URアイテム交換チケット
UR交換チケット販売という衝撃の告知に震撼する中、勢いよく自宅の扉が開いてフリージア達が帰ってきた。
「たっだいま! あっ、平八達帰ってきてたんだ!」
「なんて、なんていうことだ……。まさかURアイテム交換チケットがくるなんて……うごご」
「た、ただいまです。なんか妙な雰囲気をしているけど、何かあったのかい?」
「お帰りなさいでありますよ。いつものなので気にしないでいいであります」
椅子に座って腕を組み悩む俺を見てマルティナは首を傾げ、そんな彼女にノールが呆れ気味に答えているがそんなこと気にしちゃぁいられない。
何たってURアイテムを選択して手に入れられるチケットの販売、こんなの興奮しない方がどうかしてるぜ。
「相変わらず深刻そうにするのが上手いでありますなぁ」
「名前からしてURアイテムと交換できるチケットですかね? ガチャじゃないんですか?」
「ああ、これはチケットを使えば選択したアイテムが無料で貰えるんだよ」
「えっ!? ただでアイテム貰えるなんて凄いんだよ!」
「へー、凄く気前のいいチケット……あれ? 購入額魔石1000個って書いてあるけど……」
「こういう時のお兄さんの発言はある程度聞き流しなさい。何をしても無料って言い張るんだから」
「む、無料って一体何なんだろう……。この人いつもこんな感じなの?」
「平八はいつもこうなんだよー」
「そ、そうなんだ……」
おい、そんなドン引きした目で俺を見るんじゃあない!
そんなこんなで騒ぎつつも、会議をするために自室で寝ていたルーナも起こして居間に連れてきた。
ルーナはまだ眠いのか目をゴシゴシと擦って欠伸をしている。
「騒々しい……眠い。何故起こした」
「すまんなルーナ。でも呼ばない訳にもいかないからさ」
「ガチャか?」
「ガチャじゃないんだけど、それと同じぐらい重要なイベントがきたんだ」
「ふむ、気になる」
URアイテムを選んで交換できるとなったら、俺の一存だけでどれにするか決める訳にもいかないからな。
全員で議論して購入するかどうか、そして買うならどのアイテムがいいか選ぶに越したことはない。
今回はランダム性のあるガチャじゃないからこそ、話し合いをするのが重要だと思うのだよ。
という事で全員集合してそれぞれ意見を募っていく。
「選べるにしても魔石1000個ですかぁ。ガチャに換算したら11連を20回分になりますけど、それに見合う価値があるのでしょうか?」
「半自動魔石狩りができたとしても、魔石1000個はかなりの痛手よねぇ。でもURアイテムを選んで入手できる利点は大きいわよ」
「女神の聖域やサイコホーンみたいなのがアイテム扱いでありますかね?」
「どちらも強力だ。選べるなら買うべきだ」
「どんなURアイテムがあるのか楽しみなんだよー。マルティナちゃんはどんなのが欲しい?」
「えっ、そう言われても……か、カッコいいやつかな?」
確かにシスハやエステルの言う様に11連ガチャ20回分、魔石1000個は相当な出費だ。
それでも確定かつ対象を選んで手に入れられるのは何事にも代えられない価値があると思う。
ただでさえURアイテムは強力な物ばかりだし、1つ手に入るだけでも戦闘面でも生活面でも大幅に向上が約束されているからな。
そう議論が進んで購入しようと意見は纏まりつつあったのだが、シスハが何の気なしに交換チケットについて感想を口にしていた。
「血も涙もないガチャばかりでしたけど、選んで交換できるチケット販売なんて随分太っ腹ですね」
「GCでもそうだったが、この手のガチャゲーにはよくあるもんだからな。数が増え過ぎてピックアップだけじゃ欲しい物が手に入りづらくなるから、救済措置的な感じだろう。まあ、それでも交換対象が一部のみだったりするんだけどさ。欲を言えばURユニットを選べるチケットだったら最高なんだがなぁ」
「URユニットだったら魔石1000個じゃ済まなそうね。1万個ぐらいは要求されそうじゃない?」
「くっ、もしそれで売られたら死に物狂いで魔石集めするしかないな。1日30時間の狩りをしなければ……」
「何物騒なこと言ってるんでありますか! 絶対に販売してほしくないのでありますよ!」
椅子に座っていたノールは立ち上がり必死な様子で訴えかけて怯えている。本気で怖がってやがるぞ。
でもまあ、もしこのタイミングでURユニット交換チケットが魔石1万できたとしても、期限内に集められそうにないけどさ。
だがURユニットだった場合は魔石1万個でも安いぐらいだと思うから、今後はそういうのも視野に入れて魔石集めしないといけないのか?
