探索方針
不壊の壁を抜けた俺達はステブラを目指して移動を始めて、難なくまた地下都市に入る門へとやってきた。
当然のようにまたプラチナガーゴイルが湧いて門番をしている。やっぱり倒しても復活するようだ。
魔法反射の固有能力持ちだから本来なら魔法の天敵のはずなんだけど、どの程度のものか試すために万全の準備をして攻撃をしてみた。
エステルお得意の滅びの光を撃つと、全身を輝かせながら受け止めて数秒は微動だにせず驚いたが、その後体が融解し始めてあっさりと消滅。
いくら固有能力とはいえ許容量を超えると駄目らしい。
その光景を見ていたカルカは顔を青ざめてドン引きしている。
「あんな見たこともないガーゴイルまであっさり倒しちまうとは……。本当に恐ろしい奴らだな。お前らが大人数同行させられないって言っていたのもよくわかったぞ。中にも似たようなのがうじゃうじゃといるのか?」
「多少弱くはありますけど、まだ私達も全然探索していないので何とも言えませんね」
「これは俺でもついて行くのがやっとになりそうだ……」
ガルレガも出会った当初の自信をすっかりと失くして不安そうにしている。
プラチナガーゴイルも本来ならかなり強い魔物だからなぁ。
それを即倒している俺達が迷宮探索は危険と言ってるんだから、不安要素が多いのも当然か。
プラチナガーゴイルが守っていた門にディメンションホールを突き刺して、再度俺達はステブラへと入っていく。
門の中に入ったカルカ達は喜びの声を上げていた。
「ついにステブラに入れたのか!」
「……ああ、長年夢にみた故郷の地に足を踏み入れた」
「うぅ……こんな日がまた訪れるとは……」
カルカは飛び跳ねてはしゃぎ、ガルレガは腕を組みながら静かに頷き、アガリアは泣いて町を見渡すといった形で各々違う反応をしながらも、全員喜んでいるのは間違いない。
憧れであり懐かしの故郷である場所に来たんだから嬉しくもなるよな。
そんな彼らをしばらく黙って見守って落ち着いた後、カルカとアガリアはディメンションルームに退避してもらい、ガルレガだけ同行させて探索を始める。
「正直どこに行っていいか私達もわからないんですが、ガルレガさんはどのように探索するか当てはあったりしますか?」
「当然ステブラに入れたらどこを目指すか予め決めてある。当時の地図を見てどう遠征するか散々話し合ってきたからな」
「あら、それは頼もしいわね。かなり広い町だから当てもなく探索してたら凄く時間がかかりそうだもの」
「こういう時は現地の知識がある方がいるのは頼りになりますね。特に元は都市として住まれていた場所ですから、どんな建物があったのか把握できるのはありがたいです」
おー、さすが遠征隊なだけはあるか。
元々住んでいた町なんだから地図があるのは当然だよな。
ガルレガから話を聞けば俺の地図アプリもさらに活用できそうだぞ。
とりあえずさっくりと地下都市について教えてもらうと、まず建物が建っているこの場所は居住区でステブラの中心。
次に外側に続いている道はそれぞれ生活に必要な物を確保する場所で、採掘場や農園や牧場などになっていたらしい。
大規模な鍛冶場やイベントをする会場などもあったりなど、居住区以外もそれなりに発展していたそうだ。
「なるほど、だから地下都市の外側に続いてる道が複数あるんですね」
「地下で鉱石の採掘や農園まで作れるなら、外部との交流をしなくても生活できそうだわ」
「まあ地下で育つ作物や家畜だけじゃなくて、地上の物も食いたくなるんだがな。人間と交流していた時は武器や防具を、魔導具や食料と交換していたそうだ。特に酒は絶品だったと聞いたな……」
「おっ、やはりドワーフはお酒がお好きなようですね。この探索が終わったら是非飲み明かしましょう。秘蔵のお酒を持ってきていますからね」
「何だと!? 人間にも話の分かる奴がいるじゃないか! 俺達の酒だって人間に負けてないからな!」
酒の話が出た途端、ガルレガは興奮気味にシスハの話に食いついている。
ドワーフって酒好きとして有名だけど、この世界でもそれは同じなんだな。
酒好きのシスハだったらドワーフ達とも仲良くなれそうだぞ。
酒豪疑惑のあるフリージアとドワーフが飲み交わしたらどうなるのだろうか……。
そんな話をしながらも、ガルレガは地図を広げてると一点を指差しながら真面目な表情で話を始めた。
「とりあえず必ず行ってもらいたいのはこの宮殿だ」
「宮殿!? つまりドワーフの王族がいたところかい!?」
「ドワーフに王はいないが長老達が集まる場所だったそうだ。そこで色々な決め事を会議していたらしい」
「へー、1人の指導者じゃなくて代表が話し合って町を運営していたのね。そこに行きたいなんて何かあるのかしら?」
「俺もよくわからないが、ドワーフにとって重要な物が残されているそうだ。ステブラの礎と呼ばれているが、俺ですらそれが何なのか知らされていない。ドワーフの中でも大長老しか知らないんだ。ただ持ち運べる物ではないから、まだ存在するかどうか確認しろと言われている」
「遠征隊にすら教えないなんて一体何なのでしょうか。その言い振りだと魔人に持ち去られた心配はなさそうですね」
うーん、シスハの言う様に現地に行く遠征隊に何なのか具体的に教えないのは気になるな。
町の礎って言うぐらいだから凄い物に思えるが……。
疑問に思いながらもそれ以上のことはわからず、ガルレガは地図上の次の目的地を指差した。
そこは居住区から外側へ続く道の先だ。
「宮殿に行く以外にはここで鉱物の確保もしてもらいたい」
「そういえば地下都市周辺でのみ採れる鉱物ってどんな物なんですか? コロチウムみたいな物ですか?」
「……どうせ同行せざるを得ないからいいだろう。ミスリルという魔法金属だ。コロチウムなんかより遥かに強靭で軽い。俺の知る限り最高の金属だ」
「あ、あの伝説のミスリルですか!?」
「す、凄いんだよ!?」
おいおい、あのミスリルが地下都市で採れるのかよ!
