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ドワーフとの敵対

「いくぞおい! 覚悟しろ人間共!」


 リーダー格の女性ドワーフがハンマーを振り被りながら走ってこっちに向かってきた。

 部下の男性ドワーフ達も武器を構えて続々とその後に続く。


「ちっ、あいつら全員敵対反応になりやがったぞ! どうする!」


「私にお任せあれであります! 対人で制圧するのは慣れているのでありますよ!」


「お、おう。怪我はさせるなよ」


 ノールが激しく主張してきたので思わず了承すると、親指でグッと合図をしながら1人前に躍り出た。

 剣は鞘に入れた状態のまま手に持って盾を前面に構えている。

 怪我をさせないように剣はあまり使う気はないみたいだな。

 だけどノールに任せて本当によかったのだろうか。


「勢いで任せちまったけど大丈夫か? エステルの魔法で拘束した方がいいんじゃ……」


「平気だと思うわよ。随分と血気盛んなドワーフみたいだから、少し相手をして頭を冷やさせた方が話もスムーズにできそうだもの。いざって時は私がすぐに大人しくさせるから安心して」


「見たところそれなりに逞しい方々のようですが、ノールさんなら大丈夫そうですよ。怪我をさせてしまったら私が回復させればいいですしね。ああいう輩は1度ボコるに限りますよ」


「くぅー! 1人で大勢相手に大立ち回りなんて痺れて憧れちゃうよ! 流石ファニャさんだ!」


「ふむ、高みの見物としゃれこもう」


 確かにあのリーダー格のドワーフは凄く好戦的に見えるからなぁ。

 魔法で拘束したら卑怯だなんだと騒いでしばらく話にならなそうだ。

 ある程度ノールが相手をしてこっちは戦う気がないとアピールしておけば比較的安全に済むだろう。

 

 マルティナのデバフで弱体化も考えたけど、下手に死霊術師の力を見せたら更に警戒されそうだしな。

 本人は何やら目を輝かせて騒いでいるし、ルーナの言う様に周りに注視しながら見物するか。

 

 1人で前に出たノールを見てドワーフ達にも反応があった。

 先頭を走っていた女性ドワーフが急に立ち止まると、片手を横に上げて後に続くドワーフ達を制止する。

 

「ハッ! 1人で来るとはいい度胸だ! お前ら手出しするなよ!」


「で、ですがお嬢!」


「うるせぇ! 余計なことしたらぶっ飛ばすかんな!」


 女性ドワーフはそう叫ぶとノールと同じように1人で前に出てきてノールと対峙した。

 ほほぉ、大勢で来るのを見ているのにノールが単体で迎え撃ってきたから、それに対抗してあっちも真似してきたか。

 正々堂々と言うか、対抗心が強いというか……本当に気の強そうなドワーフだな。

 ここは俺も正々堂々とステータスを見ないでおこう……なんて思わずに、念のためステータスを確認しておいた。


――――――

●カルカ 種族:ドワーフ

 レベル:74

 HP:1980

 MP:650

 攻撃力:910

 防御力800

 敏捷:40

 魔法耐性:20

 固有能力 土精霊の加護、鍛冶の才

 スキル 精霊術(土)

――――――


 おー、今更ではあるがこれでドワーフなのは確定したな。

 この世界の住人としちゃレベルもかなり高いしステータスもそれなりの強さだ。

 装備も自分達で作ったからか質もだいぶ良さそうだし、ガチャ産のRかSRにも匹敵するかもしれない。

 それでもノール達と戦うには差があるから、手加減するにしても心配はなさそうだな。

 

