地下都市
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門を潜り抜けた先にあった通路の奥には驚くべき光景が広がっていた。
「ち、地下都市は本当にあったのか!」
辿り着いたのは無数の建物が連なる大空洞。
見上げる程高い天井に奥に見える壁はとても遠く、地図アプリで見ても入り口からじゃ町全体が把握できない程広大な空間だ。
王都にも負けないぐらい巨大な都市に俺達は驚いたが、それも冷静に町並みを見ると何とも言えない空気が漂い始めた。
そんな中言いよどみながらも1番最初にノールが口を開く。
「ここがドワーフの地下都市でありますか……何というかその……」
「建物まで迷宮化しちゃってるし誰もいないようね。お兄さん、地図アプリに反応はあるのかしら?」
「……魔物の赤い反応しかないな」
「ここまで迷宮に侵食されていたらそうなりますよねぇ。まさか都市全体が迷宮に飲み込まれているなんて、想像もつきませんでしたよ」
「ドワーフ達いなくなっちゃったの? 会いたかったのに残念なんだよ……」
「ふむ、ここは多少争った形跡がある。それでもかなり小規模だ」
「……魂の気配もなさそうだね。迷宮内だから魂が維持できない可能性もあるけど、誰も死人が出ていないのか判断ができないよ」
民家に見える建物すらどれも緑色に発光していて、完全に迷宮の一部と化しているようだ。
これだけ広い町なのに地図アプリにも住民らしい青い反応は皆無で、あっちこっちに赤い反応がうろついているのみ。
ここがドワーフの地下都市だとしたら、完全に誰もいなくなった廃墟と言っていいだろう。
一部の石造りの建物が崩れていて攻撃を受けたような跡があるけど、大半の建物は無傷のまま残っている。
「うーん、廃墟にしては建物とか綺麗に残ったままだよなぁ。さっきまで誰か住んでいたって言われても信じちまうぞ」
「迷宮化したおかげで風化とかしないで済んだのね。崩れている建物は迷宮に侵食される前に攻撃でも受けたのかしら? 崩れた瓦礫の破片までは迷宮化されていないようね。どういう経緯で迷宮化したのか全くわからないわ」
エステルが言う様に崩れている建物の一部の破片は石のままで、残った地面に接触している部分のみ緑色になって発光している。
迷宮に侵食されるのも何かしらの法則でもあるのだろうか。
気になる点はかなりあるが、今見た地下都市の様子からシスハがある予想を言い始めた。
「争いがあまり起きていないとしたら、考えられるのは2通りでしょうか。戦う前に町を放棄して逃げ出したのか、そんな暇もなく一瞬で滅ぼされたかですね」
「おいおい、地下都市とはいえ相当な規模の町だぞ。それが一瞬で滅びるって……」
「魔人達ならどんな手を使ってきても不思議じゃありませんよ。滅んだと言われる今でも魔物を大量に召喚したり、高度な幻影を操る魔人の生き残りがいるんですから。200年前の戦争時なら更に強大な力を持つ魔人もいたはずです」
言われてみればマリグナントもミラジュも個人でかなり強い力を持っているからなぁ。
魔人の全盛期と言ってもよさそうな戦争中の時期ならあいつら以上の強者がいてもおかしくない。
それこそ王都並みの都市を1人で滅ぼすような……そんなバカげた存在いてほしくないけどさ。
俺としては何か起きて戦わずに地下都市を放棄して逃げた方に賭けたいぞ。
「とりあえず迷宮を攻略しつつドワーフの手掛かりでも探すか。ここから逃げて生き残っている可能性もあるだろ」
「そうね。それに未知の金属の加工法も資料として残っているかもしれないわ」
「ドワーフの作った物があれば何かの参考にもなりそうですね。できるだけ町の中を探索してみましょうか」
グラリエさんの情報と照らし合わせると十中八九ここがドワーフの地下都市だけど、まだ確定した訳じゃないからな。
あくまで目的はガチャから出た鉱石の加工方法だし、ドワーフ達の技術さえ持ち帰れれば十分だ。
そんな訳でさっそく町中を探索……と行きたいところだが、まずはここを徘徊している魔物の確認をしておこう。
地図アプリで位置を把握しながら近くの魔物を探すと、フリージアが見つけて声を上げた。
「あっ! あそこに魔物がいるんだよ!」
