商品紹介
「お、おっほん、では気を取り直して他の原石の効果を教えてもらっても?」
「あっ、はい。緑原石の支援魔法は1回使うと30分程度身体能力が向上するんです」
「おお、魔導師が使う支援魔法と同じですか。30分も持続するとなると使い勝手もよさそうですね。ですがそうなると後は効果がどの程度なのかが重要でしょうか」
支援魔法をかけられる魔導具は発動から効果が切れるまで30分にしておいた。
さらに強化具合は普段俺達がかけてもらっているものの1割程度。
最初から効果が高過ぎる物を出すと調整なども後々大変だし、作る際に負担も大きくなるからだ。
魔導師がいる冒険者パーティーが少ないのを考えたら、この魔導具は絶対に需要が高いだろうしな。
しかもそれがエステルの支援魔法ともなれば、依存気味になる人が続出する可能性すらある。
その方が利益も出て魔石狩りをする人員確保は捗るだろうけど、物作りの方に時間を取られ過ぎないようバランスが大事だ。
とりあえずこの品物の効果を証明するために、お試しでエゴンさんに使ってもらうとしよう。
「エゴンさん、使ってもらってもいいですか?」
「いいのか? 1度使ったら壊れてしまうのだろう?」
「試供品も兼ねて持ってきているので大丈夫ですよ」
「そうか、では遠慮なく試させてもらおう」
エゴンさんに緑の原石を手渡して使い方を説明すると、彼は俺達から距離を置いて原石を手の平に載せて見せやすくして使用した。
この支援魔法原石は触れながら念じるだけで発動するようになっている。
さっそくエゴンさんは念じたのか原石がカッと光ると、彼の体を包むように輝きが全身に広がっていく。
同時に支援魔法が完全に発動する頃に、原石は全体に亀裂が走ってボロボロになり崩壊した。
よし、事前に実験はしたけどちゃんと発動してくれたな。
支援魔法がかかったエゴンさんは目を見開いて、自分の両手を見て信じられないご様子だ。
「こ、これは……!」
「エゴン、あなたがそれほど驚くほど効果を実感しているのですか?」
「はい、力が漲ってきますよ。以前魔導師に支援魔法をしてもらいましたが、これはその時の比じゃありません。怖くなってくるぐらい力が増しているのがわかります」
「戦闘時でもないのにそれほど違いがわかるとは……大倉さん、エステルちゃんはとんでもない物を作りましたね」
「あはは……私達も頭が上がらないぐらいお世話になっていますので」
エゴンさんはかなり興奮しているようで、それほど支援魔法の効果が高いのが見て取れる。
普段の1割程度の支援魔法ですらこう思われるぐらいなのか……。
全力の3倍支援魔法を付加した原石だったらどうなっちゃうんだろうな。
とりあえずこれは好評のようだ。
「その他の魔導具というのはどういったものでしょうか?」
「青い原石は複数セットになった位置を知らせる魔導具です。同じ効果を持つ原石同士の位置を光で教えてくれるんですよ」
「位置を把握できる魔導具ですか!? そ、それはどれぐらいの距離までわかるんですか?」
「そうですね……これなら1キロぐらいだと思います。光の強さで距離もある程度わかるんですよ」
「この大きさで1キロ!? それはまたとんでもないものを……」
位置を知らせる原石も手の平サイズの物で、1キロ圏内にある同じ魔法を込めた原石の位置を光で伝える物だ。
無差別に反応する物もあれば、調整することで個別に識別するセットを作ることも可能らしい。
お互いの距離が遠ければ光は弱くなり、近づけは光が強くなってどの程度離れているのかわかる。
これは内蔵している魔力が尽きたら壊れるようになっていて、原石に刻まれている線で残りの残量が分かる仕組みだ。
アーデルベルさんは恐る恐るといった様子で、次は紫色の原石を指差した。
「そ、そちらの紫色の物は?」
「これは通話できる物ですね。範囲はこれも1キロ程度だと思いますよ」
「つ、通話できる魔導具ですか!? まさか持ち運びできるような物が存在するなんて……」
「通話できる魔導具自体は存在するんですよね?」
「は、はい……ですがかなり大規模な物でして、専属の魔導師がいないと起動できない物です。私共も入手したかったのですが、魔導具自体かなり希少な物でして……こちらは魔導師がいなくても起動できるのでしょうか?」
「はい、使えますよ」
この世界にも離れた場所と通話可能な魔導具は存在するようだが、固定電話みたいな物でさらにとんでもなく魔力が必要だとか。
