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影の魔人

 スマホに迷宮攻略の表記が出てからしばらく待つも、結局何も起きずに宮殿の迷宮化は解除された。

 今頃宮殿の外の迷宮化も解けて、地下都市全体から緑色の侵食が消えているだろう。

 崩落すると聞いていたガルレガも身構えていたが、困惑した様子で俺に聞いてきた。


「ほ、崩壊するんじゃなかったのか?」


「……いえ、大丈夫みたいです」


「崩れる雰囲気はないでありますね。普通に迷宮化が解けているのでありますよ」


「本当か! 無事に地下都市を取り戻したということか!」


 ガルレガは満面の笑みと涙を流しながら、地下都市が元に戻ったことに歓喜している。

 その一方で、俺達は今までと違う迷宮攻略後の現象に首を傾げ、シスハが最初に疑問を投げかけてきた。


「何故消滅せずに済んだのでしょうか? 精霊樹の迷宮はエルダープラントが壊してはいましたが、ゴブリンやアンゴリ迷宮は消滅しましたよね」


「それほど侵食されていなかったのかしら。迷宮化の仕組みもわかっていないし、それほど謎が多いってことね。とりあえず無事に済んだのを喜んでおくべきだわ」


「うむ、面倒がなくていい」


「わーい! ドワーフさん達の町が無事でよかったんだよ!」


「こんな興味深い町が消えるなんて損失でしかないからね。これからじっくりと見て回れるのは喜ぶべきことだよ。これならまた居住するのも可能じゃないか」


 そりゃ何事もなく地下都市の迷宮化が解除されて、元の状態に戻ったのは喜ばしいことだ。

 ここは素直に喜んでおくべきだけど……何か釈然としないな。

 それにマルティナの言う様にこれならまたドワーフ達が住むことも可能だろう。

 俺もそう考えていたのだが、喜んでいたガルレガは打って変わり真面目な表情で首を横に振る。


「いや、来る前も言ったが我らがまたここに住むことはないだろう。既に新たな地で安定した生活をしているからな。観光する形で訪れる者は増えそうではあるが……」


「そうね。いくら町を取り戻せたと言っても、また戻ってくるのは色々と厳しいでしょうね。迷宮化が解けたからって魔物が完全に湧かなくなった保証もないもの」


「それに敵対関係に近いイヴリス王国に場所を知られていますからね。1度は無人になった場所ですから、ドワーフの中で不安に思う方も多いはずです」


 シスハの言うことも一理あるな。

 この地下都市は魔人の襲撃を受けて1度は廃墟となった場所だ。

 それに魔物があちこちに発生していたとなると、いつかまた同じことが起きるか不安を抱くのも無理はない。

 もう他の移住地があるのならわざわざ戻ってこないで、観光地として来るぐらいがちょうどいいのかもな。

 元に戻ったとはいえしばらくは様子を見ないと、迂闊に近寄れないだろうしさ。

 

 これで完全に終わったんだと俺達は安堵していたのだが、不意にエステルが声を上げた。


「……あら、何かしら」


「うん? どうかしたのか」


「あの装置が動き出したみたい。急激に力が膨れ上がっているわ」


 そう言われて近くにあった巨大なドーム状の装置を見てみると、ゴゴゴと音がなって振動が伝わってきた。

 俺は力とやらを感じないけど、迷宮化が解けて動き出したのか?。

 プソイドミスリルがこれを守る様に立ちはだかっていたが、何か関係があるのかねぇ。

 もう迷宮も攻略したし特に問題ないだろうと他を調べようとしたが、少し離れた場所から物音が聞こえた。

 振り向くとそこには銀色の円柱が飛び出していて、徐々に大きくなっている。


「な、なんだ? 地面から石が突き出てきたぞ!」


「あれは……ミスリルでありますよ!? ミスリルが生えてきたのであります!」


「やはりあれが鉱石を生成する装置だったのかな。ここにある鉱石は全部あれが生成した物のようだね」


「迷宮化が解けて機能が元に戻ったのでしょうか。私でもわかるぐらいに地脈から力を吸い上げているようですが……それにしても膨大過ぎませんかね?」


「嫌な予感がする」


 これであの装置が鉱石を生成するってわかったけど、シスハ達の反応を見ると何やら異常が起きているようだ。

 でも所詮は鉱石を生成するだけの物なんだし、何か起きたところでたかが知れてるだろ。

 そう俺は楽観視していたのだが、地図アプリに反応があり確認して背筋に悪寒が走る。

 ちょうどミスリルが生成されている位置に、突然赤い魔物の反応が出てきたからだ。


「なあ、あのミスリル魔物じゃね?」


「ええ!? でもさっきまで魔物の気配しなかったよ!」


「ここで生成された鉱石は魔物になる可能性があるのかも……ククッ、面白い展開になってきたね!」


「ふざけろ。何が面白い」


 おいおい、どうなってやがる! なんで生成されたミスリルが魔物化してやがるんだ!