う、迂闊にガチャできなくなっちまうぞ……。
「どれぐらい凄いチケットなのかよくわかりましたけど、購入前に肝心の交換アイテムは見れるんですか?」
「えっーと……おっ、交換アイテム一覧があるな」
購入ページに詳細一覧があり、そこに交換可能なURアイテムが記載されていた。
事前にどのアイテムが交換できるのか見れるのはありがたいぞ。
【交換可能アイテム】
・URグルメマシーン
・UR至高天寝台
・UR女神の小聖域
・URインビジブルリング
・UR魔眼鏡
・UR天の腕輪
・URハウスワープ
・UR魔導自動車
・URコピードール
・URコトダマ
「グルメマシーンって美味しそうな響きでありますね! これにするのでありますよ!」
「待て、至高天寝台。至高天寝台がいい。至高天寝台にしよう。よし、至高天寝台だ」
「うお!? ふ、2人共落ち着くんだ!」
「凄い食い付きっぷりね……」
「名前的にグルメマシーンは食事系、至高天寝台はベッド系ですかね。URだと一体どんなのが出てくるのでしょうか」
ノールとルーナが俺にしがみついてまで交換してくれと懇願してきた。
URでピンポイントに欲しい物があればそりゃこうなるか。
うーん、だけど思っていたより交換可能アイテムは少なそうだな。
とりあえずアイテムの詳細も確認できるようだから、1つずつどんな物か見ていこう。
【グルメマシーン】
魔物の素材をポイントに変換し料理を生成可能。
生成された料理にはランダムで特殊なバフが付加される。
本物の料理がどんなものか教えます。
【至高天寝台】
天上の世界で作られた至高を超えた寝台。
寝るだけであらゆる状態異常と怪我を治し疲労も全て取り除く。
まずはノールとルーナが欲しがっていた2つのアイテムだ。
「ノールとルーナの要望抜きにしても割とよさそうだなこれ」
「そうでありましょそうでありましょ! きっと美味しい料理が出てくるのでありますよ!」
「料理もいいが睡眠も大事だ。平八ぃ、頼むぅー」
「あぁ!? ルーナさんがなんて可愛らしくおねだりを……」
上目遣いでルーナが甘えるような声を出し、それを見てシスハが息を荒くして興奮している。
くっ、確かに凄く可愛らしいがそれで交換対象を決める訳にはいかない。
というか、これを交換したら本当にルーナがずっとベッドから出てこない可能性も……。
でも寝ただけで状態異常や傷が全部完治して、疲労まで回復するのは凄そうだな。
それにグルメマシーンのバフ料理っていうのも気になるぞ。
【女神の小聖域】
あらゆる害意を跳ね除け所有者の身を守る小規模な聖域を展開する。
移動しても常に追尾し、3分に1度発動可能。
「うーん、これは女神の聖域の個人版か」
「その代わり発動間隔が短いのね。継続時間次第じゃかなりの時間無敵状態になれるのかしら?」
「個人単位で女神の聖域を使えるなら凄いでありますよ」
これはこれでめちゃくちゃ強そうなアイテムだな。
女神の聖域は発動地点に動かない結界を発生させるけど、これの場合は所有者をずっと覆っている感じなのか?
1人しか守れないとしてもそれならめっちゃ有用だぞ。
【インビジブルリング】
所有者の存在を完全に覆い隠す指輪。
姿だけではなく気配や生命探知など、あらゆる存在から感知されなくなる。
攻撃を受けたり攻撃をした場合解除される。
「インビジブルマントの上位互換だな。透明になるだけじゃなくて、気配すら遮断するってところかな」
「生命探知って書いてあるから、僕やフリージアさんでも見破れないかもしれないよ」
「むむー、私に見破れないものはないんだよ! きっと平八を撃ち抜いてみせる!」
「なんで俺を撃ち抜く前提で話してやがるんだ!」
こいつ見破るんじゃなくて俺を撃ち抜くのが目的になってないか?
