装備分配
「よし、今回はこのまんま整理するか」
「SR以上が結構出たでありますな」
「確率アップって言うのは嘘じゃなかったようね」
ガチャを回し終え、そのまま装備品を整理することにした。
前回のように期間を空けて忘れたらいかんし、早くURどうするか決めたい。
アイテム欄を開いてめぼしい物を出していく。
まず気になったのはこれだな。
――――――
●ウエストポーチ
魔法が施されたポーチ。
容量はそれなり。重さも変わらず、生の物は腐らない凄いポーチ。
生物は入らないので注意。
●ショルダーバッグ
魔法が施されたバッグ。
容量はそれなり。重さも変わらず、生の物は腐らない凄いバッグ。
生物は入らないので注意。
――――――
「お前達もそろそろ自分用の荷物入れるの欲しいだろうし、2人でこれ分けるか?」
「鞄でありますか。なら私はこっちがいいでありますよ。動く時に邪魔にならないであります」
「なら私はこっちかしらね。戦闘中激しく動くことも無いもの」
今までは俺が彼女達の荷物を含めてバッグに収納していたが、やっぱり個人的に入れる鞄も欲しいだろう。
ちょうど同じような物が出たし良い機会だ。
ノールが腰に付けるタイプの鞄で、エステルは肩から斜めがけするタイプの鞄を選んだ。
――――――
●爆裂券
貼り付けて念じると爆発を起こす紙。5回まで使用可能。
――――――
「これはまた物騒なアイテムだな」
「お兄さん、試してみましょうよ」
「今度外でな」
次に爆弾にドクロが描かれた薄っぺらい紙。
爆裂拳の間違いかと思ったが、マジで爆裂券なのな。
試してみたいとは思うけど、爆発とかなんだか危険な感じがする。
――――――
●スタビライザー
攻撃力+300
命中補正+40%
自動回収
――――――
性能見た瞬間良さそうだと思ったけど、出してみたら銀の弓だった。矢も専用のが付いている。
持ってみると結構重い。自動回収があるっていうのはいいな。
弓使いとかが出たら使えそうか?
――――――
●マジックキャンセラー
魔法耐性+10
対象の魔法攻撃をしばらくの間沈黙させる。
●マジックシールド
魔法耐性+20
防御力+150
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んー、使えそうなような微妙なような。
マジックキャンセラーは指輪だから一応装備しておくのはいいかも。
――――――
●オートガードスフィア
40%の確率で被ダメージを50%にする。
20%の確率で全ての攻撃を無効にする。
――――――
「これはエステル向けか?」
「あら、また綺麗な物ね。いいのなら喜んで貰うわよ」
手の平サイズの水晶玉だ。一応飾りがあって紐で吊るせるが動くのには邪魔になりそう。
あまり動かないのと防御重視な性能だからエステルに持たせるのが無難か。
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●バタフライグリップ
攻撃力+100
防御+50
攻撃速度+20%
硬直時間-10%
――――――
「グローブか。素手でバール扱うのもすこし辛かったから丁度良いわ。ノールも使うか?」
「良いのでありますか! わーい!」
黒い皮製のグローブだ。重さもあまり無く滑り止めみたくなっているのか、着けてバールを持ってみたけどしっくりくる。
ノールは自分の手袋を持っていたが、こっちの方が性能が良いみたいなので替えるようだ。
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●カドゥケウスの紋章
魔法攻撃+30%
魔法耐性+30%
――――――
「これどうしようか。……あっ、剥がれた」
「えぇ……」
真ん中の棒を巻くように2匹の蛇が交差して、上の方に羽ある絵が描かれた紋章だ。
これはどうすればいいのかといじくっていたら、シールになっているみたいで後ろの紙からぺラっと剥がれた。
おいおい、こんな適当でいいのかよ!?
とりあえずこれは魔法系なのでエステルのバッグに貼っておくことにする。
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●グリモワール『イーラ』
火属性魔法の攻撃力+100%
攻撃対象の視覚を30%の確率で一時的に失わせる。
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「これはエステル確定か。なんだか効果がえげつないな」
「爆発系の魔法がさらに強くなるのね。でも、これあると少し動き辛いわね」
ついにSSRだ。グリモワールは悪魔っぽい物とドラゴンが描かれた赤い本だった。
片手で持てる程の大きさをした本だが、小さいエステルには少し大きいかもしれない。
まあバッグがあるから必要な時だけ出すとかにすれば平気か。
――――――
●月の雫
MP自動回復
MP回復速度上昇
MPストック 0
――――――
「腕輪か。これもエステル用だな。それにしてもストックってなんだ?」
「MPを貯めておけるんでしょ。ありがたく頂いておくわ」
ビー玉程の大きさをした、銀色の玉が付いた腕輪だ。
これでMPポーションを飲まなくてもしばらくは魔法を連発できるぐらいにはなっているな。
ストックができるってことは、いざって時はこれで一気に回復もできるから便利だ。
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●ニーベルングの指輪『ラインの黄金』
攻撃速度+10%
移動速度+10
攻撃力+50
防御力+50
状態『序夜』
――――――
「これはなんなんだ?」
「眩しい指輪でありますね。性能はそこそこでありますか?」
金色で文字が彫られた指輪だ。表記にはラインの黄金と書かれているが意味がわからん。
それと状態が序夜って書いてあるけどこれもよくわからない。SSRにしては性能も低い。
とりあえずノールに渡しておくが、これハズレSSRだったかな?