その点俺達の作った通話魔導具は手の平サイズで持ち運び可能、そして魔力のない人でも気軽に使える。
欠点は通話距離が短いのと、対になった原石同士のみでしか通話できない、その上使い切りで内蔵魔力が尽きたら壊れる。
プリペイド携帯に近い気はするけど、本体ごと使い捨てなのを考えたら随分豪勢な品物だな。
その欠点をアーデルベルさんに伝えたのだが、それでもなお彼の評価は相当なものだった。
「なんと……これはもう魔導具界の革命と言ってもいい代物ですよ。大倉さん、まさかこんな恐ろしい物を次々出してくるとは思ってもみませんでした」
「そう言ってもらえると嬉しいです。あっ、まだ何個かあるので見てもらってもいいですか?」
「まだあるんですか!?」
「お、お前達ホント何者なんだ……冒険者じゃなかったのか?」
「うふふ、ただの冒険者ですからご心配なく」
アーデルベルさんとエゴンさんの様子からして、既に十分過ぎるぐらい品物は紹介できているようだ。
だが、まだエステルが作った物を見せただけで持ってきた物はまだまだある。
若干驚き疲れた様子のアーデルベルさん達だったが、今度はシスハの作った癒しの石を机の上に置いた。
「次はこの回復の力が込められた癒しの石です。作ったのはこちらの神官になります」
「お恥ずかしながら少しだけお力添えをいたしました」
「おお、シスハさんがお作りになられた物ですか。回復の効果があるとのことですが……本当にこの石で傷などが癒されるのでしょうか?」
アーデルベルさんが首を傾げるのも無理はない。
見た目は真ん中部分に十字の印が刻まれている丸いごく普通の石だ。
これはルゲン渓谷のラピスから採れる外れドロップの石で、その辺に落ちている物よりは多少硬いが石には変わりない。
素材は何の変哲のない石だがシスハの祈りの力が加わり、あら不思議と癒しの石に早変わり。
ついでにシスハがささっと指先で石に十字を刻み込んで完成だ。
俺に代わって製作者であるシスハが使い方を説明している。
「中心にあるこちらの印を長押しすると効果が発動するんですよ。停止する時は同じようにまた長押ししてください」
「ほお、この印を押せばいいのですか。試してみても?」
「勿論ですよ。一定範囲内に効果を発揮しますので、どこか具合の悪いところがあれば全員癒されるはずですよ」
言われるがままアーデルベルさんが癒しの石にある十字の印に触れると、石が発光して暖かな光が部屋全体に広がっていく。
「おお、これはまた神秘的な……こ、腰の痛みが引いていく!?」
「わ、私も今朝斬った手の傷が癒えてます! それに古傷まで薄れているような……」
「お、おい、効果強過ぎないか?」
「あれ、加減間違えましたかね? 10秒程度祈りを込めただけなんですけど」
そう、これの作り方はシスハが両手で石を握り締めて軽く祈るだけの簡単な物。
それだけで石に癒しの力が付加されるんだから、こいつのとんでもっぷりがよくわかる。
同じ方法で殺意を込めれば、アンデッドに対する除霊効果の石も作れるそうだ。
殺意で除霊っていうのはシスハらしくはあるのだろうか。
ついでに結界を張る紙札も実演してみせたが、こちらも好評で是非欲しいと言ってもらえた。
よしよし、最初の攻撃魔法の原石は問題ありだったが、エステルとシスハの作ったアイテムは概ね成功のようだ。
「それで次のが問題なんですけど……」
「えっ……今までの物ですらあれでしたのに、まだ大倉さん達が問題にするほどの物があるのですか?」
「製造方法がちょっと特殊な物でして、教会や神官との折り合い的に不安が残る物なんですよ」
「教会や神官とはまた穏やかな話じゃありませんね。とりあえず物を見せていただきますね」
今回売るアイテムである意味1番問題ありな代物だからなぁ。
言い訳は考えてある物のどういう反応をされるやらか。
不安に思いつつも俺はマルティナの作った、デバフのスライムボールを机の上に置いた。
「これは……何でしょうか?」
「スライムボールを硬化させた土の殻で覆った物です。投げつけると殻が割れて相手に張り付くんです。そして張り付いた相手を動けなくできます」
「スライムボールが張り付くだけで相手の動きを止める? それはどういった仕組みでしょうか?」