そりゃドワーフ達も必死になって確保したくもなるのも納得だ!
と、俺とフリージアは驚いていたのだが、ノール達はミスリルと聞いてもそうなんだ―程度の軽い関心しか示していない。
「お前ら反応薄いな。あのミスリルだぞ?」
「うーん、確かに凄い金属ではあるけれど……割と見かけるから伝説って言うほどじゃなかったわね」
「教会の装飾品とかによく使われていましたね。軽くて丈夫だから扱いやすかったですよ。あれはいい金属です」
「ミスリルの武器や防具はそれなりにあったのでありますよ。レギ・エリトラで切断した時は団長に叱られたのであります……」
「ふむ、割とその辺にゴロゴロ落ちてた」
「ミスリル製の物は換金率が高かったなぁ。よく拾っていたからお世話になったよ」
「えへへ、ミスリルが何なのか知らないんだよー」
お前何もわからないのに驚く反応してやがったのかよ!?
にしてもノール達にとってミスリルがそれほどの物じゃないとは……GCの世界じゃ割とその辺にある物なのか。
まあ、言われてみればノール達の装備ってミスリルより遥かに凄そうだもんなぁ。
ノール達の言葉と反応にガルレガは、何言ってるんだこいつらと小馬鹿にしたように笑った。
「はっ、ミスリルの装備を切断したなど世迷言……待て、お前のその剣と盾はなんだ!? 見せてくれ!」
「構わないのでありますよー」
ノールが持っていた剣と盾を見て、今更ながらもガルレガは目を見開いて驚愕している。
彼女が剣を手渡すとマジマジとそれを見つめて、もはやパニックになっているかのような反応をガルレガは見せた。
「な、なんだこれは……一体何で出来ている! こんな金属知らん! いや、これは金属なのか?」
「うーん、何なんでありましょうかね? 私も何で出来てるのか知らないのでありますよ。天から授かった剣と盾だって聞いたでありますけど」
「おー、ノールちゃんの装備も凄いんだよー」
「さすがファニャさんが持つ剣と盾ですね! 最強の騎士に相応しいですよ!」
「むふふ、そう言われると照れちゃうのでありますよ」
「お、お前ら本当に何者なんだ……」
フリージアとマルティナによいしょよいしょと持ち上げられて、ノールは頭を擦りながら照れている。
ガルレガからしたら訳わかんない魔法をぶっ放したり、理解不能の魔導具を使ったり、終いにはドワーフですら材質すらわからない装備を持っていたりと混乱したくもなるか。
ガチャから出てくるアイテムって常識外れの物が多いからな。
今の時点でこんなに驚いていたら、魔導自動車とか見たらぶったまげるんじゃないか?
ガルレガの混乱で話が少し逸れてしまったが、エステルがまたミスリルに関しての話に戻す質問を投げかけた。
「ミスリルはここでしか採掘できないのかしら?」
「いや、地下深くではあるが他にも鉱脈は存在している。だがそれほど埋蔵量は多くない。だからステブラに侵入できたら可能なだけ確保する方針だった」
「ではついでにミスリルも採取していきましょうか。取り分は半々ってところでしょうか」
「なっ!? ミスリルは元々我らの物だぞ!」
「まだ採取してないんですから誰の物でもありませんよね? それに手伝うんですからそれなりの報酬はいただきませんと。私達ならどんな量があっても1回で全部持っていけますよ。ね、大倉さん」
「あー、そうだな。けど半分はちょっとがめつくないか?」
「大倉さんがそれを言っちゃぁお終いじゃないですかー。こういう時は貰えるだけ貰っておけばいいんですよ」
ニシシと笑いながら人差し指と親指で輪っかを作りシスハはあくどい顔をしている。
こいつは本当に神官なのか疑わしい発想をしてやがるな……。
だけどミスリルが貰えるのなら少しはもらいたいところだ。
そんなこんなでさすがに半分は悪いので、採掘できた分から3割程度貰う条件で運搬まで含めて手伝うことになった。
迷宮攻略だけじゃなくてミスリルまで手に入る可能性が出てくるとは、期待できそうな探索になってきたな。