インビジブルマントは姿が見えなくなるだけだから、こっちの方が性能が遥かに上だな。
どこかに潜入とかしたい場合はこれがあったら助かりそうだ。
【魔眼鏡】
魅了、石化、透視、遠視、未来視、など複数の効果を持つモニターグラス。
魔眼に対しての抵抗力も上昇する。
「なんだか既に持っているアイテムの別版や上位互換が多いな。これもモニターグラスの上位互換か」
「くぅー! 魔眼みたいでカッコいいじゃないか! これにしようよ!」
「ふむ、私も魔眼はあるが使ったことがない」
「ルーナちゃん魔眼持ちだったの!? どんな能力なんだよ!」
「秘密だ」
「えー! 意地わるぅ! 教えてほしいんだよ!」
モニターグラスにもUR版があるんだな。
マルティナほどじゃないが、俺も魔眼的な感じがしてちょっとカッコよさそうに思える。
というか、ルーナって魔眼持ってたのかよ……今まで使ってなかったと思うが、一体どんな能力なんだろうか。
【天の腕輪】
MPを消費することで自由自在に空を飛ぶ。
無限の彼方へいざゆかん。
「おおー、これめっちゃ欲しいんだけど。空を飛べたら探索もだいぶ楽になりそうだが……エステルの魔法で空を飛べないのか?」
「飛べなくもないけど自由自在とは言えないわね。一応他人なら宙に浮かべられるけれど、結構強引な感じになると思うわよ。これがあれば私が空を飛びながら攻撃ができるかもしれないわ」
「エステルが空を飛びながら魔法を使う……想像しただけでも恐ろしいでありますね」
「地上からでも十分エステルさんの魔法は恐ろしいですけどね……」
エステルでさえ飛行魔法っていうのは難しいみたいだからなぁ。
自由に空を飛べるとなれば探索面でも戦闘面でもかなり使えそうだぞ。
【ハウスワープ】
パーティーメンバーごと登録した自宅まであらゆる場所から一瞬で移動できる。
何度でも使用可能で帰宅にも緊急避難に最適。
「へー、これも結構よさそうだな。緊急脱出装置の上位互換版か」
「ビーコンで帰る手間も省けそうでよさそうでありますなぁ」
「ダンジョンの奥深くからでも使えるようですし、緊急時には有用そうですね」
「でも緊急脱出装置とビーコンで代用できちゃうから、URアイテムとしてはちょっと微妙よねぇ」
確かに他のアイテムで代用はできそうだけど、一瞬で帰宅できるっていうのは魅力的だな。
迷宮とか地下だとビーコンの電波が届かないことがあるから、これさえあれば簡単に外に出られる。
デメリットとしては一方通行みたいだから、ワープ地点と往復できないってところか。
もし自由に自宅と行き来ができるなら、探索もめちゃくちゃ楽になりそうなんだがなぁ。
【魔導自動車】
魔素で動く特殊金属で作られた自動車。
あらゆる荒地を踏破し海を潜り溶岩さえも耐え抜き、魔物を撃退する武装と多彩な機能を持つスーパーカー。
「これだよこれ! 俺が求めていた乗り物はこういうのだよ!」
「自動車って君の世界にあった物だよね? 本で読んだだけでもワクワクしたし乗ってみたいなぁ」
「魔法の絨毯みたいな感じかな? 凄く楽しそうなんだよ!」
マルティナとフリージアは目を輝かせて興味津々なご様子。
俺としてもなんかもう書いてあることだけで凄そうなのをビンビン感じるぞ。
今後も色々な狩場を探し回りたいから、こういうのがあると凄く助かりそうだ。
移動は魔法のカーペットで何とかなっているけど、今は人数が増えて全員乗れないからなぁ。
まあ、これもどれぐらいの大きさなのかわからないから何とも言えないけどさ。
【コピードール】
起動者の思考パターンを真似た人形を作り出す。
あまりに精巧なためどちらが本物かわからなくなる……かもしれない。
「確かに凄そうだけどこれもURとしてはちょっと微妙か?」
「影武者的な感じで使えそうではあるけれど、私達は使う機会がなさそうよね」
「どちらが本物かわからなかくなるとか、さらっと怖いこと書いてあるのでありますが……」
こういうのってよくあるアイテムな気がするけど、エステルの言う様に俺達はあまり使う機会がなさそうだからなぁ。
だけど、もし戦闘力も同じ感じになるなら、1人戦力が増えると思えば使えるか?