――――――
●聖骸布
魔法耐性+50%
全状態異常無効
防御力+1000
HP自動回復
――――――
「なあ……これは俺が貰ってもいいか?」
「いいのでありますよ~。ようやくこれで大倉殿も釣り役できるでありますね」
「URだから期待したけど、なんだかボロボロね」
聖骸布は少し端の方が裂かれた感じになっている黒い衣だった。
俺の初のUR装備だから嬉しいけど、これ纏ったら俺の変質者レベルがさらに上がる気がする。
「さて、ノール。もう1本のレギ・エリトラはどうする? 2本持ってダブルソードにでもするか?」
「そんなの扱い辛いのでありますよ。重ねちゃってくださいなのであります」
「そうか。思ったんだけどこれ俺が使ったらどうなるんだ?」
「ただのすっごく良く切れる剣になるだけでありますよ。なんたって私専用でありますからね」
もしかしてこの世界なら専用装備も使えるんじゃね? って思ったけどどうやら駄目みたいだ。
良く切れるけど攻撃力自体は彼女が使うほどにはならないということか。どうなってるんだかな。
「ブレスレットはどうしよう。ノールもハイカラに染まるか?」
「そう言われるとなんだか欲しくなくなるのでありますよ……」
ダブった物は重ねることにした。
指輪などは他のユニットが出た際のことも考えて、重ねず複数使用する。
ブレスレット2つはノール行きだな。
指輪は本来2つまでしか装備できなかったが、今はそれを超えて装備しても適用されるみたいだ。
専用装備は無理なのにこれは平気とかどういうことだよ。
――――――
●レギ・エリトラ☆2
攻撃力+3000
魔特効+100%
敵行動速度-50%
行動速度+30%
●エクスカリバール☆10
攻撃力+1390
行動速度+95%
●鍋の蓋☆5
防御+450
――――――
うわぁ……なんだか凄いことになってるぞ。
レギ・エリトラの攻撃力がぶっ飛んでるな。しかも行動速度+まで付きやがった。
俺のバールも、もうGCの装備と比べたらSSR装備と変わらないようなレベルだぞ。
とりあえず装備の整理も終わったので、今日はもう寝ることにしよう。
明日はどうしようか。強化された装備でさらにサソリを殲滅するか、それとも他の狩場を探そうか。
●
――。
……なんだ?
「ん……ん?」
寝ていたのだが、なんだか妙な感触がする。
体が重い。そして布団の中で何かがモゾモゾと動いている。
「あっ、見つかっちゃった?」
「……何してるんだ」
寝ぼけていた頭が覚め始め、何かがいることに気が付いて俺は掛け布団を捲った。
するとそこには、俺の上でうつ伏せになったエステルがいた。
ノールの方のベッドを見てみると、抜け出したような跡がある。ノールは何かを探すように手をパタパタさせている。
あいつエステルのこと抱き枕代わりにしていたもんな……。
「ふふ、お兄さんと一緒に寝てみたかったの。私寂しがりやなのよ?」
はい? この娘は何を言っているんだ。
「冗談は止めて寝るぞ。ノールの所へ戻りなさい」
「あら、冗談だなんて心外だわ」
俺が冗談は止めろと言うと、彼女は目を細めて笑った。
やばい、この顔は何か企んでいる奴だ。
「おい! ちょ……っ!?」
「ノールが起きちゃうでしょ」
嫌な予感がしたので、エステルをまず止めようとしたのだがその前に指を振るう。
そしてこの前やられたように体が動かなくなり、さらには声まで出せなくなった。
やばいやばい、マジで何するつもりだ。今回ばかりは本当に何をする気なのか見当も付かん。
なんだか怖くなってきたぞ。
「ここまでしてもその気にならないのね。ふふ、お兄さんが自分で慰めてるの知っているのよ?」
なん……だと……。何故だ、何故それを知っている。
俺の自家発電は風呂場で内密に行われていた。一体どこからその情報が漏洩したんだ。臭いも完璧に無いはずなのに。
「私だったら、お兄さんの好きなことなんでもしてあげるわよ?」
舌なめずりをしながら、胸元辺りをその小さな手で撫でられた。
やわらかい、それになんだか甘いというか良い匂いまでする。
なんでもだと……なんでも……。いかん、相手は少女なんだぞ?
ノールよりもさらに幼い彼女相手に手を出すなんて……そんなこといけない。
「それでお兄さん、どうするの?」
「お、俺は……」
魔法での拘束を解かれて体が自由になる。彼女はニコニコと笑いながら俺に問いかける。
俺は……どうしたらいいんだ? 相手が良いと言っているが……。
「何してるでありますか……」
「ぴゃう!?」
「ノ、ノール、起きていたのね」
そんなこと考えていたら突然声を掛けられた。見てみるとノールが横に佇んでいる。
あまりに唐突だったので、俺は心臓が跳ね上がったのかと思うほどに驚く。エステルも驚いている。
い、いつからいたんだ?
「全く、勝手にいなくならないでほしいのであります。エステルは抱き心地が良いのでありますからな」
「むー、良いところだったのに……」
彼女はエステルを抱き抱えると、ベッドへ戻っていった。抱えられたエステルはまるで猫のようだ。
いやぁ、これは助かったと言うべきなのだろうか。ノールが来なかったら一体どうなっていた事やら。
それにしても……いつから横に居たんだ。それよりもいつ起きた? どこから会話を聞いていたんだ。
そう考えるとなんだか背筋に嫌な汗が流れ始める。