「この中にはアンデッドの一部を仕込んであって、負の力と呼ばれる物で触れた対象を弱体化する効果です。なので厳密に言うと動きを止める効果じゃないのですが、結果的に大半の相手の動きは止まります。これもミノタウロスで実験してみましたけど、その場で倒れ込んで動けなくなっていましたよ」
実際にアンデッドの素材を混ぜ込んである物だから、それから負の力を引き出して作ったという言い訳を考えておいた。
これなら死霊術師が直接力を込めたというよりは、何かあった際に一応誤魔化しはできるだろう。
疑われたらアンデッドの素材にマルティナの力を込めた物を、ドロップアイテムだと言って証拠として見せれば納得もしてもらえるはずだ。
問題はアンデッドの素材を使った商品だというのを、世間的にどう思われるかなのだが……。
アーデルベルさんは俺の説明を聞いて、眉をひそめて難しそうな顔をしている。
「アンデッドの負の力ですか……。それは確かに教会や神官から不審に思われる可能性はありますね。ですがそのぉ……シスハさんも神官でいらっしゃりますよね? シスハさんはどういった見解なのでしょうか?」
「私は別に何とも思いませんね。たとえアンデッドの力だったとしても、人の役に立つのなら受け入れるのも一興かと。きっと神も慈悲深い御心で受け入れてくれるはずです。まあ、私はこの国の神官達とは少々信仰が違いますので、あまり参考になりませんが」
「な、なるほど……とにかくシスハさんがそう仰るのなら、害のある物ではなさそうですね。一応アンデッドの素材自体は取り扱う店もありますから、それは問題ないと思われますよ」
シスハは普通の神官じゃないから意見が全く参考にならないからなぁ。
だけどアーデルベルさんの反応と話からして、それほど拒否感はなさそうか。
むしろアンデッドの素材を取り扱う店とやらが非常に気になるのだが……問題ないのならよかったぞ。
ついでに魔物を遠ざけるアイテムも披露すると、これまた好意的な反応をしてもらえた。
「うーん、対象を弱らせる物に敵を寄せ付けない物ですか……。どちらも大変有用な物ですね。冒険者向けの販売と言っていましたが、商人の立場からしてもこれは喉から手が出るぐらい欲しいですよ。それどころか貴族や国ですら目を付けかねないものですね」
「そ、それほど有効的な物だと判断してくれるんですね」
「はい、町と町を移動する際の危険を減らせるだけでもとてもありがたいです。さらに相手をこの球1つ投げつけるだけで無力化できるなんて、必ず数個は持ち歩きたい代物です。こちらもエステルちゃんが作成したのでしょうか?」
「いえ、誰かはまだ教えられませんが別人です。アンデッドの素材の取り扱いに詳しいんですよ」
「そんな方がいらっしゃるとは……エステルちゃんといいシスハさんといい、大倉さん達にはとても驚かされますよ」
俺はそうでもないとしても、エステルやシスハ達は超人の集まりだからなぁ。
大金持ちで人脈の広そうなアーデルベルさんから見ても驚かれるんだから、さすがURユニットとしか言いようがない。
ノール達と俺なんかが同列視されるのは畏れ多い話だぞ。
この反応なら平気そうだと思っていたが、アーデルベルさんは難しい顔をして不安要素を口にしだした。
「ただこれほど効果の高いアンデッドの素材を使っているというのは、大倉さんの懸念通り教会や神官から快く思われないかもしれませんね。相手を弱らせたり魔物を遠ざける効果がどう思われるのか、私の方でも確認をとっておきますよ」
「わかりました。できればこちらのアイテムは販売できないとしても、あまり広まらないように確認していただきたいのですが……」
「お任せください。信頼できる知人の神官に相談をしてみますよ」
おお、神官の知り合いまでいるとはさすがだな。
一応負の力は発動するまで抑え込んであるようで、普段から周囲に影響を及ぼす心配はないそうだ。
でも魔物すら逃げ出すぐらい強い気配をまき散らすから、この世界の神官から意見を聞いた方がいいだろう。
ん? それにしても相談してみるだなんて、既にこのアイテムを売るのに乗り気な感じがするぞ。
シスハもそう思ったのかアーデルベルさんに質問を投げかけていた。
「えっと、もう契約するような流れになっていると思ってもよろしいのでしょうか?」
「はい、むしろこちらからお願いしたいぐらいですよ。どの商品も大変魅力的な物でしたので、是非とも私共の店舗で取り扱わせてください」
おおおお! アーデルベルさんの方からお願いしたいぐらいだなんて、これはプレゼンテーション大成功ということか!