 だ、だけどまだあの新たに生成されたミスリルが魔物化しただけ……と軽く考えていたが、続々と地図アプリに赤い表示が増えていく。

 俺はそれを見て即座にはめていた指輪に発動しろと念じて、女神の聖域を展開した。


「大倉殿! どうして女神の聖域を使ったのでありますか!」


「……囲まれてる。周辺にある鉱石殆ど魔物化し始めやがったぞ」


「見て、あれ。お兄さんの判断は正解だったようだわ」


 エステルが指差した先には絶望的な光景が広がっていた。

 この階に生成されていた鉱石が人の形になって動き出していたのだが、特に目を引くのはどんどん集まってくる輝く銀色の奴らだ。

 それは全てプソイドミスリルで、10体を超える数になっている。

 しかも全部既にコピーを終えていて、ノールの姿をした奴だけで5体。

 更には槍を持つルーナの姿、弓を持つフリージア、鎌を持つマルティナ、拳をバキバキと鳴らすシスハのコピーまで勢ぞろいだ。

 さすがにこれにはシスハ達も顔を青ざめている。


「プソイドミスリルに加えて、ゴールドやメタルやら沢山いますね。しかも全部私達をコピーしていますよ」


「あっ、私のコロッサスもいる! わーい!」


「ふむ、私のもいるな。戦いたくない」


「僕までいるじゃないか! もうだめだ、お終いだ……。こんなの勝てる訳ないよ!」


 マルティナは四つん這いになり全身で絶望を表現していた。

 集まって来たプソイド達は俺達を標的にしていて、女神の聖域に対して攻撃を加えていた。

 幸い女神の聖域はビクともしていないが、ここから出た瞬間に数十体を超える数の魔物から袋叩きに遭う。

 しかもただの魔物じゃなくて、ノール達をコピーした全身ミスリルの奴が大量にいる状況。


「擬態していた……訳じゃないんだよな?」


「うん、今は鉱石からも魔物の気配がするんだよ」


「恐らくこの装置から何かが作用して、鉱石が魔物化しているんじゃないかな」


 トレントのように擬態していたらフリージアが気づくはずだけど、それもなかったからやっぱり装置が動き出して魔物化したってことだよな。

 鉱石を魔物化させるって一体この装置は何なんだよ……本当にドワーフが作った物なのか?

