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商談報告

 シスハと雑談交じりの食事を楽しみ、ほろ酔い気分で帰宅するとノールが出迎えてくれた。


「おかえりなさいでありますよー。どうだったでありますか?」


「おう、色々とあったけど結果的に大成功だったぞ。これ成功祝いの土産だ」


「おお! クンクン……これは!? デザートでありますか! ありがとうございます、でありますよ! 食事の後で皆で食べるであります!」


 こ、こいつ箱も開けずに匂いだけで中身を当てやがったぞ。

 相変わらず食欲旺盛な奴だが、今すぐ食べるって言い出さない辺り前より我慢強くなったか。

 ノールにデザートを渡してすぐに、頬杖を突きながらジト目でこっちを見ていたエステルに気が付いた。

 あっ、なんか不味い雰囲気がするぞ!


「お兄さん達随分と遅かったわね。そんなに話が長引いたのかしら?」


「えっ……ちょ、ちょっとな。その後少しシスハと食事に行ったけどさ、ははは……」


「ふーん、そう。食事にねぇ……そういえば二人共ちょっと顔が赤いわね。お酒でも飲んできたの?」


「ひぃ!? べ、べべべ別にやましいことはありませんよ! 本当に食事に行っただけですので!」


「別に何も言ってないのだけれど。そんなに慌てるなんて逆に怪しいわね」


 くっ、ちょっと飲んだ程度だから平気だと思ったけど、ばっちり酔ってるのバレてやがる!

 食事をしに行っただけだし後ろめたいことはこれっぽっちもないのに、エステルさんの有無を言わさない迫力に俺とシスハは気圧されて冷や汗を流しながら慌てふためいた。

 幸い特に追及されることなくその場は収まり、スーツから着替えてノール達に今日のことを伝える。

 フリージアとマルティナはまだ外出中のようだ。


「とりあえず委託販売に関しては契約相手が見つかったぞ」


「おー、さすがでありますね。大倉殿はガチャのことになると、ホント凄い力を発揮するのでありますなぁ」


「ガチャのことになるとは余計だろ! まあ、エステル達が作った物が凄いのと、コネクションがあったおかげだけどさ」


「コネクション? 商人との繋がりなんてお兄さん持ってたのね」


「いや、俺の繋がりというか俺達全員のだ。特にエステルは関係あるぞ。なんたって相手はアーデルベルさんだからな」


「えっ!? アンネリーのお父さんじゃない!」


 エステルは目を見開いて驚いているから、やっぱりアーデルベルさんが商人って知らなかったようだ。

 ガタリと椅子から立ち上がったエステルだったが、ハッとなり頬を赤くしながら着席すると、咳払いをしてから確認するように俺に質問をしてくる。


「そう……アンネリーのお父さんは商人だったのね。お兄さんは知っていたのかしら?」


「いや、実は商人組合で門前払いされちまってさ。その後偶然アーデルベルさんに会って、とんとん拍子に話が進んだんだよ。マジで助かったよなぁ」


「あの方に会ってなかったら途方に暮れていましたね。王都中の店に突撃営業仕掛ける寸前でしたよ」


「とんでもない騒ぎになるところでありましたね……。でもエステル達の作った物でも門前払いなんて、商売って難しいんでありますなぁ」


「そもそも品物を見てもらうどころか、商人さえ紹介してもらなかったからな。信用やら利権やらの関係でまず無理だろうって話だったぞ」


「商売をするならそういうのも重要そうだものね。既に出来上がっている形態に割り込むのは難しいもの。私がアンネリーのお父さんのことを知っていたら話は早かったのに……ごめんなさいね」