商業組合で門前払いされたのに、まさかその直後に契約してもらえる相手に出会えるなんて……まさに捨てる神あれば拾う神ありってやつだな。
俺がウキウキで内心喜んでいる中、契約に関しての話をアーデルベルさんは切り出してきた。
「ただこのままだと一部の商品は販売するのに問題がありますから、調整などの相談をさせていただけると幸いです。魔導具は販売する前に国の機関から認可を得る必要がありまして、恐らく通らない物がいくつか……特に攻撃系に関しては危険視されそうですので、どうしても売り物にするなら調整は必須です」
「どれも試作品ですので今後も調整はしていくつもりです。知り合いの冒険者にも試してもらって意見を聞こうと思っています」
ほほぉ、国に認可を取る必要があるのか……。
まあ、魔導具は普通じゃない力が込められているんだから、それを正式に売るなら認可を得るのは当然だな。
いやぁ、そう考えるとやることが山積みになりそうだし、そういう手間を任せられる委託販売を選んだのは正解だったか。
問題は魔導具を売ることで国から目を付けられないか心配になるけど……そこはアーデルベルさんの名前で提出してもらって、俺達との関わりはできるだけ表に出さないでもらおう。
使い捨て魔導具の調整に関しては、グリンさんやディウス達に使ってみてもらい意見を聞くつもりでいる。
よし、とりあえず契約をしてもらえる流れになったし、本命の売るガチャアイテムも紹介するとしよう。
「それで、次は会員になった人に対して売る物についてなんですけど」
「えっ、さっきまでの物の中で限定品を考えていたんじゃないのですか!?」
「あっ、はい。さっきまでのは全部使い捨ての消耗品ですからね。限定品として売りたいのは装備できる魔導具なんですよ」
「使い捨てでもあれだったのに装備できる品物まであるなんて……お、お見せしていただいても?」
「勿論ですよ」
おいおいまだあるのかよ……そう言いたそうな顔をして、アーデルベルさんとエゴンさんは既に疲れたように見えた。
俺達は商売が目当てじゃなくて、こっちのガチャアイテムを広めることが主な目的だからな。
さっきまでの消耗品はおまけ程度の扱いに過ぎないのだ。
さっそく指輪を取り出して机の上に置くと、アーデルベルさんは少しホッとした様子で息を吐いていた。
一体何が出てくるんだと緊張していたみたいだな。
今回見せる物は1番普及しやすそうで効果も高い、SRである守護の指輪を選んでみた。
「指輪型の魔導具ですか。こちらはどのような物なんですか?」
「ちょっと難しい表現になりそうですけど、身に着けるだけで防御力が増すんです」
「防御力が増す……それは確かに実感しづらそうな物ですね」
「でしたら実際にお試しになってみますか?」
「えっ」
おいおい、シスハの奴何言い出しやがるんだ。
試すだなんて話は事前にしてなかったぞ。
「試すって言ってもどうするんだよ?」
「指輪を装着して普通のナイフで軽く手を斬ってみればいいんですよ。守護の指輪を身に着けていれば、その辺のナイフで斬り付けても怪我はしないはずですよ。あっ、切れちゃったら私が治療するのでご安心ください」
「あっ、えっと……そ、それは安心できますね?」
「いやできませんよ! アーデルベル様しっかりしてください!」
堂々と笑顔で手を斬れと言うシスハの提案に、つい納得してしまった様子のアーデルベルさんを必死にエゴンさんが説得していた。
試すのに手を斬れとかなんて提案しやがるんだこの神官……しかも回復できるから安心とか……。
確かにこの方法が1番わかりやすいとは思うけどな。