 とにかく今は余計なことを考えていないで、女神の聖域が発動している間に対策を考えないとな。


「逃げるだけなら何とかなるか?」


「ええ、迷宮化も解けて魔法で地面に干渉できるわ。土魔法で抜け道なら作れるわよ」


「こ、これを放置して逃げるというのか! せっかくステブラを解放できたというのに……」


 ガルレガは俺達の会話を聞いて涙目になり肩を落としていた。

 地下都市を取り戻したと思ったらこれだもんな……俺としても申し訳なく思う。

 だけどこの状況だし逃げる手段も考えておくべきだ。

 さすがにこのまま戦うのはあまりにも無謀過ぎるしな。

 かと言ってこれを放置していくのもどうかと思う。

 装置は暴走してノール達のコピーまで作られちまったからな……あれを放置して問題を先延ばしにしたら後が怖いぞ。


 どうした物かと皆で話し合っていると、不意に声が響いてきた。


【ほお、貴様らがあいつらの言っていた人間共か】


 この場に反響して聞こえる男の声に俺達は周囲を見渡したが、その声の主は見当たらない。

 そんな俺達の様子を見てか、楽しそうな声色で話しかけてくる。


【愉快愉快、何か起きたと聞いて来てみれば愉快なことだ。まさか迷宮化が解けているとはな。どうやったんだ?】


「誰だ! どこにいやがる!」


【はははっ、どこにいるのだろうな? お前のすぐ後ろかな? それとも上か――】


「見つけた!」


 声を遮るようにフリージアが弓を構えて、壁に向かって矢を放った。

 その先に何かいるようには見えなかったが、矢が壁に当たるとクレーターが出来て凄まじい威力なのがわかる。

 一体フリージアは何を狙ったのかと首を傾げていたけど、矢の当たった場所から黒い物が姿を現した。

 人ぐらいのサイズをしていて、全身がモヤモヤと不定形な靄のような奴だ。


【……驚いた。まさか我の場所を特定するとは。貴様のようなエルフがまだ残っていたとはな。あいつが恐れるのも納得か】


「むー、当たったのにピンピンしてる! なんで!」


「見たところあれは影のようだね。生命力を感じないから本体じゃなさそうだよ」


 か、影だと? 一体なんなんだあいつは……口ぶりからしてマルティナは感知できなかったようだな。

 とりあえずステータスを見ておこう。


 ――――――

●?【分体】 種族:アークデーモン

 レベル:?

 HP:?

 MP:?

 攻撃力:?

 防御力:?

 敏捷:?

 魔法耐性:?

 固有能力 ?

 スキル ?

 ――――――


 こいつもステータスがロクに見れないじゃねーか!

 だけど分体って表記に種族はアークデーモン、十中八九こいつは魔人だな。

 元々この場所に魔人が潜んでいたのか、それとも迷宮化が解けたからやって来たのか……会話で情報を引き出してみるか。


「何しにここに来たんだ? わざわざ声をかけてきたのなら何か用があるんだろ」


【ただの興味本位さ。話を聞いて自身で確かめたくなっただけだ。この量のプソイドミスリル相手にビクともしない結界を瞬時に張るとはな。騎士団やAランク冒険者を警戒はしていたが、まさか我らの情報網に引っかからず動く強者がいたとは信じられん。貴様らどこから出てきた?】


 話を聞いて、か。その話をしたって奴はミラジュなんだろうな。

 地下都市の迷宮化が解けたのを感知して確認しに来たら、話に聞いていた俺達がいて声をかけてきたってところか。

 俺の話に応じてきたのは、こいつも何か情報を引き出そうとしてるって魂胆だろ。

 魔人は想像以上に情報網があるようだから、突然現れた俺達の存在に混乱しているのかもしれない。

 当然どこから来たかなんて答えられるはずもなく黙っていると、相手の方から話を進めてきた。


【答えるはずもないか。まあよい、それほどの結界はそう長く維持もできんだろ。愚かなドワーフ共のおかげで厄災を起こせ、貴様らも始末できるとは本当に愉快なことだ】


「厄災だと? それにドワーフのせいって……」


【これからこの地はプソイド共で埋め尽くされ、やがてこ奴らは地上にも解き放たれる。そうなれば愉快なことになるだろう。これも欲深いドワーフのせいだ】


 確かにこのプソイドミスリル達が地上まで出てきたら、まさに厄災と言っても過言じゃない。

 だけどその状況を引き起こしたのがドワーフってどういうことだ?

 魔人の言葉に今まで黙っていたガルレガも、憤慨した様子で声を荒らげていた。


「我らが何をしたというのだ! このような事態を引き起こす真似をした覚えはないぞ!」


【はははっ、何も知らされていないとは悲しきことだな。貴様らの背後にある装置は我ら魔人の知識を取り入れて作った物だ】


「なっ、ドワーフが魔人の知識を……う、嘘だ! 嘘を言うな!」


【真実だ。一部の者しか知らなかったようだが、ドワーフと魔人は手を組んでいた。鉱石を自由に生成できるというのに釣られてな】


 鉱石を生成する装置はドワーフと魔人が共同して作った物ってことか!?

 ドワーフからしたら鉱石を自由自在に生成できるのは魅力的なんだろうが、だからって魔人と手を組むって……何やら雲行きが怪しくなってきたな。

 こいつは色々と情報を持っていそうだし、何としても聞き出したいところだ。


「それならどうして地下都市を迷宮化したんだ。それにドワーフを攫ったりもしたんだろ?」


【はははっ、教えてやる義理がない。貴様らも先ほど答えなかっただろ。だが、最後の土産にドワーフが我らを裏切ったとだけ言っておこう】


 ぐっ、やっぱりそう簡単に答えるはずもないか。

 でもドワーフが魔人を裏切ったか……ドワーフは人間と魔人を敵視して、魔人は人間とドワーフと敵視しているのか?