「いやいや、別に気にしなくてもいいって。俺達が商売しようって話になったこと自体、思い付きの発想でしかないしさ」


 エステルは肩を落としてしょんぼりとした様子だったが、友達の親がどんな仕事をしてるかだなんて聞くこともあんまりないからなぁ。

 前から俺達が委託販売とかを計画してたら話題になる可能性もあったが、それもこの前閃いたばかりなんだから知らなくても無理はない。

 あまりいい話の流れにならなそうだし、一旦話題を変えておくとしよう。


「アンネリーちゃんもエステルと会いたいって言ってたから、今度また遊んできたらどうだ? トランシーバーもアーデルベルさんに渡してきたから、約束もしやすいと思うぞ」


「本当!? あっ……そ、そう。なら今度遊びに行っちゃおうかしら」


「むふふ、それがいいのでありますよ。最近は狩りも落ち着いてきたでありますし、依頼もないでありますからね」


「商談などは私達にお任せして、エステルさんは気にせず遊んできてください」


 ノールとシスハも察して気遣いしてくれているようだ。

 彼女達も元の世界じゃ関わりはなかったけど、こうしてお互いに配慮していい関係になっているのはGCプレイヤーとして見ていて微笑ましい。

 アーデルベルさんが取引相手だと伝えたので、改めてどんな感じの商談だったかを伝えることにした。

 まず持ち込んだ商品の評価を伝えてみると、攻撃原石が危険物扱いされたことにエステルは頬を膨らませて不満そうにしている。


「むー、攻撃魔法の原石が不評だったのは悔しいわね。あの程度でも危険視されそうだなんて。私からしたらデコピン並みの魔法よ?」


「常識的に考えたらミノタウロス1発で倒せるってヤバいだろ。Cランクパーティーで戦う魔物だぞあれ」


「全く気にしてなかった大倉殿も人のこと言えないでありますよ。でも、威力が強いのは悪いことじゃないでありますよね?」


「有用なのは間違いありませんけど、暴発などした際のリスクが高いのが難点ですか。冒険者のランク毎に信用度で売る物を決めた方がよさそうですね」


 暴発の危険はもちろんだけど、この魔導具があればEやDランクの冒険者でもミノタウロスを倒せるってなると危険だからなぁ。

 原石を買って自分のランクより上の魔物を狩りに行く人とか出てきそうだし、売るとしたら相手は選ばないといけない。

 あくまでこれは戦闘の補助として使う運用を想定して、これだけを頼りに魔物を倒すって人には売らない方がいいな。

 非戦闘員の人達が護身用に欲しいってなったら、それは他のアイテムにしてもらうのがよさそうだ。


「攻撃原石以外の評価は概ね良好で、細かい調整を今後話し合う感じだな。ただマルティナの物に関しては懸念通り、教会とかの確認をとらないと駄目だ」


「あら、やっぱり負の力が怪しまれちゃったの?」


「アンデッドの素材を使うのは平気みたいですが、効果が強過ぎるから神官とかにどう思われるかって話でしたね。魔導具などは売る前に国からの審査もあるらしいので、あまりに怪しい品物は避けた方がよさそうですよ」


「えっ、国に確認されるのでありますか。それなら確かに慎重に考えた方がいいでありますなぁ。場合によっては国からも売ってほしいってなりかねないでありますよ」


 俺達は冒険者向けの販売のみを考えているけど、国が欲しがる可能性は十分にあるよなぁ。

 でもこの国は魔導師の育成に力を入れているらしいから、軍にも沢山いそうだしそこまで欲しがらないだろう……多分。

 国向けの販売なんてなったら余計な手間でしかないし、アーデルベルさんに迷惑をかけない範囲で断らせてもらおう。

 こうやって一応計画通りにことが進んだが、問題があるとしたらいつ開店するかだよ。


「委託販売できそうなのはよかったけど、販売するまで時間がかかりそうだよなぁ」


「どうかしらね。魔導具の販売もやるってだけで、販売業をする準備自体は前からしていたんでしょ? 私達がクェレスに護衛していた時期より前から計画していたのなら、そう遠くない時期にお店を開くんじゃない?」


「魔導具専門のお店とは言ってませんでしたからね。他の大手のお店を出し抜きたい感じでしたし、相当大規模なお店だと思いますからエステルさんの言う通りかと。委託販売以外にもそのお店で売る品物の素材の確保とかも直接依頼されるかもしれませんね」


 なるほど、あくまで魔導具は店舗の一画で販売するだけで、日用品やら他の物も販売する複合商業施設な感じなのかな?

 だいぶ前から計画していたっぽいし、エステルの考え通り既に建物とかも準備している可能性はあるか。

 下手したら開店まで1年以上かかるんじゃね? とか思ってたけど、それならそんなに期間もかからなそうだぞ。

 どんな感じなのか今度契約書を受け取る時に話を聞いてみよう。

 冒険者として魔物や採取物の素材を優先的に確保するのも契約に含んであるから、頼まれたら積極的に採りにいかないとな。

 うーん、委託とはいえ俺達も王都で商売をするとなると……あっちにも1軒ぐらい拠点が欲しいぞ。


「委託が始まれば収入も更に増えそうだし、そろそろ王都にも家を買ってみるか。その方がこれから色々と都合がいいだろう」


「王都にあるビーコンは町の外にあるでありますもんねぇ。直接王都内に入れるようにしたいでありますよ」


「現状でも特に不都合はなさそうですけど、取引などをするなら一応拠点はあった方がいいですかね」


「そうね。この自宅を買った時に比べたら資金も潤っているから、王都でもそこそこの物件を買えそうじゃない。別荘として買ってみましょうよ」


 王都の建物を別荘として買うなんて随分と贅沢な話だなぁ。

 けど、ハウス・エクステンションを使ってあるブルンネの自宅が本拠地になるのも仕方がない。

 ブルンネは比較的王都に近いから田舎ってほどじゃないが、そこそこ活気もあって穏やかな町だからノール達も気に入っているようだ。

 王都の別荘はあっちで客人を招く時にも使えるし、何よりビーコンを町中に設置できるのが大きなメリットになる。

 今は王都の外にビーコンがあって地味に移動するからめんどうなんだよなぁ。

 もう資金は十分に蓄えてあるから、この機会に王都の物件を買うとしよう。

 

 と、そんな感じで話がまとまったところで、突然スマホが振動を始めた。


「ん? スマホに通知が……ふぇ!?」


「おっ、久しぶりにガチャのイベントですか。随分驚いていますがどうしたのですか?」


 スマホの画面を見て俺は驚きのあまり口を開けてフリーズしてしまった。

 それは【スペシャルガチャセット販売! URアイテム交換チケット+11連ガチャチケット付き。好きなアイテムを選んで交換しよう! 購入額:魔石1000個 ※1回のみ】などと表示されていたからだ。

 な、なぬ……交換チケットの販売だと!? ガチャまで商売してきやがったぞ!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] エステルさん、GC世界でのカンスト間際まで、つまり現状LV90ぐらいまでレベルありましたよね? しかもベースも1段階上がってますよね? デコピン並と言っても、貴方のデコピンは食らったら…
[一言] 攻撃原石は対象が魔物ならまだしも人に対しても一方的な格上キラーできちゃうからちかたないね 「騙して悪いがお前にはここで消えて貰う(ドカーン)」とか…
[良い点] 定期的に更新をしてくださり、ありがとうございます。 [一言] ユニットではないところが、いいですね笑笑 どんなものと交換できるか、楽しみです!
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