図書館の情報
図書館での探索を終え、俺達は帰宅してまた自宅の図書館にいた。
図書館からまた図書館に移動するとはなんか変な気分になりそうだ。
さっそくマルティナがメモしてきた本のタイトルを元に、次々と本を生成している。
それをゴースト達が抱きかかえて、この世界の本をまとめた本棚へと収納。
もうこの図書館はゴーストが本の管理をしているのが当たり前の光景になっているな……ある意味ホラーだぞ。
そんな光景を他所に俺とエステルだけじゃなく、意見を聞くためにシスハも呼んで話し合っていた。
今はレビィ―リアさんの話をしていたのだが、聞いた話じゃなくて彼女自身についての話題になっている。
マルティナが言っていたレビィーリアさんが聖騎士だということについてだ。
「ほほう、聖騎士ですか。それはまた興味深い方がいらっしゃるんですね」
「シスハは聖騎士に関して知ってることはあるのかしら?」
「一応同じ神聖な力を扱う者ですから知識はありますよ。簡単に説明するのでしたら、神官の力を持った騎士といったところですか」
「そのまんま過ぎるだろ。それってシスハが剣を使ったら聖騎士って感じじゃないのか?」
「さっき話したのは本当にざっくりとしていますからね。聖騎士は騎士が主体として神聖な力を持つ者です。回復ができたり呪いなどの抵抗力が高いのは似ていますが、特に違う部分は神聖力を破壊の力にできることですね」
「それってシスハにはできないの? ほら、この前墓地とかでビームみたいなの撃ってたじゃない」
「身体能力を高めた上で物理的には可能ですけど、直接破壊力に変換するのは難しいです。イメージしやすいところだと、剣からエステルさんの放つビームみたいなのが撃てますよ。私の放つ光はあくまでアンデッドや呪詛的な物に対して効果があるので、物理的な破壊力はありません」
思い返してみれば、見た目の派手さに目を奪われていたけど物理的に何か壊してはなかったな。
シスハ自体が手足を使って物理で殴るせいで、あの神官ビームでも物を破壊するイメージしかなかった。
つまり聖騎士は戦闘向きな神官ってところか。……シスハのせいで戦闘向きって何なのか疑問ではあるが。
何ともイメージが湧きにくいと思っていると、エステルが頬に手を当てて傾げながら俺に質問を投げかけてきた。
「URユニットに聖騎士とかっていないの?」
「あー、一応アルクメアって聖騎士ならいたな。シスハなら名前ぐらい聞いたことあるんじゃないか?」
「いやぁ、聞いたことありませんね。私達がガチャから呼び出されているとはいえ、いた場所が国どころか大陸すら違うこともありそうですし。お互いの存在を認知しているのは稀かもしれませんよ。たまに元の世界のことを話してはいますけど、私とノールさんは割と近しい地域でしたね」
「私はあまり他人に興味なかったからその手の話には疎いわね。私達の中で1番そういうことに詳しいのはマルティナかも。それでも限度はあるでしょうけど」
なるほどなぁ、GCのゲーム設定でも章ごとに舞台があちらこちらに飛んでたからなぁ。
URユニットは特にメインシナリオに絡まない奴ばかりだったから、サブストーリー的で違う国や地域での話になるのが多かった気がする。
ノールもメインシナリオに出てくるけど、敵として出てくるだけで彼女自身の話はその時全く出てこない。
俺もサブストーリーはおまけ程度に読んでいただけだったし、URユニットを全部持ってる訳じゃなかったからその辺の情報は結構曖昧だ。
話が一区切りした辺りで本を整理していたマルティナが、十数冊程度の本を抱えて俺達のところにやってきた。
「いやぁー、沢山メモしちゃったから整理に時間がかかりそうだよ。とりあえず関係ありそうなのをピックアップしてみたよ!」
「へぇー、あの時間だけでもこんなに見つけてきたのか。俺達も探してはいたけどさっぱりだったぞ。やっぱり本とかの知識に関しては凄いんだな」
「えへ、えへへへ……そ、それほどでもないさ!」
「肝心なのは数じゃなくて質、この本の中身ですよ。確認するまで私は認めませんよ」
「素直に褒めてあげなさいよ。私とお兄さんなんて全くと言っていい程見つけられなかったもの。今後資料を探す時の参考にさせてもらいたいわ」
俺達はレビィ―リアさんと話していたのもあったけど、1冊も情報になりそうな本を見つけられなかったからなぁ。
趣味の本を探しつつちゃんと目ぼしい本をこんなに見つけてくるとか、こいつ有能過ぎないか?
これで中二に侵食されてなかったらと思うと残念……だからこそ親しみがあるのかもな。
マルティナは照れつつもコホンと咳払いをすると、改まって真面目な様子で話し始めた。
「でもシスハさんの言う通り、中身をちゃんと確認してからじゃないと役立つかわからないんだ」
「ん? でも何か情報があるかもしれないから選んだんだよな?」
「勿論さ。最初は僕も亜人の情報がありそうな本を探してみたけど、詳しい物は殆ど見つからなかった。だから物語系や随筆の伝本をメインに探すことにしたんだよ」
「つまり直接的な資料はなさそうだったから、誰かの体験談とかから情報を探そうとしたのかしら?」
「そうですそうです! わかりやすい本は真っ先に禁書扱いとかされるけど、そういうタイプの本は検閲を逃れたりするからね。物語として実際の話が語り継がれていることも結構あるよ。昔の個人的な手記をまとめた本もあったけど、これはちょっと正確性にかけるかなぁ」
「ふん、もっともらしい言い分ではあるでしょうね。そういう発想は参考にさせてもらいましょう」
「あ、ありがとうございます!」
シスハの奴さっきまで認めないとか言ってた癖に、ツンとした態度のまま手の平返しやがったぞ。
それを素直に嬉しそうな笑顔で喜ぶマルティナもどんなんだ!
……はぁ、この2人も突っ込みたくなるのが疲れてくるけど、マルティナの注目した部分は俺達になかった視点なのは確かだな。
レビィーリアさんは制限区域にもロクな情報がないと言ってたが、これなら目立たない本とかが見つけられるかもしれないぞ。
でも話題に挙げた本から情報を得るって結構大変そうだよなぁ。
「しかし物語や随筆かぁ。それを読んで亜人の情報を探し出すってなかなか難しくないか?」
「そこが問題なんだよ。例えばこの本のこの文なんだけど、『北東の深き森に住まう民の神秘なる御業』とか書かれているんだけど、これってエルフのことじゃないかな。他の部分に閉鎖的だけど交流関係は作れるとか、不思議な実を賜ったとか色々書かれている部分もあるよ。この世界の住民しかわからない内容で書かれていたら、僕達だけだと解読に限界があるよねぇ」
「この本には身体的な特徴とかはあまり書いていないのね。見た目が人知を超えた美しさとか書かれているけれど」
「あー、確かにグラリエさんとかめっちゃ美人だったもんなぁ」
「ほー、大倉さんはエルフの里でそんなこと考えていたんですねぇ」
「ふーん、お兄さんって誰にでもすぐデレデレするわよねぇ。図書館で会ったレビィーリアって人にもそんな顔してたじゃない」
「そ、そんなこと全然考えてなかったぞ! 怪しい人だって警戒してたからな!」
「そう慌てて否定されると説得力がまるでないね……」
ニヤつくシスハに頬を膨らませるエステル、そして呆れた目で見てくるマルティナと誰も俺の味方がいない。
どうして本の話から俺の話になっているんだよ! 失言した俺も悪い……いや、俺は悪くねぇ! 悪くねぇぞ!