最後の一文にノールが青い顔をして震えているが、俺もちょっと怖いと感じてしまった。
【コトダマ】
魔力を消費して対象に行動を強制する言葉を放つ。
一定以上の力を持つ相手や自害しろなどの過剰な要求に対しては効力を発揮できない。
「これも割とシャレにならない効果のアイテムだな。ミラジュとかに対して使えるならかなり有利になりそうだが……」
「でも魔人相手に効果が使えるか怪しい感じじゃない? 肉体的にも精神的にも人より遥かに強靭そうだもの」
「できたとしても通常時は行動を鈍らせる程度になりそうですね。ですが相手の行動を強制できる効果自体は非常に強力ですよ。弱らせて抵抗力を下げたら自白程度はさせられそうですので、一考の余地はあるでしょうか」
言葉に魔力を乗せて飛ばす感じなのだろうか。
言うだけで相手の動きを強制できるアイテムなんてとんでもない物だぞ……。
問題は誰でもって訳じゃなくて、生命の危機を脅かすほどの命令は実行できないってところか。
それが出来たら自害しろゴブリンとか大倉平八が命じる、死ね! って感じで魔物だろうが誰だろうが瞬殺できちまうからな。
ある程度にしろ命令を強制できるってだけで反則的なアイテムに違いない。
「さて、これで全部確認できたがどう思う?」
「そうね。この内容だったら購入してもいいんじゃないかしら」
「魔石1000個でこの内のどれかが手に入るなら十分な見返りですよ」
「じゃあ購入ってことで、あとはどれにするかだな。それぞれ希望はあるか?」
「グルメマシーン! グルメマシーンであります!」
「至高天寝台! 至高天寝台だ!」
「2人共欲しい気持ちはわかるけれど、個人的な感情で選んじゃダメよ。皆でちゃんとどれがいいか意見を交えて決めないと、ね?」
「むむぅ、であります……」
「うぅ、わかった……」
「ルーナさん、落ち込まないでください。ならば私が至高天寝台の代わりとなりましょう」
そう言ってシスハはルーナを抱きかかえて、頭を胸元に埋めさせて寝かしつけている。
な、何とも羨ま……ごほん、別に羨ましくなんてないぞ!
主張激しいノールとルーナを抑え込みつつ、URアイテム交換チケットを購入する方針でどれがいいか議論は続いた。
どれもかなり使えそうな物で、さらに頭一つ抜けてこれだと思う物がないからか話し合いはかなり長引き、議論に議論を重ねてようやく交換するアイテムが決定。
俺達が選んだ物、それは移動用の魔導自動車だ。
「よし、じゃあ交換するのは魔導自動車ってことでいいか?」
「ええ、魔法のカーペットがあるけれど、さらに移動しやすい乗り物があったら便利だもの」
「他のアイテムはある程度他の物で代用できますからね。1番使うであろう乗り物にいたしましょう」
「魔法のカーペットって凄いけど怖かったからね……。これは馬車みたいな物らしいから、僕としてはその方が助かるよ」
「えー、魔法のカーペットも風が気持ちよくて好きだったんだよー。でもこっちも乗るのが楽しみ!」
「グルメマシーンは名残惜しいでありますが、我儘は言えないでありますからね。その代わり、この乗り物で美味しい食材を探すのでありますよ!」
「ふむ、仕方ない。私は家から基本出ないが、快適な移動手段を期待しているぞ」
正直他にグルメマシーンやコトダマとかも欲しかったけど、魔導自動車さえあれば狩場探しも向上しそうだからな。
そして何よりも待ち望んでいた、URの乗り物だ。きっととんでもない代物に違いない。
俺以外も全員乗り物には結構興味があったみたいで、グルメマシーンを熱望していたノールでさえ同様で最終的に折れて賛成となった。
URの魔導自動車かぁ……一体どんな乗り物なんだろうな。