結局効果を実証するために、渋々といった様子でエゴンさんが名乗り出て試すことにした。
俺達だと既に高レベルだから肉体の強度があり過ぎて、ただのナイフ程度じゃ傷すら付かないからなぁ。
ガチャアイテムは身に着けると肉体ごと身体能力が強化される。
防具系は守っている部分で直接ガードする方が当然防御力が高く、守護の指輪のような補助系は肉体が直接強化される仕様だ。
アーデルベルさんの家にあるナイフを持ってきてもらい、守護の指輪を装着したエゴンさんはさっそく手の平にナイフを当てた。
「で、ではいくぞ……ふっ!」
緊張した面持ちでナイフをスッと引くと……手の平は斬れることなく無傷だ。
目を見開いて驚いたエゴンさんは、確かめるように何度か斬り付けていたが結局手が斬れることはなかった。
「き、斬れてない! 斬れてないぞ!」
「うふふ、だから言ったじゃありませんか。これで指輪の効果はよくわかっていただけましたよね?」
「は、はい! まさか指輪をするだけで怪我を負いにくくなるなんて……これは物凄い魔導具ですね」
「売りたい品物の本命ですからね。指輪以外にも武器や防具、これに相当するアイテムも売ろうと思っています。お近づきの印にそちらの指輪はお譲りいたしますよ」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」
護衛であるエゴンさんなら守護の指輪があるのは助かるだろうし、これからビジネスパートナーになりそうなんだからこれぐらいのサービスはしておかないとな。
そう思っているとシスハがツンツンと肘で俺の体を突いてきて、ボソボソっと小声であることを伝えてきた。
「大倉さん、あれ、あれを差し上げてください」
「お、おう。アーデルベルさんこちらもどうぞ」
慌てて俺はカバンからトランシーバーを取り出してアーデルベルさんに手渡した。
「もしかしてこちらも魔導具なんでしょうか?」
「はい、これも先ほどお見せした通話の原石と似たような魔導具です。こちらは距離制限なく通話が可能で、内蔵魔力が減っても壊れる心配はありません。これならいつでも通話が可能ですので、用事があったら遠慮なくご連絡ください」
「……は、ははは……大倉さん達を呼び止めてよかったと、心の底から実感しておりますよ」
取引相手が決まったら連絡が取りやすいよう、トランシーバーを渡そうと事前に決めてあったのだ。
通話の原石を既に見せてあるからあまり驚かれないと思っていたが、アーデルベルさんは顔を引きつらせて無理に作った笑みを浮かべていた。
俺達の方こそアーデルベルさんに感謝しているんだけど、なんか凄く安堵していないか? まっ、いっか。
商品のプレゼンテーションは大成功で終わり、正式な契約書などは後日交わすことになり俺達は彼の家を後にした。
馬車で送ってくれると言われたが遠慮しておき、徒歩である程度離れたら自宅へビーコンで飛ぶつもりだ。
「よっしゃ! 上手くいったな! パーフェクトだぞシスハ!」
「うふふ、感謝の極みですねぇ。そうやっていつも素直に褒めてくださいよ。ですがまだ正式に契約書類を交わしていないので、油断は禁物ですよ。店舗ができあがって委託が始まるまでは気を引き締めておきましょうね」
「ああ、俺達の魔石集めはこれからだな」
アーデルベルさんの販売業の開始まで期間はかかるだろうけど、これで俺の不労魔石所得の大きな一歩を踏み出したと言っても過言じゃない。
半自動狩りに続いて魔石狩りグループ形成まで見えてきたなんて、ガチャ引き放題の日は近いぞ!




