしかない。

 エステルはそっちに集中しないといけないから、残りの俺達でプソイド共を駆逐する。

 サレナと端末ユニットが加わってくれれば、プソイドの大群も蹴散らせるはずだ。


「ではオーダーを開始します。敵戦力の壊滅及び、装置の停止を実行します」


 そうサレナが宣言したことで、俺達も本格的に戦闘態勢に移るのだった。

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― 新着の感想 ―
読み返してたら見つけてしまったふと気になる個所 >それは1頭身サイズに小さくなったサレナの見た目をした端末ユニットだ。 1頭身ってカービィとかゆっくりとかの頭=体全部な事だと思うのですがミニサレナも1…
[一言] 5体もおるなら一人くらい持って帰ってもバレへんか……。
[一言] 機械神サレナかぁ ・セミロングの紫がかった黒い髪 ・右目が赤く左目が青い光り輝くオッドアイ ・レオタードのようなぴっちりとしたスーツを着用 ・メカメカしい腕カバーにハイブーツをはいたサイバー…
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