「またガーゴイルか」
「あれは坑道にいたアイアンガーゴイル……あれ、あんな武器持ってたっけ?」
物陰に隠れながら魔物の様子を見ると、町中を徘徊していたのは二足歩行の鉄色のガーゴイルだった。
手には大きな剣を所持していて坑道内にいたのとはまた別タイプのようだ。ステータスを確認してみよう。
――――――
メタルガーゴイル(剣)●種族:ガーゴイル
レベル:60
HP:1万
MP:500
攻撃力:3600
防御力:5000
敏捷:140
魔法耐性:50
固有能力 武装化
スキル 呼応 斬撃強化
――――――
「よくわからん金属のガーゴイルになったみたいだな。それに武装化って……ただ武器持ってるだけじゃねーか」
「魔物が武器を持っているのなんて特に珍しい物でもありませんよね。あっ、あそこにいるのは槍を持ってますよ。リザードマンのように色々な武装をしているようです」
「それに二足歩行で普通に歩いているのばかりでありますね……。空を飛んだり四足歩行だったり、二足歩行で武器を持っていたり同じガーゴイルでも種類が豊富でありますよ」
「あのガーゴイル達見回りしてるみたいだね。見つかったら仲間が集まってきそうなんだよー」
「ククッ、これぞまさにスニーキングミッションってやつか! 潜入探索なんてまさに僕の十八番さ!」
「ふむ、確かに貴様は存在感が薄い。魔物の正面にいても無視されそうだ」
「そ、そんなに僕って存在感ないの……? ローブ脱ごうかな……」
ルーナの言葉を受けてマルティナはフードを深く被ってしゃがみながら落ち込んでいる。
潜入するのに存在感薄い方がいいと思うけど、それはそれでショックを受けるとは繊細な奴だな……。
その後も他のメタルガーゴイルを確認してみると、槍やハンマーなど色々な武器を持つタイプが存在した。
スキルは個体ごとに違っていて、槍を持つ奴は突きが、ハンマーなら打撃を強化するものになっている。
何体か纏まって地区ごとに徘徊していてまるで兵士のように思えるぞ。
見つかってもめんどそうだから地図アプリで位置を把握しながら移動をしていると、気になる物が建物に設置されているのが目に入った。
「おいおい、町中だっていうのにあっちこっちに弩砲が置かれているな」
「砦程じゃないでありますけど、外敵に対してここでも準備していたのでありますかね」
「バリケードまで設置されていますから、戦う体制は整えていたように思えますよ。まあ、町の様子からしてそれもあまり意味がなかったようですが」
「問題はどのタイミングで迷宮になったかよね。待ち構えている間に町そのものが迷宮になったら、何を守っていいのかわからなくなっちゃうわ」
民家より少し高い塔が建てられていて、そこには砦にあった大型の弩砲が設置されている。
これってバリスタってやつなんだろうけど、町の中にまで配置されているのかよ……。
それに迷宮化しているけど道にちょくちょく石の壁が建てられていて、何かを迎え撃つ準備をしていたのが見て取れる。
ここにいた人達は一体何と戦っていたんだろうか……そしてどうなってしまったのかが非常に気になるところだ。
という考えを巡らせながら町中を移動していたのだが、ある程度探索をしてあることに気が付いた。
それは目指すべき目標がわからないということだ。
「探索するのはいいけど何を目指せばいいんだ? ここが普通の迷宮ならいつものスマホを置く台座がどこかにありそうなんだが……。見たところ民家ばかりでそれっぽい場所もないぞ。それに金属加工の資料とかもどこを探せば見つかるんだ?」
「それならまずは工房のような場所を探せばいいんじゃないかな。製鉄や鍛造する場所ならそれなりの資料が残っている可能性は高いよ」
「広い場所だから地道に探していくしかなさそうね。闇雲に移動しないでマルティナのゴーストや偵察カメラで町中を把握しましょうよ」
「わーい! 偵察カメラなら任せて! いっぱい飛ばしたから大得意なんだよ!」
偵察カメラと聞いてフリージアが跳びはねて喜んでいる。
こいつはこんな地下深くまで潜って来たというのに元気が有り余っていやがるな。
闇雲に探し回ってもメタルガーゴイルに見つかる危険があるし、まずは隠れながら地下都市がどうなっているか調べるとするか。