 何だか話が複雑になってきてよくわからない状況だな。まさにカオスって感じがする。

 こいつはマリグナントやミラジュよりも警戒心が強いみたいだし、これ以上話を聞き出せそうにないな。

 相手も俺達から話を聞き出せないと思ったのか、壁の影の中に潜り込んで姿を消そうとしていた。

 だが、その途中で何か思いついたようにまた声をかけてくる。


【そうだ、去る前に餞別をくれてやろう。貴様ら神魔硬貨を集めているそうだな】


 そう言って影から手が出てくると、そこには5枚の神魔硬貨が握られている。

 それを見てフリージアが喜々とした様子で声を上げた。


「えっ!? それくれるの!」


【ああ……存分に受け取るといい】


 魔人は手に持っていた神魔硬貨を1枚ずつ投げ始めて、その先にはノールの姿に変化したプソイドミスリルがいた。

 神魔硬貨がそのまま体に当たると、弾かれることなくズズズッと中に入り込む。

 するとプソイドミスリルの体の輝きが増して、全身から白銀のオーラが漂い威圧感が増す。

 それを同じように5回繰り返して、全部で5体のノール型コロッサスに神魔硬貨が取り込まれた。

 ま、魔物が神魔硬貨を取り込んだだと!? どういうことなんだよ!


【ここで使うのは少々勿体ないが、これで確実に貴様らを葬れるのなら安い物か。こ奴らを倒せば硬貨は貴様らの物だ。無事にこの地から脱出できたらの話だがな。ではさらばだ、2度と会うこともないだろう】


 ことを終えたとばかりに魔人の影は壁の中にズズッと溶け込んでいき、愉快そうな声だけを残して姿を消した。


「あっ、気配が消えたんだよ! どこかに行ったみたい!」


「友達に周囲を探してもらったけど、本体を見つけられなかったよ……。かなり遠くからあの分身を操っていたようだね」


「ミラジュといいさっきの奴といい、魔人ってコソコソした奴多くないか? さっきの奴なんて名前すら表示されなかったぞ」


「名称するなら影の魔人ってところかしら。どっちも偵察に長けた能力だから、何かあった時に動く要員としては適切だわ」


「逃げ足も相当速そうですから、私達が本気で追いかけたとしても倒し切れるか怪しいですね。戦闘要員の魔人もどこかにいるのでしょうか」


「ぐぬぬ、影の魔人とかなんてカッコいいんだ。ミステリアスな振る舞いをして去って行くとは敵ながらあっぱれだよ。闇の住人として僕も見習わなければ……」


「呆れた奴だ」


 マルティナは目を輝かせて影の魔人が消えた先を見つめていた。

 こんな状況でもカッコよさを求めてるとか、こいつ実はそんなに絶望してないだろ?

 一方で魔人の話を聞いたガルレガさんが、地面に両手を突いてへたり込んでいた。


「馬鹿な……ドワーフと魔人が手を組んでいたとは……」


「ガルレガさん、落ち着いてください。魔人の言ったことですから本当とは限りませんよ。それよりも今はこの場をどうにかしましょう」


「あ、ああ……そうだな。取り乱してすまない。だがこの状況で一体何をするつもりだ?」


 影の魔人の話はそれなりに信憑性があったけど、まだ真実だって決まった訳じゃないしな。

 今は考えるよりも目の前のことを解決しないといけない。


「まずやるべきことは2つだな。鉱石を発生させている装置を止めること。それとプソイドコロッサスを処理することだ」


「装置を壊すのはどうでありますか? それならすぐに止まるのでありますよ」


「止めた方がいいと思うわ。どう力が作用しているかわからないから、下手に壊すと何が起きるかわからないもの。地脈の力が枯渇したり、鉱石が大量生成されたり、魔物の発生が止まらなくなるかも」


「私としても力ずくで破壊したいところですが、こういう複雑な物は慎重に対処した方がよさそうです。エステルさんは装置を停止させる目星は付いていらっしゃるんですよね?」


「そうね。装置を止めるのは私とドワーフさん達で何とかなるわ。あれは土の精霊術と魔法が使われているようだから、協力すれば停止ぐらいはできるはずよ。まだ解析してないから、詳しいことはわからないけどね」