 ステータスも確認して不安もなくなったところで、ノールとカルカの戦いを見守る。

 対峙していた2人だったが、先に動いたのはカルカの方だった。


「どりゃあああぁぁぁ!」


 光になれと言わんばかりの勢いでカルカはハンマーを振り被った。

 ノールは避ける素振りすらなくそれを盾で受け止めると、ガチンと金属同士がぶつかり合う音が響く。

 カルカの攻撃はタイミングと位置、それに力と全てが完璧な物で会心の一撃と言ってもいいと思う。

 だが、ノールは微動だにせずに受け切り、それを見たカルカは目を見開いて驚いている。

 それでも負けじと勢いに任せて次々と攻撃を繰り出すが、ノールはやはりその場から動かずに全て受け止める。

 それに苛立ったのかカルカは距離を1度置くと叫び出した。


「くそ! 防いでばかりいないで剣を抜け!」


「そういう訳にもいかないのでありますよ。落ち着いて話を聞いてほしいのであります!」


「舐めやがって! 人間なんかと話すことはない!」


 随分と人間に対して敵対心を抱いているな……。

 やっぱり昔の戦争の頃に王国とも何か問題があったのだろうか。

 カルカはブツブツと何かを唱えると、空中に突然ゴツゴツの岩石が形成される。

 それをハンマーで叩くと、岩は先がとんがったツララのような形に変形しながらノールに向かって飛んでいく。

 問題なくその攻撃もノールは防いだが、岩のツララをどんどんと殴り飛ばして攻撃を続けていた。


「おお、あれが土の精霊術ってやつか。突然岩が出てきたのはどんな仕組みなんだ?」


「私も魔法でできなくはないけど、精霊が魔素を使って生成してるのかもね」


「ですが迷宮化した地面には干渉できないようですよ。普通の地面などがある場所で相手をしたら少し厄介そうですね」


 俺達が今いる場所も地面が緑色で迷宮に侵食されているから、エステルの魔法と同じで精霊術でも影響を及ぼすのは無理なのか。

 土の精霊術ともなれば、周囲が全て岩や土の環境だからまさに全てが武器のような物。

 その状態だったら流石のノールでも少しは苦戦を強いられていただろうな。

 精霊術による激しい攻撃は続いていたけど、次第に勢いは衰えていきついにカルカの動きは止まった。

 カルカは肩を激しく上下させて息も荒くし、一方ノールは全く呼吸も乱れずに凛とした佇まいのままだ。

 おー、久しぶりにノールが騎士っぽく見えてくるな。


「ハァ……ハァ……ち、ちくしょう……」


「もう満足したでありますか? そろそろ敵じゃないってわかってほしいのでありますが」


「う、うるさい! どうせお前らもあたい達を連れていく気なんだろ! そうはいかないぞ!」


「連れていく……でありますか?」


 カルカの発言にノールは首を傾げ俺達も同様の反応だ。

 連れて行くってどういうことだ? 

 まさか昔にドワーフ達を誰かが攫って行ったのだろうか……。

 そう俺が考えていると地図アプリに新たな赤い反応が現れ、俺達と同じく戦いを見守っていたドワーフ達も騒ぎだす。


「ヤバい! あいつら湧いてきましたぜ! しかも5体も!」


「げっ!? マジかよ! くぅ……もう終わりなのか……」


 反応がある方向を見ると、そこにはニゲルコロッサスが5体ゆっくりと歩いて来ていた。

 ドワーフ達は絶望の色に顔を染めて、カルカもコロッサスと俺達を交互に見て悔しそうに歯を噛み締めている。

 ドワーフからしたら前は俺達、後ろはコロッサスと敵に挟まれている形だ。

 ただでさえノール相手に全く歯が立たない状況だから絶望しても仕方がない。

 

 しかし、そんな状況は一瞬にして全てが消え失せた。そう、エステルさんだ。


「えい!」


 エステルがいつもの掛け声と共に杖を振ると、ニゲルコロッサス達の頭上に光の球体が現れて次の瞬間には光の柱となって奴らを包み込んだ。

 苦しむ間もなくニゲルコロッサス達は蒸発して消滅すると、その場に静寂が訪れる。

 一瞬何が起きたのか理解できてないドワーフ達が口を開けて唖然としているが、正気に戻ると怯えるように叫び始めた。


「う、嘘だろ! あの数のコロッサスを一瞬で倒しやがった!」


「あ、あれは魔法……なのか? あんなので攻撃されたら俺達……」


「おかーちゃん! ごめんよー!」


「だ、だからスブテラ探索なんて嫌だったんだ! こんなところ来なきゃよかった!」


「落ち着けお前達! 敵の眼前で情けない姿を見せるな! お嬢に殴られるぞ!」


 ドワーフ達は錯乱していて今にもこの場から走り出して逃げ出しそうだ。

 なんとか1番年配に見えるドワーフが抑え込む中、エステルはノール達に声をかけた。


「もう、戦いの最中に魔物が出てくるなんて無粋ね。あら、魔物は気にせずに戦いを続けていいわよ。私達が全部処理してあげるから」


「おお、助かるのでありますよ。それじゃあそちらが納得するまで戦闘再開でありますね」


 ノールは来いとまた盾を構えたが、カルカは腕を下ろして持っていた巨大なハンマーを地面につけた。

 さっきまでの威勢の良さは嘘のように消え失せて、完全に戦意を喪失しているように見える。

 ……まあ、ノールに手も足も出ていないのに、後ろにこんな魔法使う相手が控えているのわかったらそうなるか。

 これからどうしたものかと考えていたが、何を勘違いしたのかカルカは驚くことを言い出してきた。


「お前達の言う通り大人しくする。だがあいつらは見逃してくれ! 連れて行くなら私だけで十分だろ! 私は鍛冶だってできるんだ! 役に立つぞ!」


「別に連れて行く気なんて全くないのでありますが……。とりあえずお話を聞いてもらえるでありますか? 騎士の誇りに誓ってお連れの方達も危害を加えないと約束するのでありますよ」


「……わかった、その約束絶対に守れよ! 守らなかったら自爆してやるからな! 脅しじゃないぞ!」


 おいおい、自爆とか物騒なこと言わないでくれよ……。

 もし有無を言わさずに最初から制圧してたらどうなっていたかと思うと恐ろしいぞ。

 俺達に勝てないとわかったから、部下だけでもどうにか逃がそうとしているのかねぇ。

 とりあえず何とかドワーフ達も了承してくれたのか、地図アプリの反応も紫に戻って敵対は解除された。

 さて、これからどう話をしていこうか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] さすがエステル! おれたちにできないことを平然とやってのけるッ そこにシビれる!あこがれるゥ! [一言] 魔法耐性がカルカの倍、HPが15倍以上もあるニゲルコロッサス5体が一撃ですからね……
2023/01/31 08:01 アダンソン
[一言] 自爆かぁ… 真っ当に考えるならドワーフの鍛冶技術流出させないための自決用が妥当なのかな まあ平八達に戦意は無くてもダンジョン内で怪しい連中に接触してると思われてる以上無理はないかも?
[良い点] 更新ありがとうございます! ドワーフがなぜ好戦的なのか?続きが気になりますね! 寒い日が続いております。 ご自愛ください(*´꒳`*)
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