「当然協力させてもらおう。俺1人では力不足だが、カルカとアガリアも加わればある程度のことはできる」


「助かるわ。ただ問題は時間よね……女神の聖域が解ける前に停止できるか怪しいわ。解析中は恐らく私は戦闘に加われないから……ごめんなさいね」


 エステルは申し訳なさそうにシュンとしている。

 装置に使われている魔法とやらは、さっきの話からして魔人の魔法に違いない。

 それを解析して止めるとなれば、エステルがそっちに集中しないといけないのも納得だ。

 女神の聖域内に装置の一部が入っているから、解析自体は安全に行えるだろう。


「謝ることじゃないさ。エステルとガルレガさん達はそっちに集中してくれ。プソイド達の相手は俺達に任せてくれ」


「そうは言ってもどうするのでありますか? ミスリル系だけでも10体以上はいそうでありますよ……」


「神魔硬貨で強化されたノールさんのコピーだけでも5体はいますからね。それにルーナさんにフリージアさん、私までコピーされているようですよ。加えてプラチナにゴールドに無数のメタル系……ハッキリ言って戦闘面は詰んでますね」


「あの数は無理だ」


「あわわわわ……ど、どうしたらいいのぉ」


「ははは、絶望的な状況なのを忘れていたよ。現実は非情なんだね……」


 迷宮化を解除する前に戦ったプソイドミスリル1体ですらあれだったのに、それが10体以上もいる状況だ。

 更にゴールド系などのプソイドも大量にいて、そのどれもが俺達のいずれかの姿を真似している。

 しかも現在進行形で鉱石が生成され続け、全部じゃないけど続々と魔物化して数が増えていた。

 もし女神の聖域が解除されたら、なだれ込んできてあっという間に全滅させられてもおかしくない。

 だが、この現状を打破する術を俺達は持っている。


「諦めるのはまだ早い。俺達にはまだあれが残されているだろう」


「あれ……でありますか。はっ!? まさか!」


「そう、緊急召喚石だ。あれを使って助っ人を呼ぶぞ」


 もはや定番になりつつあるが、困った時の人頼み緊急召喚石だ。

 だが、あれを使うのに1つ問題があり、それに気が付いたシスハが質問を投げかけてきた。


「ですが緊急召喚石はもうありませんでしたよね?」


「この前使ったからもう在庫はない。だがな、在庫がないなら入手すればいいじゃないか」


「君は何を言ってるんだい? 追い詰められて狂ってしまったんだね……」


「狂ってねーよ! 緊急召喚石を手に入れる方法があるんだ!」


「あっ、そういうことね。神魔硬貨で交換するのかしら?」


「さすがエステル、その通りだ」


 神魔硬貨の交換ラインナップで、緊急召喚石は2枚で交換が可能だ。

 正直硬貨はできるだけ使いたくないのだが、背に腹は代えられない状況だ。

 影の魔人が投げてきた神魔硬貨を回収すればプラスだし、出し惜しみせずにここは使うしかない。

 これで緊急召喚石に関しては解決できたが、もう1つある問題に今度はノールが疑問を投げかけてきた。


「でも緊急召喚石でこの状況を打破できる人が来るでありましょうか……。またカロンを呼ぶのでありますか?」


「わーい! またカロンちゃんに会いたいんだよ!」


「ふむ……だがあの龍神が来て平気か? ここは地下だ。あいつのせいで崩落するぞ」


「プソイド達を倒しながら、装置を停止させる補助ができる人が来てくれたら助かるのだけれど……緊急召喚石はランダムだからガチャみたいな賭けよね」


「ああ、だけど心配するな。俺には秘策がある。ほぼ確実にこの状況を覆す存在が来てくれるはずだ」


「ほほぉ、それはまた随分と強気な発言ですね。してその心は?」


「困った時のモフット先生だ」


 運を求めた時の心強い味方、モフットを今回は連れて来ている。

 モフットのスキルを使えば、きっと緊急召喚石でも凄い結果を出してくれるに違いない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前話でのノールさんのセリフ「あれが1体だけでよかったのでありますよ。もし複数体いたら、私もスキルを使わないと厳しかったのであります」 それを人は“フラッグ”と呼ぶ。とおもったが・・・ やっ…
[一言] 上手いこと使えば自立移動してくれるミスリルの塊とかいうクッソ便利なモノが無限生成できる可能性……?
[一言] 更新ありがとうございます。 毎回モフット先生に引いてもらったらいいのに…と思ってしまいました…。 僕は、ガチャ運悪いんで、人に引いてもらってばかりです笑
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